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西の河原に向け、温泉街を歩いて行く。
パチンコ屋「吾妻屋」。
草津温泉の景観を考慮して、パチンコ屋とは到底思えない、渋い外観になっている。さすがだ。
パチンコ玉を草津の湯に浸けたら、果たして溶けるのか、黒くなるのか、それとも変化なしなのか。
西の河原通りを歩いていると、ひっそりと共同浴場がある。
連れに、「これも共同浴場だよ」と教えると、えらく感心していた。
観光客に積極的に開放しているわけではないので、とても地味だ。そりゃそうだ、本来なら看板すら出す必要がないものなのだから。
西の河原通りの名物トラップ、「無料で温泉まんじゅうを配る店」が前方に見えてきた。
昔の僕は、ここを通るのがイヤで、わざわざ裏道に逃げていたくらいだ。それくらい、昔はしつこかった。「ただより高いものはない」というのを身をもって体験するなら、ここに行けばいい。しかし、今はどうなっているのか、わからない。
ちょうどタイミング的に前を歩くお客さんに対応しているところで、僕らにはまんじゅうをすすめてこなかったからだ。
昔は、まんじゅうを受け取ったら受け取ったでやたらと買うように薦められたし、受け取らなかったら受け取らないで怒られたりしたものだ。
ここから西の河原公園。
正面に片岡鶴太郎美術館がある。そういえば、一度も僕はこの美術館を訪れたことがない。
西の河原公園。
「にしのかわら」と呼んだり「さいのかわら」と呼んだりする。どちが正しいのだろう。
初めてここを訪れた時は、「この世の地獄」みたいな印象を持ったものだ。でも今見ると、案外そうでもないな。
とはいっても、河原のあちこちからお湯が今まさに沸いていて、湯だまりを作っているのはびっくりの光景だ。
流れる川からも湯けむりが上がっていたりして、絶景。もちろん、硫化水素の匂いがする。
えーと、こんなの、あったっけ?
湯だまりを利用して、巨大な足湯をこしらえたっぽい。
ここから先、西の河原大露天風呂。
「大」とわざわざ名乗っているのには説得力がある、とにかくデカい露天風呂だ。こんな施設を作れるのは、さすが草津だと思う。
入湯料600円。
やや。いつの間にかリニューアルしていた。
「いつの間にか」もなにも、ここを訪れるのはずいぶん久し振りだ。どんどん世の中が変化していってもおかしくない。やい老いぼれ、お前いつまで経っても今目の前に見えているものが変わらないものだと思ってないか?違うよ、子供の成長と一緒で、どんどん変わっていくんだよ。
最近歳のせいか、「あれ?以前無かった建物が建ってるね」なんてよく口にするようになった。違う違う、お前が言う「以前」って何年前だよ。10年前とか20年前の話だろ。ショックだなあ。つい先日のことかと思って指折り数えてみたら、二桁年も昔だったりする。
コインロッカー完備。
以前、アワレみ隊のばばろあが「温泉の脱衣場に財布を置きっぱなしにしてたら、すられた。ホンマに油断せんほうがええで」と熱く、悔しさたっぷりに忠告してくれた。ああ、風呂場で財布が盗られる、というのは本当に身近な脅威なんだな、とそのとき思ったものだ。
それ以降、僕は律儀に財布をコインロッカーに入れるようになった。当たり前っちゃあ当たり前だけど。
ちなみにこの西の河原大露天風呂、外のコインロッカーは100円返却式だけど、脱衣場にあるコインロッカーは有料。客の安全確保のために、無料にしてほしいものだが・・・。だって、風呂ってどうしても全裸になるものだ。財布が無防備になる、というのは施設側でなんとかガードして欲しい。
新しくなった建物にびっくりしつつ、露天風呂へ。
宿に内風呂があるのに、そして無料の共同浴場が町中にあるのに、それでも600円を払って露天風呂?と思われるだろう。でも、その価値はあると思う。なにしろ、25メートルプールみたいな露天風呂って、なかなか存在しないものだから。
でも、間違っても泳いではダメだ。マナー的にダメなのは当然として、顔をお湯に浸けたら、目に激痛が走る。腐りきった己の目を浄化したい、という強迫観念と罪悪感がある人でも無い限り、そんなことはよせ。
はー、半月ほど前にリニューアルオープンしたのか。
この西の河原露天風呂は棚田のようになっていて、下の段が男湯、上の段が女湯になっている。日によって逆転する、ということはない。というのも、男湯は向かいにある道から半分見えちゃってイヤーン、だからだ。
女湯の実情は僕は当然知らないのだけど、ちょっと狭いはずだ。そして、外から見られないようにしっかりガードされているだろう。男湯と比べて解放感が減るのは、女性としては悔しいことだろう。
実際この大露天風呂の女湯がどうなっているのか、航空写真で確認しよう!とたった今この文章を書きながら思い立った。Googleマップで見てみたら、ひょっとしたらごくごく小さい「女性の裸体っぽいもの」が写りこんでいるかもしれん!
・・・鼻息荒く航空写真を確認してみた少年おかでん、その結果に愕然とした。
ちょうど女湯があるあたりに、「草津ビジターセンター」という文字がかぶっていて、見えなかったのだった。偶然なのか、必然なのか。
俺のたぎる情熱を返せ!
(つづく)
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