
13:46
完全にナメてかかっていた「ハートロック城」が予想以上に良かったので、「侮れんなあ」と嘆息しつつ、草津温泉を目指す。
PRに余念がない、というのは商売をする上で大事なことだと思う。しかし、やり過ぎると胡散臭さが出てきてしまうのも事実だ。
特にネット隆盛の21世紀ともなれば、「マスメディアの広告」というのは良くない広告で、「口コミ広告」というのは良い広告・・・みたいなイメージがちょっとある。
もちろん、その口コミだってステマだったり、やらせだったりして信用できないものがいっぱいある。それを知りつつも、なんとなく口コミを信じたくなるのは否定できない。
で、ロックハート城というのはメディア向けな、派手な露出をしている観光地だ。なので舐めてかかっていたのだけど、いやあ侮れなかったぞ。空いているときに、ぜひどうぞ。入場料は大して高くないし。
そんな会話を車中でしながら移動していたら、何やら大量のクレーンが見える。
あ、「八ッ場(やんば)ダム」の建設地だ!
時間の経過とともに忘れ去られそうになっっているけど、「八ッ場ダム」というのは、無駄な公共事業の典型としてやり玉に挙がり、民主党政権時代に工事を中止する・しないで紛糾した場所だ。
今回の旅行は2015年で、今となっては何事もなかったように工事が続行している。しかし、吾妻渓谷を塞いで巨大なダムをこしらえるために、JR吾妻線の線路をつけかえ、草津に向かう国道も作り直し、しまいには川沿いにあった川原湯温泉も集落ごと山の上に移転させちゃった。温泉はどうしたかって?ダムに沈んじゃうので、そこから山の上の新温泉街まで引き湯ですよ!
2008年(7年前)に、吾妻渓谷を訪れたことがある。その頃はまだここまで本格的な工事を行っていなかった。

今や、国道145号線沿いに、見慣れない平地ができている。八ッ場ダム観光客を当て込んで、駐車場を作ったり蕎麦屋ができている。

こうなると、八ッ場ダムの現状というのを見てみたくなった。
急遽、駐車場に車を停車。どこかに展望台のようなものがあるはずだ。それはどこだろう?
いや、目の前に答えはあった。
小高い丘を登ったところに、展望台があるようだ。人だかりがチラリと見える。
丘の上に通じる道には、看板が出ていた。なになに?・・・「やんば見放台」。
すごい名前の展望台だな、「見放台」だなんて。無料だから、いくらでも見ていいですよ!ということなんだろうけど、そんなにジロジロ見ないですってば。
「見放題」ではなく、「見放台」と漢字にひねりを加えているのが、にくい。
ダサいダジャレだって?いや、そんなことはないぞ、こんなに国会で紛糾したダムの周辺施設なのに、この脱力する名前を付けるというのはかなりの勇気だ。

13:50
見放台に登ってみると、今まさに「見放題」な人たちがわんさか。
平日お昼ということもあってか、お仕事関係の方が多いようだ。明らかに観光客ではない。みんな、手に資料を持ち、出で立ちは作業着。そしてその作業着も人によってまちまち。いろいろな自治体の、合同視察会みたいなものなのだろうか?

VRゴーグルでも着用して、完成予定図と比較しないと何が何だか・・・
ここにいるプロの皆さんは、これを見て「おお、そういうことか」とわかるのだろうが、僕ら素人はさっぱり。単にあちこち削った形跡がある渓谷、にしか見えない。

幅は290.8メートル、深さは116.0メートルになるらしい。
掘削進捗率約45%、と赤字で書かれているけど、どういう状態からどういう状態になれば100%なのか、それすらよくわからない。そうか、僕は「ダムというのは、既に水をたたえている状態」でしか知らないからだ。水を溜める前のダムって、よく考えると全然知らない。当たり前だけど。

あのあたりからこっちに向けて、ダムの堤防が作られるのだろうか。
この「見放台」はあくまでも「見放題」なのであって、ダムの解説をしてくれる場所ではない。

吾妻川の上流を見下ろしたところ。
昔はなかった、巨大な橋がすでに開通していた。本来ならあんな橋はいらなかったけど、谷底がダム湖として沈んでしまうために必要となったものだろう。
吾妻川の川沿いに国道があって、JRの線路があって、そして川原湯温泉があった。でも、今や既にお引っ越し済みで、橋の奥の山を切り開いた場所に新居がある。

谷底の工事現場。
ゼネコンや建設会社のお仕事については疎いのだけど、「ダム建設工事現場の勤務を命ず」と言われたら、一体何年の単身赴任になるのだろう?なかなか「自宅から通う」ことが可能な現場はないだろう。

写真パネルによる解説。
ダムが完成するとどうなっちゃうのか、という完成予想図はなかった。
川原湯温泉のところに、「なるほど!やんば資料館」という施設があるようだ。うっかり行きそびれてしまったけど、折角だから見ておけばよかったな。

14:11
やんば大橋を渡り、新しくなった川原湯温泉を見てみる。
ハンドルを握っていたので写真を撮っていないけど、なにせ全く新しい土地に作った集落だ。まるで団地のような整然とした作りで、「温泉街の味わい」という点ではまだこれから、といった感じだった。
温泉街というのは、やっぱり増改築が重なり、ぐちゃっとした町並みというのが味わい深い。通りに面したところはきっちり綺麗にしていても、裏の路地に行ってみると油断した光景が広がっている、みたいな。
そういう味わいが出てくるのは、この温泉街はしばらく時間がかかるだろう。でもむしろ、新しい温泉街が今目の前で誕生している!と考えれば、それはそれで面白いことだ。
川原湯温泉、昔は共同浴場で混浴があったんだけどなあ。いつの日か、その混浴にカップルで入ってみたいと思っていたのだけど、思いは果たせず。

14:33
そんなこんなで、草津温泉到着。
まだチェックアウト時間には早かったので、一旦手前の道の駅くさつに立ち寄る。
草津の温泉街に入るちょうど手前に位置し、まるで草津温泉の門番のような存在だ。
草津白根山や万座温泉、志賀高原に向かう車もここで一息つくにはちょうど良い。
ただし、ここはかなり駐車場が混む。もともと観光用の車が多く行き交う場所なので混みやすいのに加え、ここを根城として温泉街のあちこちにある共同浴場を利用しに出かける人が結構いるようだ。夜になると空くかと思いきや、むしろキャンピングカーなどがずらっと並び、車中泊会場になっている。
ちょうどここの建物の裏手に共同浴場「躑躅乃湯」があって、ひとっ風呂浴びるには便利・・・ということもあるのだが、あんまりやり過ぎると駐車場利用に規制がかかると思う。
躑躅乃湯には、「草津二十番勝負」の時に使わせてもらったことがある。

今はどうなっているのか知らないけど、当時は「一般客は15時まで、それ以降の時間は地元民限定」という運用になっていた。

草津温泉は、「にっぽんの温泉100選」で12年連続1位、なのだそうな。
毎年こういうランキングがでているんだな。そう簡単に順位は入れ替わらないと思うのだけど、「人気急浮上!」みたいな温泉地もあるのだろうか?「住みたい町ランキング」みたいなものか。
この「にっぽんの温泉」というのが、泉質だけでなく温泉街の旅館や土産物店といったものも含めた総合評価なのか、どうなのかは不明。まさか、泉質だけでランキングを作っていたら、そうやすやすと順位変動はないはずだ。
温泉を評価する方法というのはいろいろあると思うのだけど、恣意的な評価軸が混じってしまいがちだ。なので、もうゴチャゴチャいわんと、「一番濃い温泉はどこや?」というランキングを見たい。中身は問わない、とにかく温泉1kgあたりの含有成分量が多いのはどこや?と。
これは公平な基準だ、一人でほくそ笑んでいたが、そういうのをオッケーにすると、「火山の火口に溜まっているお湯」までオッケーになってしまう。毒ガスマスクを装着しないと近寄れない、みたいな。それじゃダメなので、ちゃんと湯船があって、普通に入浴できる場所に限って・・・
待て、「ちゃんと湯船」って、湯船の定義はなんだ?川原を掘った野天風呂はちゃんとした湯船か?「普通に入浴」ってなんだ?50度のお湯だったら熱すぎてダメか?
結局、「温泉」を評価するためには、何らかの恣意的な基準を持ち込まないとアカン、ということがわかった。難しいのぅ。
でも、そういうややこしい話をさっ引いても、草津温泉というのは圧倒的な湯力を持つ温泉で、素晴らしいというのは間違いない。

道の駅くさつ。

道の駅から、道路を挟んだ対面にある建物が「ベルツ記念館」。
草津温泉を世に知らしめた立役者として有名な「ベルツさん」を記念した建物。そういえばこれまで一度も中に入ったことがないので、この際だから見学していく。
これまで草津温泉に来るときって、日帰りか、それともチェックイン時間が過ぎていて「早く、早く宿に!」と気持ちが急いていたものだ。だからこういう施設は完全スルーだったのだけど、今回はまだチェックインまで余裕がある。微笑みとともに見学しようじゃないか、キミイ。

というわけでベルツ記念館を見たのだけど、どういう内容だったかすっかり忘れてしまった。
だめじゃん。
(つづく)
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