11:04
バスは狭い道に入っていった。一車線で、バスが通ると対向車はすれ違えない。ところこどころ、「追越車線」のように車線が拡張されていて、そこで車が交互通行するようになっている。
しかし、両側には民家が高密度で並んでいて、決して田舎道というわけではない。
道中、「比比多神社」というお社があった。「大山阿夫利神社」といい、神社に不思議な名前がついているエリアだ。
11:06
ここにも大きな鳥居。
伊勢原駅前同様、バーンとわかりやすく鳥居が単独でそびえているのではなく、他の建物の陰になりつつ建っている。
三の大鳥居、というらしい。
ここから先は、ぼつぼつ旅館や宿坊が道路脇に見えてきた。
山岳宗教の山は、「◯◯講」と呼ばれる団体参拝客がやってくるので、その客向けの旅館が充実しているものだ。以前登った、奥多摩の御岳山もそうだった。山の上に宿坊だらけ集落がある、不思議な場所だった。
ああいうのは、ふと「オレも山が神様だと思うんだよね」という気になるのか、それとも子供の頃から親や地元の人たちがそういう風習に馴染んでいるので、自分もそのビッグウェーブに乗って、ということなのか、よくわからない。
親が転勤族だったため、地元密着型のコミュニティというのとは疎遠に生きてきたからだ。
11:13
旅館やお土産物屋、大山阿夫利神社社務所、一般車両の駐車場などをすり抜け、バスは山の斜面を登っていく。
駐車場は広いスペースが必要となるので、もうちょっと山の下にあって、バス停は車道が続く限りグイグイ奥まで、ということなのだろう。
終着駅、「大山ケーブル」バス停到着。ここが一般車両の限界だ。伊勢原駅からだいたい30分程度の距離。
「大山ケーブル」といっても、ここに何かがあるわけじゃない。
がらん、としたバスのりばで、トイレと水場があるくらいだ。
演出上「なんだこれは!ケーブルカー乗り場がないじゃないか!」と驚いてみせたいところだが、さすがに登山をやる人間としてそこまで事前調査をしていないのは問題だ。ちゃんと状況はわかっている。
ここからケーブルカー乗り場まで、歩いていくことになる。むしろ、ここからの徒歩が大山登山の印象的な部分で面白いと聞いている。
大山ケーブルカーは、平日09:00-16:30、土休日が09:00-17:00の運行。
案外短い。高尾山よりもあっさりとしている。
山の上に神社があるからといって、早朝から運行しているわけではない。神社に参拝する人は、ケーブルカーなんて使わないで歩いて登れ、ということか。
バスのりばの近くに一応駐車場はあるのだけれど、キャパシティはあまり多くないように見える。週末でのんびりとした時間にここを訪れるなら、おとなしくもうちょっと下界にある第1駐車場を使ったほうが空振りしなくて済むかもしれない。
11:14
大山旅館案内図。
この図を見ると、大山ケーブルバス停は地図右のほうで、既に大半の旅館をすっ飛ばしてしまったことがわかる。バス停を下りてからケーブルカー乗り場までが旅館街の本丸、と思っていたので、これはちょっと予想外だった。
そうか、旅館の横を歩きながら風情に浸れるかと思っていたのだけれど。
ハイキングコース案内図を一応見ておく。
大山がピラミッドのように美しい三角形の山だということが、この絵からよくわかる。
この先、「こま参道」という道を歩いていくと、大山ケーブル駅がある。
そこから道は「男坂」と「女坂」に枝分かれし、山の中腹にある大山阿夫利神社下社に通じている。大山ケーブルは、この男坂と女坂の真ん中を突っ切っている。
大山阿夫利神社の本社は山頂にあるので、下社からさらに登っていった先だ。山頂は標高1,252メートルということもあって、登山とは言いすぎだけどハイキング程度のコースになる。なので、観光客は下社を参拝して下山して名物の豆腐料理に舌鼓を打つ、という流れが一般的かもしれない。
で、僕だが、横着できるところは極力横着する、という精神なので男坂も女坂も使わず、キリッと大山ケーブルを使って下社まで一直線の所存だ。
しかし、悩ましいことが一つある。その途中に「大山寺」という真言宗のお寺があって、山の名前を冠したお寺であるからにはぜひお参りしたい。ただ、ここにアプローチするには、女坂を登っていくか、ケーブルの途中駅である「大山寺駅」で下車することになる。
うーん。
山頂を踏破したあと、帰り道に大山寺には立ち寄ろう。帰り道は女坂経由だ。
11:15
「一般車両乗入はご遠慮下さい」という看板。
正面には車道と、階段。
階段が「こま参道」で、ここを進んだ先がケーブル、そして神社だ。
左の車道は、道中にあるお店などの関係者専用という位置づけ。
階段を登らせるのか?この高齢化社会において?と言われるかもしれないが、それが山というものなのです。なので、大山阿夫利神社参拝は、足腰が元気なうちにぜひどうぞ。
11:16
こま参道に足を踏み入れる。
へえ、面白いな、階段を登った先は、アーケードになっていた。石段を参道両側にあるお店の屋根が覆っている。
(つづく)
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