僕にとって登山というのは、「9月ごろ」がシーズンだ。
これまでもさんざんこの「へべれけ紀行」で書いてきたことだ。
9月がお気に入りだから、というわけじゃない。単に、「登山シーズン開幕に完全に出遅れ、秋の訪れが迫ってきてから尻に火が付く」からに過ぎない。
なので、本当ならば、春先から登山はスタートさせたい。まだ薄ら寒い時期から低山登山をやっていれば、いざ!梅雨明け!本格的な登山シーズン!となった時にダッシュをかけられるはずだ。
人生すでに折り返し地点に到達している、と考えている僕は、そろそろ「死ぬまでに日本百名山の踏破はできるのだろうか?」ということが気になり始めている。三浦雄一郎みたいな鉄人じゃないのだから、実際に僕が登山を楽しめるのは、せいぜいあと20年といったところだろう。
百名山のうち50座はすでに登っている、という話をすると、たいていの人は「すごいじゃないですか。歳を取ったら時間はいくらでもあるのだし、余裕ですね」という。
馬鹿を言っちゃいけない。歳を取れば取るほど、気力体力が落ちていくんだ。そして、その歳になっても取り残されている山、というのは、やたらと遠いとか、厳しく険しい山ばかりになる。
姥捨て山にジジイである僕が自ら突撃するようなものだ。
なので、焦らないわけにはいかない。ペースを上げなければ、と考えている。ペースを上げつつ、難度の高い山を目指していくことを考えている。
2016年シーズンはその点、6月に筑波山に登ったということで良い出だしだった。
しかし、長年のサボりがたたり、体力不足が露呈。その後もその傾向は変わらず、結局目標としていた山中一泊登山は間に合わなかった。
「疲れた」という表現ならまだしも、「かったるい」という表現を使っていたくらいだから、よっぽど身体がなまっていたのだろう。
おかでん的登山シーズンを10月の天城山縦走で終えたのだけど、どうにも満足感が足りない。
長い距離を歩き通した、という点では楽しかったのだけど、消化不良感は否めなかった。
もうちょっと、2016年最後に登山の「おかわり」はできないだろうか・・・?そう思えてきた。
そもそも僕は登山が大好き!というほどではなく、「日本百名山」というスタンプラリー感覚が楽しいからやっているに過ぎない。だから、秋から春にかけての低山ハイクはほとんどやってこなかった。でも、今年はそういうのをやっても、いいかもしれない。
そこで目に留まったのが、東京都の奥多摩エリアにある山、「御岳山(みたけさん)」。長野県にある「おんたけさん」とは違う。山岳信仰の場所である、という点では一緒だけど、こっちは「みたけさん」。ネーミングが紛らわしいので、「武蔵御岳山」とも呼ばれる。しかし、奥多摩エリアなのに「武蔵」という地名がついていて、ますます紛らわしくなっていたりもする。
首都圏エリアで「山歩きをやってみてもいいかも!?」と思い始めた人が真っ先に目指すのは、なんといっても「高尾山」になる。
そこで味をしめた人が次に目指すのが、千葉県房総半島の鋸山とか、奥多摩の御岳山といった山々になる。御岳山は高尾山同様、都心からの交通アクセスが便利。何しろ、山腹にケーブルカーがある。標高が稼げる、というのは正義。
寒い時期に登山ができるような本格的な装備を持っているわけじゃない。なので、さっくりと登って下りてくる、そんな半日登山を御岳山で楽しんでくることにした。
2016年12月03日(土)
08:12
新宿駅コンコース。
今日は登山に行く、というよりも「ハイキング」の感覚だ。なので、軽装だし、そもそも現地でのお昼ご飯すら用意していない。
御岳山の山頂近辺には、「山上集落」がある、と聞いている。今回は登山が目的というよりも、「山の上に集落があるという不思議」を実際に歩いて見てみたい、という気持ちの方が強い。どうしてそんな不自由なところに人は住むのか?下界を追われた少数民族、なんて日本じゃあり得ないだろうし。
もともと御岳山には、「御嶽神社」という立派な神社があり、その神社にお参りする全国各地の信者の集まり「講」のための宿坊が並んでいるそうだ。それが山上集落の正体。
そんな山なので、飲食店には困らない。さすがにおしゃれなカフェ(フリーWi-Fi付き)みたいなのはないと思うが、観光地によくあるような蕎麦やうどん、おでんくらいなら食べられるようだ。
とはいえ、集落からもう少し奥まで足を伸ばすので、食料はしっかりと用意しておかないといけない。非常用食料を持参するのは当然として、メインのお昼ご飯を確保しなければ。
そこで新宿駅コンコースの駅弁屋さんですよ。
朝8時過ぎだというのに、よくぞまあここまでお弁当ができあがっているものだ、と舌を巻く。「舌なめずりする」のではなく。
JR東日本系列の駅弁屋さんなので、「牛タン」「米沢牛」「比内地鶏」といった東北方面の食材を使った弁当が並ぶ。
しかし、食材に凝れば凝るだけ、値段も高くなる。
いやぁ・・・躊躇するなぁ。1,000円以下の駅弁は、たっくさんある弁当の中から「探さないと」見つからない。
値段だけじゃなく、「さあ!今日は山だ!奥多摩だ!」と気合いを入れている真っ最中なのに、さすがに東北の幸というのは場違い感がする。さて、どうしよう。
とりあえず1,000円しないものを、というけちくさい理由で絞り込み、一つ購入。
貧乏くさいなぁもう、と思われるかもしれないが、登山というのは地味にお金がかかるのですよ。今日だって、往復の交通費でどれだけのお金がかかることやら。
本日の昼食を仕入れたのち、中央線のホームを目指す。
「特別快速ホリデー快速おくたま5号」が8時19分発。これに乗っていく。週末の奥多摩登山が目的なら、是非利用したい快速。停車駅が少ない分、するすると先に進んでくれる。
コンコースからホームに下り、いざ停車中の電車に乗り込もうとして困惑した。
あれっ、行き先が「武蔵五日市」になっている。路線が違う、僕が乗りたいのは中央線経由青梅線の奥多摩行きだ。武蔵五日市というのは、中央線経由で途中分岐する五日市線だ。
おかしい。さっき、コンコースの電光掲示板だとちゃんと奥多摩行きになっていたのに。
いったんコンコースに戻り、電光掲示板をもう一度確認し、首をひねりながらまたホームに戻る。やっぱり武蔵五日市行きだ。何かのエラーだろうか?
しばらく電光掲示をにらんでいたら、原因がわかった。
この電車、前はんぶんと後ろはんぶんで行き先が違うのだった。武蔵五日市行きと奥多摩行きに、途中の拝島駅で分裂する仕組みだった。知らなかった。
あらためて電車の最後尾に行ってみると、ご丁寧に電光掲示の行き先表示に
おくたま 奥多摩
あきがわ 武蔵五日市
と二行に分かれて併記されていた。
間違えないように、奥多摩行きの列車に乗車。
09:35
青梅線御嶽駅に到着。
山の名前は「御岳山」なのだけど、駅名は古い、いかめしい「御嶽駅」を名乗っている。アカン、漢字で手書きで書け、ととっさに言われても書ける気がしない。
これまで、奥多摩から河辺までサイクリングでダウンヒルする企画をやった際、この駅の脇をしゅーっと自転車で通り抜けたものだ。
「なんでこんなにホームに人がいるんだ、小さな駅なのに」
とそのときはチャリンコを漕ぎながら思ったものだが、今度は自分がホーム上の人になった。
結構この駅で降りる人は多い。
地元民、という見栄えではなく、やはりハイキング客中心だ。もっとも、電車から降りずにさらに山奥を目指す人たちも、大抵が山装備をしている人たちだ。
ボルダリングのマットレスを背負ってこの駅で下車した人もいる。このあたりに良い岩場があるのだろう。
立派な駅舎だけど、無人駅だ。
御岳山、御嶽神社の玄関口ではあるけれど、さすがに普段使いの地元民が少ないのだろう。
改札には、簡易Suicaリーダーが置いてある。なので、交通系ICカードでの出入りは可能。
09:36
駅前の地図。
北が左を向いているのでちょっと見づらい。
地図の上が東京方面、下が奥多摩駅方面。
おっといかん、ここも東京都だった。
さすがにこのあたりになると森と山と川の大地なので、東京の感覚が一気に薄れる。
御岳山は、地図右端のやや下あたりにある。
駅舎は木造の和風建築で、こじんまりとしているけれど立派。さすがに瓦葺きにすると面倒だと思ったのか、屋根はそこまで凝ってはいない。
駅前には公衆トイレと御岳インフォメーションセンターがある。
その脇の階段を降りたところが、青梅街道(国道20号線)。
御岳山のロープウェイ乗り場へは、この駅から路線バスが出ているはずだ。
あった。駅前にはスペースがなかったらしく、甲州街道に出てちょっと離れたところにバス溜まりのスペースが小さく用意されていた。
お金を節約したくて時間と体力に余裕がある・・・そんな学生さんなどは、この駅からケーブルカー乗り場まで歩くという。バスだと10分、歩くと45分程度。
ただし、バスの便数は週末で1時間に2本。うまいことバスのタイミングと合わないなら、いっそのこと歩いても良いかもしれない。
(つづく)
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