山上集落の山を行く【御岳山】

たこびより

11:59
「ゴー」という勇ましい音を立てながらお湯を沸かしている人達を尻目に、僕もお昼ご飯を食べよう。ちょうど頃合いとしては良い時間帯だ。

取り出したのは、新宿駅の駅弁売り場で買ったもの。

日本海 たこびより

そうか、今日はたこびよりだったのか。さっきまで苔むした岩を見て心が穏やかになり、すっかり苔びよりだったのに。実はタコだったとは。

よりによって秋田県産。そして海の幸。さて、どういうモチベーションでこの駅弁に臨めば良いのやら。

せめて群馬県とか栃木県みたいな、海無し県の駅弁を買った方が良かったかなあ?

たこびより中身

なにせ880円ですから。

1,000円超えが当然と言わんばかりの駅弁の中で、この「たこびより」は光り輝いておったんですよ。けちくさい?馬鹿をいえ、一体何がどうなれば駅弁に1,500円とか払えるんだ?そんな贅沢が許されるなら、ほっともっとの日替わり弁当を3個一度に買って、豪快に一気に食べたほうがまだいい。

その点この「たこびより」は頑張った。米沢牛とか、牛タンとか、ウニ・イクラといった華やかな食材ではないけれど、その分駅弁としてはお安くご提供してもらったと思う。

だって、東京駅で売っている「チキン弁当」でさえ、850円するんだぞ?(2016年当時。2018年には900円に値上がりしている)

トマトライスと鶏の唐揚げの組み合わせ駅弁。以前これを食べた時、「しまった、買うんじゃなかった」と思ったものだ。味は悪くないんだけど、旅情がない上に値段が割高。よっぽど空腹でも無い限り、わざわざ買う理由が見当たらない。

ちなみにこのチキン弁当、半世紀にも及ぶロングセラー商品であるのに加え、今上天皇が好んでお召し上がりになるのだそうだ。馬鹿にしちゃいけない食べ物ではあるんだけどね。

伸縮する箸

良くできているものだなあ、普段駅弁を食べないから、箸のギミックに驚いた。

箸が特殊警棒のように伸び縮みするんだな。根元の部分は半透明樹脂製で、食べ物に触れる先端部分は木でできている。

ちゃんと完全に伸ばしきっておかないと、食べている最中に箸がしゅるしゅる・・・と縮んでしまい悲しい思いをする。しっかり引っ張ってから、食べよう。

弁当の奥にある黒い水筒には、家でドリップしたコーヒーを入れて持ってきてある。

本当は、現地でドリップした方がカッコいいんだろうけどね、面倒なんだよ荷物が増えて。そしてゴミも増える。インスタントコーヒーじゃないなら、使用済みの粉がゴミになる。

ちなみに、アウトドアブランドのモンベルのカタログを見ていると、アウトドア用の野点セットが売られている。つまり、野外でお抹茶を点てるためのお茶碗やら茶せんなど、一式だ。コーヒーを淹れるだけでもかなりのものだけど、お抹茶までやるとなると相当な変わり者だ。

いつかやってみてもいいけど、さすがに日帰り登山の時だけだろうな。山中一泊とかで荷物が多い時に、お抹茶茶碗なんて持ち歩きたくない。

ロックガーデン

12:12
たこびよりを食べ終わったところで、早々に出発する。

小一時間くらいここでのんびりして、山の空気を肺一杯に取り込むのも悪くない。でも、冬なのでじっとしているとだんだん体が冷えてくる。これまでにかいた汗が冷えるだけでなく、外気温そのものが寒いからだ。

寒いのを我慢して、「せっかくここまで来たんだ!せめて・・・せめて30分間でもここに滞在して、『ゆっくり山の中で時間を過ごしました。ええ、良いリフレッシュになりましたよ』ってにこやかに語るんだ!」とガタガタ震えていたのでは、やせ我慢にもほどがある。

寒く感じる前に行動を再開したほうがいい。

というわけで、あずまやを後にして、さらに川沿いの道を登っていく。

苔と川

12:14
解説看板に書いてあった「奇石怪石」には全く出会わないのだが、その大げさな表現はとにかく岩が本当に美しい。いや、性格に言うと「苔むした岩が」美しい。

ハアハア息が上がらない程度の、気軽な山道を歩いているというのも素晴らしい。息も絶え絶えなら、とてもこんな光景を愛でる余裕がない。

苔むした倒木

12:17
倒木までびっしりと、まんべんなく美しい苔。

ロックガーデン

こんな感じで、細い川に沿って岩が苔むしているのです。

そっと、ひそやかに、心地よい空間。

謎のテント

12:18
そんな中、テントが一張、歩道の傍らにあった。なんだ?あれ。

ここはキャンプ地ではないし、勝手にキャンプを行うにしたってあんまり都合が良い場所ではない。何の目的なのだろう?

テントが張ってある場所の下は石垣が組まれていて、何やらあの場所にはちゃんとした意味があるようだ。

綾広の滝

12:19
テントの存在が気になりながら先に進むと、滝が見えてきた。

綾広の滝

12:20
綾広の滝。滝の手前に、鳥居が建てられている。修験道の場になっているようだ。

「奉納禊乃門」と書かれた石碑が傍らにある。あ、これは「鳥居」じゃなくて「禊(みそぎ)の門」なのだな。つまり、ケガレを取り除くためにこの滝がある、とうわけか。

この「禊乃門」、後で知ったのだけど由緒あるものではないそうだ。昔は観光客が捨てた瓶の破片が川底に沈んでいたりして、修行者が裸足で歩くのが危険な状態だった。そのため、「ここからは神聖なる場所ですよ」ということを示すために設置したものだそうだ。

綾広の滝

確かに、滝行をするにはちょうどよさそうだ。滝壺が深いわけではないので、歩いて滝の直下まで行くことができる。

御岳山の滝行についてちょっと調べてみたが、当然のことながら神道式の滝行となる。僕が以前高尾山で受けた滝行(真言宗系)とはやり方が違うらしい。

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ここで滝行を行う人は、先ほど見た宿坊に泊まり、宿坊ごとにこの滝を訪れ、行を行うようだ(全ての宿坊が滝行を行っているわけではない)。

また、ちゃんと修行経験のある先達と同伴であれば、特に断りなく滝行を行うこともできるようだが、正確な情報は不明。修行場にはちゃんとルールがあるので、興味がある人はちゃんと確認をするようにしよう。

階段を登る

12:21
綾広の滝から先は、滝を巻く形で道が続く。坂が一気にきつくなる。

テントを見下ろす

先ほどのテントは、滝行をする人が着替えたり荷物を置いておくための場所だったらしい。

七代の滝の方が水量豊富で、滝行には向いている。しかし、着替える場所がないため、女性の滝行体験者がいると観光客などを人払いしなければならず、なかなか利用が難しいのだそうだ。そのため、こちらの綾広の滝で行うことが多いという。

綾広の滝を見下ろす

12:23
綾広の滝を見下ろしたところ。ミニチュアを見ているかのようで、面白いアングルだ。

(つづく)

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