2016年における登山の目標は、「日帰り登山を何度か繰り返し、なまった肉体と精神を目覚めさせ、最後に一泊二日の山小屋登山を敢行する」ことだった。具体的には、南アルプスの仙丈ヶ岳をターゲットにしていた。
しかし、狙っていた日程で天気が悪かったり、こっちの都合が悪かったり、何やら完全に時期を逸してしまった。気がついたらもう10月。ああ、山小屋が今シーズンの営業を終えていくよ。
山小屋の冬じまいは早い。
わざわざ山中に小屋を作るくらいだから、当然山奥にあるし、標高が高いところだ。そうなると、10月をすぎればすでに下界の初冬に相当し、営業が終わってしまうのだった。
仙丈ヶ岳界隈の山小屋もそうで、結局今年の登山は断念をせざるをえなかった。
天を仰ぎ途方に暮れる。どうしたものか。折角だから百名山は登っておきたいけど、かといって急に心の準備ができない。それ以前に、交通機関の準備もできない。
「遠出をしないで、近場の百名山」となると、レンタカーで登山口にアプローチしないといけないものも多い。レンタカー手配は急にはできないので(安く済ませるために勤務先の福利厚生部門経由で手配するので、一営業日前には予約を入れないと間に合わない)、「よし、明日登山だ!」と即断即決は無理。じゃあ、どうすりゃいいのよ?
・・・そこで思いつたのが、ラストパラダイス、公共交通機関で行ける「天城山」だった。
伊豆半島の中央にある山。正確に言うと、「万二郎岳」「万三郎岳」を中心とした山塊だ。
温暖な伊豆半島なので、冬の登山でもいいや、と思ってお取り置きにしてあった山だ。しかしもう、贅沢は言ってられねぇ。今年、10月だけど登っちゃうことに決めた。これで、2016年度の日本百名山登頂は終了。おかでん42歳、51座登頂ということでフィニッシュとなる見込み。
2016年10月15日(土)
05:33
早朝、まだ夜が明け始めた時間に家を出る。
今回は、伊豆半島の東側、「伊東」からバスに乗って中腹まで向かい、そこから登頂を開始する予定だ。そして、ずっと主脈を縦走し、最終地点は天城峠を予定している。
アップダウンはそれほど多くないものの、なにしろ伊豆半島の背骨にあたる天城峠までの水平距離が長い。正確な数字は覚えていないけど、確か17キロだったと思う。
ピークハントだけして、今来た道を戻れば早い。しかしそれだとボリューム感が足りなくてなんとも物足りない。せっかく伊豆に来ておいてこれはあんまりだ、という楽ちんな登山となる。
「百名山スタンプラリーのためには、リフトでもなんでも楽をしてやるぜ」というモラルもへったくれもないスタンスの僕でさえ、「いや、せっかくだから縦走しようよ、距離が長いけど」と思ってしまう。そういう山。
そのかわり、長距離になるので時間がかかる。だから、早朝発にならざるをえないのだった。
10月ともなれば、日没が思った以上に早くなっている。うっかり道に迷ったら、あっという間に日没お先真っ暗、だ。早く行動開始をするに越したことはない。
05:43
今回の荷物。日帰り登山にしては相変わらず大げさだな、と思う。38リットルザックだから。パッキングが上手い人なら、このザックで一泊二日のテント泊くらいできるだろう。
来シーズンには、20リットル台の小さな、日帰り用のバックパックを買おうと思った。
06:22
まず向かったのが東京駅。
東伊豆、しかも伊東ならば、東海道本線で熱海まで行って、そこから伊東線で伊東というのが早い。または、新宿から小田急線に乗って、小田原・熱海経由という手もある。
06:27
しかし、今回はなにしろ時間がないので、新幹線を使うことにした。日帰り登山で贅沢な!と思うけど、こうするしかないのよ、マジで。
伊東駅から、天城山の登山口にあたる「天城高原ゴルフ場」行きのバスは、一日数本しかない。そして、天城峠までの縦走を考えるなら、一本目の07:55発に乗る以外、選択肢がない。なにしろ、その次の便は10時代だからだ。
自宅を早朝に出て、07:55に伊東駅到着を目指すとなると、新幹線しか打つ手がなかった。前泊のホテル代・ネカフェ代が浮いたと思って、新幹線のコストは甘んじて受け入れよう。
07:23
熱海駅で新幹線を降りる。あっという間に到着するので、旅情もへったくれもない。
ここで伊東線のホームに向かい、伊豆急下田行きの電車に乗り換え。
昔、このホームにあった売店は、東伊豆の温泉街に向かう団体旅行客向けだったのかやたらと酒を売っていたものだ。で、まんまと社員旅行でこのホームを使った我々は、すでに泥酔状態だったけどさらに酒を仕込んだものだ。今はもうそのお店はなくなっている。
今思えば、車両の半分くらいを、酔っ払ったおっさんたちが占領してわあわあやってるんだから地獄絵図だ。
07:47
20分ちょっとで、伊東駅到着。
ここまでがJRの路線で、ここから先、伊豆急下田までが私鉄の伊豆急行線になる。
伊東の位置関係はここ。
ここから、伊豆半島のど真ん中を目指すことになる。しかも一番幅が広いところの。
もちろん、途中まではバスで行くので、「海沿いから内陸まで歩いて移動する」わけではない。とはいえ、地図を見ていると身が引き締まる思いだ。
帰りは、天城峠のバス停から修善寺にバス移動となる。ここだって、ダイヤが薄い路線なので、タイミングが悪いと山中に取り残されてしまう。どんどん前へ進んでいかないと。
07:48
伊東駅駅前。
普通の駅前とちょっと景色が違う。ロータリーになっていない。あれ?バスの停留所は?
バス停は駅の端にあった。
面白いことに、バスは縦列駐車でないということ。駐車場に車を停める時のように、バスはバックしながらバス停にやってくる。十分な場所を確保できなかったのだろう。
バス停の脇に、昔ながらの立ち食い蕎麦屋があった。ホームと駅舎の外、それぞれから注文ができるようになっている。ホーム側カウンターと駅舎外側カウンターに挟まれる形で、厨房。
ここで、バスがくるまでの間、慌ただしく蕎麦を食う。登山前のエネルギーチャージだ。
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