13:59
八丁池到着。
「えええ・・・」
池に向けて歩を進めながら、その景色に唖然とする。
これまで、山の中をとぼとぼと、いや違った、てくてくと歩いてきたけど、まさかこんな大きな池が出てくるとは。
「まさか」もなにも、当然ルートの予習はしているので、ここに池があるのは知っている。
「聞いてないなぁ。こんな神秘的で素敵な池があるなんて、聞いてないなあ」
思わず声が洩れる。それくらい、この八丁池は静かに、大きく、深く、存在していた。
こんな池なのに、登山客・観光客の姿がない。正確にいえば1名いたのだけど、それだけだ。この大自然を前に、登山客1名+自分なんてちっぽけなものだ。
池、というのは大抵観光俗化著しいものだ。いや、全ての池がそうだとはいわないけれど、僕のような都会人が訪れる池というのは当然観光地の池だ。そうなると、護岸工事はきっちりされているし、沿岸にはみやげ物屋があるし、湖面にはスワンボートが浮いていたりする。そうでなければ、ダム湖だ。作りもの感バリバリ。
それがどうだ、この八丁池。自然にできた池の見事さよ。
もともと、池の周囲が「八町」ある、ということで名づけられたらしい。でも実際はそんなにはないとか。
火山の噴火口という説もあったけど、その説は今は否定されているとのこと。いっそのこと、ここが巨大な温泉露天風呂だったら最高なのに。
昔は、冬になるとこの池が凍結して、天然のアイススケートリンクになったという話だ。楽しそうだけど、ここまですべりにくるのはずいぶん大変だ。なんだかこの光景を見ると、「ああ、登山は終わりだ」とほっとしてしまいそうだが、天城峠のバス停まであと2時間以上かかる。
八丁池口、というバス停がある。八丁池の最寄りになるのだけど、それでも徒歩90分。ひたすら、遠い。なお、このバス停は天城街道から外れたどん詰まりのところにあり、季節限定でわずかにバス便があるだけだ。今日は、運行はなかった。
※2017年からは、伊豆急行河津駅または修善寺駅から、八丁池口行きのバスが一日数便ずつ運行されるようになった。ただしこれも季節便。
天城峠から八丁池口への道は、一般車両通行禁止の道。マイカーハイカーにはちょっとハードルが高い場所となっている。そのおかげもあって、ごらんの景色を独り占め・・・正確にいうと、別の人も近くを歩いているんだけど・・・することができた。
ネッシーがいそうだ、とか「アナタが落としたのは金の斧ですか?」と聞いてくる女神様が住んでいる、という気配はなかったけど、とても気持ちの良い空間。
八丁池で記念撮影。
服の上下ともに、まだ太っていた頃に買ったXLサイズなのでブカブカだ。どうにも収まりが悪く気に食わないので、来シーズンは一回り小さな服を新たに買おうと思う。
14:03
池を、反時計回りに歩いていく。
岸との境界線には、杭が打ってある。ここが境だよ、と強調しておかないと、ギリギリまで近づいて、足を滑らせて水没する人がいるからだろう。
14:04
大きな看板と、分岐表示が見えてきた。
昭和天皇行幸記念碑がある。
天城山縦走路案内板。
ここからは分岐がいろいろあるので、ややこしくなる。
今回僕が進むのは、昭和天皇が往路として利用した「上り御幸歩道」だ。そのほかにも、「下り御幸歩道」、「水生地歩道」、「藤ヶ沢歩道」、「佐賀野入歩道」、「寒天林道」・・・といろいろだ。うっかり違った道に迷い込んでも、顔が青ざめるほどの道迷いにはならない。とはいえ、みすみす変なルートを取る気はない。確実に、天城峠バス停を目指したい。
なにしろ、そろそろバスの時間が迫ってきている。躊躇してはいられないぞ。
14:05
「水生地」と看板がでているルートが、「下り御幸歩道」。
水生地、八丁池、天城峠とかかれた看板。
いよいよ、天城山縦走の終わりを感じさせるラインナップ。山の名前が出てこない。とはいえ、まだまだ先は長い。
まだ14時なのに焦り気味なのは、それくらいバスの時間がタイトだからだ。
コメント