2020年9月/コロナ時代の静岡にひっそり帰省する

20:27
部屋にあるテレビは壁掛け型で、その分部屋がすっきりとした印象だ。

ビジネスホテルでありきたりな、「ちょっとした作業ができるようなカウンターテーブルがあって、その上にテレビが乗っかっていて」という作りではない。

こういうちょっとした変化を見るのは楽しい。「ああ、時代は移り変わっているな。ビジネスが時代の流れをキャッチアップしてるな」と感じるのは僕にとって大好物だ。

まだその点だけにおいては、老害化していないという自負がある。

老害というのは、商売における新しい取り組みに対して「使いづらい」「分かりづらい」「昔の方が良かった」と悪口を言う人達のことだと僕は理解している。この際、「若い人の取り組み」であるかどうかは問わない。そうやって世代間闘争を招くつもりはなく、単に新しいものをちゃんと受け入れるだけの好奇心を持ち続けようぜ、というのが僕の主張だ。

スマホ登場以降、あらゆるものが平面化しタッチパネル化していった。「ツマミ」とか「スイッチ」というのは随分とタッチ操作やリモコン操作に置き換えられている。

テレビに表示されている、ホテルの館内案内はまさにそうで、紙の説明書でない分、リアルタイムに情報を更新できる強みがある。

ほら、画面下には今日と明日の天気予報が表示されているし、メインメニューの中には「コロナ対策」という項目がある。

昔ながらの宿だと、重たいファイルに、クリアファイルで各種資料が綴じられているものだ。いちいちそれを見ようとする人なんていない。その点、このテレビ画面は視認性が高くていい。一応見てみようという気になる。

いっそのこと、部屋の明かりのON/OFFやモーニングコールなんかも全部この画面でコントロールできればいいのに、とさえ思うが、そういう基本動作をわざわざIoT化するメリットはホテルにも客にもなさそうだ。一見さん客が多いことを考えれば、操作法は簡便であればあるほどいい。

「コロナ対策」のページを見てみる。

パワーポイントで作ったかのような画面が表示されて、ちょっとおもしろい。

つい、当然のようにこの画面を見てしまうけれど、文字列がセンタリングされているというのはワープロ登場以降の文化で、流行らなくなったり流行ったりを繰り返している気がする。

1階ラウンジの混雑状況が画面で見ることができるのは便利。

コロナ時代で、人との密接は避けたいという希望があるだけじゃなく、ビジネスホテルの朝食会場ってやたら混んでいるときがあるので平常時でも助かる。

同じく、風呂に関しても混雑状況が画面で確認できるのは素晴らしい。

いったいどういうセンサーで混雑状況を検知しているのだろう?と不思議になるが、風呂の場合は中に入るのにカードキーが必要になる。そのログで混雑状況を見ているのだろう。

それにしても、ユーザーインターフェースが洗練されていて心地よい。いまどき流行りのフラットデザインだし、情報が適切な場所に配置されていて目線が泳ぐことがない。

20:59
夕食も食べた、宿も確保した。あとは風呂に入って寝るだけだ。

「風呂に入って寝るだけ」というのは至極の時間だけど、ビジネスホテルにおける「間のもたせ方」というのを僕は知らない。温泉旅館に慣れすぎたからだ。

ベッドに座って、お菓子をつまみながらだべる・・・というのはちょっと気分が盛り上がらない。畳に布団を敷いてその上でグダグダするならともかく。

そもそも、ホテルの部屋というのは暗い。あんまり会話を楽しむ空間としては設計されていない。

というわけで、夜の静岡駅前を探索するため、外に出てみることにした。お風呂に入っちゃうと、その後改めて外出する気にならないからだ。

まずホテルのすぐ近くにある場所に向かう。「おにぎりのまるしま」というお店らしい。いしは、「朝6時半から営業していて、昔は朝からここでおでんを食べたものだ」という。

「え?おにぎり屋さんなのにおでん?」

と聞き返すと、

「おにぎり屋さんでもおでんを売っているのは珍しくない」

と言う。朝からやっているおにぎり屋さん、というのは理解できる。仕事に向かう最中、朝ごはんないしお昼ごはんのためにおにぎりを買うニーズはあるだろう。でも、「おでん」は一体どうするんだ。おにぎりのおかずにするのか?それともその場で食べるのか?

「私はお店で食べてましたよ」

はあ、そういうものか。

「あれっ」

夜に営業していないのはわかっていたけど、営業時間が「朝8時より14時まで」と書いてあった。いしが記憶として持っていた「6時半からやっている」というのは、少なくとも今は違う。

こういうのは、もともとお店の事情で営業時間が変更になるケースと、コロナ時代によって飲食店が営業時間の変更・短縮を余儀なくされたケースの2パターンがある。

特に2020年、2021年頃は後者のケースがとても多く、ほんとうに消費者泣かせだった。Googleにしろ食べログにしろ、営業時間の情報が全くアテにならない。で、お店の前に行って「あれっ、今日はやってないのか!」と唖然とすることが何度あったことか。

いずれにせよ、定休日が「土日祝日」となっているので、明日の朝は営業していない。僕らの朝ごはん候補地は再検討ということになった。

静岡駅の南側は、繁華街と呼べるエリアはかなり限定的だ。

飲食店も、どことなくのんびりとした店構えだ。

東京がピリピリしすぎなんだな、きっと。センスが良い、というのではなく、高い賃料をなんとか取り返さなくちゃ、という必死さがあるというか。

「ファミリー食堂さいとう」といういお店が目に留まる。「さいとう」という文字、なんだか微妙に「い」の字だけ大きく見えるのは錯覚なのか、それとも実際にそうなのか、しばらくじっと眺めてしまった。

食品サンプルが店頭に飾られているのを見るのは久しぶりだ。

まだ絶滅危惧種と呼べるほどのレア度ではないけれど、昔とくらべて減ったよなぁ。たとえば、「宙に浮くフォークにからめとられているスパゲティ」の食品サンプルなんて、一体何年見ていないことか。昔は、あのフォークの部分だけがどこかに行ってしまって、単にスパゲティが宙に浮いているという謎のサンプルがあちこちにあったものだ。

ラーメン500円、焼肉定食750円などと駅前価格にしては相当廉価。

気になるのは「ラーメン定食」なるものが存在することだ。「やきそば定食」もある。やっぱりご飯とお味噌汁がつくのだろうか?やきそばにお味噌汁は理解できるが、ラーメンにも?

「ラーメンぎょうざセット」が800円で存在するので、「ラーメン定食」はそれとは別ものらしい。

「定食」って面白いよな。せんぜん定まっていないのに、各店舗めいめい好き勝手に「定食」を名乗る。

ズバリインパクト勝負の店名、「魚より肉派」。

文字の黒さが際立つので、なにか説得力と圧力を感じる。

店名は「タベスギータ」というらしい。そして店頭にはやたらとデカい白暖簾がぶら下がり、そこには「肉炉端」と書いてあった。いちいち何から何までハイカロリーなプレゼンテーションだ。

じゃあこのお店は魚を置かないで肉ばっかりなのか?というと、メニューを見る限りそういうわけではなさそうだ。ホッケや鮭だって食べることができる。

メニューには「こぼれスパークリング」の文字が。ほんとうにトゥーマッチ感が強いお店で、勢いがあって楽しい。

(つづく)

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • おじまるです、お久しぶりです。
    今回は地元静岡ということで、興味深く見ています。
    「まるしま」さん残念ながら、廃業されました。
    奥様がおっしゃるとおり、昔は6時半から開いていましたね。
    静岡のおにぎり屋には、たいてい「おでん」がありますね。
    静岡人はそれを普通と思ってます(笑)

  • おじまるさん>
    あー、まるしま、廃業でしたか。残念。
    いしが楽しそうに思い出話を語るので、いつか訪れてみたかったのですが。

    あと、いしが「夏、プールに行ったらよくおでんを食べていた」と言っているのは、おそらく大浜公園プールのことなんだと思いますが、それも今は閉まっているようですね。これもまた残念。

  • FDA、なんと小松にも来てたことあるんですよね。
    「誰が使うねん(w」と言ってたら数年で撤退しちゃいましたけど。

    今はチャーター便のみが飛来するようになりましたが
    小松空港の手荷物受取所には『FDA』の名札が輝いております。

    チャーター便のスケジュールまで公開してる珍しい会社でもありますね。

  • ティータさん>
    FDA、面白い航空会社ですよね。
    これまでいくつもあった地方航空会社は、経営の多くを羽田便に頼っていたと思います。なので、JALとかANAに戦いを挑まざるをえなかった。
    しかし、静岡空港という場所柄、羽田便を就航させるメリットがない。なので、静岡からその他地方空港、または地方空港から地方空港、という独自性の強い路線が生まれている。
    今後どうなるのか楽しみです。

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