11:19
三保の松原の防砂林の奥に、昭和の時代からずっと営業していると思われるお店があった。
海の家的な店構えで、「おみやげ」「みそおでん」とひさしに書かれている。
「ああ、ここでおでんを食べましょう」
いしが水を向けてくる。へえ、こういうところでおでんが売られているのか。
「はんぺんが黒い」「魚粉(だし粉)や青海苔をかけて食べる」といった独特の特徴がある、通称「静岡おでん」。「ひみつのケンミンSHOW」などテレビのバラエティ番組で取り上げられて知名度は高い。でも、ああいうテレビ番組はごく一部のマニアックなご当地グルメを針小棒大に語ることがあるので、話半分に聞いておく必要がある。
しかし、こうやってさりげないお店でさりげなくおでんが売られているところを見ると、本当におでんは静岡県民にとって当たり前の食べ物らしい。
いしが言うには、「おでんといえば、夏に市民プールで泳いだときに食べるもの」なのだそうだ。市民プールの売店でおでんが売られていて、そこで小腹を満たすのがおでん。へえー。
「しずおかおでん」と書いてある一方で「みそおでん」と書いてある。静岡おでんは普通に醤油味もあるので、このお店はみそおでんを特に売りにしているらしい。
あ、なるほど。みそおでんってこういうことなのか。
鍋にはおでん種がびっしり入っている。つゆは東京とよく似たしょうゆだれだ。しかし、黒光りする味噌だれが入った壺が鍋の一角を占めており、オーダーが入ったおでん種は提供直前にこの味噌壺にドボンとつけられる。へえ、面白い食べ方をするんだな。
なお、静岡おでんはすべての食材に串にささっているのが特徴なんだとか。あ、言われてみればたしかにそうだ。トングでつかむ、というやり方になっていない。コンビニおでんでも採用すればいいのに、と思えるスタイル。
「もつ」と「しらたき」をいしが頼む。
オーダーが渋い。
それにしても黒いなー。まるでうなぎの蒲焼のようだ。かなり癖の強いビジュアル。なるほど、これは確かにご当地グルメだ。東京でも、僕が育った広島でも、こういうのは見たことがない。
へえ、なるほどねえ、と感心しながら食べる。
1本100円。1串食べたって、大してお腹は満たされない。だからこそ、いしが子どもの時、プールに行ったときのおやつだったのだろう。
11:25
車を停めた駐車場のすぐ脇に、新しくて立派な建物が建っている。静岡市三保松原文化創造センター 、通称「みほしるべ」だという。無料なので中に入ればよかったのだけど、このときの僕らはなぜか中に入らずにスルーした。
三保の松原とその周辺を紹介するための建物らしい。
静岡市、お金持ってるな。日本平のゆめテラスも立派だったし、ここもそう。
そういえば、富士山が世界文化遺産に登録された際、三保の松原も「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」として世界遺産登録されたんだっけ。その関係もあるのだろう。ええ?三保の松原と富士山ってかなり距離が開いてますよ?と思うが、いやいや、三保の松原から見た富士山が古来から絵画としてよく描かれていますよね?ということで「芸術の源泉」に該当するのだった。
羽衣の松からずっと一直線、松の並木道がまっすぐ伸びている。
神の道、という名前らしい。すごい名前だ。
このまっすぐに伸びた道の先に何があるのかというと、駿河国三之宮 御穗神社。
天女伝説がある羽衣の松から神の道を歩き、神社を詣でるというのはちょっとした歴史ロマンだ。今こうやって記事にするために周辺のことを調べてみて、ようやく「ああ、この神の道を歩けばよかった」ということに気づく。そう、このときは「へー、真っ直ぐな道があるんだな」と思った程度で、歩かなかったし神社にもお詣りしなかった。
ここ最近、ずっと情報過多の事前学習しまくり旅行はしたくないと思っている。調べだすときりがないからだ。「るるぶ」のような旅行ガイド本が頼りだった時代とはうってかわり、ネットで無限に調べることができる。かといって、まったく調べないのが良いのかというと、そうでもない。今回のように、「立ち寄っておけばよかったー」と後で残念に思うような見落としが発生するから。
12:15
三保の松原から静岡市を横切って大移動。次に到着したのは、用宗。僕はこれまでこの地名について全く知らなかったのだが、「もちむね」と読むとのこと。
なんだその地名は、と思うが、生しらすで有名な場所なんだそうだ。ああ、そういえば有名な場所だよな。確かGW頃はすごい混むんだっけ。漁期が限られているので、その時期には天丼目当てで・・・あれ?生しらす?天丼じゃないな。
「由比」の「桜えび」とごちゃ混ぜになっていた。違う違う、「用宗」の「生しらす」だ。
ええと、やっぱり知らなかった。生しらすって、関東界隈だと江ノ島のイメージがある。
そもそも用宗ってどこだよ、ということで思わず地図の写真を撮ってしまうレベル。静岡と焼津の間、安倍川河口の西側。
12:16
港の片隅にある青いコンテナ。しらす丼が食べられることで有名な「どんぶりハウス」がこれだ。
生しらす丼を求めて、県内外から多くのお客さんが押し寄せ、長蛇の列ができる・・・という触れ込みだったが、あれれ、全然並んでいない。
見ると、メニューで「人気No.1」と書かれている行のところが紙で隠されている。
やられた!生しらす丼、今日はないらしいぞ。
「本日しらす漁が出漁しない為生しらすはありません」だって。
そうなのか。日曜日はお休みだったのか。
しゃーないので、人気No.2の釜揚げしらす丼をお願いする。700円。
たぶん、わかる人にはわかるレベルで、「いやあ、やっぱり用宗のしらすは釜揚げにしても旨いよ!」と思えるんだろう。でも、しらすを普段からあまり食べていないので、用宗で食べたしらす丼は普通の味に思えた。
とはいえ、これだけのしらすがご飯の上に載っているのは壮観だ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (4件)
おじまるです、お久しぶりです。
今回は地元静岡ということで、興味深く見ています。
「まるしま」さん残念ながら、廃業されました。
奥様がおっしゃるとおり、昔は6時半から開いていましたね。
静岡のおにぎり屋には、たいてい「おでん」がありますね。
静岡人はそれを普通と思ってます(笑)
おじまるさん>
あー、まるしま、廃業でしたか。残念。
いしが楽しそうに思い出話を語るので、いつか訪れてみたかったのですが。
あと、いしが「夏、プールに行ったらよくおでんを食べていた」と言っているのは、おそらく大浜公園プールのことなんだと思いますが、それも今は閉まっているようですね。これもまた残念。
FDA、なんと小松にも来てたことあるんですよね。
「誰が使うねん(w」と言ってたら数年で撤退しちゃいましたけど。
今はチャーター便のみが飛来するようになりましたが
小松空港の手荷物受取所には『FDA』の名札が輝いております。
チャーター便のスケジュールまで公開してる珍しい会社でもありますね。
ティータさん>
FDA、面白い航空会社ですよね。
これまでいくつもあった地方航空会社は、経営の多くを羽田便に頼っていたと思います。なので、JALとかANAに戦いを挑まざるをえなかった。
しかし、静岡空港という場所柄、羽田便を就航させるメリットがない。なので、静岡からその他地方空港、または地方空港から地方空港、という独自性の強い路線が生まれている。
今後どうなるのか楽しみです。