フィトンチッドでいこう【赤沢自然休養林】

たぎる人

前回のアワレみ隊企画、「長崎編」のあと、ばばろあがメールで「やっぱり記念写真を撮っておくのはええね」ということをしみじみ語っていた。

いい歳をしたおっさんの集まりなので、記念撮影をしてもきれいな絵面にはならない。「ああ、以前とくらべて老けたな」ということが気になる。とはいえ、そういうのをむしろ積極的に楽しみ、時間の流れを焼き付ける、というのがとてもいい。特に我々は、30年に渡る付き合いだからなおさらだ。

風光明媚なところで、「ワア!きれいだよ!」と写真を撮りまくるのは楽しいことだ。料理の写真を撮るのも、良い旅の思い出だ。しかし、それだけだと、ガイド本や他のwebサイトで見ることができる写真の焼き直しだ。やっぱり、「この景色の中に僕らが実際にいる証拠」みたいなものこそが、写真を撮る意義だと思っている。

とはいえ、「さあ、写真を撮るよー」と声をかけると、どうしても直立不動のポーズになってしまうものだ。今の20代以下の世代だったら、写真慣れしているのでポージングは得意だろうが、40代の連中はそれが苦手。

しかし、直立不動のおっさんほど見苦しいものはないので、しぶちょおと「動きがある写真を撮らないとね」と話をしていたところだ。

で、それをまさに実践中のしぶちょお。

高飛び込みをする瞬間の選手、みたいなポーズになっていて、「森林鉄道に乗車しています」というシチュエーションには全くそぐわない。でも、席に座ってニッコリ微笑んでます、みたいな毒にも薬にもなりゃしねぇ写真よりも、こっちの方が遥かにいい。後々記憶に残るのはこういう写真だ。

森を走る

09:39
森林鉄道はゆっくりと動く。

乗り心地が特に変わっているということはないのだけど、線路幅が狭い路線なので、小回りがきく。キューッとキツめのカーブを曲がっていくので、楽しい。

あと、もちろん風景も楽しい。緑アンド緑。

眼下に、歩道が見える。

とても気持ちが良い

やあ、これはいい。

川の流れ

09:42
緑ばかりでなく、川も同時に楽しめるのがいい。

昨日歩いた歩道のすぐ脇を走る森林鉄道なので、見える景色は一緒。でも、鉄道に乗りながらだと、また違って感じる。風を感じながら、だからだろう。

あと、徒歩だと「気になる景色があれば、立ち止まることができる。引き返すことだってできる」という自由があるけど、鉄道の場合はそれがない。一期一会だ。だから、ますます綺麗に感じるのかもしれない。

御神木を切り出した跡

09:44
柵で囲まれた切り株があった。

古井戸があって、転落防止のために柵を設置しています・・・というものかと思ったけど、違う。脇にある看板には「御船代祭(みふなしろさい)跡」と書いてあった。

伊勢神宮の御神木として伐採されたのだろうか?

でも、しぶちょおは違う、という。御神木は、並んだ二本のヒノキを独特な技法で切り倒すのだそうだ。しかも、その二本の木がXの字に交差するように切り倒すんだと。

この御船代祭跡、の木は対になる木がない。

後で調べてみたら、「御神木を納める、『御桶代(みひしろ)』を納めるためのもの」が御船代だった。なんだこのマトリョーショカ構造は?それだけ、御神木というのは大事に大事、扱われているということだ。

「御神木の容器の、さらにその容器」用の木材を切り出すだけでもお祭りになるし、こうやって切り株が誉れ高いということでちゃんと保存されている。伊勢神宮に使われる木材というのが、いかにすごいのかがよくわかる。

ちなみにこの御船代祭跡は、昭和60年、と看板に書いてあった。1985年だ。

終着点

09:46
15分ほどで、電車は終点までやってきた。ここで折り返しとなるため、牽引していたディーゼルカーはいったん切り離され、先頭から最後尾に移動した。

あ、ここの線路が複線になっているのはそういう意味があったのか。

付け替え

09:47
貨車とディーゼルカーが接続。

鉄道好き、というほどではないのに、こういうイベントごとがあると絶対見たくなるよな。

結合

で、写真も撮る。

やっぱり、「ドッキング」は男のロマンだと思う。いろんな意味で。

お見送り

09:52
ディーゼルカーの前後付け替えを終えた森林鉄道は、出発していった。

我々はこれからトレイルするので、お見送りする立場。

お見送り

こういうときだけは愛想が良くなり、必死に乗客たちに笑顔を振りまき、手を大きく振ってお別れだ。

乗客の半分くらいはここで下車してしまい、川沿いの道を歩いて駐車場まで戻るようだ。

僕らのように、ここからさらに山奥に向けてトレイルする、という人はいなかった。

トレイルルートを歩く

09:57
赤沢自然休養林にいくつもあるトレイルルートのうち、もっとも森の奥を歩くことになる「冷沢(つめたさわ)コース」に向かう。

線路上に停めてある「トイレ貨車」の脇をすり抜け、線路沿いに進んでいく。

線路の上を歩いている写真。そういえば2017年は、線路に入り込んで記念撮影をして、SNSにそれを掲載した女性芸能人が叩かれていたっけ。我々がまさに今それを実践中だ!

といってもここは廃線だし、なによりも、「歩道ですよ」という証拠として線路の間に木道が作られている。

この線路、取り外さないのだろうか?鉄の塊だから、そのまま放置しておくにはもったいない。でも、外して運搬する手間を考えたら、このままの方が楽なのかもしれない。

または、いずれは森林鉄道を延伸・・・?いや、さすがにそれはないと思うのだけど。

数百年経って、このあたりが今以上に自然豊かになって「休養させなくてもいいんじゃないか」っていう雰囲気になったら、また林業が大復活・・・?いや、残念ながらそれは難しいと思う。

熊出没注意

熊出没注意、の看板。ばばろあがびびる。

「おい、熊が出る、って書いてあるで!」

そういえば、朝ごはん前にお散歩しようぜ、という提案を昨晩したときも、

「朝は熊がおるかもしれん」

と尻込みしていたっけ。確かに、早朝は熊が餌を求めて活発に動く時間なので、その心配は間違っていない。

熊に対して注意を払うに越したことはないけど、あんまり心配しすぎる必要はないと思う。というわけで、そのまま直進。

線路はここでおしまい。この先は、遊歩道になる。

ウッドチップが敷き詰められている

09:59
冷沢コースを歩く。

なんて快適な道なんだ!

「たまらんのぅ」と思わず口から出てしまう、それくらい良い道だ。

階段がきっちり作り込まれている。山の一部を切り開いただけの登山道とは段違いだ。

段違いといえば、この階段は非常に気持ちのよい段差になっていて、歩きやすい。登山道の多くは、「人の歩きやすさ」よりも「地形がこうなんだから文句言うな、人間ども」と言わんばかりの段差になっていて、歩きにくいものだ。そして、人に踏まれ、靴で削られ、風雨にさらされた結果、段差周辺の土がえぐれてしまい、ますますあるきにくい。

一方この歩道はどうだ、歩きやすい段差だけでなく、「ここからはみ出て歩かないでね」ということを暗示する、歩道と自然との境界となる木が歩道脇にある。

さらに驚くべきは、歩道の地面にずーっとウッドチップが撒いてある。これが素晴らしい。ふかふかした歩き心地で膝への負担が少ないし、雨が降ったあともぬかるまない作りになっている。これだと、人が歩くことによる地面へのダメージも減らせるだろう。

なんて手間暇かけてメンテナンスをしているんだ!と驚かされる。

森

そしてこの道。わかるでしょう?写真を通じてでも。この心地よさを。

傾斜はさほどキツくなく、アップダウンがあるとはいえ負担感はほとんどない。息が上がるようなことはないので、仲間と雑談しながらの散歩が余裕だ。

森

10:01
こういう森って、ありそうでなかなかないものだ。

まず、日本の山で多い杉の人工植林がされたエリアは、もっと木が密集していて薄暗い。そしてじめっとしている。

植林されていない雑木林の場合、下草がごちゃごちゃ生えていて、うっそうとしてしまっている。

広々とした空間、適度な間隔の木、美しい木漏れ日。そして快適なトレイルルート。

このルートなら、スニーカーとデニム、といった山をナメた格好でも全く問題なく散歩できる。実際僕らは、飲み物さえ持たずに歩いている状態だ。

なお、六花亭の「○△□」だけは持参している。これを展望台で食べよう、という話になっているからだ。

森

10:02
さすがに100%、ウッドチップの道というわけにはいかない。普通の登山道っぽい道もあるけど、歩きやすいことには変わりない。

(つづく)

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