
18:09
16時半頃、宿に戻る。しぶちょおが「体調が悪くなった」と浮かない顔をしている。風邪をひいてしまったのか、何なのか。
風呂に入る、と言い残し、彼は長時間風呂に浸かっていた。汗をかいて、体温を上げて、この体調不良を乗り切ろうとしていた。
結局、フィトンチッドで殺菌効果があったり、リラックス効果はあっても、風邪をひく時はひく、ってことだ。
夕食時間。今日も食堂では宿のご主人のセンスが光りまくりで眩しくてしょうがない。
このご主人、べらんめえ口調で大声で喋る。厨房と食堂をつなぐカウンターから身を乗り出して、食堂にいる客と喋る。初めて聞いたときはぎょっとする口調だけど、温かみがある面白い方だということがすぐにわかる。
だいたい、こんな繊細な料理を作る人だぞ?がさつな訳がない。

他のテーブルでは、我々が昨日食べた料理が振る舞われていた。でも僕らは連泊ということで、違う料理。

しぶちょおのこの顔。
滋味を楽しむ料理なので、一口一口、ちょっとずつ食べては「この味は・・・」とゆっくり舌や歯で確認することになる。今まさにそんなシチュエーション。

一方ばばろあはこんなシチュエーション。
「木曽の酒総ざらいだ!」とばかりに、昨日頼んだお酒も含めて全3種類、登場願っていた。ええと、ナカライさんだったっけ、ナカノリさんだったっけ。ああ、ナカノリさんか。
料理が料理だけに、きっと酒もかなりおいしく呑めたはずだ。こういうしみじみとした料理を前にすると、つくづくお酒が飲めないのは残念に思う。飲みたいとは今更思わないけれど。
ひびさんとお酌したりされたりと、二人で3合を空けたのち、「あれも気になるんよね」と壁に貼られた焼酎のラベルを指差すばばろあ。
「奄美黒糖焼酎 朝日」
と書いてあった。おう、これから焼酎、しかも黒糖焼酎を飲もうってか。やるなあ。
宿のご主人に「本当に飲むの?大丈夫ぅ?」と聞かれるけど、蛋白質は「大丈夫です」と平然答える。昨日、にごり酒4合+ビール1本+木曽地酒を二人で2合という戦績にもかかわらず、今朝は二日酔いもせずに起きている。実際に大丈夫なのだろう。
するとしばらくして、ご主人がお酒を持ってきてくれた。それを見た一同、「えっ・・・」と一瞬絶句すする。
「一人一杯まで!それ以上は頼まれても出せないから!」
とご主人が仰っていたので、何か貴重なお酒なのかな?それにしては「朝日」って普通っぽいお酒なのにな?と思っていた。しかし実物を見て納得。大ぶりのグラスに、いっぱいの焼酎が入っていたからだ。量は・・・どれくらいだろう?1合前後入っている。
たかが1合?いや、焼酎だぞ?これ、度数が30度あるんですが。
まるでお湯割りをした焼酎かのような量に、驚き、恐れる。これはてきめんに酔うぞ?

そばがきを素揚げにしたもの。うまいうまい。



いちいち、宿の周辺で摘んできた葉を下敷きにしたり添え物にしたりという工夫が美しい。

かと思ったら、レタスを塩もみしたものがわっさーと登場したりもする。大胆だ。
そういえば、昨日はここでキュウリの一本漬けが出てきたっけ。今日はレタスできたか。

塩むすびもこれまたうまいんだ、炊き加減が絶妙。

蕎麦米が沈むお吸い物でフィニッシュ。
恐るべし、去来荘。このメシを食べにだけでも来る価値はある。酒飲みならなおさら。

21:36
木曽地酒と黒糖焼酎で足腰をグラグラいわされたはずなのに、案外ばばろあはケロリとしていた。目がトロンとしていつもの饒舌に拍車がかかってはいるけれど、悪酔いという感じではない。
ひびさんに至っては、大してキャラが変わっていない。そういえばこの人、酔ってキャラ変した姿を見た覚えがない。
昨日は雲が出ていて星空が見えなかったけど、今日は見ることができそうだ。全員で外に出てみる。

星空鑑賞。
ものすごい星の数だった。天の川がすぐに見分けられるくらい、満天の星。
しばらく、全員で空をみあげていた。
「横になっても良かったんだけど、ちょっとこの地面ではな」
と話しながら宿に引き上げていたら、しぶちょおが
「赤沢原人、いたな」
という。えっ、何を言っているんだ?
「今さっき、いた」
としぶちょおはニヤニヤしながら言う。まじか。暗闇に紛れて全く気づかなかった。
でも、本当に「いた」のか、しぶちょおが「いたと主張している」のかは、ウラが取れなかった。真相は闇の中に、というのはまさにこのことだ。
(つづく)
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