まずはビールをお願いしたい。その点だけは力強く懇願したい。
メニューには、簡体字の文字の下に英語、そして日本語のルビが振ってあるので日本人でも安心。「百威って珍しいビールの名前だね。上海のものかな?頼んでみよう」と頼んでみて、バドワイザーが出てきてびっくり、ということを未然に防ぐことができる。
実際、後日、別の店で「百威」を注文しようとしてコダマ青年に止められた。危なく上海でバドワイザーを飲むところだった。
ビールの欄のトップに記載されているのが、「朝日啤酒」だったのが意外。これを、アサヒ頑張ってるなあと捉えるか、日本人観光客・駐在員が多い店なんだなあと捉えるべきかはよくわからない。1瓶12元(約174円)。大瓶での提供なので、この価格はさすがに安い。酒飲み天国だ。この地でおかでんが駐在員になったら、半年もしないうちに肝硬変になって強制帰国になるに違いない。ある意味、危険地帯なのでこの国には移住しない方がよさそうだ。
「青島啤酒でいいね?」とコダマ青年に聞かれたので、「おう」と応答。
青島啤酒がいいねと君が言ったから6月12日は啤酒記念日
本当は、メジャーブランドである青島啤酒ではなく、もっと上海の地物ビールがあれば良かったのだが、そういうのは特にないようだ。他にあるビールは、「朝日(アサヒ)」「百威(バドワイザー)」「喜力(ハイネケン)」、そして「大雪碧」・・・ん?待て、「雪碧」って日本語訳が記載されていないが、これはジュースの「スプライト」だぞ。なぜビールの欄に並んでこれが書かれているんだ。
うっかり、これを頼んだら素晴らしくがっかりしそうだ。
「あれ?透明だぞ」
「こっちのビールって、透明なのがあるのか。凄いな」
「ジュースじゃないのか?」
「でも泡でてるし」
「そうか・・・まあいいや、乾杯」
「乾杯。いやあ、喉が渇いていたんだ、ぐいっと・・・」
この後、絶対噴き出すと思う。
ちなみに、「大」のスプライトは18元。なんと、ビールよりも高いのだった。一体どんなサイズのスプライトが出てくるんだよ。逆に言うと、それくらいビールが安いということだ。酒税が安いのだろう。
これらビールの他に、デュベルをはじめとしてベルギービール多数。この店、ビールだけで10種類以上をそろえている。なんて品そろえが豊富なんだ。
コダマ青年が服務員にビールを注文したが、その際に「冷えた奴を宜しく頼むぜ」(意訳)と一言添えていた。中国では、こうやって「冷えた奴を」と強調しておかないと、ぬるい奴が出てくるそうだ。そういえば、池袋にある、お客さんは在日中国人だらけの四川料理店でも同じ事があったな。頼まないと冷えた奴を出してくれない。中国の人は(日本人の感覚からいったら)ぬるいビールがお好みらしい。
届けられたビールは・・・あれ?これが青島啤酒?白ラベルに、「純生」と書かれていて、日本で見かけるものとは全く違う。大体、青島啤酒の大瓶を見るのさえ、初めてだ。日本だと、小瓶の分際で550円くらいに値付けされて、偉そうにメニューの中にふんぞり返っているのが定番。だからおかでんは中華料理屋では滅多な事がない限り青島啤酒は飲まない。憎悪の対象ですらある(とんだとばっちり)。
申し訳ない、話がずれた。で、この「白ラベル」なんだが、やはり国内用と輸出用ではラベルが違うんだな。そういえば「台湾啤酒」も、台湾で飲むものと日本の台湾料理店に置かれているものとではラベルが違う。
何だか、急に青島啤酒が楽しくなってきた。これは珍しい、早速上海の初日夜をこの啤酒で乾杯しようではないか。
だいたい、コダマ青年が無条件に「一人一本ずつ=合計2本」のビールを注文しているのが素晴らしすぎる。最近、こういう「さあ飲むぞ」って奴とシチュエーションが最近はめっきり減ったので、凄くうれしくなる。
「いやビールは最初の一杯でいいから、とりあえず二人で一本」という人、「ビールぬるくなるから、まずは一本頼んで後から追加しよう」とか、そういう冴えない事を言う人が多いからなあ。つべこべ言うな、ビールは素早く大量に飲むものだ。一人一本はぜひ最初から頼もう。
久しぶりの再会となった旧友と乾杯。
・・・あれ。1カ月ちょっと前に、日本で会ったっけ。まあいいや、とりあえず乾杯。
わはは。なんか、いっぱい目から楽しくなってきた。心おきなく酒を酌み交わせる友、そして初体験の土地と料理、しかも辛口の料理だというから、これが盛り上がらないわけがない。このシチュエーションのまま、料理が出てこなくても、そのまま酒が飲めそうだ。
しかしお店は常に先手先手だ。早速一品目が出てきた。オーダーはコダマ青年に一任してあるので、何が出てくるのかは全く分かっていない。注文は当然中国語だし。
ええと、これは・・・バンバンジーだな。棒々鸡絲、12元(約174円)。えー、これで12元なの?結構なボリュームあるぞ。というか、これ一皿を肴に酒飲んだら、それで終わってしまいそうなくらいだ。
蒸し鶏の上にかけられた、唐辛子ソースが食欲をそそる。そうこなくっちゃあうそだ。
コダマ青年は「ああ、辛いなあ」といいながら食べていたが、おかでんにはちょうど良かった。これぞ前菜。食欲をよりかき立てる危険なスパイス。
ただ、さすがにこれはたくさんいらないぞ。四人で山分けしてちょうど良いくらいだ。あらためてすごいボリューム。なお、四人でシェアした場合、お一人あたり3元(約43.5円)となるので、なんとも安くつく前菜なのだった。
テーブルの上に、服務員が何か紙切れを置いていった。
伝票のようだが・・・
なんだかよく分からない伝票だった。何だろう、これ。
われわれが座っているテーブル番号と、われわれの人数に記載があるのはわかる。その下に「米飯」という欄があるのがまず、謎。そして、その他の記入欄も、何の意味があるのかがよくわからない。少なくとも、オーダーを書き留めるものではないし、お会計の時にこれをレジに持っていって精算する類のものでもないような。
「米飯」の欄については、われわれがこの後ご飯を注文した際、「2」と書き込まれていた。他の注文は書かれないのに、なぜご飯だけ数が記入されるのだろう?
なにやらワイルドな料理がやってきた。
「これは定番だな」
とコダマ青年が言う料理は、「孜然排骨(48元=約696円)」。お品書きには、「湖南風スペアリブ」と書いてあり、「お奨め!」と赤字で強調してあった。たしかにスペアリブだが、なにやらたくさんスパイスが振りかけてある。へー、中国でもハーブスパイスって使うのか。
食べ方は至って簡単、本能の赴くままに、骨ごと掴んでしゃぶりつけ。手が汚れるのがイヤー、と言う人は自分の指でもくわえてなさい。
肉食ってます、感が素晴らしい。こういう五感をくすぐる料理って、日本料理の世界ではあまりないので、なんだか血湧き肉躍る。なんのスパイスかと思ったら、これ、クミンですな。だから、シシカバブっぽくもある。唐辛子は一応かかっているものの、それほど辛くはない。これ、もの凄くおいし。量は相変わらず多いので、日本だったら1500円くらい取られてもおかしくない。700円程度でこれが食べられるのだからいいなあ、上海。
ただ、それは物価水準が違う日本人が上海を訪れているからであって、上海人からしたら「48元?高ぇよ、そんなの簡単に食べられねぇよ」と言うとは思うが。
川海老を串に刺したもの。これも湖南料理の定番らしい。湖南料理について調べると、大抵この料理の写真に出会う。「湘味串烧虾(108元=約1,566円)」、和名は「湖南風海老串焼き」だそうで。
川海老って、もっと小さい生き物だと思っていたが、相当でかい。海の海老と見まごうばかりだ。値段が3桁行ってしまっている高額商品だが、その分串の数が尋常ではない。一体何本あるんだ。これ、一人何本食べれば許してもらえるんだ。
注文の単位は、「本」ではなく「斤」だからこんなことになる。ちなみに、一斤は500グラム。つまり、500gの川海老ちゃんがここにてんこ盛りにされているということだ。豪勢すぎる。やっぱり、これは二人で訪れる店じゃないな。
食べ方は、もう面倒なので頭からかぶりついちゃえ、というもの。頭とか殻を外すなんて面倒。素揚げされているので、全部食べても平気なのがありがたい。ピリ辛のソースがかかっているので、コレがまた美味い美味い。
両方ともビールが恋しくなる味で、素晴らしい。値段も安いし、大変にけしからんお店だ。今日何度目かの、「上海に長居すると、絶対体をこわす」との確信。ただ、言葉が通じないので、そのストレスで逆に小食になる可能性もあるが。
「何かとびきり強烈な奴を一つ」
とコダマ青年にリクエストしてあった。こっちの人でもこれは食わねぇよ、というくらい凄い辛い奴が出てくれば幸い。
昔、香港に行った時、四川料理店で顔が青ざめるくらい花椒でシビレた記憶が蘇る。あれだけ凄いのは日本では無理だ。犯罪になる。そんなやつを、ぜひ。
そうしたら出てきたのがこれ、「小炒黑山羊(38元=約551円)」。メニューを見ると、「羊肉の炒め物」という日本語訳がある。いやいやいや、これはどう見ても唐辛子の炒め物でしょう?「唐辛子の炒め物、羊肉添え」くらいが適切な表現。すげえな、太っとくて真っ赤な唐辛子が、輪切りになってどっさり盛り上がっている。まるでプチトマトでも入っているかのようだ。こうやって平然と、悠然としているところが男らしい。こんなの、日本の店で出したら「店の嫌がらせだ」「悪ふざけがすぎる」と客が怒りだしそうだ。
でもおかでんはスタンディングオベーションでこの料理をお出迎え。頼んだコダマ青年は、「うわあ・・・」と腰が引けている状態。
食べてみる。おおう、辛いぜ。素晴らしい。本年度最高辛味賞のノミネート作品だな。意表をついて、実はこれパプリカでした、というハッタリも懸念したが、もう何も考えず、ストレートに唐辛子でやんの。
唐辛子は辛いンだが、濃厚な風味を持つ羊肉が脇に控えているので(あ、違った、羊肉がメインだ)、うまく調和している。ただ、結果的に相当くどい、うっとおしい料理であることは間違いがない。さすがのおかでんも、何口か食べたところで箸が止まった。他の料理も山盛りだし、あれこれ食べるとなると優先順位を下げざるをえなくなってしまったのだった。惜しい、惜しすぎる。
コダマ青年は、辛さをビールで中和できなくなってしまい、「ご飯頼もう」といってご飯を頼んでいた。おかでんも珍しくその案に乗る。味が濃いめなので、ご飯が欲しくなるのだった。
やってきたご飯は、土器というか、素焼きの小さな器に入って出てきた。手のひらサイズでかわいい。すり切り一杯。何の意味があるのかは不明。
少量なので、おかでんのような「最初から最後までビール。何が悪い?」という人にとってもうれしい。「神仙钵饭」というのがメニュー名のようで、2元(約29円)。「滴水洞オリジナル蒸しご飯」と書いてあった。
料理ひととおり出そろいましたー、というテーブルの上。
何がはじまるんです?状態。一体何人前だよ、これ。育ち盛りの男の子でも、これだけの量を二人で食べるのはなかなかな満腹状態になるぞ。ましてや、われわれオッサン二人でこれって、何事?どう考えても無理だ。
どれも美味いんだけど、量が多いんだよなあ、とぼやきながら、優先順位をつけつつ食べる。そうなると、味がくどい羊肉の炒め物はどうしても後回しにされてしまい、結果あまり口にすることはなかった。繰り返すが、大変に美味かったんだが。
一応、棒々鶏だけはちゃんと食べて、後は二人で顔を見合わせて「こりゃ無理だ」と。
味が濃厚なのでさっぱりとビールも良いのだが、濃厚なものには濃厚で対抗、と老酒を頼んでみることにした。コダマ青年が「やっぱり中国に来たからにゃ老酒でしょう」というので、そりゃそうだわ、と。
老酒と紹興酒って何が違うの、と疑問に思うが、「紹興」で作られている老酒が紹興酒。「シャンパーニュ地方で作られているスパークリングワインが、シャンパン。」というのと一緒。
ただ、なぜか台湾では埔里などで作られているお酒を「紹興酒」と銘打って売っているのだが。ありゃ一体なんだ。
ビールでも無駄なガッツで品そろえに力を入れているこのお店、当然老酒も酒類は多い。老酒類は「黄酒」という欄に記載されている。
ちなみに、このお店でもっとも取り扱いが多く、酒類メニューの先頭を飾っているのは「白酒(バイジュウ)」。蒸留酒だ。マオタイ酒やウーリャンイェといった度数50度以上あるお酒たち。コーリャンなんぞを原料にしているので、結構臭い。
おかでんもコダマ青年も、昔一緒に働いていた時に職場で先輩が御用納めの時にこのマオタイ酒を毎年持ち込み強引に振る舞っていたため、「御用納め=マオタイ酒で若手は半殺しにあう」という印象をいまだに持っている。目が覚めたら12月29日の朝の会社応接室だった、とかトイレの便座を抱きかかえていた、という若手続出。それくらい危険な酒だ。ただ、中国では国賓とのパーティーではマオタイ酒で乾杯するくらいだから、決して下品な酒ではない。
「中国といえば老酒よりも、寧ろマオタイ酒あたりを・・・」
と冗談で言ってみたが、お互い顔がひきつってしまい冗談が冗談にならなくなってしまった。すんません、大人しく老酒にしましょう。ボトル一本48元(約696円)。
なお、「白酒」「黄酒」の次に「紅酒」という欄があったので、何事かと思ったら、これはワインの事だった。白ワインも含めて、「紅酒」と呼ぶようだ。へんなの。
結局、老酒飲み始めちゃうとまったりまったりしちゃって、お互いの近況報告だの何だの会話中心になっちまった。食が進まぬ。ううむ。
「食べ物を残すのはもったいない」という信念で35年間過ごしてきたおかでんであったが、さすがにこれはどうにもこうにも。
ただ安心して欲しい、ここは中国。お持ちかえりは余裕の世界だ。「もう食べられんからダーバオしちまおうぜ」といって、お持ち帰りにすることにした。
「打包(dǎ bāo =ダーバオ)」とは、漢字のとおりで「梱包する」という意味。つまり、「(持って帰るから)梱包してくれ」。日本だったら食中毒が怖いので原則お持ち帰りは禁止というところばっかりだが、中国などは自己責任でどうぞ、となっている。こっちの方がとても良いと思う。
「おい、家に持って帰っても俺あんまり食わんぞ」
とコダマ青年は言うが、これを日本に持ってかえるわけにもいかない。
「コダマ青年よかったな、あと数日は食べ物に困らんぞ」
といいながら、渡された容器に料理を詰めこんだ。
容器は結構立派なプラ容器で、きっちりとフタが閉まって汁がこぼれない仕様。調子にのって、最初はスペアリブと海老だけを入れていたのだが、大量に残っている羊肉もどばーと入れちゃった。
「おい!何をする。スペアリブが食べられなくなってしまうではないか」
「失礼な。羊肉だって立派な料理だ、なに問題はない」
と意に介さず、そのまま紙袋にダンクシュート。結局、テーブルの上のお皿はすっからかんになったのだった。
いいなあ、打包。これだったら、一人で食べに来て、食べきれなくても持ち帰って自宅で引き続き楽しめる。「食べ残し」せずあれこれ食べられるぞ。大皿料理が原則の中国ならではの文化だろう。
ところで、やけにしっかりした袋と容器だったが、打包料金って別途請求されていたのだろうか?コダマ青年が「マイタン(結単=お会計)」しちゃったので、いくらかかったのか、明細がどうだったのかは分からない。
なお、お会計の際、コダマ青年は懐から札束を取り出しておかでんに手渡した。
「これ、立て替えて貰っていた分。」
おかでんが密輸商人として日本の食材やアメリカのサプリメントを運び込んだ対価、というわけだ。その額、数えてみたら2,400元(約34,800円)。100元札だらけ。空港の売店で100元札出して、さんざん胡散臭そうに対応された経緯を考えると、これはまさに「札束」だ。大金だ。やあ、取扱いに困ったな。
おかでんはてっきり、「上海滞在中の諸々のお金は全てコダマ青年が負担し、最終日に残金精算して残額を後日日本円で口座振り込みないし現金支払いする」ものだと思っていたまさか、自分の手元に元生(ゲンナマと掛け合わせている)がくるとは。
それにしてもこれだけの大金、滞在期間中に使い切る事ができるんだろうか。心配になってきた。
食後はマッサージに行こうぜ、ということで、徒歩でコダマ青年が知っているお店へと向かった。中国でマッサージといえば、「気功整体」みたいな名前で、店内には人体模型や人体の経路やツボが書かれた解説ポスターが貼ってあるような店なのかと思っていたのだが、意外や意外、レンガ造りのしゃれた作りでびっくり。MAGPIEマッサージというお店。
でも店内はいかにも中国風な家具や装飾で、BGMも中国楽器によるもの。
カウンターにあるメニュー表には日本語は無いが、漢字+英語で記述されているので理解に苦労はしない。オイルマッサージを筆頭に、リンパマッサージ、耳にろうそくみたいなの付けて火を付けるマッサージなどいろいろある。「ヘッドマッサージ」や「バックボーン&ショルダーマッサージ(首、胸、腰椎及び肩部のマッサージ)」なんて局地的なものもある。バックボーンはいいなあ。最も凝りやすいところだ。ちなみにこれは70分で218元。
われわれはせっかくなので、定番として「中式推ナントカ(漢字がわからん)」というのを頼んだ。英語ではトラディショナルチャイニーズマッサージ、とされているので、これが一番妥当だろう。90分で196元(2,842円)。10分=1,000円が一応の相場である日本と比べると非常に安いのだが、中国物価を物差しにすると相当高い。日本人で良かった。
なお、「中式」の他に「日式指圧」というメニューもあった。「ジャパニーズフィンガーマッサージ」だって。面白い。
清潔なベッドルームで施術を受けたのだが、やあこりゃ気持ちが良い。お酒飲んでいい気分なところに、マッサージというのは最高だな。日本だったら、「お酒を飲んでいる人は施術できません」と断られるだろうが、ここだとできてしまう。
手技としては特にツボを重点的に押すような技術体系でもなく、かといってリフレクソロジー的なやり方でもない。日本の町中によくある、どこで習得したんかよく分からない「とりあえず揉みます」的なものだった。どうしても旅人としては、「中国に行けばみんなゴッドハンドだらけで、もう肩こりなんて一発消滅」くらいの妄想を描いてしまうのだが、そんな都合のよい話はない、ということだ。
でもお店の名誉のために言っておくと、とても丁寧にやっていただき、とても快適であったですよ。
完徹、しかも国外逃亡ののちのマッサージは効くのぅ。
へろんへろんに体をもみくちゃにされた後、コダマ青年宅に引き上げる。
引き上げている途中、なにやら前方に見慣れた赤ちょうちんが。
「あれ!日本料理店が!」
何だかすごく不思議な気分。上海で出会った日本料理店。しかも、もの凄く自然体で営業をしているぞ。
「あああの店。行ったことあるな」
とコダマ青年は特に驚きも興奮もなく、しれっと興味なさげに言った。ああそうか、上海にはコダマ青年のような日本人駐在員がたくさんいるのだから、当然日本料理店もあるよな。赤ちょうちんが店頭にぶら下がっていてもおかしくはない。
どういうメニューがあるんだろう、と大変興味がある。どんな客層なのだろう、とか。日本人だらけなのか、それとも「ディープな日本料理を食べたい」という上海人も混じっている店なのか。フィールドワークしてみたいものだ。
とはいえ、おかでんは今回3泊4日の旅。限られた滞在期間と食事のタイミングの中で、「上海における日本料理店」の暖簾をくぐるわけにはいかん。さようなら。また次の機会にでもお会いしましょう。
街頭でタクシーを捕まえ、コダマ青年の自宅まで移動。
まだ終電まで余裕があるし、へべれけになっているわけでもないのに余裕でタクシー。コダマ青年かっけー。
「いや、だってよ、タクシー乗ってせいぜい20元くらいだろ?地下鉄乗って4元とかだから、せいぜい日本円で200円くらいしか差がないんだから」
とてんで意に介してなかった。ましてや、今回のように二人乗りで割り勘にすりゃ、わざわざ電車に乗るのが馬鹿らしくなるというわけだ。そりゃごもっとも。
ただし、タクシーに乗る場合は自宅の場所を運転手に告げる必要がある。最低限の語学力は必要なので、「駐在員様は無条件で豪遊」というわけにはいかんのだった。豪遊するためには、それなりの努力も必要。
運転手とコダマ青年は何事かやりとりをしていたが、何かと思ったら「コンビニに寄りたいので、回り道してもらった」という。おおう、それは一体どれくらいの語学力が必要なのかねキミィ。少なくとも、ニーハオ程度しかしゃべれない観光客レベルでは絶対に無理だ。だいたい、中国語で「はい」「いいえ」「右」「左」をなんて言うのかさえ、知らん。
タクシーを降りたら、たしかにローソンとファミマがあった。両方とも日本資本だ。但し、正確に言うと台湾子会社が中国に進出しているはずなので、孫資本という事になる。
ファミリーマートが「全家」というのは台湾で知っていたが、ローソンを「罗森」と書くのは初めて知った。ローソンは台湾にはない。
コダマ青年は、コンビニでよくおにぎりなんぞを買って夕食にしているそうだ。
なんて質素な、と思うが、家で自炊するのはかったるいし日本食材が手に入りにくいので却下。外食といっても、やはり外国ということで落ち着かないし、自宅でゆっくりしようとすればコンビニおにぎりが最適なんだろう。
以前、NHKスペシャルで上海がコンビニ戦争になっている、というのを見たことがある。数年前だったと記憶しているが、その時はコンビニに米が売られていたり、廉売合戦したり、混沌としていた。
しかし、2009年のコンビニを今こうして見る限り、日本のコンビニと同じような風体に落ち着いていた。日本のコンビニは高度に無駄を排除した結果、あの形に収まっている。中国もそこまで到達したということだろう。店側も消費者側も、「コンビニとはこういうものである」という既成観念ができたということだ。
ただ、やはり現地の文化価値観にあわせて変わるのがコンビニ。売られているものや陳列が日本とちょっと違う。
入口入ってすぐのところに面包(パンの事)が置いてあるのが面白い。お総菜お弁当コーナーとは別に、だ。コンビニの売れ筋商品なのだろう。
お総菜コーナーに行ってみると、なにやら粥とか麺だらけ。一体何種類あるんだ?さすが中国。それが、商品棚にみっちり、ぎっしりと詰め込んであった。
ぎっしりと陳列されているのは、日本のように一日何回も配送する物流システムが構築されていないからだと思う。そうでなければ、夜10時半にこのみっちり具合は凄すぎる。
季節柄か、涼面(リャンメン。冷やし中華みたいなやつ)がたくさん並んでいた。韩式泡菜涼面(韓国式キムチ冷やし麺)なんてものもある。
野菜も結構あるので、自炊する人用かな?と思ったが、プチトマトやキュウリなど、そのまま食べられるものが中心だった。ちょいとつまむ用途なんだろう。
レジの背後には贈答品になる菓子折なんぞが並んでいるのは日本と一緒で、何だか微笑ましい。ただし、その贈答品の中にはアルコールも含まれているのが日本とは違う。ジョニーウォーカーなんぞが置いてあったぞ。
カップラーメン売り場を見てみる。ここもみっちりと商品棚に並べられており、こまめに補充されていることがわかる。どうやら、上海的美意識というのは「溢れんばかりの商品」が良しとされるようだ。
ほぼ全ての商品は、一列のみの陳列。だから、品数がやたらと多い。目移りして大変。このコンビニ、日本よりも取扱い品数が多い。
ただ、見ていると「牛肉麺」と書かれているものが多かった。上海人、メチャ牛肉麺LOVEか?「牛肉麺」という基本を押さえつつ、「香辣」とか「黒椒」とか「酸菜」とか、いろいろなバリエーションがある。前言撤回。絶対上海人、牛肉麺LOVEだ。
面白いのは、どれもエースコックのスーパーカップ1.5倍サイズだということだ。それなりの量をしっかり食べるのが上海スタイルなのだろう。日本のように、「おむすびとカップヌードル」のような複合技はやらないのだろうか。
韓国から参戦、日本でもおなじみの「辛ラーメン」もこの上海基準になっていた。日本では見たことがない。
なお、陳列されているメーカーは台湾のものが結構あった。ファミマなんだから、もっと日本製のものがあればいいのに・・・と思うが、台湾法人による出店なのでこういうことになる。
日本製はというと、日清が唯一頑張っていた。なんと、UFOが異例の2フェースを確保。世界で食べられているカップヌードルではなく、UFOが上海ではウケていたとは・・・。これは意外だった。中国人からみて、あの「ソース焼きそば」はどう感じるのだろう?
ラベルを見ると、「不要炒的炒面」と書いてあって笑った。そうだよな、焼きそばじゃないもんな。
カウンターにおでんがあるというのは、日本的でもあり、台湾的でもあった。
上海の人もおでん、食べるんだねえ。しかも、既に蒸し暑い6月なのに。
日本は季節感を重んじるので、夏になればおでんプールは撤去されるのが大半だ。しかし、台湾も上海も、おでんは年中食べるものだと認識しているようだ。まあ、「じゃあ日本人は夏には熱い食べ物は一切食べないのか?」と言われたら、そんなことはないわけで、なぜかおでんだけは冷遇される食べ物なのだった。その代わり、おでんが消える頃には「冷やし中華はじめました」になるけど。
おでんの具は詳細をチェックしていないが、「貝柱」なんてのを見かけた。さすが中国。おでんプールの一つは、なにやらつゆが赤黒い。どうやら麻辣風味に仕上げているらしい。おっ、それはちょっと魅力。食べてみたいものだ。
ビールなどの買い出しを済ませたのち、コダマ青年宅に向かう。
なにやら主要道路から逸れたと思ったら、そこがコダマ青年の住むサービスアパートメントだった。
「ちょ、ちょ、ちょ。ちょっと待て、車寄せがあるではないか」
「ああそうだね、あるね」
これはホテルではないのか?車寄せだけじゃなくて、玄関脇にはドアボーイが待機するカウンターまであるぞ。今は夜なので誰もいないが。
そんな中をコダマ青年は当たり前のように歩く。そりゃそうだ、彼にとっては「自宅」に過ぎないのだから。でも、こっちからすればこの衝撃は相当なものだ。同期入社の友だぞ、彼。宝くじでも当てたかのようだ。
この建物、わざわざ玄関が通りに面していない。通りから見えるのは、車寄せに通じる道だけだ。ここにはゲートがあってバーがある。防犯上の観点からだろうか?上海には、結構このスタイルのビルがあるように見受けられたが、どういう根拠があるのか気になる。
それはともかく、建物の中に入ってびっくり。おい、カウンターがあって、そこに従業員が控えているではないか。「おかえりなさいませ」みたいな事をコダマ青年に話しかけている。ホテル・・・じゃないんだよな、ここ?
「隣にホテルがあるんだ。だから、そことサービスが共通化されているところがある」
とコダマ青年は言うが、いやいや、だからといってアパートメント側に受付はいらんだろ。よくあるマンションの管理人といった風情じゃないぞ。後で調べたら、「コンシェルジュ」なんだそうだ。うへぇ。ありえねえー。しかも24時間対応ときたもんだ。何これ。
アンタ、いつのまにアラブの王子様みたいな立場になっちまったんだよ。狭い山小屋で寝床を並べていた頃を思い出せ!
エレベーターホールも、どう見てもホテルを意識した作り。相当立派だ。移動する際には、カードをかざさないと行き先階を指定できない。他のフロアにはいけないようになっているセキュリティ。かっけー。
エレベーターを降りたところも、当然のようにカーペット敷きの廊下で参った。
そして、コダマ青年が中へと入っていった扉は、どうみてもホテルだ。アパートメントとはいわせんぞ。驚きは先ほどから止まらない。心臓は止まりそうだが。
「まあどうぞ、中には大したもん、ないですが」
とご謙遜な発言で招き入れられた部屋は、いやいや大したもんですってば。なんじゃこりゃあ、という家だった。お前、俺の知ってるコダマ青年だよな?別人がすり替わっているということ、ないよな?勤めている会社、非合法じゃないよな?
なにせ、中に入ったら広さ20畳はあろうかというリビングダイニング。ソファや机、テレビなどのダイニングスペースとは別に、さすが中華と感心する大きな円卓一つと椅子が何脚か。これに二部屋が別にあり、その部屋の間にバストイレ。キッチンも一部屋ある。つまり、部屋は2LDKというわけだが、ええと、広さでいったら70平米くらいはあるのかな。おおよそ、一人暮らしが住む場所じゃない。おかげで、空間余りまくり。
「ここだったら、ゴルフのスイングもバットの素振りも、エアロビクスも何でもできるな」
と呆れてモノも言えない。いやごめんうそだ、さっきから興奮してしゃべりまくりなんだが。
実際、この部屋にはゴルフクラブが置いてあって、コダマ青年は時折暇つぶしに振り回しているらしい。
部屋の中で暴れても大丈夫なのは、部屋が散らかっていないということもある。海外勤務ということもあって、終の棲家にしたわけじゃないのでモノをあれこれ買わないからだ。彼は日本に持ち家が既にあり、ここは仮住まいという位置づけでしかない。だからあまりガッツリとあれこれモノを置く気にはなれないらしい。
しかも、毎日部屋を掃除してくれるサービスがあるという!な、なんだってー。それじゃあ、ホテルで目いっぱい有料サービスを受けている状態が日常生活で展開されているのと変わりないじゃないか。
このサービスアパートメントのリーフレットを一階ロビーで手に入れたので読んでみたが、いやはやすごいのなんの。先ほど見たコンシェルジュサービスを手始めに、日本語や英語ができるスタッフもいるし、ランドリーサービスもあるし、ルームサービスで食事を注文できるし、インターネットや衛星放送は当然無料。その他、プールやらサウナジャグジー卓球室自動遊戯室などもう、この世の楽園が展開されているのだった。追加料金は当然無しだ。ありえん。
これはちょっとコダマ青年を糾弾しないといかん。いくら中国の物価が安いからといって、このサービスはあんまりだ。一体月いくら払ってるんだ。
「100万円くらいかなあ」
とさらりと抜かしやがるコダマ青年。はい?彼は今日本語をしゃべったのか?何を言っているのかさっぱりわからない。
彼が言う「100万円」というのは、日本円による支払い額という意味ではなく、恐らく「日本の物価に照らし合わせると中国ではこれくらいの値段」という意味なのだろう。そう思いたい。たぶん。きっと。どっちにせよ、凄すぎる金額だ。
なぜそんなお金が会社から出るというのか。彼とは会社が別だが、おかでんの勤務する会社の遠縁にあたる。人事給与福利厚生に関しては類似点が多いので、コダマ青年の会社がそんなに大金を住宅手当として出すとはとても思えない。
「いや、うちの社員がよく使っている不動産屋に物件を何件か紹介してもらって、いろいろ見て回った結果ここにした。そのまま会社に報告したけど何ら問題はない。他の人も大体こんな所に住んでいる」
とコダマ青年は全く意に介さない。むしろその手の話題は退屈そうだ。多分、毎回、コダマ青年を頼って上海にやってきた友人知人家族から同じ質問を浴びせられていたのだろう。
ありえねー、と思ったが、会社が家賃をケチったがために、怪しい地域に社員が住んでトラブルに巻き込まれたら大事だ。外務省を巻き込んで、国際問題になりかねない。それだったらカネには不自由させないから安心・安全なところに住め、という方針なのだろう。
外資系金融機関なんぞの社員が、日本では麻布やら白金台など、日本人じゃそう簡単には住めない高級地に住んでいるのはそういうことか。同じ事を、日本は外国でやっているのだな。
「だからね、外国に社員を一人送り出すってもの凄いコストがかかることなんだよ。そう簡単に国際化とか世界戦略ってできない」
なるほどこの家を見るとごもっともです。その他、彼の場合「一年に一回の健康診断」のためにわざわざ帰国しているし。これで彼が仕事上ボンクラだったら、会社はとんでもない損失になるので速効帰国させることになるだろうな。「エリートでないと外国にいけない」というのはごもっともだ。コストが尋常じゃないんだから、かかったコスト以上の利益を会社にもたらさないと、意味がない。
「ただ、大体の人はこういうところから、1年もすれば出て行く。俺もそろそろ引っ越してもいいかな、と思っている」
なんて言う。ぜいたくすぎて気が狂ったか。聞くと、「やっぱり自宅じゃないんで、落ち着かない」という。たしかにこの家は、既に1年住んでいる割には生活感があるような、ないような。私物といえば衣類や書籍の類しかない。本棚を置くだとか、あれこれ部屋をいじくるのはこの家の場合、無理。
じゃあお引っ越ししたらどこへ行くの、というのは聞きそびれたが、貧乏くさいところに移るとも思えないので、それはそれでリッチな高層マンションなんぞに住むことになるのだろう。
部屋に驚きつつも、とりあえずはさっきまでひきずっていた密輸物資を引き渡す。カバンの中はまるごとアンタのもんだ。受け取れ。帰りはこの中、スッカラカンなので背負っているリュックサックを詰めよう。
「ありがとー」
と言いながら商品を受け取ってくれたが、柿の種とか酢とか醤油なので地味。「おお!ありがとう!」という代物は一切含まれていない。淡々と、引き渡しは進んだ。
北アルプスの四季を紹介するDVDを持参していたので、それを二人で見ながらビールを飲む。
「いいよなあ日本は。山があるから」
「中国だって山はあるだろ」
「上海からはどこにも山が見えない。ビルしかない」
「あ、なるほど」
日本の場合、関東平野が広がる東京でさえ、ビルの上からは富士山や丹沢、多摩といった山が見ることができる。しかし、国のスケールが違いすぎる中国の場合、上海からでは山なんてものはこれっぽっちも見えないのだった。
遅くまであれこれしゃべって、「明日は朝8時半起床」ということにして解散。自分用に個室がちゃんと用意されているというのにびっくりどっきりしながら、ベッドに横になった。
2009年06月13日(土) 2日目
2日目の朝。
窓を開けると、そこにはプールが広がっていた。さらに向こうは、広大な公園。なんちゅー景色だ。これがコダマ青年の日常。
シャワーをあびる。シャワールームは、リビングからの扉とコダマ青年寝室からの扉、二つがあるのが面白い。コダマ青年はわざわざリビングを経由しないでも、トイレにそのまま行けるというわけだ。
デジカメのバッテリー充電を確認の上、いざ出陣。なお、この親切すぎるサービスアパートメント、日本型のコンセントも備えていた。わざわざ中国仕様のコンセント変換器を持参しなくても良かった。細かいところまで、すげえ。
さて今日の予定だが、朝食はこのホテルに備え付けがあるというのでそこで食べ、その後浦東にある高層ビル群を見学。しかる後に上海を代表する観光地である豫園に行き、夜は上海料理の店にGO、という段取り。さあ今日は上海を縦横無尽にうろつくぜ。
「食堂は下だから、階段で行こう」と言われ、階段を使う。すると、ここにも衝撃の光景が。豪華な・・・ではなく、これまでとは一変してすごくボロいのだった。
いや、ボロいというのは正確ではない。作りはしっかりしているようだ。しかし、床にはあちこちにペンキが染みを作り、こぼれたコンクリートがあちこちで盛り上がっているのだった。壁のペンキはいい加減な塗り方で、隅っこは塗られずに放置プレイ。おい、何をどうやったらこういう残念な結果に仕上がるんだ?
「まあね、こういうのが中国のクオリティだから」
とコダマ青年は苦笑して言う。高級サービスアパートメントであっても、表から見えないところだったら本性を出してしまうらしい。しかも、露骨なのは食堂階より下の階段は、ちゃんとタイル張りになっているということだ。
「下の階は人の往来が多いから」
とコダマ青年は言うが、もしそれが本当だとしても、食堂にやってきた人はどうしてもこの残念な階段が見えてしまう。せめて、食堂フロア+1階分、くらいはもうちょっと気合い入れて階段作れよ。
これは業者の手抜き、怠慢とも言えるが、施主もこれでOKとしてビルを受け取ったのだから問題ないのだろう。上海的には、これが標準ということだ。なんだか上海ってよくわからん町だな。
「建物なんて、半年もすればすぐにぼろくなるよ。壁にヒビが入ったりするのは当たり前。先日、お客さんがオフィスを探しているということだったのて、うちのビルを紹介したんだけど、壁にヒビが入っていたので『このビルは結構古いんですか?』って聞かれたよ。『まだできて間もないです』と答えたけど」
しかし、そこで「中国人なってないな、奴ら信用できん」と怒らないところが、現地駐在員の駐在員たるところ。そういう特性を理解し、納得し、消化しているのだった。
「でも、そういうヒビが発見されたら、業者を呼んで『あそこにヒビが入って入るぞ。期限までに直してくれ』と言えば、ちゃんと直してくれる」
とけろりとしている。日本だったら激怒しまくって、「おたくとは今後一切取引しない」とかなんとか、そりゃあもう土下座劇場の開幕っすよ。
食堂。
ホテルのレストラン程大きくはないが、簡単に食事ができるようになっていた。
この261部屋もあるサービスアパートメントの住人全員が、一斉にここに押しかけたら途端にパンクしそうだが、案外空いている。学食のように長机と椅子があってそこで食事をするため、基本は相席となる。しかし、隣に人が居て気になる、ということはなかった。
西洋人家族の姿もあったが、多くは中国語を使っている人達だった。一体どういう人なんだろう?西洋人なら、駐在員ということで本国からそれなりのお金が出ているんだろうと想像できるのだが。シンガポールなどの華僑の方だろうか?
わからん。自分の全く想像が及ばない世界が、この建物にはある。
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