来日したら標高3,003メートル【立山・黒部アルペンルート】

フクロウがいるという話

崖の隙間を縫って道はうねうね。逃げ惑っている感が出て、歩くだけで結構楽しい。
そんな道中にあったもう一つの楽しさ。

「猿飛峡のフクロウ」。

なんでも、木?の形がフクロウに見えるらしい。

「どれだろう?」

ここで「ほーらここにフクロウがいるよぉー」と股間をぺろーんと出したら、たぶん目の前の急流に投げ込まれると思うのでやめた。

あ、確かにふくろうがいた

よーく目を凝らすと、確かに対岸にフクロウ発見。ははーん、あれだな。よくできたものだと一同感心。

台湾勢も感心していたことから、たぶん「フクロウ」は台湾にもいる鳥っぽい。

それにしても語学学習って大変だな、と思わされた。「フクロウ」という鳥の名前がないと、この場面では翻訳ができないのだった。フクロウという言葉を通訳できたFishは相当なものだ。「日常会話ペラペラ」っていったいどれだけの語彙力がいるんだ?

猿飛峡

猿飛峡。

「さすがにここを猿が飛び越えたら、確実に溺れ死ぬと思う」

と素直すぎるコメントをしたら、一同うなずいていた。でも、それくらい狭い、黒部峡谷で一番狭い急峻な場所。

ここでラフティングやったらさぞや豪快だろうが、姿勢保持もおぼつかないまま、そのまま転覆して富山湾まで流されそうだ。

ここで記念撮影をあれやこれや行う。

おかでんの必殺技、「伸ばした三脚を手にし、セルフタイマーで自分たちを撮影すれば・・・あら不思議、ダイナミックなアングルからの写真が」を披露すると台湾勢は大層喜んでいた。おお、ジャパニーズウタマロ、と。いやうそだけど。

冗談はともかく、三脚を伸ばすことで2メートル以上の高さから見下ろす写真が撮れたので、なかなか良い記念写真になった。

とはいえ、記念撮影は気を遣う。今回はあくまでも「Fish家3名の日本旅行。feat.おかでん(ツアーガイド)」という位置づけ。ツアーガイドまで一緒に写りこんだら、せっかくの家族旅行の記念にならないかもしれない。だから、こういう場所では「誰もいない状態で名所を撮影」したのち、「Fish一家3名がいる状態で撮影」、「おかでんを入れて4名で撮影」の3パターンを撮影した。ちなみにこの写真は三変化の第一弾、「誰もいない」バージョン。

欅平駅改札
帰りのトロッコが待ち構えていた

元来た道を戻り、欅平駅へ。

時間に余裕があれば、足湯に浸かりたかったのだが時間がとれず。諦めて駅へ直行。

発車数分前の到着で結構ぎりぎりだった。

おかでんに旅の企画をやらせるといつもこんなのばっか。

さあ、宇奈月へ戻ろう。

ダム1
ダム2

ダム好きにはたまらんトロッコ列車の旅。頻繁にダムが現れることから、関西電力が「この黒部川の水を一滴たりとも逃がさん」という執念でダムを造りまくった事がうかがえる。

渓谷そのものは正直ド迫力ですげーという感じは受けなかった。ただ、トロッコでゴトゴト揺られて深山へ、という非日常感の楽しさは尋常ではない。だから、結果的にはトロッコに乗って大正解。欅平まで行かないで鐘釣でUターンというのも有りっちゃあ有りだったが、このトロッコに乗るなんて一生に何度あるかわからない。だから、「欅平:終点まで行ってきたぜー」という達成感が得られる分終点までいくのが正解な気がする。

鐘釣で大量のお客さんが乗ってきた

とかいっているうちに鐘釣。

うおー、団体さんがものすごく乗ってきたよ。

白樺の大地

帰りのトロッコは、すでに見てきた風景をプレイバックするということもあってややまったりモード。特に台湾勢は朝早かったし、慣れない環境だしで若干お疲れ気味。

そんな中、Fish妹がお菓子を取り出した。

「白樺の大地」

そういえば、道中のSAで買っていたっけ。なんでこれを買ったんだろう。

「白樺」といえば標高1,000m以上に生える樹木。台湾ではたぶん生息しない木だろうから、珍しさと憧憬が混ざって、つい買ったのかもしれない。

「これって本物の白樺、入っているのかな?」

Fishに聞かれた。

いやいや、中を開けるまでもなく、木なんて入っていません。白樺をかたどったチョコクッキーでしょ、これは。

「そっかー」

残念そうだ。この人、木くずを食べたかったのだろうか。

よく考えてほしい。台湾でも有名なお土産、北海道の「白い恋人」のことを。中を開けたら中に本当に白い恋人がいたら怖いだろ。それと一緒だ。

「そっかー。うん、そうだよね」

ダンプカー

トロッコ列車は大抵崖っぷちのところを走るのだが、珍しく開けた場所があった。そこには巨大なダンプカーが何台か。

「いったいどこから運び込んだんだろうね?」

議論になる。

「パーツごとにバラしてここまで運び込んできた?」
「ヘリで空中輸送?」
「どこかにダンプが通れる道があるのでは?」

結論は出なかった。出る間もなくそのままトロッコ列車は素通り。何事もなかったかのように。

ホテル黒部

途中Fish母とFish妹はうつらうつらしている中、宇奈月に戻ってきた。

トロッコを最初に出迎えてくれる温泉街の宿は「ホテル黒部」。

「あ!こっちに手を振ってくれてる!」

見ると、ベランダのところに職員さんが2名か3名いて、こっちに手を振ってくれている。

トロッコ列車乗客一同「おおー」と活気づき、みんなにこにこ顔で手を振った。

なんで人間って手を振るとうれしくなっちゃうんだろう。

フィール宇奈月フロント

台湾勢は宇奈月駅のお土産売り場に夢中。ポストカードを真剣なまなざしで吟味していた。

お買いものの後、一同は今晩のお宿、「フィール宇奈月」に移動。移動、といっても駅の目の前なのですぐだ。

ここは一泊朝食のみを提供するシンプルな宿。夜はどこかで適当に食べてくれ、というスタイル。部屋も特別室だのトイレ付だのトイレ別などとややこしいことはない。シンプルな料金で潔い。

チェックイン時間前でも車を預かってくれるし、ほんと便利な宿だ。「夜は富山湾の海の幸を満喫したい」などと食事に比重を置かない限りは、ここは選ぶ価値がありまくるお宿。

フィール宇奈月客室

通された部屋。

畳の部屋に一同興味深々でなんだかソワソワしている。思わずすり足になって歩いてみたりなんかして。畳の良いところはそのままがばっと大の字に横になっても良いことだが、たぶん台湾の人たちは抵抗があるだろう。

フィール宇奈月客室から見た外の光景

窓から外を見ると、富山地方鉄道の宇奈月温泉駅と、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅とがよく見える。鉄道好きならたまらん場所だ。トロッコ列車の運行はもう終わっているが、トロッコの編成を組み変えようとまだ列車は時折動いていた。

浴衣三美人の背中

台湾人のワクワクその2。

畳もわくわくものだが、それ以上なのがやっぱり「浴衣」。わざわざ男用と女用の浴衣を丁寧に並べ、写真撮影をしていた。旅館に泊まったら室内や館内設備をくまなく撮影する癖があるおかでんでさえ、「浴衣」を撮影したことはない。でも、台湾の人にはたいそう珍しいようで。特に浴衣の柄がなんだか「日本的」らしい。

四人中唯一の男性はいったん部屋の外に退去して、女性三人のお召かえタイム。何やらキャッキャとはしゃぎながら浴衣を着ていた。たぶん、日本人が旅行先で民族衣装を着せてもらってはしゃぐ、みたいな感覚なのだろう。

着替えが終わったところで、今度は写真撮影タイム。そうだよな、民族衣装試着と一緒だもんな。入れ替わり立ちかわり、写真を撮影してはしゃいでいた。

ちなみに浴衣の着こなしは全員ばっちりだった。数年前、Fish妹が初来日した際に連れて行った温泉宿では、姉妹そろってガウンの着方(右前)で浴衣を着てしまい、ちょいと残念な仕上がりであった。その教訓は今やしっかり活かされている。だてに日本滞在が長いわけじゃない。

男湯

宿の最上階にある温泉へ。

混浴風呂ではないので、男一人男湯へ行ってきます。

フィール宇奈月大浴場

温泉の源泉は、この温泉街にはない。トロッコ鉄道の途中、黒薙というところから延々数キロ、引き湯している。成分は・・・忘れた。興味あったら適当に調べてつかあさい。

値段が安い宿なので(確か一泊6,000円しなかったと思う)、館内設備は相当しょぼいものだと覚悟していたのだが、いやいやどうして。立派なお風呂ですよこれが。

カラン
シャンプーリンスが充実

シャンプーリンス類も充実。

ぱっと見たとき、壁面にびっしりと並んでいるので、鏡が反射してたくさん見えるトリックかと思った。でもよく見るとそれぞれ独立したボトル。いったい何種類ここに置いてあるんだ?

旅館の浴室にありがちなシャンプーリンスのほかに、高級シャンプーであるだろう資生堂のTSUBAKIまで置いてあるんだから立派だ。

洗面所の装備1
洗面所の装備2

風呂上りに脱衣場を見ると、ここもなかなかな品ぞろえ。なんでこんなに充実したラインナップなんだろう?男性はともかく、女性はうれしいのではないかと思うがどうだったんだろう、女性陣。

無料マッサージチェア

お風呂を出たところにマッサージチェアがあった。

「どうせ10分100円だろう」と思って座ってみたら、「こいつ、動くぞ!?」。

無料で使えるとはなんという太っ腹な。いいぞこの宿。

人間って安直なもんです、こういうところで施設に対する印象ががらりとかわる。

100円なんて小銭稼ぐよりも、「無料で使えた!」という驚きを宿泊客に与えた方がなんぼか儲かると思う。

牛乳の自販機

牛乳の自販機があるところが憎い。

いいお湯に浸かったあと、ここで瓶の牛乳を買ってぐいーっと飲む。たまらないシチュエーションじゃないか。瓶、というところがかゆいところに手が届いている。

アルコール自販

その他、缶のアルコール自販機もあった。普通の自販機ではなく、中が見えるスケルトンタイプ。なんだかこの自販機の方がお得感というか、旅行に来た感があって良い。

おっと、黒部の地ビール、「宇奈月ビール」が売られているぞ。390円か。

ジュース自販機

夕食は出ませんけど、ということの替わりか、飲み物の品そろえがやけに良い。自販機がずらりと並ぶ。

で、売られているドリンク類はすべて「メーカー希望小売価格」というのが泣ける。ビール含めてだ。「ホテルのビールは1ml=1円が相場」という既成概念をえいやっと覆してやったぜ。ざまぁ。

この宿、やたらと良心的だな。

生ビールを売っているらしい


おっと!生ビール売ってるのか。

「ホテルのフロントで生ビールを買い求める」というのはなんだか変なシチュエーションだが、でも生が飲めるというのは素晴らしいことだ。

さすがに部屋にジョッキ(紙コップ?)を持って帰って酒肴のお供にしていたら、「もう飲み干しちゃった。お代わり!」ってときにまたフロントまで降りてこないといけない。フロント脇のテーブルと椅子が並んでいるロビーで迷惑にならない小声で晩酌、というのがスマートかも。

ビリヤード有ります

ビリヤードもこの宿にはある、と張り紙にはある。どこまでサービス精神旺盛なんだよ。夕食が存在しない宿といえば、宿泊重視で値段抑えるのに必死、というイメージがあったが、これで大幅に考えが変わった。

出前メニュー

部屋に戻る。

夕食をどうするか、決めなくちゃ。

宇奈月は温泉街を形成しているとはいっても、そんなに飲食店が多い場所ではない。で、温泉街にある飲食店といえば、絶品の山海グルメが出てくる事はあまり期待できないのが現実。一泊二食が当たり前の日本式旅館やホテルが軒を連ねていたら、そりゃあ本格的な飲食物を出すのが馬鹿らしくなってくる。宿メシと太刀打ちできっこない。

そんなわけで、大人しくこの宿で食事をとろうか、という考えも頭をよぎる。この宿、食事の提供はないけど、出前の斡旋はしてくれるのだった。よく言えば「ルームサービス」。

で、出前のメニューを見てみる。

うん、手堅い。

・・・手堅すぎる。

トンカツ定食などの定食類、丼もの、カレー類、ラーメン、そしてうどんとそば。

おおよそ、「日本の標準的な食べ物」だ。清く正しい感じはする。それはいい。

しかし、宿に泊まって、唐揚げ定食(1,350円)とか山かけそば(740円)なんてのを頼むのはどうも収まりが悪い。旅風情とあまりにミスマッチだからだ。しかも、出前であるためか値段が微妙にお高いし。

女性陣がお風呂から戻ってくるまでの間、しばらく部屋に置いてあった出前メニューをにらみつけていたが、結局出前はやめにした。

それより、夜の温泉街を散策しつつ、お店に入る。しかも浴衣の格好で!・・・の方が台湾の皆さんには喜んでもらえそうな気がする。うんそうしよう、外で食べよう。

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