来日したら標高3,003メートル【立山・黒部アルペンルート】

弥陀ヶ原

バスは弥陀ヶ原へ。

日本最大の高原。なんて魅力的。

しかし、雨がこうもじゃあじゃあ降っていればそんなの関係ない。

バスの中で雨具を着込むことができなかったので、完全無防備状態で雨の中へ。

バスからダッシュ

「ひゃー」

と日本人台湾人問わず叫びつつ、バスからダッシュ。

まるで、揚陸艇から降りたらすぐに展開しろ!一カ所に固まっていたら狙い撃ちされるぞ!というプライベートライアン状態。

弥陀ヶ原駅

逃げ込んだ先はサザエさんのエンディングにでも出てきそうなトンガリ屋根の木造小屋。

ここが「弥陀ヶ原駅」になるらしい。

弥陀ヶ原駅の中

中に入ると、雨露をしのげるようになっていた。こんな雨の中、弥陀ヶ原には人がいるまいと思ったが、案外人がいて意外。そういえば、さっきのバスで勇んで飛び降りたのは僕ら4名だけだったな。

よくよく考えれば、大雨の中高原散策なんてどだい無理。しかし、おかでんの頭の中では一カ月前くらいから「弥陀ヶ原散策。所要時間1時間20分」と強くすり込まれていて、リアルタイムで軌道修正ができなかった。そんなわけで、おかでんの判断遅れのとばっちりを皆様均等にご負担いただきます、と。今思うと申し訳ない。

高原バスは予約が必要

弥陀ヶ原駅で下車した人は、必ず次のバスの予約を入れておくこと-

ガイド本などにそういう
事が書いてあったが、いまいち意味がよく分からなかった。予約ってどうやって入れるんだろう、と。バスの運転手さんに下車時に告げる?

はて、と首を捻っていたのだが、現地に着いてみて状況が判った。弥陀ヶ原駅の小屋には職員さんが常駐していて、その方に「次のバスの予約をお願いします」と告げればよいのだった。

ただし、室堂に行くには出発の50分前までに予約を入れないといけないらしく、「ちょっと雰囲気を味わいたいので30分程度で十分」という人には向かない。

アルペンルートのチケット

予約を入れたら、乗車券に時刻を書き込んでくれた。われわれは14時半の出発。

オオシラビソ

雪のせいで70度くらい傾いてしまったオオシラビソの写真。

ただ、雪が溶けると元通りまっすぐになるのだから不思議だ。

「ほら、雪で潰されても夏になると元通りだ」

FishとFish妹に説明し、二人とも「へー」と感心してこの写真を見ていた。しかしよく考えると、「雪=重いもの」であるという認識がFish妹にあるかどうか怪しい。雪はふわふわして軽いものじゃないの?って思っているかもしれん。

弥陀ヶ原モデルコース解説

弥陀ヶ原は美女平と室堂の間にぽつんと駅、ホテル2件がある。

わざわざこんな中途半端な場所に人の手が入っているのは、このあたりが格好の高層湿原ハイキングの場になっているからだった。「餓鬼の田」と呼ばれる池塘(ちとう。湿原の中にできる沼)があちこちに広がっている様は、熱帯圏に住んでいるFishご一家としては珍しいものだろう。

大雨の弥陀ヶ原

・・・という思惑そっちのけで、大雨。

ほら、記念撮影しても、何の記念だかさっぱりわからない。雨粒とガスのせいで、誰の顔もはっきりと写っていないという意味のない写真に。

弥陀ヶ原ホテル
弥陀ヶ原ホテル内部

駅舎にずっといるわけにもいかず、とりあえず弥陀ヶ原ホテルまでダッシュ。ホテルに行ったからといって何かがあるわけでもないのだが、なんとなく大きい建物の下に行きたかったので。

ホテルの窓から外を眺める

ホテルのロビーからうらめしげに屋外を眺める。

雨の弥陀ヶ原を歩く

「せっかくだから外を散歩したい」

とFishから頼もしい申し出が。結構な雨が降っているといのに、そのガッツたるや大いに良し。そちらが望むとあれば、こちらとしては全く異議はない。むしろ、積極的に雨の中、びしょ濡れになってでも歩き回りたいくらいだ。

おかでんの習性として、「たとえ状況が悪かったとしても、敢えて当初プラン通りの事をやる」のを好む。「ああ、やっぱり駄目だったねえハハハ」というのも思い出の一つであり、たとえば今回のように「湿原散策計画」が大雨でおじゃんになったとしても、敢えて雨の中突撃したい。それでびしょ濡れになってガタガタ震えたとしても、「雨が降ってさんざんな目にあった」という思い出を愛する。多分、10年以上このサイト(アワレみ隊OnTheWeb)を運営しているせいだと思う。

だから、Fishからの提案を受け、喜び勇んで雨の中に突撃。面倒なのでレインウェアのズボンをはかないでいたら、下半身がびしょ濡れになった。でも、それもまた良い思い出になる。数年後には。

高山植物

弥陀ヶ原駅の周辺しか見て回る事ができなかったが、高山植物があちこちに花を咲かせており、雨が降っていても楽しむことはできた。本当は湿原まで行きたかったのだが、それは時間の都合で断念。

深追いしてしまうと、予約しておいたバスに乗り遅れてしまう。

バスで室堂を目指す

室堂行きのバスに復帰。

弥陀ヶ原駅のログハウス正面にバスは停車してくれないので、また雨の中ダッシュ。

50分前予約の効果で、下車する人がいなかったバスだけどちゃんと4席、空きがあった。

予約制度がないと、バスがやってきても乗れないという事になってしまうわけだな。納得。

雪渓が見える

雨と湿気のせいでバスの窓は曇ってしまっているが、そんな状態でも進行方向左手に谷と、雪渓が見えてきた。いよいよ標高は2,000メートル越え。バスは容赦なく標高をあげていく。

室堂バスターミナルが見えて来た
高原バス下車


バスは標高2,450mの室堂ターミナルに到着。

雪渓が間近に見える

バスを下りて真っ先に目に留まるのが、ターミナル脇の斜面に張り付いている雪渓。

日当たりがよさそうなのに、まだこの時期でも氷が残っているとは意外。

それを見た台湾勢一同大興奮。後ろからまだ下りてくる人がいるのもそっちのけで雪渓に夢中になっている。あわてて3人をバス乗り場の隅に移動させる。

何をしゃべっているのかはよくわからないが、とにかくあの雪渓がエキサイティングであったことは間違いない。ああ、南の国の人だなあと納得。

「あの雪渓の近くまでいけないかなあ?」

Fishがこんなことを言い出した。

「え?無理だよ、歩道になっていないところは立ち入り禁止だから」

もし近くまで行けるとなったら、走って雪渓に突撃していたかもしれない。

昨日も黒部渓谷で「万年雪」を見ていたわけだが、あちらは土砂で汚れていた。一方こちらの雪渓は白いし、大きいしで「まさに期待通り!」だったのだろう。

「記念写真撮って!」

とせがまれ、雪渓をバックにしたお三方の写真を撮影。

そんな光景を、バスターミナルの職員さんはちょっと不思議そうに見ていた。

天気2

本日9時時点の室堂の気温は13.5度。下界じゃ30度越えの真夏だけど、さすが標高2,450メートル。そりゃ雪渓だって残る。夜は10度を切る気温になっているだろう。

天気1

そんなわけで、遭難だってたくさん。昨年7月と8月の2か月だけで、76名遭難で死者8名。人海戦術じゃあるまいし、あきれてしまう。

そんなわけで、「力不足はトムラウシ山のように・・・」と警告が貼られていた。ちょうど1か月ほど前、北海道のトムラウシ山でツアーガイド含む9名が遭難死した事故があったが、そのことを言っているらしい。この時の死因は悪天候の中突撃したことによる低体温症で、夏山の遭難としては珍しい大規模遭難だった。同様のことが立山でも起きるよ、という訳だ。われわれも今まさに雨に降られている最中。宿まで徒歩30分程度とはいえ、気を引き締めていかないと。

室堂ターミナル

室堂ターミナル内。

立山駅に下山しようとする人たちでごった返していた。

売店では「星に一番近い駅」というお菓子が売られている。標高2,450m、「駅」としては日本最高地点。駅という名を名乗っているのは、室堂から大観峰までの間トロリーバスが走っているから。架線からパンタグラフで給電し走る電気自動車。だから、「室堂駅」となる。ここが高原バスだけの運行だったら、「バス停」または「バスターミナル」。

立山自然保護センター

このまま宿に向かって、ゆっくり温泉なんてのも選択肢としてはあったが、まずはバスセンターのとなりにある『立山自然保護センター』へ。「この旅行を意義深くするには事前学習が重要」と、立山の自然についてお勉強をしてもらおうという計画だ。

まるで修学旅行!

旅の案内人であるおかでんがあまり観光ガイド的知識を持っていないので、そういう知識は既存の施設で賄おうというわけ。

「それにしても、バスセンターと微妙に間が空いているのはどういうことだ」

外は相変わらずの大雨。

のこのこと自然保護センターに向かうと、びしょ濡れになる。かといって傘をさすほど大げさな距離でもない。

傘をさしてダッシュ

結局、傘を取り出して走る台湾親子。

傘があるんだから走らなくてもよいじゃないか、と思うが、それだけ雨脚が強かったということ。

雷鳥を学ぶ
雷鳥づくし

立山自然保護センターは、雷鳥フルコース状態。雷鳥の生態などが詳細に説明されていて、これが無料で見られるのはお得。幸い、展示物解説の一部は台湾の繁体字で書かれていたので、台湾勢にも理解してもらいやすかった。

「雷鳥は晴れているときにはなかなか現れないんですよ、ハイマツの林に隠れていて。今日みたいな天気の時だと見ることができるかもしれないですよ」

と彼女たちの知的好奇心に拍車をかけておいた。

実際、雷鳥というのはそういう生き物だ。濃霧の時などによく姿を見かける。天気が悪いのは登山者にとってとてもがっかりな事だけど、雷鳥に遭えるチャンスでもあるのだった。

雷鳥の足跡

雷鳥の足跡。千鳥足、というのはまさにこういう足取り。

みんな笑いながらこのパネルを眺めていた。

台湾には「千鳥足」という概念は存在するのだろうか?

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください