
11:18
車に戻り、下津井の海沿いを走る。
正面に巨大な瀬戸大橋がかかる。上を高速道路、下をJRが走る二層構造なので、かなり立派だし見ていて楽しい。時折、ゴーッ、という音を立てて列車が通り過ぎていく。
この橋の真下を、道路は通過していく。なので、迫力がすごい。ついつい見上げてしまうけど、運転手は気を散らさないように注意だ。アホみたいに空を見上げていたら、そのまま対向車か壁に激突してしまい、天に召されてしまう。
このあたりは2017年公開のアニメ映画「ひるね姫」(神山健治監督作品)の舞台となった場所だ。
2018年3月時点で、Googleマップで下津井を見てみると、バス停のところに「ひるね姫聖地」と解説が付けられている。
11:30
半島をぐるっと回り込み、鷲羽山展望台にやってきた。
「鷲羽山」と書いて、「わしゅうざん」と読む。

鷲羽山展望台からの眺め。瀬戸大橋が眼下に見え、瀬戸内海の他島美も一望できる。
瀬戸内海沿岸に住んでいる人(山口、広島、岡山、香川、愛媛)の「あるある話」だけど、日本海や太平洋といった島がない巨大な海を見ると、やたらと不安に感じてしまう。というのも、海というのはあちこちに島があって当然、という環境で生まれ育っているからだ。
そんな島を伝うように、瀬戸大橋はかかっている。
本州を出て最初の島が、写真正面に見える櫃石島(ひついしじま)。もうあの島の時点で香川県なので、香川県さんの瀬戸内海に対する制海権は圧倒的だ。
橋から島に下りるランプはあるものの、昔は緊急車両しか使えなかったはずだ。しかし島民が「これじゃあ、橋の踏み台にされただけじゃないか」と怒って、今では島民ならば橋から島に下りることができるようになった。ただし島民限定なので、我々のような一般人は車では立ち寄れない。バスに乗るか、船・・・と思ったが、船便はなかった。びっくりだ、島なのに船の定期便がないのか。
橋は櫃石島の先に小さな2つ島をまたぎ、大きな「与島」にたどり着く。ここには高速道路のPAがあるので、知名度が比較的高い島だ。
瀬戸大橋が開業当時は、島が大規模開発され、「京阪フィッシャーマンズワーフ」という施設も作られて賑わった。しかし栄枯盛衰、当初の大繁盛はどこへやら、衰退してしまい今は廃業し廃墟となっている。
話題の瀬戸大橋は一度訪れてみたい、でも倉敷から坂出まで往復すると通行料がかなり高い・・・ならば、ということで中間地点にあたる与島で折り返すというのは大変合理的だった。
僕がフィッシャーマンズワーフを訪れたのは1990年頃だったと思うが、その頃は駐車場がいっぱいで、えらく歩いた記憶がある。そして施設内はどのお店も大混雑で、食事を諦めたくらいだ。海を見れば、観光船の「咸臨丸」が就航していて、マストを張って自信満々に港を出て行っていた。
今思うと、バブル時代のリゾート開発の一つに過ぎなかったのだろう。とはいえ、与島の地理的ポテンシャルはあるはずなので、やり過ぎなければ良かった。大規模な施設を作ってしまったがために、傷が深くなってしまった。
なにしろ、隣の小与島にリゾートホテルを作って、与島との間をロープウェイで結ぼう!なんて計画があったくらいだ。バブル期がいかにノリノリだったかがわかる。2010年代の日本人のメンタリティでは、そんなことは絶対に思いつかない。
で、実際に小与島にはリゾートホテルの廃墟がある。ロープウェイは作らなかったけど、ホテルは作っちゃったらしい。何も知らないで観光遊覧船に乗っていると、船から見えるこの廃墟にギョッとさせられる。未だに立派な施設なのに、人の気配が皆無だからだ。
観光遊覧船は、この鷲羽山展望台の下、鷲羽山下電ホテル前の船着き場から出ている。与島・小与島のあたりまで行って、ぐるっと戻ってくる小一時間のコースで、楽しい。

11:48
国産デニムの産地、児島を目指す。
途中、JF岡山漁連が運営する直売所「ふゅ~ちゃ~」に立ち寄ってみる。

11:49
観光客にも地元客にも対応している感じのお店。
さすがに漁協が運営するお店とはいえ、魚ばっかり売るわけにはいかなかったのだろう。店頭には野菜も売られている。これは農協から仕入れているのかな。

ふゅ~ちゃ~内部。

魚が並べられている。
うん、これはさすがに観光客は無理だ。
「遠方の方でも安心してお持ち帰りでいます!!」ということで、氷・発泡スチロールは無料サービスだそうだ。それは素晴らしいのだが、さすがに飛行機に持ち込んで東京まで運ぶ気力がない。
赤メバルなんて、うまそうなんだけどな。
「ゲタ」という魚があるが、これは岡山地方の方言で、舌平目のこと。

12:09
児島学生服資料館。
国産デニムの町・児島を観光するならば、真っ先に訪れるのが「児島ジーンズストリート」だろう。通り沿いにデニム屋が並ぶ、珍しい場所だ。
しかしそこに行ってしまうと、お店巡りで時間がかかってしまう。先に、別の場所に行っておくことにした。それがここ。
児島は学生服の産地でもあるのか。

建物の壁面には、ものすごくインパクトのある看板がバーンと出ていた。
カップルで訪れているなら、ぜひこの看板の前で、絵と同じポーズをとって記念撮影をしよう。

駐車場から建物の正面に回りこむ際、昔のホーロー看板が飾ってあった。学生服の看板、っていうのが昔はあったのか!
僕は学生服なんて、学校指定のものを何の考えもなく購入していて着ていただけだった。だから、こういう看板がなんで必要なのかがピンとこない。

「日本被服」(通称:NIPPI)という学生服メーカーの工場の一部が学生服資料館になっているらしい。
駐車場から資料館への道中、フルーツトマトを売る「児島厳選物品館」というお店の横を通る。

どうやらこれが学生服資料館らしい。

学生服資料館入り口。
「倉敷 記念日の聖地」というのぼりが出ている。
最近、全国各地の観光地で「恋人の聖地」という桂由美サイン入りレリーフを見かけて恥ずかしい気持ちになるのだけど、最近は「記念日の聖地」なる概念も登場してややこしいやら、もう勘弁してくれよ、という気持ちになる。
この「記念日の聖地」は、2013年に「倉敷市」が第一号として認定された。なので倉敷市としても鼻息が荒い。「素敵な記念日をすごせるまち」を目指すんだってさ。
なんでこうも恥ずかしい気持ちになるのかというと、「聖地」という言葉がすごく仰々しいからだ。アニメ作品の舞台となった場所を「聖地」と呼ぶのは、オタク的文脈というか、若干のユーモアが混じっている感じがして微笑ましい。「こういうのをありがたがるのは僕らだけだと思うけどね」というシニカルが若干含まれている。しかし、「恋人の聖地」とか「記念日の聖地」という言葉で使われている「聖地」は、本気だ。コアな人ではなく、一般大衆に訴えかけている。だから、なんだかすごく尻がモゾモゾする。

学生服資料館の中。

1階は、かなり古い時代からの学生服が展示されている。
セーラー服に、「大日本国防婦人会」と書かれたたすきをかけたマネキンもいる。

2階は、学生服を実際に手に取って試着できるコーナーになっている。
今風のブレザー制服から、昔ながらの詰め襟学生服まで様々ある。
ここで試着して、記念撮影を撮ることもできる。

学生服を着てみたところ。
うん、男性はいまいち面白くないな。やっぱり女性がイケイケの学生服を着てこそ、楽しい。
男性諸君は、彼女や奥さんを連れて行き、うまくおだてて学生服を着て貰おう。そして記念撮影をしよう。ただし、こういうのにノリノリな女性がいる一方で、多くの女性は「いやー、老けたのが露骨にわかるからイヤだ」と断ると思うけど。
(つづく)
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