変わり続ける観光地【倉敷】

岡山県に現在の実家がある僕にとって、倉敷というのは結構足を運ぶ場所だ。それは「蕎麦食い人種行動観察」を見ていれば、「ああ、おかでんまた倉敷に足を運んだんだな」というのがよくわかるはずだ。

とはいえ、観光客という観点で倉敷を訪れるという機会はあんまりないものだ。過去、「デジャブな旅【岡山/広島旅行】」という記事で倉敷観光の記事を書いたことがあるくらいだ。あと、アワレみ隊で何度か倉敷を軽く訪問している程度。

デジャブな旅【岡山/広島旅行】

どうでも良いが、↑の記事は僕がお酒をやめる1年前で、かなり酒浸しの日々だった。そのため、僕の風体がヨレヨレになっているのが今となっては痛々しい。2012年の出来事だ。

今回、縁あって倉敷観光旅行をする機会があったので、そのときの記録をざっと連載する。とはいっても、訪問したのは2015年夏で、この文章を書いているのは2018年春。すでに3年近くのタイムラグができてしまっている。

なので、2015年視点の写真を使いながら、2018年現在の話も織り交ぜつつ連載を進めていくつもりだ。

2015年07月10日(金) 1日目

岡山空港のお出迎え

今回の行程は一泊二日。倉敷初訪問だという友達を連れての旅行となる。

東京から倉敷を目指すなら飛行機よりも新幹線の方が楽だし大抵の場合値段が安いのだけど、今回は「移動で疲れないように」という友達への配慮で、久々に飛行機を使ってみた。

岡山空港では、お笑いコンビ千鳥の写真がでかでかとお出迎え。「もんげー岡山」というキャッチコピーが大きく書かれている。

「もんげー」という岡山弁は「すごい」という意味らしいのだけど、僕は実際にネイティブがこの言葉を使っているのを聞いたことがない。妖怪ウォッチのキャラクターが劇中で使ったことで有名になった、ということだけど、岡山のどのあたりの方言なのだろう?

一言に「岡山」といっても、備前、備中、津山などいくつかの地域に分かれていて、文化は一筋縄にはいかない。しかも倉敷ともなれば天領地で江戸幕府直轄地だったわけだし。

他に岡山弁で「すごい」を意味する言葉で「でぇれぇ」「ぼっけぇ」という表現があるそうだが、これらも僕はネイティブから聞いたことはない。まあそりゃそうか、僕自身の育ちは広島だから。

脱線するけど、広島市界隈で「すごい」を意味する言葉は「ばち」「ぶち」が使われる。「ばり」とも言うかな。男は、もうちょっと汚い言い方で「ばちくそ」とか「ぶちくそ」という使い方をすることもある。・・・けど、これも21世紀の今はどうなっとるんかのう、もうわしゃわからんよ。人生の大半を関東エリアで過ごしとるけぇ。

話を戻すと、空港のロビーには金髪の桃太郎が「やあ!」と手を挙げて待ち構えていた。なんだお前。「岡山県マスコットキャラクター『ももっち』」なんだそうだ。知らなかった。

新幹線の岡山駅にはこんなの、いたっけ?記憶にない。

金髪だけどそれでいいのか君は。むしろお前が鬼と勘違いされて成敗されるんじゃなかろうか。

・・・と思って「ももっち」について調べてみたら、ももっちのガールフレンド?役として「うらっち」という鬼の女の子キャラが存在した。びっくりだ、21世紀の桃太郎は、鬼と仲良くしていたなんて。

レンタカー

11:30
今回はレンタカーで車を借りることにした。

岡山空港から倉敷駅北口行きのリムジンバスが発着しているのだけど、それは利用しない。というのも、2日目に倉敷市の臨海部、児島に行ってこようと考えているからだ。

昔はボートレース場があるイメージが強かった児島だけど、瀬戸大橋のたもと、ということで若干注目を集め、そして最近では「国産ジーンズの産地」として急速にその勢いを増している。

海外勢に押されて瀕死の状態だった「国産ジーンズ」が今やむしろブランドとして復興しているのだから、世の中わからないものだ。

同じような話が農作物にもあって、お隣の広島県は過去、レモン生産高日本一だったのに輸入自由化でレモン農家が壊滅的被害を受けてしまった。しかし時は流れ、今や「安心安全・新鮮な広島県産レモン」が珍重されるようになっている。逆境を耐え忍べば、いずれいいことがある・・・のかもしれない。

でも、これは希有な例で、大半は「逆境に耐えられない」だろうし、「逆境になるべくしてなった」ので、耐え忍ぶだけ無駄、ということもあるだろう。

さて、そんなわけでレンタカー。

ちなみに岡山空港は倉敷から遠い。途中、高速道路を使うくらい遠い。運賃も片道1,130円とかなり高く、往復割引が存在しない。このため、費用面でも時間面でも、飛行機は新幹線に太刀打ちがしづらい状況が続いている。

なお新幹線だけど、「新倉敷駅」という大変紛らわしい駅があるけれどここは倉敷の最寄り駅とは言いがたい。原則「こだま」しか停車しない小さな駅だ(ごくたまに「ひかり」が停車する)。一般的には、岡山駅で新幹線を下車し、そこから山陽本線または伯備線で倉敷駅を目指した方がいい。

なお、伯備線の「特急やくも」に乗れば、岡山から1駅で倉敷だ。しかし、岡山駅を出るやいなや車掌さんが車内巡回して、ガッツリ特急券の検札をする。「1駅だからなんとかなるだろう」なんて甘い考えは持たないこと。

ぶっかけうどんふるいち

12:51
お昼ご飯として、倉敷駅から美観地区に向けて伸びる商店街の中にある、「ぶっかけうどん ふるいち」に行く。

昔っからあるお店で、昔はすぐ近くの場所蕎麦屋を出店していたこともあった。

ぶっかけ十割そば

今は「蕎麦はアカン」と思ったのか、白いたい焼きの店になっている。

この「ふるいち」は、毎年代々木公園で開催されている「うどん日本一決定戦」で、2016年・2017年と人気投票二連覇を達成している強者だ。

しかし、倉敷民にその話をすると、「あのふるいちが!?」と驚きを隠さない。そんな「日本一」になるようなお店だとは到底思っていないからだ。

じゃあ味についてどう思うか?と聞くと、「さあねえ・・・」と言う。あんまり食べたことがない、というのが実態だろう。(僕が聞いているサンプル数が少ないだけなのだけど)

お品書き

そんなお店でも東京のイベントに出れば人気を博す。面白いものだ。しかも、並み居る強豪をなぎ倒しての二連覇だからかなり強い。

何しろ、このお店が売りにしている「ぶっかけうどん」というのは特にこれといった色モノ系ネタがない。「やたらと麺の幅が広い」とか「変わった具が乗っている」といった、一見さんが喜びそうなものはなにもない。単に、ぶっかけそばのうどんバージョンなだけだ。

それで連覇、というのは純粋に味で評価されたということなのだろう。

うどん

おろしぶっかけ、570円。うどんとしては安くない部類だと思う。

今や倉敷にも丸亀製麺が出来たため、昔からある香川県風のセルフうどんのお店が駆逐されつつあるけれど、昔から倉敷にもセルフうどん店はあった。それと比べると、やっぱり高い。味がそもそも違うので比較するのは酷だけれども。

味はうまいと思うんだが、これが日本一かと言われるとそれは大げさだと思う。本場うどん県の香川に渡れば、驚愕するような美味いうどんがある。アワレみ隊では、2001年に香川県のうどん食べ歩き企画をやったことがある。

うどん食べ歩き

ただ、2017年の年末にこの「ふるいち」の横を通ったら、店の入り口にずらっと行列ができていてびっくりした。過去何十年もこのお店のことは知っていたけど、行列ができているのを見たのは初めてだ。「うどん日本一決定戦連覇」の実績で来客が増えたのだろう。めでたいことだ。

ドーミーイン

本日の宿、ドーミーイン倉敷。

僕が宿を選ぶ時、たとえビジネスホテルであっても「大浴場があること」を条件にする。そのため、倉敷で選ぶとなるとここが第1候補となる。他にも大浴場付きの宿はあるにはあるけれど、ここが一番値段と設備のバランスが良い(と思う。泊まり歩いた訳ではないのでなんともいえない)。

倉敷観光の中心地である「美観地区」とは目と鼻の先。立地条件も良い。

とうもろこしのひげ茶

ホテルのフロントには、「とうもろこしのひげ茶」なる謎のドリンクがあった。なんだか薬効がありそうな、なさそうな微妙な飲み物だ。しかし無料で振る舞われているのは大変にありがたいので、おいしく頂く。味?味はトウモロコシの味がした。いや本当に。

ドーミーインからの眺め

ホテルの窓からの景色。

無料だらけ

目の前に「倉敷駅前ユニバーサルホテル」なるホテルがある。嘘だろオイ、というネーミングだ。だって、ここまで駅から徒歩10分くらいはかかる。

朝食無料夕食無料温泉サウナ無料

と書いてある。温泉サウナ無料、って言われても、「大浴場は別料金です」と言われても困る。それは最初から料金に入れておいてくれよ、と。

それはともかく、ホテルなのに二食付きという変わった宿だ。確かお値段は倉敷界隈の中でもリーズナブルだったはずだ。

ただし、それに伴い夕食といっても「温泉旅館の宿メシ」みたいなものを期待しちゃ駄目で、定食が出てくるそうだ。

とはいえ、もともとがリーズナブルな宿なので、夕食は断って、外に食べに出るというのも悪くない選択だ、ということを聞いたことがある。多分僕は「もったいない」と思う方なので、宿の夕食も食べた上で、さらに外に食べに出かけるはずだけど。

ちなみに、一昔前の倉敷は日が暮れる前にバタバタと店が閉まってしまい、みやげ物店はおろか飲食店さえ探すのに苦労する場所だった。しかし今やすっかり時代がかわり、飲食店に困ることは多分ないと思う。和洋さまざまなお店が美観地区周辺にも存在する。

大橋家

眼下に大きなお屋敷が見える。一昔前の豪商、大橋家の邸宅で、重要文化財になっている。有料で一般開放されている。

倉敷を代表するもう一つの名家、大原家もそうだけど、倉敷は江戸時代に浅瀬を次々に干拓していき、どんどん沖に向けて農地を拡大していった。そこの土地を小作人に耕させ、潤ったのが倉敷の人達だ。美観地区を流れる運河、倉敷川から船で米を大阪に運び、それで儲けていた。

なお、美観地区の一角にあるレンガ造りのホテル「アイビースクエア」はもともと倉敷紡績(現:クラボウ)の工場だったわけだけど、これは干拓地を田んぼにする際、土に含まれる塩分を取り除くために綿を植えていたからだ。綿は土の塩を吸い上げる働きがあるため、土壌改良のために積極的に植えられていたらしい。

そんなわけで、倉敷には紡績工場ができたし、明日訪問する児島には帆布やジーンズの生産拠点ができたわけだ。

ちなみに近代日本は、海沿いでは綿を紡ぐ紡績工場ができ、山間部ではおかいこさんから作られる絹を紡ぐ製糸工場ができている。

(つづく)

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