
16:21
草すべり分岐から、槍ヶ鞘、そしてトーミの頭が見える。
トーミの頭の上を通過しているときは「なんでここにカシラという地名がついているのだろう?」と思ったが、下から見上げるとそびえて突き立った岩山がある。
一年でもっとも日が長い季節なので、まだ空は明るい。それでもここは谷間に位置するので、そろそろ太陽がトーミの頭の向こう側に消えてしまいそうだ。
僕が今回歩いたルート(+公共交通機関利用)は、10月でも11月でも歩ける。噴火警戒レベルが1ならば。それでも、日没時間との戦いになるので、秋に登るのはちょっと厳しいと思う。ヘッドライト持参でどうにかなるとはいえ、日没後も歩くというのは推奨できることではない。

16:22
とても気持ち良い森歩き。
西洋のおとぎ話にでてくるような、素敵な空間。
本当にここが日本で、本州のど真ん中であることが信じられない。こんな素晴らしい土地があるなんて。
ちなみにここはのんびりした平地だが、しっかりと標高2,000メートルある。

前方に見える山は「牙(ぎっぱ)山」という。標高2,111メートル。
谷底から垂直に立ち上がる崖だし、山の名前が独特だし、クライミングをやる人が集まりそうだな、と思って調べてみたが、ネット上では情報を見つけられなかった。ひょっとしたら火山で出来た山なので、脆くて崩れやすいのかもしれない。
この山の背後には「天狗の露地」という比較的平坦な台地があり、地名を見ただけでもワクワクする。でも、道はない。

16:27
建物が見えてきた。「火山館」。
山小屋のような装いだが、宿泊や食事の提供はやっていない。火山に関する注意喚起と、トイレと水とレンタルヘルメットの提供をやっているらしい。
煙突から煙がでている。管理人がいた。無人ではない。

火山館のすぐちかくに、鳥居がある。
火山館にはテラスがあり、ここで休憩することも可能。

ソーラーパネル、衛星テレビのアンテナなどが見える。
トイレは有料で200円。
中に入ってどんな施設なのか見学したかったが、時間が惜しい。宿の人に心配させないためにも、一刻も早く先に進まないと。
登山用スマホアプリは、あんまりチラチラと到着予定時刻を見ていると本当にせわしない。ゆっくりと道中を楽しむ感覚が失われてくる。マラソンや自転車でラップタイムを図っている人が、時間短縮に集中するような感覚。

16:36
ふたつならぶ鳥居をくぐり、先に進む。さようなら火山館。
この時、すれ違った登山客いて「えっ?」と驚いたのだが、その人は火山館の管理人さんと「お久しぶりです」などと会話を始めていた。どうやら管理人さんの知り合いで、ここに一泊して旧交を温めるのだろう。僕よりも下山、というのはちょっと時間として厳しい。
今日は、多くの時間において「僕がこの界隈の登山客でしんがりを務めている」状態だった。それは若干の緊張感覚えるもので、「もしここで怪我をしても、後続の人がいないから誰も気づいてくれない」ということになる。足元注意。

16:38
すばらしい山歩きはまだ続く。
美しい森の次は、火山の迫力を教えてくれる道へと変貌していった。
火山館を過ぎてすぐに、ザレ道に切り替わる。そして、硫化水素臭があちこちでするエリアに。

16:39
このあたりから湧き水が川を作っている。川底は赤く染まり、おそらく酸化鉄なのだろう。
火山館がなぜあそこにあるのかというと、おそらく川の源頭部ということで水の補給がしやすかったからだろう。

刃山と、谷。

16:41
崖崩れ現場。
地表刃は白いのだけど、崩れた場所は茶色い。赤土。
あれっ、岩・・・じゃないのか。土なのか。
これも火山でできた山ならではの光景、なのかもしれない。地層ごとに性質が異なる。

黄色く染まった石も見える。硫黄成分かな?

16:45
国土地理院1/25,000地図を見ると「浅間火山観測所跡」と書かれている場所。登山道脇に火山観測所があったらしい。今でも礎石などは残っているようだが、ワッショイワッショイと下山を急いでいる状態だとまったく気が付かなかった。

16:47
トーミの頭方面を見たところ。
確かにこの辺りだったら、広い平地があるので施設を作るには良い場所だろう。ただし、浅間山を直接観測するにはちょっと遠い。

16:48
このあたりからゴールの登山口までの間、頻繁に細かい登山道の分岐があった。どっちを歩いてもあとで合流するので結果は一緒。でも、「これ、選択を間違えたら違うところに行ってしまうのではないか?」と警戒しながら歩かなければならない。
登山地図にはもちろん載っていない。

刃山があまりに印象的なので、何枚も写真を撮っている。
僕は下山時にこの山を見かけたけど、天狗温泉から登ってくる際に見える刃山はもっとインパクトが大きい景色のようだ。写真を見ると、「おお!?」と思うレベル。

このあたりも、石の種類が様々だ。
ゴツゴツしたもの、ブツブツしたもの、すべすべしたもの、赤いもの、白いもの、黒いものとあれこれ混じっている。

16:59
相変わらず素敵な山歩き。
こういうところを歩くのは大変に結構なことなのだが、このままではいつまで経っても標高が下がらない。
現在地はおそらく標高が1,870メートルくらいで、ゴール地点は1,400メートルくらい。これから400メートルくらいをあと1時間ちょっとで急降下することになる。そろそろこの火山がつくったなだらかな、心優しげな空間は終わりだ。

キバナノヤマオダマキが見送ってくれた。
なんて可憐な花なんだ!初めて見たのでびっくり。

17:11
案の定、どどどっと標高を下げる。
「気合を入れていけよ?」という意味なのか、わざわざ「←登山コース」という看板がでていた。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
小諸は、2024年11月まで、足かけ3年、年3~4回仕事で通っていた地なのですが、そば七は知りませんでした。行っておくべきだったと激しく後悔。
自家焙煎珈琲こもろは利用したことがありますが、昨年行ったら閉店していてびっくりしました。
こうやって記事に残してもらえたお蔭で、記憶や思い出も再構築されてありがたいです!
ゆうどんさん>
おお、自家焙煎珈琲こもろの仲間がいた!
このお店、2023年に閉店して新潟にある1号店に統合したそうです。意外でした。