
09:44
ルイ・ヴィトンの森を通り過ぎてしばらく行くと、また看板が現れた。今度は「三井住友カードの森」だそうだ。このあたりは企業がメセナ活動(もはや死語?)のために使われているエリアらしい。
看板には「moreTrees」という文字が見える。聞いたことがあるが、なんだっけ?
調べたら、坂本龍一が創立者、隈研吾が代表を務める組織で、その名の通り植林を推進したり、木材の活用を推進する組織だった。
坂本龍一は僕が学生時代にもっとも愛した音楽家だったが、こういう活動もやっていたのか。
脱原発運動で注目を集めた著名人でもある坂本龍一だが、その結果の一つとして森を壊して太陽光発電所が多数できてしまっている現状は皮肉な話だ。

このあたりをこれから植林していくのだろう。

木が生えていないので、眺めが良い。

10:15
グネグネした道を歩き続けた先に、別の道路との合流ポイントが見えてきた。
「浅間山登山口」の文字も見える。
あそこがチェリーパークラインで、バス通りでもある。バス停は登山口表示のすぐ近く。

10:17
バス停近くに到着。
足が痛いのでかなりペースが落ちると思っていたが、浅間山荘のコテージや馬を観察しながらの徒歩で1時間15分程度。健常であれば1時間もあればお釣りがくる距離だ。
ここでのんびりバスが来るのを待つ。
こういう山の中のバス停は気をつけないといけない。「バスが来ないから」と別の場所に遊びにいっていたら、バスが素通りしてしまう。運転手さんだって、まさかこのバス停から人が乗ることはないだろう・・・と油断しているからだ。
客として、バスの定刻5分前くらいからは緊張感を持ってバス停前に立っていないといけない。運転手さんに気づいてもらえるように。

10:38
無事バスに乗ることができ、小諸駅を目指す。バスは1日に2便しかないので、乗り遅れなくて良かった。
バスは佐久平駅行きだ。このまま終点まで乗っていれば、北陸新幹線にそのまま乗り換えることができる。昼過ぎには家に帰り着くだろう。
でもそれだと、あまりにあっけない。温泉で一泊したとはいえ、余韻がなさすぎる。
なので、小諸駅で下車し、この界隈をちょっと散策しようというわけだ。
その後どうするかは、まだ決めていない。佐久平までJRで移動し、そこから新幹線というのが手っ取り早い。そうでなければ、軽井沢までしなの鉄道で移動し、軽井沢から新幹線でもいい。その時の気分とダイヤの接続状況で決めよう。
小諸駅に向かうバスに乗っていて感心したのは、ずーっと駅に向けて道が下っていくことだ。雄大な浅間山の裾野はここまで広がっていて、妙なアップダウンがあるわけではなく、するすると下り続ける。
なお、駅までがこういう土地の形状なのに対し、駅から南は千曲川が近くにあるせいで河岸段丘になっている。小諸から上田の間はかなりガッツリとした河岸段丘で、対岸に渡りたくても橋がなかなかなくて苦労するような場所だ。

10:40
小諸駅到着。
駅前は「こりゃすごい」と思わず声がでてしまうほど、渋い建物が並ぶ。嫌味や上から目線で「渋い」と言っているのではなく、これはこれで一つの観光資源なのではないか?と思ってしまった。
眼の前にある郷土料理店が「信州の味 遠州家」と名乗っているのがちょっとちぐはぐで面白い。遠州って、静岡県西部・浜松市のあたりの地名だ。
駅前には「小諸ロイヤルホテル」という名の宿泊施設がある。これも渋い。
写真をみればわかるが、駅のロータリーも浅間山の影響でやや斜めっていて水平にはなっていない。写真を撮っていると、平衡感覚がやや狂う。

小諸発着の高速バスはバスタ新宿行きが1日10本(うち6本はこの日運休)、大阪USJ行きが1日1本。
そんなことよりもっと佐久平駅に行くバスを出してくれよ、と思うのだが、僕がさっき乗ってきたバスしか佐久平行きはなく、つまり1日2便だった。これは意外。もっと頻繁に運行しているものだと思った。
小諸-佐久平の移動は、1時間に1本程度のJR小海線に頼ることになる。
いや、そもそも地元の人はマイカー移動か。

小諸駅。
送迎車が駅に向かって頭から突っ込む形で駐車している姿に驚く。こんな駅、あるのか。
長野北陸新幹線が開業したことによって、ここを走っていたJR信越本線は第三セクター「しなの鉄道」になった。そのため、駅舎に掲げられているロゴはしなの鉄道のものだ。
八ヶ岳の東山麓を南北に走る、JR小海線はこの駅から発着する。南は中央線小淵沢駅を起点とし、終点はこの小諸駅となるのだが、肝心の小諸駅がしなの鉄道の駅なので、小海線は長大な盲腸線になっている。
盲腸線としては日本有数の長さなのでは?と思っていたのだが、調べてみると北海道に盲腸線すごいのがあった。なので、そこまですごい盲腸線というわけではない。

観光案内所。
「詩情あふれる高原の城下町」というキャッチコピーらしい。

「あの夏で待ってる 舞台の地 信州小諸」
というパネルが設置されていた。アニメに疎いのでこの作品について初めて知った。
細田守監督作品で知られる「サマーウォーズ」がお隣の上田を舞台としているので、小諸としては地域振興に一役買うコンテンツが現れて嬉しいことだろう。偶然なのか、上田も小諸も、「夏」がお題になっているアニメ作品だ。

観光案内所ではレンタサイクルが借りられる。場所柄、電動アシスト付き自転車でないと疲れるので、当然そうなっている。
で、お値段は1時間500円から。まあまあ高いけど、消耗を考えるとこれくらいはかかるか。なにせ坂の町だ。下り坂をブレーキをかけながら下っていたら、すぐにブレーキパッドがすり減るだろうし。

10:44
とにかく、今の僕はリラックスしまくってるのですよ。開放感に満ちあふれているのですよ。
3年ぶりの本格登山を無事終了したこと、百名山登山を再開させたこと、そして温泉に浸かってまったりしたこと。
昼すぎまで小諸でゆっくり過ごす気まんまんだ。この肩の荷が降りた感を、もう少し満喫したい。
じゃあどこで何をするの?車があるわけでもないし、というとき、駅周辺を調べてみて見つけたのがこのお店。駅からすぐのところにある喫茶、「寿徳」。
ティーサロン、を名乗っているだけあって、「おいしい紅茶の店」なのだそうだ。駅前喫茶店にしては珍しい。

「絶品!生クリーム 至福の一時をお約束!」と書かれたメニュー。
紅茶推しの店だけど、メニューはコーヒー関連から書き始めている。やっぱり世間のニーズはコーヒー優位なのか。
それでも、紅茶メニューもしっかり豊富。
それにしても安いなぁ、コーヒー1杯400円。商売にならないんじゃないか?と心配になるレベル。

「軽食セット」や「ケーキセット」は600円または700円。
「クリームトースト」や「小倉クリームトースト」に「当店自慢の生クリーム」を使っているそうだ。
「東京人もびっくり!!」とか「食べなきゃ損ダヨ!!」と矢継ぎ早に煽ってくる。わかった、東京人の端くれとして、僕もびっくりする。
びっくりしたくて、このお店にやってきたんだし。

店内の様子。昔ながらの喫茶店という感じ。
常連さんが集って盛大におしゃべりをやっていて、僕みたいな一見さんの居心地が悪い・・・といったこともない。さすが駅前のお店。

アイスティーと、小倉クリームトーストのセット。これで700円。安い。
自慢しまくっている生クリームは、ご覧の通り美しい。つやつやしている。
生クリームといっても、ホイップクリームだ。じゃあ、ショートケーキみたいな感じなのかというと、それとは違う。そこまで空気が含まれておらず、密度が濃く滑らかな食感。これで甘さがキツいとくどいのだが、甘さはさほど強くないので美味しい。なるほど、強くプッシュする理由がわかる。
地方に行くと、東京の感覚から言うと塩味・甘みが強すぎる料理に出会う機会が増える。しかしこのお店はそういうことはなく、スッと口に入り胃に落ちる、なかなかに美味いトーストだった。紅茶も、心地よく美味しい。

11:29
駅の南側にある懐古園に向かう。
長ーい跨線橋があるので、歩いていく。バリアフリー化されておりエレベーターがあるのだけど、階段を使って登ったらひどく足が痛んだ。まだ全然足の痛みは回復していない。

跨線橋から小諸駅を見ろしたところ。
かなり広い空き地がある。
新幹線のルートが小諸を迂回して佐久平を通っていった理由の一つに「新幹線用地を確保したら、懐古園の敷地の一部を壊さなければならず、それを小諸市が良しとしなかった」という説がある。しかし、見てのとおりそんなものはどうとでもなりそうだ。
実際は政治にいろいろ翻弄された結果、小諸には新幹線がやってこなかった。フル規格新幹線の計画が一旦ミニ新幹線になり、またフル規格に戻るという二転三転のせいもあるようだ。
このあたりはネット上でも様々な論考がある。「正史」ともいえる、ガチッとした確定したシンプルな話ではなく、諸説あったり、時系列的にみて怪しい情報もあれこれあるようだ。
いずれにせよ、小諸の人が懐古園を大事に思うあまり、新幹線をゲットしそびれて損をした、という話ではなさそうだ。

11:33
懐古園。駅のすぐ南側にある。
もともと小諸城だった跡地にある庭園。桜の名所として知られる。
中に入るつもりだったけど、入場料がかかることを知り急にケチな気持ちになってやめた。お金が勿体ないということよりも、足が痛いのにを散策したり階段を登ったりしたくなかったからだ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
小諸は、2024年11月まで、足かけ3年、年3~4回仕事で通っていた地なのですが、そば七は知りませんでした。行っておくべきだったと激しく後悔。
自家焙煎珈琲こもろは利用したことがありますが、昨年行ったら閉店していてびっくりしました。
こうやって記事に残してもらえたお蔭で、記憶や思い出も再構築されてありがたいです!
ゆうどんさん>
おお、自家焙煎珈琲こもろの仲間がいた!
このお店、2023年に閉店して新潟にある1号店に統合したそうです。意外でした。