
12:27
登山の余韻で足が痛いくせに、「せっかく小諸に来たんだから」と歩く。足を引きずりながら。
まだ、これからの人生のうちで小諸の地に足を踏み入れる機会はあると思う。しかし、その時の交通手段は車のような気がする。電車でやってきて、その後町を徒歩で歩く機会はなさそうだ。
だから、「できるうちに、できることを」という気持ちで、歩く。
ちょっと前までは、こういう自分の行動を「貧乏性」と自虐的に表現してきた。しかし、今や結婚して家には小さいこどもがいる状況になると、単なる貧乏性では片付かなくなる。一人暮らしの自由気ままさがなくなるからだ。
金銭的・時間的な問題だけじゃない。急に「自分の年齢と、余命」が気になってくる。50歳近くになって家族が増えたこともあって、「子どもの成長を待ってから、家族一緒にお出かけをする」というシチュエーションを想像すると、どうしても自分が老いている状況になってしまう。
「子どもが巣立ってから自由気ままに」なんて考えていると、僕はもう70歳だ。健康寿命が尽きている可能性だってある年齢だ。しかも悲しいことに、年の差婚をした僕は、パートナーのいしはまだまだ現役バリバリで働いている。「老後の生活を夫婦一緒に過ごす」ということができないのは、残念なことだ。

お神輿を置く場所。

このあたりは、旧宿場町ならではの古い町並みが残っている・・・というほどではないが、ちょっと風情がある建物が並ぶ。

まるで銭湯のような外観のお店。蕎麦店「そば七」。
このお店には2001年にアワレみ隊として訪れたことがある。その時も「銭湯のような」と形容している。

21年経っても、まだ当時の趣のままお店がある、というのは嬉しいことだ。自分が年を重ねたことが、一人ぼっちじゃなかったんだ!という気持ちになる。

「がんばろう日本!」とかかれた紙が店頭のガラスに貼ってあった。「絶対負けるな コロナウイリス」だって。
この手のスローガンというのは、3.11東日本大震災以降時々見かけるが、主語がよくわからない言葉なのでつくづく感心する。日本語ってすごいな、と思うからだ。
バカにしているんじゃない。とっても不思議な言葉だな、と思う。
主語述語が曖昧なだけでなく、「負けるな」という言葉の意味もよくわからない。いわゆるゼロコロナだと勝ちなのか、それとも「コロナにかかっても、重症化しなければオッケー」程度の勝利条件なのかもわからない。
「そんなのはこれを見た人それぞれの解釈に任せればいいんだ」と言われればそれまでだが、そうやって「人それぞれの解釈」頼みの日本人気質が、企業経営においても歴史上においても大きな失敗を招いたことは言うまでもない。

この建物も味わい深い。
どうしてこういう飾りを窓に取り付けようと思ったのか、建物のオーナーや建築士に話を聞いてみたいくらいだ。
あと、ここも隅切りされた建物の角が大きくガラス張りになっている。東京ではあんまり見かけない光景だと思う。

山に行かせてもらったので、いしにはお土産をしっかり買って帰らないと。
シフォンケーキ専門店があったので、ここでシフォンケーキを買う。
ただ、シフォンケーキというのはフカフカした食べ物なので、長時間のお持ち帰りには向かない。うっかりすると、帰宅時にはケーキがぺしゃんこになってしまう。

ろうきんの窓にも、
「ドカンショパワーでコロナに負けるな!!」
という言葉が書いてあった。これも何がなんだかよくわからない言葉だ。
でも、こういう言葉に勇気づけられる人がいる・・・のかもしれない。
特にろうきんということは、商売をやっている人が使う金融機関だ。先ほどの張り紙がウイルスを敵視しているのに対し、こちらの「負けるな!!」は、「コロナで商売がうまくいかなくても、耐えて頑張れ!」という意味なのかもしれない。
短時間で「負けるな」という表現を2つみたけれど、意味が違っているっぽいので、興味深い。

敢えて小路を見つけるたびに、細道に入っていく。
お酒をまったく飲まないし、飲んでいた頃だってこういう小路にあるようなスナックなどのお店とは無縁だった。なので、たまに旅先で小路を歩くと、感心しっぱなしだ。
このあたりでお酒を飲んだら、代行タクシーを利用するしかないだろうから、飲み代トータルはそれなりにかかりそうだ。

12:43
駅からほど近い場所に、「自家焙煎珈琲こもろ」というお店があるので、そこで一杯やることにした。お酒じゃなくて、珈琲を。

しぶい店内。
こういう喫茶店に入る機会がほとんどないので、たまに入ると背筋がシャンとする。
常連の巣窟になっていたらどうしよう、と身構えるのがこの手の喫茶店だけど、そういう気配はなし。

店名を冠した「こもろブレンド」にしようかと思ったけど、浅間山登頂記念ということで「あさまブレンド」を頼む。お値段450円。
安すぎる。
どうやって商売が成り立っているんだ?と心配になるレベル。
不思議なのが、「スペシャルブレンド」が倍の値段の900円であること。これ、誰が飲むんだ?倍だぞ?極端。

珈琲一杯だけいただくのが申し訳ないので、マンゴーレアチーズケーキも頼んだ。これでも850円。
それにしても優雅な一日だなぁ・・・まだ13時前で、今日は2軒の喫茶店に立ち寄って、その他に蕎麦を食べて、街歩きも楽しんでいる。しかも今朝は温泉宿だ。なんだ、最高じゃないか。
山登りも素晴らしかったけど、その後の開放感がすごすぎる。
もし可能なら、今後もこういう登山スタイルがいいな。一日はガチ登山でハードワークして、次の日はダラーっと弛緩する一日にする。逆はダメだ、ダラーっとして、次の日登山というのは。山に登る気が失せるから。2日目にダラーっがあるからこそ、「自分へのご褒美」という概念がまかり通る。

13:18
小諸駅にやってきた。さて、どの電車に乗って帰ろうか?
時刻表を見ると、13:37にJR小海線・小淵沢行きが出て、13:38にしなの鉄道・軽井沢行きが出る。立て続けだ。
小海線に乗れば、佐久平から新幹線。しなの鉄道に乗れば、軽井沢から新幹線。
考えた末、軽井沢までしなの鉄道で移動することにした。佐久平駅には何もなく、お土産を買うのも難儀しそうだからだ。軽井沢に行けば、あれこれ買うことができるだろう。

この駅のすごいのは、改札前のヒリおばでキャベツが山積みになって売っていたことだ。
しかも無人販売。
巨大なキャベツが1玉100円。さすが、安い。
観光客向けに売っているのか、誰に向けて売っているのか謎。

無人販売所なので、料金箱が設置されている。
その料金箱は、おそらくワンマン運転する電車の運転席脇に設置されていたものだ。
両替が必要な場合は駅窓口へ、と書いてあるのも面白い。

駅のロビーに掲げられた、駅周辺の宿の名前が書かれた札。
そういえば昔は、温泉街最寄り駅にはどこにもこういうのがあったな。
そして、駅によっては無料電話機が設置されていて、(1)を押したら◯◯旅館、(2)を押したらホテル◯◯、とダイレクトに通話ができるようになったいたっけ。
小諸駅のお宿プレートは、すでにいくつも歯抜けになっていた。廃業したのか?

運賃表を見る。
第三セクター化したことによって運賃バク上がり、なのかと思ったが、かなりお得な値段設定なので意外だった。
軽井沢まで500円、上田まで410円、長野まで・・・ああ、長野に行くためには一旦JR篠ノ井線を走ることになるのか・・・1,180円。商売が成り立つのか、心配なレベル。

さすがはもともと信越本線だった路線だ。1時間におおむね2本のペースで運行されている。
朝7時台の長野方面行きは4本。結構な頻度だ。
ただ心配になるのが、長野方面と軽井沢方面でダイヤの密度が非対称だということだ。これじゃ、どんどん長野の方に電車が集まってしまう。回送列車でこっちに連れ戻しているのだろうか?
すごく不思議だったのだが、この後いざしなの鉄道に乗ろうとして、このからくりがわかった。ああ、小諸で一旦電車は上下線が分離してるんだ。小諸始発の電車が上りも下りも多く発着しているので、こういう非対称なダイヤが成立するんだ、と。
おっと、そうこうするうちに1番線に何やら豪華な列車がやってきた。「ろくもん」という観光列車だ。まるで漆塗りかのような色合いの電車だ。へええ、しなの鉄道も観光列車を走らせていたのか。知らなかった。

これは後ほど、軽井沢駅に停車していた「ろくもん」を出入り口の外から撮影したもの。
入口すぐのところにソファ席があって、その奥には障子(風?)の引き戸があって個室がある。ここで、列車運行中はご飯を食べることができるのだという。へえ、いいなぁ。
https://www.shinanorailway.co.jp/rokumon/about
さぞやお高いんでしょう?と思ったが、乗車券のほかに指定席券1,020円(軽井沢~長野間の場合)を払えば乗車できるのだという。それは安い。
一方、料理付きプランになると、テーブル付きの個室や豪華な食事がついて18,500円。一気に高くなる。でも、憧れるプランだ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
小諸は、2024年11月まで、足かけ3年、年3~4回仕事で通っていた地なのですが、そば七は知りませんでした。行っておくべきだったと激しく後悔。
自家焙煎珈琲こもろは利用したことがありますが、昨年行ったら閉店していてびっくりしました。
こうやって記事に残してもらえたお蔭で、記憶や思い出も再構築されてありがたいです!
ゆうどんさん>
おお、自家焙煎珈琲こもろの仲間がいた!
このお店、2023年に閉店して新潟にある1号店に統合したそうです。意外でした。