16:20
神社からすこし下ったところで、ばばろあがそわそわしだす。
「このあたりに砲台跡があるはずなんだけど・・・」
と、手元の地図を参照しながら、茂みの様子を伺う。
「こんなところ、なかなかもう来れないから、今いっておかないと」
と言って、彼は茂みの中に突撃していった。彼のいいところは、「絶対いいもんじゃけえ、お前らもついてこい」とわれわれを強引に誘おうとはしないということだ。自分のやっている特殊性はちゃんと理解していて、無理にわれわれに勧めてくることはしない。
で、残された3人だけど、とてもじゃないが彼の道楽に付き合う気にはなれず、彼を見送った後は先に下に降りる事にした。確実にすぐそこに砲台があるなら話は別だが、あるかどうかわからないものを探索するのはごめんだ。
16:21
港に通じる石段。結構長い。先が見えない。
20年前は、ここをひいひいいいながら登って水を汲んだわけだ。で、帰りは帰りで、20キロある水タンクを抱えながらこの石段を下りるわけで。結構な肉体労働だ。
16:28
港からスカッと一直線に神社の道が続いているのかと思ったら、そうではなかった。集落のごちゃごちゃした細い道の中に紛れる。
途中、なにやら風情のある時計を発見。どうしてこんな土台の時計台を作ったのだろう?この港が活況を呈していた時に作ったのだろうか?
16:30
港付近に下りてきた。
「えーと、このあたりによろず屋があったはずだけど・・・」
僅かな記憶を頼りに、歩いてみる。そういや、20年前、コロッケ買って食べたっけなあ・・・と思いながら。基本的な食料は全て名古屋から持ち込んだアワレみ隊だが、それでも時々よろず屋で買い物はした。それが、港近くにあったはずなのだが。
「どうやら、ここらしい」
指さした先には、空き地があった。ぴったりここだったかどうかまでは覚えていないが、おそらくそのよろず屋は現存していないようだ。これもまた、時代の流れ。
それにしても、ここの住人は一体どこで買い物をしているのだろう?多分、どこか目に着かないところによろず屋はあるのだろうが、われわれは結局その存在には気がつかなかった。
16:32
ジュースを自動販売機で買おうとしていたちぇるのぶが慌てている。100円玉を投入しようとしたとき、うっかり手を滑らせてしまって100円玉を落としてしまったのだった。それだけなら、しゃがみ込んで自販機の下に手を突っ込めばよいのだが、よりによって100円玉が落ちたのは、基礎のコンクリートブロックに穿たれたボルト用の穴だった。
16:33
こんな感じ。
ほぼ100円玉と同じサイズの穴。よりによって、なんでこんなところに入ってしまうかね。こういうところも「ちぇるのぶらしい」といえるんだが・・・。
この穴、結構深くて、そこら辺に落ちている棒を使ったくらいじゃ、どうにもならなかった。
ちぇるのぶが半ば諦めたところで、しぶちょおが出てきた。
「もしこれを拾うことができたら、100円貰ってもいい?」
「いいよ」
「よし!」
これで気合いが入ったしぶちょお、大きな体を折りたたんで、一心不乱で100円玉サルベージに注力しはじめた。
長い棒を二本見つけてきて、それを箸がわりとして、100円玉を捕まえる作戦。
16:37
奮闘すること5分、なんと100円玉のサルベージに成功!
満面の笑みを浮かべる、しぶちょお。彼はこの後、ゲットした100円玉は私物化することなく、ちぇるのぶに返却していた。おお、仏がいたぞこんなところに。ありがたや。
神島の目抜き通りの写真。1993年のばばろあ。
よろず屋のご厚意で、リアカーを借りる事ができた。そこに天幕用品一式をパンパンに詰め込み、われわれは一路古里ヶ浜を目指したのだった。見知らぬ部外者であるわれわれに対して、リアカーを貸すという申し出に恐縮したおかでんは、
「ありがとうございます!必ず、返しますから!」
と言ったのを覚えている。でも、当たり前っちゃ当たり前だよな、閉鎖空間の島なんだし。どこかに持ち逃げするなんてことは、できない。
写真のばばろあは、リアカーゲットで負担が軽減されたからか、にこやかな顔をしている。
16:44
2013年のばばろあ。
被い茂る藪の前に砲台探しを諦め、神社から下りてきたばばろあと合流したので、この写真を撮ってみた。場所の特定は比較的容易だった。木造の建物が当時も今も現存していたし、道路の形などからやりやすかった。しぶちょおは言う。
「こういうときはマンホールの位置を確認するのがいい。マンホールの位置はそう簡単には変わらないから」
と。なるほど。だから、双方の写真も、ほぼ同じ位置にマンホールを配置してみた。
16:53
山海荘に戻る。早速風呂だ。汗かいちゃった。
山海荘の最上階、4階がお風呂だったので、早速お風呂に入りに行く。菖蒲風呂になっていた。
17:03
風呂からの眺め。漁協の建物があるので船着き場が見えないのだが、西側が見えるので沈みゆく空を楽しむ事ができる。長風呂向き。
17:18
風呂上がりに、コーヒーとグリーンDAKARAを手にご満悦な顔をするおかでん。
普通、この時間は「水断ちタイム」だ。夕食のビールに備えて、水分を一切断つ。しかし、2013年バージョンのおかでんは、お酒をやめちゃっているので、「水断ち」なんてことはしない。飲んじゃえ、飲んじゃえ。
うーん、まだ違和感は、あるな。
19:06
夕食時間になったので、1階の食堂に下りる。さあ、お酒を飲まないことだし、食べるぞ、食べるぞ。
用意されていた食事は、シンプルながらこれで十分、という内容の食事だった。お酒を飲むなら、いろいろごてごてと酒肴がある「いわゆる旅館料理」がうれしいが、ご飯をもりもり食べるんだったら、あれこれおかずはいらない。これくらいで十分だ。
19:06
ばばろあが気を利かせて、宿の予約時に注文してくれていた刺身の舟盛り。一人頭いくらだったかな、ちょっと金額は覚えていないが、やっぱり海に近い宿に泊まるんだったら、こういう「盛り上がり宴会ツール」があった方が楽しい。
伊勢地方ということで、伊勢海老もいるよ。
若干、船の大きさとのっかている刺身のサイズに問題があるような気がするが、まあ仕方がない。この船、でかすぎだろ。一体何人前の刺身を盛りつけることができるんだ?4人前でこのありさまなんだから、詰め込めば8人前は乗せられるかもしれない。まあ、無駄に大根のツマなんぞを敷き詰めて、後で廃棄するだけ・・・というよりはマシだと思う。
19:06
アワレみ隊における典型的な光景。料理を前にすると、写真撮影に夢中になるのが、おかでんとしぶちょお。そして、ばばろあは料理をじっくりと吟味しはじめる。写真におけるばばろあは、この刺身盛りをどうやって四等分に分けようかと早速検討を始めていた。
「適当に、船から直接とればいいじゃん」
と言ったが、ばばろあは
「いや、ここは平等を期すためにちゃんと取り皿に取り分ける」
と言った。実際、ばばろあ炊事班長の手によりうやうやしくお刺身は取り分けられ、その後、ジャンケンにより自分が食べる皿を選ぶという、これでもかというくらいの平等さが徹底されたのだった。
19:11
ご飯をよそうしぶちょお。これもアワレみ隊の旅行の定番シーン。
ほぼ全ての旅行において、しぶちょおはおひつのすぐ横に陣取る。お酒を飲まないので、一人だけご飯を食べるからだが、そのために「ご飯の盛り加減」はしぶちょおのおまかせになる。昔は、選択の余地なく、強引にてんこ盛りにされたものだが、今ではしぶちょおは「どれくらいにする?」と聞くようになった。各自の腹具合にあわせて、適度に。でも、「たくさん食べる」といったら、とてもうれしそうな顔をして、昔同様にこれでもか、と盛ってくれるのだった。
19:12
配膳が全て完了したので、いただきますをしようじゃないか。おっと、その前に乾杯を。
今回も、全員お酒はなし。「飲めばいいのに」とおかでんは周囲にすすめたが、ちぇるのぶも、ばばろあも「いや、今回はやめとく」という。結局、お茶での乾杯となった。うわ、見慣れない光景だなあ。
19:15
舟盛りから刺身を取り皿にとりわけ中のばばろあ。この真剣な顔を見ろ。いかに、平等に取り分けようとしているかが、この顔色からよく分かるはずだ。
「そんなん、適当でいいじゃん」
というのは、おそらく酒飲みの発想なんだろう。酒飲みって、「自分のペースで、適当に」大皿料理をつまむ習性がある。だから、均等に分けるなんてことは全く気にしない。
それにしても、せっかくの舟盛りなのに、皿に取り分けてしまったら「単なる刺身盛り合わせ」になってしまうんじゃないか・・・?と疑問に思ったが、それは口には出さなかった。
19:17
うれしそうな顔をして、山盛りご飯を頬張るおかでん。昨日の中国料理屋と同じ展開。自分自身、こういうシチュエーションってのはまだ慣れていないので、若干居心地が悪い気はする。でも、だからといってビールが飲みたい、というわけではない。
19:22
宿の人が気を利かせてくれて、写真を撮ってくれた。アワレみ隊4人、20周年記念の宴中でございます。
そういや、「20周年を記念して」とかいって、僕が演説をぶつでもなし、何か記念品が出るでもなし。記念行事的な事は全く考えていなかったな。思いつきもしなかった。そういうのは別途やってもいいかもしれない。
19:53
壁にかけられていたユーモアな絵。
「海のプレイボーイ イシダイジュンイチ」
だって。面白いな。このような絵が、何枚も掲げられてあった。
ところで「海のプレイボーイ」って何だ。カニとかサザエとかにもちょっかい出したりするのかな。
19:55
食事がほぼ終わったところで、お皿の上には伊勢海老の殻とか、鯛のお頭とかが残されていた。
「・・・鯛マン、やっぱり登場するんだろうなあ」
つぶやくおかでん。
「やっぱりここに鯛のお頭があるってことは、鯛マンは当然このあたりにいるよな?」
そういって、しぶちょおの顔をチラと見る。
「俺か!俺なのか!」
以前、いつだったか、しぶちょおは伊勢海老を頭にかぶって「海老マン」を演じた事がある。それと同じ事が、この鯛のお頭でできるんじゃないかというわけだ。
「いや、さすがにこれを頭にかぶるのは」
とか言いながら、しぶちょおは鼻先に鯛をくっつけた。
「おお!鯛マンだ!鯛マンだ!助けて!鯛マン!」
げらげら笑いながら、写真を撮る。
鯛マンとは一体何者なのか?必殺技とかあるのか?ウィークポイントは?なんてキャラ設定をするのも面倒なので、とりあえず「鯛マン」というその見てくれだけで大笑いして楽しんだ。お酒がなくったって、楽しいものは楽しい。
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