那須町をふるさとにした【那須湯本温泉】

貸し切り風呂でのぼせたあと、男女別の浴場も偵察に行ってみる。「偵察に行く」もなにも、貸し切り風呂から徒歩数歩の場所だけど。

女性の風呂には「姫」というのれんが、男性の風呂には「殿」というのれんがぶら下がっていた。

いかんな、こういう時代劇チックなネーミングだと、どうしても「あーれー」を連想してしまう。

あのシチュエーションにおける男役って、殿ではなくて豪商とか悪代官とかだと思うんだけど、でももう、とっさに「あーれー」を思い出したのだから、パブロフの犬のようなものだ。

でも、どうなんだろう?今の若い人って、「あーれー」って言葉を聞いただけで、なんのことか理解できるのだろうか?たぶん、「時代劇」そのものを殆ど見たことがないだろうし。

そもそも、「暴れん坊将軍」や「遠山の金さん」をはじめとしてまだいろいろな時代劇があったご時世に育った僕でさえ、肝心の「あーれーシチュエーション」は見たことがないと思う。せいぜい、お笑い番組とかでネタにされていて、それを見た程度じゃなかろうか。「志村けんのバカ殿様」とか。

「あーれーは男のロマン」となんとなく思われているが、実際に男性で「あーれー」をやったことがある人って、どれだけいるのだろう。女性で「あーれー」と叫んでしまった人は何割いるのだろう。殆どいないんじゃないか?

実際問題、僕自身がやったことがない。やろうと思ったことさえなく、しまった、なんで思いつかなかったのか!?と今となってはとても悔しい。「彼女と温泉旅行」なんてのは何度となく経験があるんだけど、浴衣を着ている相手に対しては、「あーれー」をやるという発想が全く出てこなかった。やっぱり、着物の「帯」だからこそ、くるくるぶん回し甲斐があるんだよな。浴衣の腰紐じゃあ、思いつきもしなかったぜ。でも悔やまれる。

その流れで、今思い出した!そういえば僕の人生、「裸エプロン」の経験もないぞ!あれえ、おかしいな。

この歳になってくると、自分の平凡さに絶望感すら憶える。なんだ、全然変態ではなかったのか、と。ガチの変態はイヤだけど、そこそこの変態くらいにはなってるんじゃないかと思っていたのに。クッソつまらない、ノーマルだったとは。せめて「あーれー」くらいはやれよな。そんな発想に思い至らない程度の、彼女への愛情だったというのか

・・・うるさいうるさい、文章がなげーよ。何を熱く語ってるんだよ。一旦ストップ。

男性風呂と女性風呂は入れ替え制ですよ、という案内。

「千慈の湯」と「若鹿の湯」という名前になっているらしい。すごいよな、「千慈」って言葉がしれっと出てくるなんて。

こういう風呂の名前って、なにやらいかつい名前がついていることがある。大げさにネーミングしないと、サマにならない・・・みたいな業界慣習があるのだろうか?

医療法人も、「なんだこれ?」という漢字の名前が多いけど、それよりはまだフレンドリーだけど。

午後10時でお風呂が切り替わる。

男女入れ替えは早朝、というパターンの宿が多いけど、ここは夜更けに入れ替わるのでちょっと面白い。「寝る前に、両方のお風呂を楽しむ事ができる」ということがサービスの一環なのだろう。確かに、ありがたい。

それにしても、「午後9時59分」までが男性風呂で、「午後10時」に女性風呂に切り替わる、と書いてある几帳面さ。1分の切り替え時間がありますよ、と宣告しているわけだ。実際にそこまでガチガチな運用ではないと思うが、宿主の生真面目さが覗える。

脱衣場。

大きなカラフルなカゴが目に付く。これだけデカいと、もふもふのコートを中に突っ込んでも、ゴワゴワのデニムを雑に脱いでいても、溢れることはなさそうだ。鎧甲胄でも入るんじゃないか。

猫がいたら、ソワソワしっぱなしだろうな。「中に入りたい!できることなら全部!」って思うに違いない。

で、大浴場なのだが、これがびっくりした。

ここは鍾乳洞か?という作り。小さな湯船が、段差を伴って連なっている。

温泉の析出物のせいで、湯舟と床は黄色っぽくなっている。なにかくすんだ印象で、あまりきれいには見えない。

でも、強酸性の温泉なので、清潔さに関しては間違いないはずだ。殺菌効果が強いので、この風呂場でカビが生えるなんてことは、なさそうだ。

階段状に並ぶ小さな湯舟の最上段には、寝湯があった。

ちゃんと湯舟脇には、解説看板がある。

これはとても小さい。一人が入ればいっぱいだ。

・・・と思ったら、ここは湯舟ではなく、「かぶり湯」をするための湯溜めだった。

共同浴場の「鹿の湯」がそうであるように、このお風呂でも入浴前に、頭からお湯を50回~100回かぶるとよい、とされている。湯温が高いので、ウォーミングアップのためだ。

かぶり湯の効果の一つとして、「疲れ目」というのがあった。なるほど、目をつぶってお湯をかぶっていても、ほんの微量のお湯が目に侵入する。それが絶妙に疲れ目を回復させるのか。・・・と感心していたら、下に「温泉が目に入らないよう十分ご注意ください」と書いてあった。違った、やっぱりお湯が目に入っちゃ、いけないんだ。

おそらく、お湯をかぶることでこめかみや首筋の筋肉がほぐれ、それで眼精疲労が回復するのだろう。

次のお湯は・・・

打湯。

要するに「打たせ湯」ということだ。「頭には絶対にあてないで下さい。」と書いてある。えー、頭にビシビシとお湯を打たせたかったのに。効果が強すぎて、目が回ったりするのかもしれない。

こんな写真を撮っているから、カメラが壊れやすいんだ。

これまで、カメラが壊れる原因の多くが「落っことして、フレームが歪んで、接触が悪くなる/沈胴式のレンズが出てこなくなる」というパターンだ。でも、ほかにも「電源OFF時にはレンズが閉まるシャッター式レンズカバーが、スムーズに開いたりしまったりしなくなる」という事象もある。たいていこういうのは、温泉成分をたっぷり含んだ場所にカメラをしばらく置いていて、そのせいで微細な動きができなくなる。

やめときゃいいのに、と思う。こんな曇った写真を撮っても、後で見返しても「だからなんなんだ」と思う。でも、風呂場を見たときは「うおおお、これは写真を撮らなければ!」と思っちゃうんだよな。

ついには、三脚まで持ち込んで自撮りを始めるありさま。

温泉場では、三脚もすぐに痛む。特殊警棒みたいに伸縮するタイプの三脚を普段使っているのだけど、スムーズに伸び縮みしなくなってくる。で、三脚は1年ともたない。

いよいよエスカレートして、風呂の中にカメラを持ち込んだの図。

風呂につかりながら、自分の目で見えている光景を撮影してみた。

左側にカラン、右側に小さな湯舟が会談状に並んでいる。

・・・だからなんなんだ、と。いや、もう返す言葉がない。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください