鋸南町の名産である水仙。冬の今が見頃。
あっちこっちに咲いている。あまりに無防備に咲いているので、野生でこんなに生えるものなのか?と思うが、ちゃんと育ったものは出荷される、人為的に管理されたものだ。
路端に咲く水仙だけど、これも立派な人間の農作物。野生動物になぎ倒されたら、れっきとした獣害になる。
耕作放棄地のような、野原のような、水仙栽培地のような曖昧な場所の先に箱わなが見える。
あぜ道の先がわな。
ここはわなの両端が開いていて、手前側からも奥側からも中に入ることができるようになっている。イノシシが中に入って、紐を引っ掛けたら両側の扉がいっぺんに閉まる。
水仙が倒れている。雨風の影響なのかな、と思ったらこれもイノシシの被害なんだという。
ええ、イノシシってこんな無駄なことをやって人に被害を与えているのか。余計なことするなよなぁ。
でも、イノシシに言わせると、「野に咲く水仙に体当たりして何が悪い」なんだろうけれど。
こっちも、舗装道路から逸れてわざわざ水仙畑を荒らしている。豪快に倒してしまって、これでは商品にならない。
別の箱なわ。ここは米ぬかが餌に使われていた。
わなには、設置者の名前や連絡先が記された札がくくりつけられていた。
見晴らしの良い山の尾根を歩く。
眼下には、水仙が生えているところと、何も生えていないところがある。
「もともとここは一面の水仙畑だったんですが、荒らされてしまって水仙がほとんどなくなってしまったんです」
と教えてもらい、びびる。えええ、こんなになっちゃうのか。害獣被害、半端ない。
ついでに驚いたのが、こんな山の斜面までも水仙畑にして人間はあきないをやっていたのか、と。
そりゃあ、野生動物とバッティングするわけだ。
「こんな山が人為的な水仙畑?御冗談を、たまたま群生していた水仙を『畑だ!』と言っているだけでしょう?」
という僕の疑いの眼差しに対し、どうだと出てきたのがこれ。
あれれ。ソーラーパネルとバッテリーだ。そしてこれが電気柵につながっていた。
驚いた。本当にここは「人間が、マジで動物に入ってきてほしくない場所。いやマジで。ほら、電気柵も設置したし」というところだった。
講師の方が、「うーん」と言いながら装置の動作を確認している。
どこかで漏電しているのか、断線しているのか、うまく電気柵が作動していないようだった。
雑草が生えていればそこから電気が漏れるし、メンテナンスが大変だ。
たくさん生える、美しい水仙。
近寄らなかったけど、何の変哲もない山の中の木に、わな設置の標識がくくりつけられていた。
あの近くにくくりわなが埋め込まれているというわけだ。そして、僕のような素人にはわからないけれど、この目の前がけもの道だということだ。
「この付近にわなが設置されているので注意」と書かれた看板の脇を歩いていく。
このあたりは、鋸南町と富津市との境界線に近いのでわなの設置場所には注意が必要なのだという。うっかり富津市エリアにわなを設置するわけにはいかない。
同様に、山狩りをやったときにイノシシやシカが別の自治体に逃げ込んだら、もうそこからは手出しができないらしい。野生動物に対しても、人間が決めた自治体の決まりごとが適用されるというのが大変だ。
(つづく)
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