綺麗事じゃ済まされないジビエ【鋸南町狩猟エコツアー】

午後からは、実際に防護柵を作成する作業を体験する時間となった。

雨が降っているので、コミュニティセンターの玄関先で作業を行う。

用意されたのは、ワイヤーメッシュ。ああ、素人の僕でもこれなら知っている。工事現場で、床や壁の強度を増すためにコンクリートの中に埋め込むやつだ。

これを害獣の侵入から田畑を守るための柵に転用するとは。講師の方曰く、「これで手作りしたほうが安くつくから」だそうだ。

くくりわなの時もそうだったけど、コスト意識は大事。なにしろ、趣味でやってるわけじゃない。農作物を被害から守るための、「保険」のようなものだ。ちょっと贅沢してみました、とか自分へのご褒美!といった性質のものじゃない。きっちりガードができるなら、安いに越したことはない。

ただ、ワイヤーメッシュが安いといっても、田んぼや畑を守ろうとするなら膨大な数がいる。家庭菜園じゃないんだから、10枚20枚で済む話じゃない。桁が1つまたは2つ違ってくるので、結果的にとんでもないお金がかかってしまう。

調べてみると、だいたい1m×2mのワイヤーメッシュ1枚で1,000円程度するようだ。おう・・・10枚で1万円か。使い捨てではないといっても、数百枚規模になると負担がキツすぎる。

本当は実際に畑に行って、柵を組んで現地に設置するところまでやる予定だった。しかしあいにくの雨なので、軒先で組んで、そのあとバラすことになった。

コミュニティセンターの玄関は、スロープがついている。今回はこのスロープに沿って柵を組むのだという。もちろん、地面の角度が途中でかわるので、それにきっちりあわせて柵を組まないといけない。なにしろ、わずかな隙間でもイノシシは見逃さず、そこから地面を掘り返したり、柵を押し倒したりする。地面にぴったり柵が埋まっていないといけない。

とはいっても、ワイヤーメッシュは長方形だ。スロープに沿って斜めに、しなやかに向きを変えるなんてことはできない。力任せでえいやっと捻じ曲げられる・・・わけはない。その程度の強度だったら、イノシシの鼻でひん曲げられ、突破されるのがオチだ。

メッシュの柵で農作物を守る、ということは、害獣からすると「ごちそうが丸見え」の状態でもある。予算が許すなら、このメッシュにトタン板を増強して害獣からの視界を妨げたいところだけど、贅沢を言い出すときりがない。「中が丸見えだけど、頑丈で突破困難な柵」を作るしかない。

そんなわけで、何人かで2枚のワイヤーメッシュを持ち上げ、そのうちの1枚をスロープにあわせて斜めに傾けてそのままキープ。

ここの2本の柵のさかい目に、鉄棒を添え、ワイヤーで固定するのだという。

さらにはその鉄棒をもう一本斜めに追加して、倒れないように補強する。

これ、結構たいへんだ。一人でできる作業じゃないので、何人かがかりでやっていかないといけない。

いくら整地された田畑といっても地面は真っ平じゃないし、一枚一枚現地で柵を組んでいくのは大変だ。しかも、地中深くしっかりと柵を埋め込まないと、柵を突破されてしまう。

さて実習はここから。ワイヤーメッシュと鉄棒を細いワイヤーで固定する作業を試してみることになった。渡されたのは、針金と見たことがない器具。

この器具は「ワイヤーハッカー」と呼ばれるものだ。フックのついた金具とグリップ部分から成り立っているのだけれど、フック部分がグラグラ、クルクル動く。

このワイヤーハッカーを使って、ワイヤーをねじっていく。馴れないと、かなり難しい。

緩みなく、きっちりワイヤーを締め上げて柵を固定しないと、グラグラしたら害獣に壊されてしまう。

何回もやってみて、まあまあうまくいった例。

こういうねじり方をしてメッシュや棒をワイヤーで固定する。初めての体験だった。学校の図工や技術の授業では習わなかったから。

今日はここまでで実習は終了。これ以上柵をどんどん組んで、ワイヤーで固定してしまうと後でバラすのが大変になるから。

わなの設置とか実際の害獣駆除というのもいいけど、こういう「害獣防止柵の設置」を実際に現場で行うボランティア募集、というのは案外参加者があるような気がする。少なくとも、鋸南町だったら東京から適度な距離感で、うまくPRすれば無料でも手伝いたい、という人はいるんじゃないか。お礼として、設置後に「けもの道トレッキング」の時みたいにイノシシ肉バーベキューで意見交換会を開催していただけたらハッピーだ。

屋内に戻ってみたら、イノシシ肉のブロックが並べられていた。ほしい人はどうぞ、という。おおお。これはうれしい。

スライスされたイノシシ肉はこれまでも見てきたけれど、こんなブロック肉がいただけるなんて人生初だ。せっかくだから、できるだけデカいのが欲しい。いやマジで。

ということで、参加者全員の中で一番鼻息荒くじゃんけん争奪戦に参加し、勝ち抜いた僕が手にした肉はこちら。

冷凍されていて、ビニールに包まれている。どこの部位だかよくわからんが、とにかくでかい。

見てよこれ。自分の顔との比較すると、ほとんど顔と一緒のサイズだよ。これ、貰ったはいいけどどうやって食べようかねえ。

肉にまだ余裕があったので、さらにもう一つブロックをいただいた。一生分のいのしし肉を今日でゲットした感じ。こんな幸せなことがあろうか。

ところでこの棒状の肉、どこの部位だ?ウデとかモモといった四股かもしれないし、胴体の肉を単にこういうサイズにカットしただけかもしれない。

帰り道、鋸南は桜が咲いていた。ああ、もう春だ。

イノシシは年中生息しているけれど、肉は圧倒的に秋から冬にかけてがおいしい。冬の寒さと、餌の少なさをしのぐために秋に餌を大量に摂取し、脂肪をため込むからだ。

そんなジビエシーズンももう終わり。

鋸南町の2019年度「狩猟エコツアー」もこれにて終了となった。直接お役に立てることはなかったけれど、機会があればこういう害獣駆除については後方支援に回れたらいいな、と思った。

さて、東京に戻ろう。

(つづく)

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