「このあたりにわなをしかけていますが、どこにあるかわかりますか?」
と案内役の方から言われ、あたりをキョロキョロ見渡す。我々は尾根沿いのけもの道だか歩道だかわからないような道を歩いているが・・・それ以外にも、けものが通る道があるということか。
よく見ると、山の斜面に生えている木の幹に、あちこち標識が取り付けられている。え、こんなところにわなが仕掛けてあるの?
標識のアップ映像。わなは地面に埋めてあるので見えないのは当然として、わなをくくりつけている木がどれなのかさえ、わからない。ワイヤーの存在が見えない。
そして、こういうところをイノシシやシカが通り抜けるのか・・・と唸らされた。
ちょっとまって、なにかトランシーバーのようなものが取り付けられているぞ。
黒い、箱状のものが木にくくりつけてある。アンテナと思しき棒が突き出ているので、なにか通信をするものだ。
これは暗視機能を持った監視カメラで、動物の行動を遠隔で観察することができるのだという。
現在、「クラウドハンター」という取り組みを実験的にやっていて、そのための装備だという。なにそれ?クラウドハンター?面白そうじゃないか。
クラウドハンターは、都会に住んでいる人など「実際に猟師になるのはちょっと」という人向けのクラウドファンディングで、資金提供した人はわなを設置する権利が与えられるのだという。1か所おいくら、という形で。もちろんわなを設置するのは免許を所持している猟師さんだけど、場所の指定はアマチュアの投資家ができる。
で、投資家は自宅からでもこのカメラの映像を確認することができて、まるで釣りゲームのように害獣がわなにひっかからないか、観察することができるという。
もしわなに害獣がひっかかれば、地元の猟師さんが処理するし、「これから処理しますけれど来れますか?」と連絡を受けて現場に急行できれば、獲物の最期に立ち会うこともできる。そして肉はお持ち帰りができる。
これは良い取り組みだ。害獣駆除というのは、ひたすら「守り」の作業だ。農作物の被害が出なければオッケーなのであって、儲けにならない。損しないようにするのが精一杯だ。でもこのクラウドハンターは、少しでも現場の儲けにつながる取り組みかもしれない。
ジビエ肉として流通させるためには、処理施設を作ったり検疫したり大変な手間と費用がかかる。なかなか実現は難しいけど、こういう取り組みならコンパクトにスタートできるだろう。とても面白く、今どきなアイディアを見させてもらった。
機会があれば僕もこの取り組みに投資してみたいものだ。今年度の取り組みはもう終わったそうなので、また別の機会に。
おっと、ここにも箱わな。
箱わなの奥に、黒いカメラが設置されているのが写真に写っている。
崖の下にも標識。こんなところも動物は通るのか。
木にくくりつけられた、くくりわなの標識。
「けもの道トレッキング」の名の通り、道があるようでないようなところをどんどん歩いていく。楽しい。
あー、イノシシが通った跡がある。
木に体をこすりつけ、泥がついた形跡が残っていた。背中が痒かったのか、犬のように縄張りを主張しているのか。いや、イノシシに縄張りってあるのか?数日おきに場所を転々と移動している生き物だったような。
いずれにせよ、思ったよりも高い位置に泥がこすりつけられているのでびびる。でかいぞ、イノシシって。こんなのに突進されて体当たりされたら、大怪我だ。わなにかかったからといって、仕留めるのは命がけだ。猟師の方々は本当にお疲れ様だ。
さりげないところにわなはしかけてあるけれど、このように尾根のど真ん中にドーンと箱わなが仕掛けてあることもある。
水仙が咲き誇る山の斜面を下る。良い香りが周囲に満ちている。
昼間は、人間のテリトリーだ。でも夜になると形勢逆転するか、ギリギリ人間が食い止めているか、といった状態になる土地だ。
(つづく)
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