東京外国語大学の大学祭、「外語祭」ほどエキサイティングな学祭を僕は知らない。
完全に「食」にフォーカスをあてた学祭は、調理師専門学校の文化祭じゃあるまいか、という印象すら抱く。外語大学にあるすべての語学科が、それぞれその国・地域の料理を出す模擬店を運営する。日本最大の外国語大学だけあって、その数は20を優に超える。いっぺんに、それだけの国の料理をあれこれ食べられる場所って、たぶん日本中探してもここだけ・この時期だけだと思う。
ハラルフードを食べた数分後には、豚肉料理を食べたりもできる。まさに食の世界征服だ。
我らが「アワレみ隊OnTheWeb」では、オフ会ということで過去何度となくこの外語祭に出撃してきた。
模擬店は、キャンパスの中心部にある円形広場を取り囲むように軒を連ねる。なので、「半径50メートルの世界食べ歩き」というシリーズタイトルで、オフ会・私的な集まり含めて開催してきた。
最後に訪れたのが2013年秋で、それ以降しばらく疎遠だったのだけど、今年久し振りにこの地に訪れることにした。オフ会形式で参加者を募ったところ、2名参加表明があった。3名で、できることならば全部の語学科模擬店を巡ろうと思う。
2018年11月23日(金・祝)
3名で外語祭の予定だったけど、そのうち1名が前日の深酒でダウンしたらしい。急遽2名での開催となった。
僕と、もう一人はやすさんという初対面の方。
2名となると、さすがに全店舗巡りは無理だろう・・・というのが二人会った時点での感想だった。何しろ、数年前は26カ国・地域の模擬店だったのに、2018年バージョンは30カ国に増殖していた。
おいちょっと待て。東京外大、「一度に全店舗巡りはさせてなるものか」と阻止の構え、満々やないか。
さすがに30店舗は無理だ。やすさんは僕よりも身長・体重がある頼もしい人だが、だからといって一人15店舗の料理、というのはノルマとしてどうなんだと。
やすさんはお酒が好きだということなので、ドリンクで店舗数を稼ぐ作戦になりそうだ。
「でも、5杯までなんですよ、制限があるので」
とやすさんに言われて、思い出した。ああそうだ、世界の美酒に酔い潰れる輩が続出した?ことが問題になったので、「アルコールパスポート」が導入されたんだっけ。お一人様、5杯か。
2010年時点は1日8杯までだったけど、より制限が厳しくなったというわけだ。それは残念。いや、僕はアルコールを一滴も飲まないけど。
「イッキ」のコールが居酒屋から(ほぼ)消えて早20年近く。ここ数年じゃ、「アルハラ(アルコールハラスメント)」という言葉が市民権を得るようになったくらいだ。厳しいご時世、というか、ようやく正常な世界に戻った、というか。
やすさんは、「ロシア語学科でウォトカを頼もうか」と、度の強いお酒を飲む計画を早くも策定中。
10:56
JR中央線の武蔵境で西武多摩川線に乗り換え、多磨駅下車。徒歩数分で東京外国語大学。ものすごく久し振りだ。昔は外語祭がないときも、このあたりによく出没していたので、なおさらだ。
変わっている部分もあるけれど、変わっていない部分の方が多い。あいかわらず、のんびりとした雰囲気が漂っている。
時代だなあ、と思うのは、学祭期間中の廃油の回収量や総CO2削減量がキャンパス入り口に掲げられていたこと。
10:56
11時から模擬店の販売は開始だと聞いていたが、既にフライング販売が始まっているようだった。来場者も、この時間にして大勢いる。
「外語祭の模擬店は、お昼時は激しく混む。昼前にどれだけお店を回ることができるかが、勝負の分かれ目」
とやすさんに言っていたのだけど、完全に裏をかかれた。もう大行列ですやん。
屋台が並ぶ円形広場の手前で、長蛇の列が出来ている。インフォメーションコーナーなのだと思っていたが、アルコールパスポートを発行しているテントだった。
我々も並んだが、なかなか列が進まない。年齢確認などに時間がかかるようだ。
「この先にもパスポートを発行する場所があります」
というスタッフの言葉を聞き、一旦行列から離脱。
なんと、パスポート発行所は二カ所もあるのか。時代は変わったな。
「アルコール持ち込み禁止」と書かれた立て看板。
そりゃそうだな、アルコールパスポートで飲む量を押さえ込もうとしているのに、よそから持ち込まれたらたまらない。「飲食物の持ち込み禁止」という言葉は、フードコートなどの飲食スペースでよく見かける。でも、この看板のように「アルコール」に絞った持ち込み禁止、というのはなにげに珍しい。
各語学科の飲食模擬店と双璧をなす、外語祭の目玉イベントが「語劇」だ。これも、各語学科がそれぞれ、習得中の言葉オンリーの劇を披露する。
その語劇の会場が、キャンパスに入ってすぐのところにあった。あれ?昔と会場の位置が変わっている。この建物、新しいものだろうか?
円形広場に設けられた野外ステージのタイムテーブル。
ところどころ写真撮影禁止のアイコンが描き込まれている。見ると、チアガールといった、女性によるパフォーマンスの場合はアウトらしい。ううむ、これもまた世知辛い。でも、納得だ。
外語祭の会場地図。
見てすぐにわかるように、円形の広場の外周が屋根付き渡り廊下のようになっていて、そこにお店がずらりと並ぶ。今年はその数、30。
どうやったらあの場所に30も屋台が入るんだ?と不思議だったのだけど、地図を見ると「渡り廊下」部分からはみ出ているお店もあった。もうこれ以上は詰め込むのは無理そうだ。
円形広場の入口に掲げられた横断幕。今年のスローガンなのだろうか、「ちきゅうぎにとびこめ!!」と書いてあった。おう、飛び込んでやらぁ。
11:06
でもその前に、アルコールパスポートだ。
まず最初に、免許証などの公的証明書で年齢確認を行う。そして次に、白い箱の中に右手を入れてくれ、と指示された。ローマにある「真実の口」みたいだな。
何事かと思ったら、ブラックライトを当てる装置らしい。そして手の甲に、ブラックライトに反応する透明なインクでスタンプを押された。
次に左手に、野外コンサートなどで使う、紙製の腕輪を巻き付けてもらう。はずそうとするとベリベリになって復元できませんよ、外したら許しませんよ、というやつだ。これが2018年版のアルコールパスポート。腕に、5つの四角い枠が並んでいて、1杯飲むたびにお店の人にチェックを入れられる。
かなりの念の入れようだ。
道理で、会場入口にあったアルコールパスポート発行所の行列が全然前に進まないわけだ。昔は、年齢確認を済ませたら、単なる台紙を貰うだけだったのに。
でも、ちょっと待ってほしい。この腕輪を破って、何食わぬ顔をしてもう一度アルコールパスポート発行所に並んだらどうだろう。さらに5杯飲めるのではないか?・・・いや、そうはいかない。先ほど右手の甲に押したスタンプがあるので、すぐにバレる。
そんな馬鹿な。
スタンプ、手をゴシゴシ洗ったら消えるだろさすがに。入れ墨じゃないんだから。
さすがにそこまでする人はいないと思うけど。
普通、何らかの権利を得るために、スタンプを消さないよう客は努力するものだ。でも、今回の場合、「ルールを逸脱したけりゃスタンプを消せばいい」わけで、通常の運用のあるべき姿とは逆だ。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (2件)
言いたいだけちゃうんかオーダー、良いですねぇ。
町中華をはじめ外国の料理を出すお店のメニューには、料理の真名をカタカナ表記するのを義務化してほしいなどと思ったり。
私も漢字表記がカッコよかったりとか、変な名前~♪ で注文するときたまにあるので。
不思議と自分に合わなかった『ハズレ』でも腹立たないんですよね。
忘れたころにまた頼んでるまであるw
ティータさん>
ルーローハン、というのは日本でも定着してきた料理ですが、たとえばお店のメニューで「ルーローファン」と書いてあったらどうだろう。嬉しくなって、きっと「ルーローファン!ください!」とファンという言葉を強調しながらオーダーするに違いない。