すっかり昼下がりなので、早いところお昼ゴハンを食べないといけない。二人とも、朝食は勝浦朝市で買った饅頭と団子だけだ。
「こうやって、昼メシを食べる時間が後ろにずれるというのも東北道の駅の時と一緒だよな」
「結局、今回は観光を全面に打ち出したはずなのに、やってることはあんまり変わっていないような気がする」
時間的に袋田の滝近辺で食事をするのが良かったのだが、いまいち「これだ!」というお店を見つけられなかったため、ずるずると先に進んでいった。金砂郷という蕎麦の産地もそれほど遠くないところにある土地がらだし、蕎麦屋くらいは街道筋にあるだろ・・・という算段だった。
しかし、結局これまた決定打に欠いたまま、先に進んでしまった。いかん、このままだときりがない。急きょ、進路途中にあった「道の駅ばとう」にピットイン。ここでお昼ご飯を食べることにした・・・のだが、これもちょっと、いまいち。13時59分、いまだ昼食にありつけないまま先へと進む。
「何だか道の駅巡りになってないか?わしら」
次に到着したのは道の駅きつれがわ。
「もうこの際だから、関東道の駅スタンプラリー完全制覇の旅に切り替えるか?」
なんて冗談も出る。この道の駅は非常に巨大で、ここだったら納得のいく食事ができそうだった。早速お店を探す。
おっ・・・さりげない店舗で、お弁当が売られていた。どこかにピクニックに行く訳でもなし、ここで食べるんだからお弁当はちょっと・・・と思ったのだが、
「鮎めし弁当500円」「栗ご飯はじめました」という文字に激しく惹かれてしまった。うん、今日のお昼ご飯はここにしよう。
右がしぶちょおの注文した栗ご飯弁当大盛り。550円だったかな?そして、左が鮎めし弁当大盛り。これも550円だったと思う。値段の割には、ボリュームが大変よろしい。鶏の唐揚げの盛りが素晴らしい。
ちょうど鮎めし弁当を注文した時に、新しく鮎めしが炊きあがったところだったのでこれまたラッキー。ありがたく炊きたてを頂戴することに。
・・・えーと、お弁当の上に何やら銀色に光る缶が見えるんですけど、気のせいですかね。
しぶちょおがすばやく突っ込む。
「オイちょっと待て、二つの弁当のちょうど真ん中にビールを置くってどういうことよ。どっちが飲んでるのかわからないようにしてるつもりか?」
正解。鮎めしを食べている人が、飲み物代わりに銀色缶の炭酸飲料を飲んでいました。
「馬鹿を言うな、これはあくまでも健康麦芽飲料だ」
それにしても、なかなかな背徳感を味わえるですな、このビールは。あっ、ビールって言ってしまった。この旅のシチュエーションは、まんま「東北道の駅」と同じだ。そのときは運転が交互だったため、おかでんも昼間っからはビールを飲んでいなかった。それが、今回は似たシチュエーションながらもビールを飲んでいる。しかも、道の駅で、だ。「わあ、何だか大人の階段を一歩登った感じだよ!」という印象を抱くわけですよボクは。
でも、実際のところは「どうしたもんかなー、この企画。クリア絶対できねーじゃん」ということでやけ酒気味だったりする。
お昼ご飯を食べ終わった後、われわれは西へと旅だっていった。
このあと、「日本三大奇橋」の「神橋」と、「日本三大名瀑」の「華厳の滝」を巡ることになる。いずれも日光にある観光名所なので、短時間で2カ所を稼ぐことができそうだ。これはラッキーポイントだ。
時間短縮のために、東北自動車道から日光自動車道を経由して進む。もう、この時点で15時40分。いかん、そろそろ日が傾いてきた。
【No.12 日本三大奇橋(その1):神橋(栃木県) 09/20 15:57】
日光東照宮にほど近いところにある「神橋」。日本三大奇橋ということだが、一体どんな橋なのか全く予備知識が無かった。そもそも、「日本三大奇橋」という概念があること自体、今回の企画で初めて知った事実だ。
「勝ちどき橋みたいに、船が通るときは橋が跳ね上がる、みたいなものなのかね」
「うーん」
「それとも、『このはし渡るべからず』と書いてあるとか」
「一休さんか!」
全く何が何だかわからないまま、現地に向かうというのも変な話だが、今回の旅はいかんせん準備時間が成さすぎだ。予備知識など全くない状態で、実物を見ることになる。
で、カーナビが示す「神橋」のすぐそばを通過。
「あれか!」
「え?あのどこが奇橋なんだ?普通の橋じゃないか!」
車を一時停車させる場所がないため、通過しながら眺めるだけになってしまった。あっという間のでき事。
車窓から眺めた神橋。カメラを準備しているあいだに、通過してしまった。橋を見ることができた時間は、正味20秒程度か。あとで写真を見直さないと、何が何だかわからない状態だった。
「で?あれが日本三大奇橋、なのか?」
「何だか改装中だったみたいだな、通行できなかったぞ。しかも、欄干に覆いがしてあったし」
「じゃあ、そのまま通過しちゃっていいね?」
「いいんじゃないの?この辺り、車を停めるとなると有料だし。橋の上で記念撮影できないんだったら、わざわざ車から降りることはないだろう」
そのまま、スルー。
あとで調べたが、確かに神橋はこの時期、化粧直しのため補修工事をやっている最中だった。だから、白い覆いが全面になされていたのだった。ちなみに、この何の変哲もない橋がなぜ「日本三大奇橋」と呼ばれるのか、というと、この橋は奈良時代に作られて、日本最古の「はね橋(橋脚が両岸の岸壁に埋め込まれている橋)」であるということらしい。ふーん。
事前知識がなかった分、「奇橋」というからにはものすごい派手な、変てこりんなものを勝手に想像していた。それゆえに、ちょっと落胆は大きかった。
気を取り直して、華厳の滝に向かう。中善寺湖から日光までの標高差数百メートルを(こういう情報をちゃんと調べようとしないあたり手抜き)一気に流れ落ちる名瀑だ。
まずは日光いろは坂のつづら折れ道路をぐいぐいと登る。
「ハイパワーターボ+4WD、この条件にあらずんばクルマにあらずだ」
どこかで聞いたような台詞を口走る。でも、乗ってる車はターボでも4WDでもないのだが。
【No.13 日本三大名瀑(その2):華厳の滝(栃木県) 09/20 16:25】
考えてみれば、猿橋を素通りしただけならともかく、日本を代表する観光地である日光東照宮を完璧に無視しとるのだな、われわれ。
なぜなら、
日 本 三 大 名 所 で は な い か ら 。
たったそれだけの理由で、「満喫」対象とならない。むちゃくちゃな観光旅行だ。そんなわけで、華厳の滝に到着。ついさっき、日本三大名瀑の一つ、「袋田の滝」を満喫したわけだから、立て続けだ。おい、案外この企画って簡単にフィニッシュするんじゃないか・・・
と一瞬錯覚してしまうが、とんでもない。まだ全体の1/6くらいだ。日程としては既に1/3以上を消費してしまっているわけだが。
華厳の滝は、有料のエレベーターを使って谷底から滝を見上げるパターンと、崖の上にある無料の展望台から眺めるパターンの二つがある。さすがにわれわれは散財に疲弊していたので、無料の展望台を選ぶことにした。しかも、既に日は傾いてきているし、あまりこういうところで時間を取りたくない。
・・・「こういうところで時間を取りたくない。」と言ってる時点で、満喫しとらんなお前ら。
ちなみに、岩盤をくり抜いたエレベーターは昭和5年にできたというから、相当歴史が古い。
華厳の滝!さすが日本三大名瀑!誰しもが納得する、立派な滝だ。袋田の滝のように「へぇー・・・」という見栄えではなく、「おおおー」という声を上げてしまう、そんな立派な男らしい滝だ。
落差97m。
しばらく、滝の姿に見とれてしまった二人。キャンプをやっている時、たき火を眺めるのはとても楽しいことだ。いくら見ても飽きることがない。それと同じ印象を滝にもうけた。ずーと眺めていることができる。
これぞ、満喫。
記念撮影は、もちろん三脚を手元から伸ばして、セルフポートレート。どうだ、この完璧なアングル。誰か通りすがりの人に「すいませーん、シャッターいいですかぁ?」とお願いして撮ってもらっても、このアングルでは撮影できない。
ただし、さすがに展望台という人が多いところでやると相当周囲の微笑みを誘っていたが。気にしない、気にしない。
「良い滝でした」
「良い滝でしたなぁ」
と言いながら、車は中禅寺湖の湖畔を走る。ああ、日が赤く染まってきたよ。そろそろ日没だ・・・。
「これでトータル、何カ所回ったんだ?」
「えーと、13カ所」
「まだ13カ所か!全部で72カ所だよな、全然駄目じゃないか」
「駄目だねえ」
「どうする?」
「いや、どうするもこうするも、先に行くしかあるまい」
夕陽で赤く照らされる男体山。いかん、これは真剣に今後のルートを考え直さないと。われわれはこの時点で、沼田まで出る事は決めていたがその先について何一つ決めていなかった。
日本三大美人湯である群馬県川中温泉には、もう今日行くのは無理だ。日帰り入浴時間は終わっている。かといって、宿泊を依頼したところで泊まれる保証はないし、泊まれたとしても到着は20時頃になりそうだ。今日、それで行程を終わるというのはあまりにもったいない。そもそも、群馬県と新潟県の県境にある「関越トンネル」を横目に素通りしなければいけないルートで、非常にもったいない。関越トンネルの先には、三大薬湯「松之山温泉」、三大銘菓「越の雪」が控えている。これは無視ができない。必然的に、今日は関越トンネルを越えて新潟入りしなくてはならないわけだ。
関越トンネルを越えました、それはそれでいいだろう。その後、気になるのが「日本三大ダム」の一つである奥只見ダムだった。これは、関越自動車道小出ICから東に進んだところにあるのだが、何が凄いってダムにたどり着くまで、非常に狭くて真っ暗なトンネルを総延長20km、走らないといけないことだ。しぶちょおとしてもこの地にはぜひ訪れたいという意向を表明していたのだが・・・
「うーん、日本三大ダム、却下しようや。そもそもこの奥只見ダム、福島県だし」
東北地方は今回の旅の対象外となっていたので、当然この奥只見ダムは却下されるべき対象だった。しかし、新潟県側からアプローチすること、そして風変わりなトンネルがあって珍しいことから候補地として残していたのだった。企画立案当初、この旅をナメてかかっていた証拠でもある。「一カ所くらい、候補地が増えていても問題あるまい」と。
「えー、惜しいなあ」
と悔しがるしぶちょおであったが、この日本三大ダムってのがくせ者。この奥只見の他に、黒部(富山)、御母衣(岐阜)とすごい立地条件のダムだらけだ。さすがにデカいダムは山深いところにしかない。黒部なんて、扇沢からトロリーバスだもんな。このことを説明したら、さすがのしぶちょおも「まあ、しゃあないかぁ」という話になった。
これにて、「日本三大ダム」は満喫候補から除外。
当初計画からルールが変わっとるが、まあ堅いことは言うなや。臨機応変よ、臨機応変。今回は「完全制覇」が目的ではない。「完全満喫」が目的だからな。・・・ということにしておこう。
これで、奥只見が消えたことで本日のルートが随分と見てきた。夕方5時になって「本日のルートがすっきり」なんて言ってる時点で相当無計画なわけだが、旅の性質上仕方がない。
「今日は合宿モードだな。昨日はゆっくりと夕食が楽しめたけど、今晩はそうはいかんぞ」
といいながら、今後のスケジュールが発表された。
- 「日本三大トンネル:関越トンネル」。関越自動車道で群馬県から新潟県入りする時に通過。問題なし。
- 「日本三大銘菓:越の雪」。調査してみたところ、JR長岡駅構内で売られているらしい。19時30分には閉店してしまうようなので、急がないと。
- 「日本三大薬湯:松之山温泉」。山の中にある温泉。ここの公衆浴場は22時までしか営業していないので、お風呂に入る時間を考慮すると21時30分には遅くとも到着していないとアウト。
ここから、車を西に走らせて長野県に入る。
4.「日本三大菜:野沢菜」。野沢菜はどこで売っているのだろう?兎に角、お店が開いている時間に到着しないと。
とりあえず今日はこのあたりで終了だろう。たぶん、野沢温泉あたりで23時を回るはずだ。翌日の影響を考えると、この辺りでストップをかけないといけない。
まだ、群馬県の「川中温泉」「草津温泉」が関東地方では取り残されている状態だが、これは明日だろう。ただ、川中温泉はどうにもフォロー不可能っぽい。日帰り入浴開始が朝の10時からで、それまで待機しなければならないというのは全日程を考慮すると、あまりにもったいない。無理だ。んー、川中温泉も奥只見ダムに続いて脱落の予感。
兎に角、まずは19時30分までに長岡に到着しなくちゃいけない。頑張れ頑張れ。スピード違反はいかんが、許容範囲内で急げ。
金精峠を越え、沼田まで下道を延々と走り続ける。沼田からは関越自動車道に乗り、一路新潟へ。
あたりはすっかり真っ暗だ。「あーあ、これでもう二日目の夜かぁ・・・全然進んでないなあ」と思わずつぶやく。「こんなはずではなかった」感ありあり。
関越トンネルが近づいてきた。道路脇に「関越トンネルまであと2キロ」という標識が見える。そろそろだ。
あたりが真っ暗なので、ちゃんとトンネルが撮影できるかどうかやや不安。
関越トンネル入口。
車が通るトンネルとしては日本最長(11,055m)だ。運転をしていると、だんだん感覚がおかしくなってくる。自分がちゃんと真っ直ぐ走っているのかどうか、怪しい感じがしてくる。それくらい、長い。
これだけ長いトンネルなので、入口に信号がついている。中で事故や故障車があったら、この信号が赤になる仕組みだ。高速道路にだって、信号はある。
ちなみにおかでんは、この関越トンネルの赤信号にひっかかったことがある。しかも先頭車両として。相当びっくりしたな、あのときは。追突されたらどうしよう、とヒヤヒヤしながらハザードをたいて停車した。結局、30分以上赤信号によって足止めを食らったが、その間ずーっと信号を凝視していないといけないので結構疲れた。「1分後には赤信号から青にかわる」なんていう周期性がない信号だから、いつ青に戻るかがわからないからだ。
【No.14 日本三大トンネル(その2):関越トンネル(群馬県・新潟県) 09/20 18:30】
18時30分、関越トンネル突入。
「これにて関東地方終了!」
・・・と言いたいところだったが、残念なことにまだ群馬県に川中温泉・草津温泉が残っている。奥歯に物が挟まった状態のまま、新潟県へ。
19時23分、長岡インターに到着した。やばい、越の雪を売っているお店が閉まってしまうぞ。急げ。
慌てふためきながら、長岡駅を目指す。それにしてもこの日本三大巡り、いろいろあるなあ。人口建造物、大自然、そして今度は食べ物ときたか。
【No.15 日本三大銘菓(その1):越の雪(新潟県) 09/20 19:41】
駅ビル一階のおみやげ物売り場はまだ営業をしていた。しぶちょおを車に残し、ダッシュでビルに駆け込む。
ちょうど駆け込んだところが、越の雪売り場だった。おお、これが越の雪か!!
日本三大銘菓はそれぞれ、全て落雁であるということは調べがついていた。しかし、実物がどんなものかは見たことがなかったので、実物を見てはじめて納得した。
ガラスケースに、サンプルが置いてある。真っ白なサイコロだ。落雁って、普通は金の延べ棒みたいな台形をしているものだが、これはひと味違う。
そのサンプルの下には、誇らしげに「日本三大銘菓」と書かれたプレートがあった。そうです、こんなにちっこくても、日本三大なのです。
思わず、店員さんに「日本三大銘菓、ください!」と注文してしまった。店員さん、一瞬たじろいだが、にっこり微笑んで対応してくれた。日本三大銘菓を提供している身としての誇り、ってやつだろうか。
買ってきたぞ、越の雪。木箱に収められているあたり大げさだ。16個入りで、確か1,050円だったと思う。
「あれ?僕の分は?」
「え、一人ひと箱はいらんだろ?16個入りだぞ?」
「いや、お土産に買って帰ろうかと思って。ちょっと待って、じゃあ買ってくるわ」
今度はしぶちょおが買いに走る。幸い、店はまだ開いていた。
しぶちょおが戻ってきたところで、日本三大銘菓試食会の開始だ。駅前に車を停めた状態ではさすがにマズイので、いったん別の場所に移動させてから、開封。
おっと、箱を開けるとルービックキューブみたいな越の雪登場。
落雁とは堅いものだとばかり思っていたが、この越の雪は非常にやわらかい。箱にびっしり詰まった一つを取り出そうとするだけで、はらはらと崩れる。パウダー状の角砂糖みたいなものだ。
説明を読んでみると、和三盆で作られている落雁であり、非常に口溶けが良いという。ほほう、ガリガリと食べるのではないのね、これは。
「しぶちょおよ、今後は運転をより一層気をつけないとな?カーブをきゅきゅきゅっと曲がったりしてると、お土産の越の雪が崩れるぞ。単なる和三盆粉末お持ち帰りになってしまうぞ」
早速日本三大を食す。
・・・。
うほっ、舌の上に乗せていたらどんどん溶ける。勝手に溶ける。素晴らしい。しかも、甘みがくどくなく、とても上品な味わいだ。
「おいしいねえ」
「これはいいな、日本三大という名前にふさわしいと思う」
二人とも、大満足だった。長岡まで足を運んだ甲斐があったというもんだ。
「ただ、これってべつに長岡じゃなくても食べられるんだよね?」
「恐らく。デパートの地下で売られている予感がする。でも、それはいいっこなしということで」
「ま、ね。本場で食べてこそ、グレードが高いんだから」
「でも、それを言い出すと本店に行かないといかんのじゃないかと・・・」
「もうこれ以上言うな!ボロがでる!次行くぞ、次!」
次も時間が逼迫している。目指すは、日本三大薬湯の松之山温泉。21時半到着が要求されるので、すでに残り時間は2時間を切っている。この温泉は、山の上にあるのでなかなか時間が要求される。急がないと!
【No.16 日本三大薬湯(その1):松之山温泉(新潟県) 09/20 21:05】
信号が少ない山道ということもあり、思ったより早く到着することができた。日本三大薬湯のひとつ、松之山温泉。
ここは、ホウ酸泉ということでちょっと珍しい温泉だ。独特の臭いがあり、敢えて喩えるなら保健室の臭い、ということになる。それに加えて、僅かに重油の臭いがする。
源泉の湯温は非常に高く、95度もある。周りに火山が無いにもかかわらず、これだけの高温の温泉が湧くというのは非常に珍しい。しかも、山のど真ん中なのに、食塩も含まれた泉質だ。これは、松之山温泉が「ジオプレッシャー型」という特殊な温泉だかららしい。詳しくはこちらを参照のこと。
われわれは、温泉街の中にある、「鷹の湯」という共同浴場に入った。
21時40分、風呂からあがった。いやー、お風呂に入る時間としてはちょうど良かったといえる。この旅は時間の都合もあってお風呂に入ることができる保証が全くないため、こうやって「三大名所」として強制的にお風呂イベントがあると大いに助かる。
しぶちょおは、車に戻ってからもしきりにタオルの臭いをくんくんかいでいた。
「いやぁ、何だか病みつきになる臭いだわ、これ」
松之山温泉から山を下り、国道117号線を西へ。一路、長野県を目指す。次は「日本三大菜」である野沢菜を入手しなくてはならない。
「日本三大菜ってむちゃくちゃだよな。野沢菜、京菜、広島菜って何じゃそりゃ。小松菜は駄目なのかね」
「漬物でなくちゃ駄目なんでしょ?しかし、ホント誰が決めたんだか。広島菜なんて、広島人じゃないと食べないだろ」
「いや、それを言ったら京菜もそうだ」
「その点、野沢菜って認知度高いよなあ」
野沢菜なんて、どこでも売っていそうだ。しかし、やはりここは野沢温泉村で買わないと示しがつかないだろう。国道沿いに何軒かコンビニを見かけたが、「まだだ、まだここは野沢温泉村ではないから駄目だ」と言いつつスルー。
野沢温泉村の標識が出たので、早速国道沿いのコンビニに立ち寄ってみた。お目当ての野沢菜は・・・あらら、売っていないぞ。やばい。案外コンビニでは野沢菜なんて売っていないのかもしれない。時刻はもう22時をはるかに回っている。この辺りのコンビニは24時間営業ではないので、そろそろ閉店の時間だ。いかん、また時間に追われる状況になってきた。
「ビックマウスに行こう!あそこなら置いてあるかも知れない!」
ビックマウスとは、野沢温泉村の中心地にあるコンビニのことだ。このサイトでも何度か紹介したことがある、馴染みのあるコンビニだ。あそこだったらお店も大きいし・・・と、一縷の望みを託して野沢温泉中心地を目指す。
到着したときは、まだ店に灯りがついていた。よかった、営業時間中だった。
ばたばたと店にかけこみ、お総菜や弁当が売られているコーナーを調査してみたが・・・あああ、売られていない。ここも売っていないのか!
がっくり。
すごすごと退却しようとしたら、入口脇に野沢菜、と書かれた冷蔵庫があった。アイスクリーム用の冷蔵庫かと思ったら、これが何と野沢菜専用冷蔵庫ではないか。驚いた。中を覗き込むと、当然野沢菜がたくさん売られていた。これだ!これだよ欲しかったのは。
ゲットしました、野沢温泉村で野沢菜。ちゃんと、「野沢温泉村の野沢菜漬」と書かれている。日本三大菜、入手完了!
パッケージの裏には、野沢菜の由来が書かれていた。
(宝暦六年)野沢温泉の健命寺晃天園端大和尚が京都から持ち帰った天王寺蕪の種を寺内に蒔いたところ、野沢温泉の冷涼な気候に適し突然変異をおこし蕪より葉が三尺以上も伸び地元では三尺菜の名もついたが野沢温泉村にちなんで野沢菜と呼ばれている。
本場の野沢菜漬は厳しい寒さとともに長年培われた味付けが生きており、そのうえ他の漬物に比べ食物繊維やビタミンC、カロチン等あらゆる成分が圧倒的に多く含み風土がはぐくんだすぐれた面を持っています。
今では全国的にその名が知られる様になりました。
だ、そうで。
【No.17 日本三大菜(その1):野沢菜(長野県) 09/20 23:00】
日本三大を頂く。
さっき、越の雪という甘い日本三大を頂いたわけだが、今度は塩辛い日本三大だ。
箸も包丁も当然のことながら持ち合わせていない。葉っぱをそのままかじるしかない。パッケージからずるずると引き出してみたが・・・うわあ、長い。さすが三尺菜、長いったらありゃしない。しかたがないので、おかでんは魚が釣り針のエサに食いつくように下から野沢菜に食いついた。しぶちょおは口にくわえて、上から野沢菜をすすり上げた。
「うーん。旨いかマズイかと言われても困るな、これは」
「辛い!ご飯とセットで、しかも少量食べるからおいしいんであって、こうやってまるごと一本食べるっていうのはちょっと・・・」
そりゃそうだ、こうやって食べることは想定されていない食べ物だ。いくら「うす塩味」と書かれていたって、辛いもんは辛い。
野沢菜をビックマウスの店頭で食べている間に、店の電気が消えてしまった。23時閉店だったらしい。いかん、もうこんな時間か。
野沢菜、越の雪を食べたとはいえ、われわれはちゃんとした夕食をまだ食べていない。それほどおなかが空いているわけではなかったが、「ほっと一息」つくためには夕食を食べたいところだ。今日は朝6時過ぎから猛烈に走り回ったので、そろそろ大休止しても良い頃だろう。
食事場所を探して、信州中野をうろつく。この辺りは郊外型店舗がいくつかあるので、そこからめぼしい店をピックアップしようと思ったのだが・・・ううん、いまいち。そりゃそうだよな、この時間に開いているようなお店といったら、チェーン展開しているファミレスくらいしかない。結局、ここでこれ以上食事場所探しをするのも不毛なので、目に付いたガストで夕食を食べることにした。
まずは恒例の儀式から。
ぐいーっとな。
いやー、風呂上がりでもあるわけで、美味いことは美味いんだけどそれにしても時間が遅すぎだ。乾杯のビールを飲んでいる只今のお時間、23時58分。東北道の駅でもここまで遅い時間になることはなかった。
こりゃ、明日は相当疲弊するぞ。
何しろ、今から信州中野界隈で寝床を探したら、早くても寝る時間は1時になる。で、明日は6時過ぎには行動開始となるんだからさぁ大変。
「いや、今日は草津温泉まで行こう」
しぶちょおが素晴らしく前向きな発言。
「えー、もうこの辺りで寝ようよ。草津まで行こうとしたら、志賀高原越えになるぞ?寝るの、2時過ぎになるぞ?」
「今日中に行った方がいい」
早寝早起きのおかでんにとっては、これ以上の夜更かしは翌日の英気に影響を及ぼす。既にこの時間にして体がぐったりしているため、何としても阻止しなければと猛抵抗したのだが、結局しぶちょおの炎のような闘志に押し切られてしまった。今日の終着点は、草津温泉に。うひゃー。まさか今日これから群馬県に戻ることになるとは、思わなかったぜ。
料理がでてくるまでの間、パソコンを見ながら二人で今後のルート設定について激論。今回の企画は非常に知的なゲームであり、このルート設定が全ての鍵を握っていると言って過言ではない。こういうルートを通ってはどうか、いや、それだと大回りになるからこっちを、なんて話を延々とする。いくらやっても、答えが出ない。
まず確定したのは、「川中温泉は時間的に都合が悪すぎなので、『日本三大美人湯』は無かったことにする」ということだった。この決定により、川中温泉(群馬)、龍神温泉(和歌山)、湯の川温泉(島根県)が立ち寄り地から外れた。和歌山県といえば、もう一つ日本三大名瀑「那智の滝」があるのだが、日本三大名瀑は4つノミネートされていて、1つは企画ルール上行かなくても良い場所なので、その一つを那智の滝に決めた。これで、和歌山県に立ち寄らなくて良くなった。大いなる省エネだ。
「じゃ、日本三大美人湯は無かったことで」
「うん、そういうことで。何それ?三大美人湯?そんなのあったの?」
「あったみたいだねえ。僕たちうっかりして気づかなかったけどアハハ」
「それにしても、三大名瀑で那智の滝に行かないとは・・・。あれはどう考えても三大に入る滝だけどな」
「まあ、そういうこともある。世の中理不尽だらけだ」
秋の特選メニュー「グラタン・コロッケ・ハンバーグ」だそうで。3つのウマさ、と大きな字で強調されていた。
現物を前にして、にっこりするしぶちょお。
とりあえず明日のルートも何となく見えてきたことだし、さっさと食べて草津に向かうことにした。
信州中野から、志賀高原を越え、白根山の脇を通って草津温泉へ。途中、二人とも居眠りをしてしまい、ちと危ない状態だった。寝床とした賽の河原駐車場に到着した時点で、しぶちょおは「どうやってここまでやってこれたのか、記憶がない」と恐ろしい発言。
兎に角、もう寝よう!車の脇にテントを張ったのが午前2時半。20時間以上も今日は移動したことになる。もう、限界です・・・。おやすみなさい。しぶちょお、運転お疲れさまでした。
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