ひたすら観光、ただただ観光

2004年09月21日(火曜日) 3日目

草津で朝を迎える

うへー。

ついさっき就寝したと思ったら、もう朝かよ。体がまだゴトゴトと揺れているような気がする。目が覚めたばかりだというのに。時刻は朝6時50分。6時半起きの予定だったが、さすがに寝坊してしまった。

ただ、テント泊のありがたいところは、遮光性がほとんどない生地であるが故に非常に室内が明るいことだ。そのおかげで、寝覚めは比較的よろしい。・・・とはいっても、明らかな寝不足だ。一日中ずっと車で移動して、観光地についたらてくてく歩いて。それで、睡眠時間はたったの4時間だ。

「こりゃあ、今日一日相当しんどいだろうな」というのが、朝起きた瞬間にわかる。助手席に座っているおかでんでさえそう感じるのだから、ひたすら運転をしていたしぶちょおはそれ以上の疲労が蓄積されているに違いない。

はっきりいって、東北道の駅の時以来だ。東北道の駅では、なんやかや言っても睡眠時間は平均して6時間以上は確保できていた。一回たりとも、4時間睡眠というのは無かった。そして、朝起きても疲労感はあまり残っていなかった。恐らく、道の駅の時は「目標に向けて一歩一歩進んでいる」という高揚感から、睡眠時間が少なくても事足りたのだろう。え?今回だって似たような企画だろ・・・?いや、それがね、今回は「うわちゃー、今回はどうやってもクリアできねーっ」というのが透けて見えちゃってるので、余計疲労感を覚えているのかもしれない。

西の河原案内図

ちなみにこの日停まっていた駐車場はここ。図では左端の大きなPマークのところ。西の河原を登ったところにある。

草津温泉を目指す

7時24分、テントを片づけ、お手洗いを済ませてから出発。まずは草津温泉の外湯に浸かりにいこう。草津には24時間開いている外湯が町の中に多数あり、無料で使うことができる。われわれのような非常に変な旅行をしている人にとっては非常にありがたい。

【No.18 日本三大薬湯(その2)/日本三大名湯(その1):草津温泉(群馬県) 09/21 07:32】

煮川の湯

今回われわれは、日帰り入浴施設「大滝の湯」の近くにある「煮川の湯」にお世話になった。まだ7時半だと、温泉街では外をぶらつく人はほとんどいない。宿泊客は朝食の温泉玉子と格闘中か、朝風呂中か、それともまだ布団の中だろう。

煮川の湯内部

草津温泉。酸性のキツさでいえば、秋田県玉川温泉、山形県蔵王温泉に次いで日本三位。お風呂に数十分浸かっていれば、肌がつるつるになって2日間程度は「おっ、自分も玉子肌じゃん」というヨロコビを味わうことができる。町中のいたるところからお湯がわき出ていて、まさに名湯という名前にふさわしい。

日本三大名湯であり、日本三大薬湯でもある。ダブルカウントされるというのはわれわれにとって喜ばしいことだ。これでまた一歩、ゴールが近づいた。

「昨日も薬湯に入って、今日も薬湯か」

健康そうだが、車で一日中移動というすこるぶ体に負担がかかることをやっているので、結局は大マイナスだ。そもそも、キツいお風呂に一回浸かる程度じゃ、体を疲れさせるだけだ。駄目じゃん。いや、でも「日本三大」だから。あまり効能とかそういうのを考えちゃイヤイヤ。

「ああ、この臭いが消えてしまうのね、残念」

と、松之山温泉でタオルに染みついたホウ酸の臭いをくんかくんか嗅ぎながら、しぶちょおは風呂場へ。つられておかでんもタオルをくんくん。

草津温泉、とにかく湯温が高いったらありゃしない。それは重々承知なので、湯船に浸かる前に十分に加水して、湯温を下げた。ようやく湯船に浸かり、「ふぃー、朝から強烈やのぉ」と嘆息。夜遅くの夕食、ビール、そして地べたに枕無しで寝る。そして寝不足。そんなわけで、二人とも顔がむくんでしまっていたのだが、ぴりっと刺激がくるくらい熱いお湯に浸かると、さすがにむくみが一気に解消しそうだ。うん、これだけ熱い湯に入れば、低血圧で寝起きが悪い人でも一発で元気がでるに違いない。

とはいっても、お湯に浸かってから2分もしないうちにまた熱くなってきた。しばらくするうちに我慢できなくなって、湯船から脱出。結局、加水に要した時間と同じくらいしか湯船に滞在できなかったというありさま。ふぅ、さすが日本三大名湯だぜ。全然関係ないけど。

カーナビ

昨晩、ガストで延々とルート選定会議を行っていたので、それをカーナビに展開してみる。

「とりあえず、明日は飛騨高山の朝市に行かないと。ということで、今日中に高山に着いていること」

と、高山を目的地点にプロットした。

「おい、ここから真っ直ぐ高山に向かうだけでも、半日がかりなんですけど」
「うむ。見なかったことにしよう」

長野県には、あともう一つ「日本三大トンネル」の「恵那山トンネル」があり、その取り扱いに頭を悩ませてしまった。一度恵那山をくぐって、またUターンすべきか・・・?それとも、愛知方面からアプローチした方がいいのか?・・・悩みに悩んだ末、恵那山は愛知側からアプローチすることにした。うーむ、またこれでいびつなルートに・・・。

群馬県の川中温泉は時間の都合上「もともと存在していなかった」ことにして無視。これにて日本三大美人湯の満喫は消滅した。ふーんだ、僕ら男に美人湯は似合わないってば。・・・と、開き直る。

あと、気になるのは山梨県の「日本三大奇橋」である「猿橋」だ。こんな橋、聞いたことがない。桂川ってどこだ?・・・と、助手席でPCを操作し調査してみたら・・・げっ、大月じゃないか。大月っていったら、もうちょっと先に進めば東京だ。ありえない!絶対にそれはあり得ない!今更東京直前まで戻るなんて、「今までの大旅行って何だったんだ」と絶望の淵に追い込まれるだけだ。これは無かったことにしよう。うん。日本三大奇橋は、ほかにも候補があるし、猿橋を却下しても錦帯橋に行けばいいだろ。

うーん、でも、弱った事があった。「日本三大松原」なるものがあって、その一つが清水市(現在は静岡市)の「三保の松原」なんである。どっちにせよ、静岡まで南下しなくちゃいけないのは事実なようだ。

仕方がない。諦めて猿橋に行くしかない。悔しいけど、そう認めざるを得なかった。

これにて、本日のルートが決まった。草津温泉を出発地点として、

「奇橋:猿橋」>「松原:三保の松原」>「砂丘:中田島砂丘」>「砂丘:南遠大砂丘」>「工業地帯:中京工業地帯」>「古関:鈴鹿関」>「牛:松阪牛」>「名城:名古屋城」>「山城:岩村場」>「トンネル:恵那山トンネル」>「名湯:下呂温泉」>「朝市:高山」

という流れになる。いや、どう考えても無理だこれは。どうすりゃいいんだ、僕ら。

「大丈夫だ、明日の朝一発目に高山の朝市、じゃなくてもいいんだから。朝市が終わる前には着いてりゃいい。まあどう考えても今日中に高山は無理だけど、その手前でも十分じゃないか」
「じゃあ、今日は下呂温泉泊?」
「もしくは、僕の家に泊まるか」

そうか、愛知にはしぶちょおの家があるんだった。でも、愛知泊となると、翌日の行程が相当厳しい。これだと朝市に間に合わない予感が。まあ、仕方がない。順番通り一つづつこなしていくしかあるまい。

車に装着されていたカーナビは、立ち寄り地点を4カ所までしか登録ができなかった。よって、今日訪問しようとする観光名所のうち、代表的なものをぽん、ぽんと並べてみたところ・・・・

「うわっ、高山に到着するにはまる1日近くかかるんですが」
「なにー」
「そもそもですね、次のターゲットになる猿橋に着くだけでも4時間以上、259kmの行程になりますが」
「おいおい、マジかよ・・・」

なるほど、草津温泉から猿橋に行こうとすると、一度上田まで出て、そこから上信越道で更埴JCT、長野道で岡谷JCT、それから中央道で大月ICという流れになる。こりゃ時間がかかるわ。あー、今日の貴重な午前中は草津温泉に浸かっただけで終わってしまった。全然先に進めないね、この企画って奴は!

「いや違うよ、全然進めないんじゃないんだよ。移動距離が長すぎるから、数が増えないだけ」

そうだ、そうだった。われわれ今回は、ひたすら車で移動している。交通費が尋常じゃないくらいかかっている予感。

カーグラTV風

高原の中を疾走しながら、しぶちょおがこんなことを言い出した。

「おい、一つまた思いついたぞ。三脚を窓の外に出して、外から撮影するというのはどうだ」
「え?窓の外から?」

子供のころ、「車の窓から顔を出しちゃいけません」と厳しくしつけれらてきたおかでんにとっては、一瞬躊躇してしまう提案だった。しかし、われわれはいい加減いい大人だ。ちゃんと状況把握をした上で撮影すれば問題はなさそうだ。なるほど、車の外から中を撮るのか。これは思いつかなかった。

「では、撮影してみるぞ」

周りに人や車がいないことを確認した上で、にょっきりと三脚を窓から突き出す。さすがに三脚の足をフルに伸ばすと危険なので、一番短くした状態だ。

・・・

できあがった写真がこちら。腕が大きく写ってしまったのは失敗。でもまあ、なんとなく面白い写真にはなった。

「なんだかカーグラTVみたいなアングルになったな」

浅間山

とにかく、次の猿橋に到着するまでは4時間の行程だ。あまりに不毛すぎて、涙が出てくる。でも、行くしかあるまい。なぜならば、日本三大奇橋だから。

・・・で、猿橋って一体どんな橋なんだろう。昨日見た日光の神橋みたいなものだったら、激しくがっかりだぞ。

車は、上田ICから上信越道に入るはずだったが、予定を変更して軽井沢→清里経由で猿橋に向かうことにした。中央道にぶつかるまで、下道を使うルートだ。恐らく、若干所用時間が延びてしまうだろうが、風光明媚であること、そして地図上ではショートカットになることからこちらのルートを採用した。

浅間山の横を通る。清々しい高原ロードだ。

八ヶ岳

佐久平を通過して、小海線沿いに南下していく。八ヶ岳を右手にみながらの楽しいドライビングだ。
うん、楽しいんだけどね。でも、ねぇ・・・目的地、今日は高山なんだよね。今僕たち、高山からどんどん遠ざかっていく方向なんですけど。

中央道に合流し、進路を東にとる。標識に、「東京○○km」と書かれたものを発見し、激しくがっかりする二人。一体われわれはどこに向かっているんだ?

そんながっかり感をさらに助長するように、途中「新宿まであと100km」という大きな標識を発見した。標識には、都庁やら何やら、新宿の景色が描かれている。「あは、あはははは」力無く笑う二人。

【No.19 日本三大奇橋(その2):猿橋(山梨県) 09/21 12:29】

大月ICで高速と別れを告げ、新宿までひた走っちゃう自虐的なルートとおさらばした。さあ、時間はかかったけど、猿橋まであともう少しだ。・・・で?猿橋って一体なに?

「猿が対岸に飛び移ることができるくらい、幅が狭い渓谷なんじゃないか?」
「でも、大月にそんな渓谷あったっけ?」

ロードマップでみると、大月ICからほど近いところに「猿橋交差点」というのがあるということが判った。

「おい待て、猿橋交差点ってアンタ。まさか、車がバンバン走っているような橋が日本三大奇橋なのか?」
「さあ?」

猿橋解説

飲食店の裏手に、その猿橋はあった。教育委員会が用意した解説文によると、推古天皇の頃に作られた、とある。おい、ホントかよ。この記述には、「日本三大奇橋」であることは全くふれられていなかった。また、奇妙な橋の作りをしている、という記述も全く無かった。単に、歴史が述べられているだけだ。

このどこが奇橋なんだろう?

猿橋

おや、これが猿橋か。
確かに木造の橋で風情があるが・・・奇妙な作りではなさそうだが。

猿橋の複雑な作り

あー、なるほど。これだ、これだ。

高さ30mにも及ぶ絶壁なので、橋げたが作れなかったんですな。だから、岸から四階層で、ちょっとずつせり出すようにしてけたを作って、その上に橋が乗っかっているという構図だ。

なるほど、これは確かに見たことがない。アーチ橋に相当するものだろうが、木造建築でこういう作りは珍しい。しかも、そのアーチ部分にはご丁寧にレンガの屋根がついているし。

猿橋遠景

ちょっと距離を置いて眺めてみた。

アーチ橋っぽい作りであることがわかる。・・・が、緑がうっそうと茂ってしまい、全体像を写真で収めることはできなかった。

教育委員会の案内板からもわかるように、あまり大月市はこの猿橋を観光資源としては考えていないようだ。周囲の緑を伐採すると、随分と見栄えが良くなると思うのだが・・・。

まあ、しょせんは橋であり、観光といってもせいぜい10分もあれば十分なものだ。大金をかけて整備するまでもないということなのだろう。

橋が並ぶ

猿橋の隣には、これも珍しい水路橋があった。その向こうには車が走る橋。

橋好きの土木屋さんにはたまらないポイントかもしれない。

もう12時半。朝食を食べていないわれわれにとっては、大絶賛お昼ご飯どきだ。しかし、猿橋すぐそばにあったお店にはどうもピンとこなかったので、「とりあえず次に進みながら適当なお店を探そう」ということになった。

御殿場でお昼ご飯

車は、また大月ICまで戻り、そこから高速道路で河口湖に向かった。河口湖から富士山を回り込むかたちで御殿場へ。次の目標地点は太平洋、清水の「三保の松原」だ。それにしても日本列島をジグザグに、本当によく走る。これで明日あたりには能登半島とか福井に抜けなければいけないわけで、想像をはるかに超える過酷な旅となりつつあった。

河口湖から延びている富士五湖有料道路は、須走口で終わっている。東名高速道路御殿場ICまでの間は、下道を走ることになる。恰好のお昼ごはん場所探しだ。

「いやー、あのファミレスはいくらなんでも」
「やっぱ、これだけ旅をしているんだから、その土地ごとの料理を食べたいよな」

とかあれこれ言っているうちに、御殿場を素通りしてしまいそうになった。危ない!ぜいたくを言っているうちに、ぜいたくができなくなりつつある。

結局、インター近くにある「韓の食卓」というお店に入った。

ランチで焼肉

「なんか僕ら、肉ばっかり食べてるよな」

考えてみれば、肉だらけだ。初日昼は浅草でお寿司を食べたが、それ以降の食事といえば「串焼き」「お弁当」「ハンバーグ」だ。このお弁当だって、鶏の唐揚げが入っているものだったので、実質は肉に相当する。

「だいたい、今晩は松阪で肉を食べるのにねぇ」
「そうだよな、松阪でいい肉を食べる前だというのに、なぜここで焼肉を食べるのかと」
「でも、思い出してみると東北道の駅の時も肉を食べている事が多かったよな?」
「・・・ホントだ。人間、ストレスが溜まると肉が食べたくなるんだろうな、きっと」

われわれは決して肉が好きで好きでたまんねぇぜ、という人種ではない。しかし、東北道の駅にしろ、今回の企画にしろ、なぜか肉を欲してしまうのであった。脂っこいものを体が欲している、そんな気がする。

「・・・ちょっと待て。今晩松阪牛を食べるとしたら、高山へは一体いつに着くんだ?」
「無理じゃないか?現実問題として」

さあここからまたもや火の出るようなミーティングの開始。宿は愛知のしぶちょお宅にお世話になるとして、実際どこまで進めるというのか。高山の朝市は間に合うのだろうか。

「朝市に朝イチで到着、というのは無理だなどう考えても。明日のお昼までになんとか・・・という感じだろう」

うーむ。旅は既に中盤戦。明後日の午後早い時間で企画を終了させないといけない。どう考えても、中国地方にある日本三大名所には到達できっこない。それ以前に、大阪界隈まで進出できるかどうかも怪しい。何となく、北陸地方でこの企画が終了になりそうな予感。

「いや!でも!何とか京都タワーくらいは見ておきたい!日本三大タワーだからな」

と自らを奮い立たせるが、

「えー、京都タワーねぇ・・・。わざわざアレを見るために京都駅前まで行かないといかんの?何だか盛り上がらないねえ」

という弱音を吐いてしまい、がぜんトーンダウン。

お冷やさえ美味い
肉を焼いてストr州発散

ま、何はともあれ、お昼ご飯だ。肉に箸をつけた時点で、もう時刻は13時59分。うーん、企画開始してから3日目の昼下がりだというのに、まだ御殿場にいるという事実。やばいなあ。

おかでんは、焼肉ということで思わずビールを頼みかかったが、まあ昼から飲むこともあるまいと辞退。ただ、その魅力的な提案は多いに心をぐらつかせたので、お冷やをさもビールかのように乾杯し、ぐいっと煽った。まだまだ今日は長丁場だ、ここで酔っぱらうわけにはいかない。助手席のナビ役は、ルート選定をする重要なポジションだ。これだけタイトなスケジュールだと、どの観光地をどの順序で攻めるか、という判断を一回たりとも誤るわけにはいかない。

海沿いを走る

御殿場からまた高速の人となる。お金が惜しい、なんて言ってられない。いかに短期間で、遠くまで自分たちを移動させることができるか。その一言に尽きる。

目指すは、静岡県清水市(現静岡市)の三保の松原。

「えーと、三保の松原?清水次郎長が住んでいたところだっけ?」
「さあ?」

名前は知っているのだが、その名所が一体何で有名なのかまでは把握していない。そんな観光名所が、案外いっぱいあることに気づく。いやぁ、ありがたい企画だ。

雨が降ってきはじめた。これから先、屋外の観光名所を満喫するにはちょっとやりにくくなってきた。

清水市

幸い、清水市に入ったころには、雨はひとまず止んでくれた。いまのうちに三保の松原に行って来なくては。

こういうとき、半島の先にある観光名所に行くのは「非常に損した気分」になってしまう。満喫し終わったら、今来た道を戻らないといけないからだ。

でも、そういう気持ちを持っている時点で観光名所を満喫できていないわけだ。いかん、いかんぞキミィ。もっとおおらかな心をもって、楽しまないと。

【No.20 日本三大松原(その1):三保の松原(静岡県) 09/21 15:35】

20番目の「日本三大」、三保の松原に到着。

三保の松原

名所だというのに、アプローチが非常に悪いので驚いた。カーナビがないと迷っていたかもしれない。何しろ、狭い住宅地の中を走っていくことになる。観光バスがここを訪れる時には結構難儀するんじゃないか。

住宅地の中を抜けると、そこは松原。

海岸線にそって、ずらりと立派な松が並んでいた。

羽衣伝説

なるほどー、羽衣伝説の地なんだな。

「で?羽衣伝説って何だっけ」

うっすらと覚えているのだが、二人とも明確なところまでは記憶が残っていなかった。

「確か、天女が羽衣を松の木にかけて、裸で水浴びしていたら漁師が羽衣を取っちゃうんだよな。で、返してくれないと天国に戻れないから、返してくれってお願いしたんだけど漁師が絶対に返そうとしなかった」
「うん、なんとなくそんな感じがする。で、オチは?」
「漁師と結婚したんじゃなかったっけ?」
「えっ、そんな話だったか?」
「で、納屋で鶴の恰好をして織物を織っているところを見られて」
「何だか話がすり替わっているような気がするのは気のせいだろうか」

実際のところは、「天国の舞を見せることと引き替えに、羽衣を返してもらって、天女は天国に戻っていった」って話だったと思う。 「能」の演目だよね、羽衣って。(誰に確認してるんだオイ)

羽衣をかけていたという松

で、こちらが天女がうかつにも羽衣をかけていたという松。今は、同じ過ちを繰り返す女性が現れないように、周囲を柵で囲っている。
とはいっても、ひょっとしたら「あらいい海じゃない。ちょっと泳ごうかしら」と、柵を乗り越えて衣服を脱ぎ始める女性がいるかもしれない。ソワソワしながら奇跡を待つ。

・・・よく考えろ、今は9月だ。そもそも海水浴シーズンじゃないし。

あっ。

自作自演

くやしいので、自作自演してみた。

しぶちょおに「服を返してください」と懇願する天女・・・じゃなくて、天男おかでんの図。

「うーむ、シュールだ。これを三脚立てて、セルフタイマーでやってること自体が相当にシュールだ」

でも、とりあえず満足したので良しとした。ここまでやらないと、観光名所を満喫したとは言えない。

そう、スタンプラリーと違って、「その観光名所を味わい尽くす」ことが今回の企画には求められているのだよ。どうだどうだ。

御穂神社参道

この松林から、1kmほど陸に入ったところに「御穂神社」という神社があった。例の羽衣の松から神社までは一直線に参道が設けられ、その両脇には松並木が形成されていた。周りの宅地化もなんのその、地図で見ても異彩を放つ道路となっている。「神の道」と呼称されているという。

この御穂神社、こういうシチュエーションであるが故にてっきり天女様を祀っているのかと思ったが、須佐之男命と稲田姫命だという。要するに、大国主命の両親。縁結び、夫婦円満の神様だ。

「・・・ということは、やっぱり漁師と天女は結婚したんじゃないのか。で鶴になって」
「またそれか。待て、鶴になったのは奥さんじゃなくて養女ではなかったか?」

この歳になると、随分と昔話を忘れてしまっている。

また高速道路の人

清水の市街をすり抜け、また高速道路の人となる。

一体今日は、何時間高速道路に乗っているというのか。

あー、日が傾いてきはじめた。今日って、いくつの観光名所に行ったっけ?草津、猿橋、三保の松原・・・おい!もう日没なのに、まだ3カ所しか行けてないぞ!馬鹿言っちゃいけない、全部で72カ所を4泊5日で回ろうって言ってるのに何なんだこのギャップは!

がっくり・・・。

中田島砂丘

がっくりだったのだが、一つ気を取り直す材料もあった。

日本三大美砂丘である「中田島砂丘」と、日本三大砂丘の「南遠大砂丘」、これはどうやらイコールなものらしい。ホントかどうか確証はなかったが、調べた限りどうも位置は同じっぽい。ということは、呼び名が複数あるということなのだろうか。

事の真相を追求しても良かったが、もう時は日没。どーでもいいや。両方とも、一気に制覇したことにしちゃおう。

・・・あ、いけない。「制覇」という表現を使ってしまった。違う違う、「満喫」もしくは「堪能」が正しい表現だ。気をつけないと、本心がバレてしまう。

中田島砂丘地図

不安になって、この文書を書きながら南遠大砂丘について調べてみた。別名遠州大砂丘で、浜松あたりから御前崎までの間の浜辺の総称らしい。ということで、中田島砂丘は南遠大砂丘の一部である、ということでおっとこれはラッキー、一挙両得で間違いなしだ。

浜松市から南へ海に向かい、そのものずばり「中田島」という地名のところに向かう。防砂林があるため、海は見えない。近くのコンビニに車を停め、防砂林の切れ目から海を目指す。

【No.21 日本三大美砂丘(その2):中田島砂丘(静岡県)/日本三大砂丘(その2):南遠大砂丘(静岡県) 09/21 17:27】

「あっ!あれぇええええ」

素っ頓狂な声を思わず出してしまった。防砂林の向こうから見える景色は、海・・・ではなくて、砂漠だった。

砂漠

そうか、大砂丘というのはこういう事だったのか。

中国地方を出身地に持ちながら、鳥取砂丘には行ったことがなかった。だから、「大砂丘」というものを全くイメージできていなかったのだが、これか!

海が、見えない。あわてて防砂林から駆けだして、開けたところで周りを見渡すが、やっぱり海が無い。砂、砂、砂。

何だか、この先にはシルクロードの遺跡が眠っているような感じがする。

単なる砂山

何しろ、こんな感じ。

単なる砂山じゃん、といえばそれまでだが、こんな光景有りそうで無い。地味だけど、いざこの地に立ってみると相当な驚きを味わうことができる。闇夜にこんなところに迷い込んだら、遭難しそうだ。

砂丘なのでアップダウンはそれなりにある。それが前方の視界を遮るので、どこに海があるのかわからない。

そんな砂浜をざくざくと歩く。

「くそー、日没が迫っていて急がなくちゃいけない時なのに、えらくまた時間がかかる観光名所だこと」

ぼやかずにはいられない。

「かといって、海を見ないで帰るわけにもいかないしな」
「そりゃそうだ!やっぱり砂浜ってのは、波打ち際まで行ってこそ価値があるもんだ」

はるか遠くに海

5分ほど歩いたところで、ようやくはるか遠くに海が見えてきた。げー、まだまだ遠いなあ。
これだけの砂丘ができてしまうのだから、自然の力ってやっぱり凄い。さっき見た猿橋や三保の松原もいいけど、しょせん人間のやってることって小さいよなあ。

ようやく波打ち際に到着

ようやく波打ち際に到着。10分近くかかった。ふぃー、結構疲れるぞ、これ。
波打ち際に沿って、ぐぐぐーっと視線を遠くに持っていく。

うーん、延々と砂浜。

文句なし!これぞ大砂丘!やったー!

とりあえず万歳しとけ。

記念撮影

夕陽で逆行になりながらも、記念撮影。
いや、これぞ本当に「満喫」しましたって感じ。何しろ、歩きまくってるんだから「日本三大」の上を。

さあ、また10分かけて車まで戻るか。地面が砂なので、堅い土の上を歩くのと比べて倍近く疲労する。よいしょっと。

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