鳳凰さんざん【鳳凰三山】

8月は四阿山を登った。

9月は尾瀬を歩き、燧ヶ岳、至仏山を登った。

時は10月、さて今月はどこに行こうか?

山は既に紅葉シーズン。この季節になれば、紅葉を求めて登山趣味の人が全国各地の山々に分け入っていく。うかつな場所に行くと、毎度おなじみ、山小屋内陣地争奪戦に巻き込まれる事になる。それはイヤだ。かといって、半月ほど時間をずらせば、もう雪が降り出しているところが多くなる。がっつりした山に登るには、今しかない。

そんなわけで、行き先を検討していたのだが、やはりここは鳳凰三山しかあるまい、という結論になった。

鳳凰三山。山梨県にある、南アルプスの端っこに位置する山々。「薬師岳」「観音岳」「地蔵岳」の3つの山の総称だ。地蔵岳の山頂は尖った岩が天を突き破るようにおっ立っていて、「オベリスク」という名称で有名だ。通常、山中一泊の一泊二日で三座を縦走することができる。

今回、山に行こうと画策したのは、体育の日三連休。せっかくの三連休なのに、一泊二日コースの山を敢えて選んだのは、自分の体力に自信が無かったからだ。前回の尾瀬においては、結構きつい筋肉痛が一週間近く取れなかった。そんなわけで、二日がかりで山に登って、翌日の祝日は体の休養日に充てよう、という事にしたのだった。二泊三日まるまる山に登ってると、多分翌日足が痛くて会社休む事になるだろう。

今回の山行における「机上の空論」行程表は以下のとおり。

07:00新宿→(スーパーあずさ1号)→08:28甲府
09:00甲府→(バス)→10:10夜叉神峠登山口(1,380円)

10:30夜叉神の森→11:30夜叉神峠12:00→15:00南御室小屋(泊)

06:30南御室小屋→07:40薬師小屋→07:50薬師岳→08:20観音岳→09:15地蔵岳→09:20賽の河原→09:55鳳凰小屋→10:35五色ノ滝→11:25白糸ノ滝→12:25南精進ヶ滝→13:55青木鉱泉

15:00青木鉱泉→(バス)→15:55韮崎駅(1500円+荷物代200円)
16:23韮崎駅→(あずさ24号)→18:06新宿

さて、この予定通り物事は進展していくだろうか?

2012年10月06日(土) 1日目

あずさのチケット

06:07
朝4時半起きで身支度して、新宿へ。

今回は朝7時の「スーパーあずさ1号」に乗って甲府を目指す。

乗車券は新宿の金券ショップで手に入れたもの。あずさ回数券は、みどりの窓口で乗車券を購入するのに比べて非常にディスカウント率が高いので、ぜひ押さえておきたいチケットだ。

指定席券は数日前に確保したのだが、あっけなく予約が取れた。山小屋で聞いた話によると、この日は行楽シーズンまっただ中、しかも三連休初日という事もあって、三週間前には指定席券が完売してしいたとのこと。どうやらおかでんが今回入手したのは、キャンセルされたものを偶然ピックアップしたらしい。運が良かった。

新宿駅の駅弁屋

06:40
今回のテーマは「旅情」。山中での食事(1日目昼、2日目昼の合計二食分)は駅弁を採用してみようと決めている。駅弁といえば、お値段高めでコストパフォーマンスがよろしくないお弁当の代名詞だが、旅情、という言葉ひとことでぐぐっとそのデメリットを緩和してくれる。

本当は甲府駅で、山梨県ならではのご当地お弁当を買うのが一番「旅情」っぽいのだが、甲府駅で買っても新宿駅で買ってもNRE(日本レストランエンタプライズ)謹製のお弁当が商品ラインナップの大半になるらしいので、どこで買ってもほぼ同じ。NREといえば駅ナカ立ち食い蕎麦屋「あじさい茶屋」でおなじみの、JR東日本の子会社。「あー、あのあじさい茶屋の会社ね・・・」とついつい無言になってしまう。

とはいえ、蕎麦と駅弁は全く別モノ。蕎麦の味うんぬんはとりあえず置いておいて、駅弁を探してみよう。

新宿駅の南口には結構大きな駅弁屋がある。駅弁なんて、コンビニ弁当と比べて割高だから衰退産業なのかと思っていたが、いやいやどうして、結構繁盛してますぜ。そういえば東京駅構内にも駅弁屋ができて、そこが非常に好調、という話をつい先日聞いたばかりだ。駅弁、やるじゃん。

駅弁ずらり

駅弁屋の中をざっと見て回る。いろいろなお弁当があるものだ。まだ朝6時40分だというのに、この品そろえは凄い。

朝からビールを買う

06:45
結局、お弁当を選びきれなかった。種類が多すぎて、訳がわからなくなったからだ。仕方が無い、甲府駅の駅弁屋さんでもう一度品定めをすることにしよう。甲府のお店なら、山梨っぽさが出ているお弁当を中心に売っているはずだ。

そんなわけで、駅弁問題は先送り。

でも、ちゃんとビールだけは仕込んでおきましたぜ。へっへっへ。

新宿駅の電光掲示板

06:46
新宿発の中央本線方面特急列車は怒濤の進軍。「弾切れになるまで撃って撃って撃ちまくれ!」と指示が出ているかのような本数だ。

おかでんがこれから乗る7時ちょうど発のスーパーあずさ1号を皮切りに、7:03、7:18、7:30と特急列車が続く。なんと30分の間に4本の特急が新宿を飛び出していくことになる。こんな時間の電車に乗る人といえば、乗客の何割かは登山・トレッキング目的なのだと思う。みんな、どこへ行くのだろう?

スーパーあずさ1号

06:52
今回乗車する「スーパーあずさ1号」。

甲府駅まで1時間28分の所要時間。

車内で朝ビール

06:55
乗車後、さっそく「一人壮行会」を開催する運びに。つまみは一切無し、飲物は一番絞り350ml一本。昔だったら500ml以外はビールとして認めん!くらいの剣幕だったのだが、随分大人しくなったものだ。いやね、正直言って、どこまで飲んだら「やり過ぎ」なのか、「許容範囲」なのか自分でも分からなくなってきている。飲まなくてもいいや、という気持ちの方がむしろ強かったりもするし。

でも、飲む。なぜなら「へべれけ紀行」、だから。

とはいっても、朝7時からビール飲んでもそんなに美味いもんじゃない。さすがのおかでんでもそこは実感している。次あたりから廃止かなあ、この「山に登る前の恒例行事」は。

甲府駅の売店

08:35
特にトラブルなく甲府駅に到着。寝過ごして、気がついたら茅野にいました!予定変更で八ヶ岳登山をこれからしてきます!なんてことになったらちょっと面白かったのだが、そういう漫画的どじっ娘的な展開にはならず。おかでん、甲府の地に見参。

まずやらなければならないことは、駅弁を2つ買う事だ。コンコースの改札内に駅弁屋さんを発見したので、ここで買い求める。以前は小淵沢を中心に駅弁などを展開している「丸政」も、甲府に駅弁店を持っていたらしいが、今では存在しない。そのかわり、このNRE系列の駅弁屋さんに駅弁を卸しているようだ。ただ、朝8時過ぎとなると駅弁の配送が間に合っていないらしく、丸政のお弁当は見かけなかった。「元気甲斐」というとても有名な駅弁を買っても良いかな、と思っていたのだが。

「元気甲斐」は、おかでんとおかでん兄が甲武信岳に登った際に食べている。

バスの出発時刻が9時ちょうどなので、あまり時間がない。とりあえず目に付いた駅弁を2個購入した。一つは「甲斐の国 よっちゃばれ弁当」で、もう一つは「秋露のささやき」。甲斐の国?旅情があるねえ、秋露?季節感あるねえ、という単純な発想での購入。で、いざお会計となると、二つで2,400円ということが判明してびびった。そうだった、駅弁って高い買い物なんだった。うわあ、もう少し値段を確認しておけば良かった。一食平均1,200円だぜ?いつの間におかでんはブルジョアの仲間入りしたんだ。宝くじでも当たったのか?

丸政の蕎麦

08:45
丸政のお弁当には出会えなかったが、甲府駅北口にある丸政直営の蕎麦屋には行くことができた。ここでかけそばに山賊揚げをトッピングして、カロリー高めの朝食を胃袋にイン。さあ、早くしないとバスが行ってしまうぞ。

甲府駅南口

08:53
これから乗りたいのは「広河原行き」のバス。広河原とは、南アルプス北部の山々の玄関口となる場所だ。南アルプス林道の途中にあるのだが、この林道は一般車両通行止めになっており、バスに乗っていくしかない。

「甲府駅からバスは運行されている」というが、そのバス停が駅の南口にあるのか北口なのか、ネット上には情報が転がっていない。なので、ここで明言しておくが、南口にバスターミナルがあります。そちらに向かってください。6番乗り場が広河原行きのバスのりばになっています。

まあ、南口に出てみれば、どこに乗り場があるかなんて一目瞭然だ。何しろ、人の数が凄いもの。炊き出しでもやっているのか、と思うくらい人が列を作っている。おい、これ、全員乗れるのか?心配になってきたぞ。少なくともバス1台とかじゃ到底乗り切れない。あぶれたら臨時便が出たりするのだろうか?

バスはぎゅうぎゅう

09:00
車内はこんな感じ。皆さん大きなザックがあるので、通路にザックを置いている。そのため、このバスは思ったより人が乗れない。

そんな時、車掌さん(このバスはワンマン運転ではなく、運転手と車掌の2名体制)が

「まだお客さんが入りますから、通路にあるザックは全部各自で持ってください」

との指導が入る。そんなわけで、座っている人はみな重くてでかいザックを抱きかかえた状態になった。これはこれで大変だ。なにせ、広河原方面に向かう人で「日帰り登山です」なんていう人は一人たりともいない。必ず宿泊を伴う。そんなわけで、テント泊だろうが山小屋泊だろうが、荷物は結構多い。それを一時間近く抱きしめないといけないのは、ちょっとした苦労を伴う。

でももっと大変なのは、おかでんをはじめとする立っているお客さんだ。景色は全く見えないし、バスがカーブにさしかかる都度、体が遠心力で持って行かれそうになるし。

バス乗車券

09:23
バスが動き出してしばらくしたら、車掌さんが人をかき分けながらバス内を巡回しはじめた。これから乗車券を発券するのだという。下車時にお金を払うんじゃないのか?と思ったが、下車時にお金を払っていたら、いつまで経ってもバスは次のバス停に向けて出発ができない。車内での精算は確かに合理的だ。

なにしろ、おかでんが下車しようとしている「夜叉神峠登山口」までの運賃は1,380円。こんな中途半端なお金を一人一人から徴収するのは時間がいくらあっても足りない。

ちなみに、終着の広河原まで通しで乗ると、運賃は1,900円となる。かなり高額なお金になるので要注意。さらに、広河原まで行く人には、「利用者協力金」として100円のお賽銭を任意で支払う必要がある。南アルプス山岳交通適正化協議会なる組織に支払うためのものだ。南アルプス林道の維持のために使われるんだって。へー。

おかでんが見る限り、広河原に向かう人すべてがこの協力金の支払いに応じていた。

さて、乗車券なのだが、薄い紙切れだ。

「どちらまで?」
「夜叉神まで」

というやりとりがあったら、始発の「甲府駅」と下車の「夜叉神峠登山口」のところにパチンパチン、と穴を開ける。そして、「1000」、「300」、「80」のところにまたパチンと穴を開け、これにて夜叉神峠までの乗車券が完成。そういえば、白馬岳に登ったとき、猿倉に向かうバスの中で同じような事をやっていたっけ。

で、この乗車券は下車時に回収された。ちょっと珍しい券なので、お土産にしたいという人もいるだろうが、ちゃんと回収。

夜叉神峠のバス停

10:15
1時間15分かけて、バスは夜叉神峠登山口に到着。

夜叉神の森

バス停のすぐ脇には「夜叉神の森」というお土産物屋兼食堂兼宿泊施設がある。宿泊施設といっても、キャパは30名と小さめ。

甲府行きの終バスに乗り遅れてしまった人がここで一泊するのだろうか?

道路脇に駐車場

10:20
一般車の通行が禁止されている南アルプス林道だが、ここ夜叉神までは入る事ができる。そのため、道路脇には駐車場が延々と並ぶ。

だが、さすがに三連休初日ということもあって、空いている駐車スペースは皆無。やはり大人しく、南アルプス林道の入口にある「芦安」の大駐車場(650台収容可能)に車を駐めて、そこからバスかタクシーを利用するのが無難だろう。ちなみに駐車料金は無料。

ここまでバクチで車を突っ込ませて、結局駐車場が見つからずにスゴスゴ芦安まで戻る、というのは非常に時間がもったいない。

登山口に水場がある

10:24
水場はちょうど都合がよいことに、登山口の脇にある。水汲みがまだの人はここで給水すべし。

夜叉神峠・鳳凰三山登山口

10:26
夜叉神峠・鳳凰三山登山口で出発前の記念撮影。標高1,380m。

こういうところで撮影をするのは、自己顕示欲があるということだけではなく、「登り始めが何時何分だったか」を記録する意味でも重要。デジカメで撮影した写真は、撮影日時が記録されるので後々便利。

さて、ここは今回の最終目的地「鳳凰三山」だけではなく、「夜叉神峠」への登山口でもある。そう、今ここにいるのはあくまでも「夜叉神峠登山口」という場所であり、夜叉神峠そのものではない、ということだ。紛らわしい。

その夜叉神峠だが、標識によると所要時間は60分~80分なのだそうだ。こんなぼんやりしている標識を見たのは初めてだ。

山小屋の案内看板

10:29
山小屋の案内看板が登山口にある、というのがちょっと珍しい。

この先、鳳凰三山までは3つの山小屋があり、その解説がされている。鳳凰三山を夜叉神峠登山口から登る際、日帰りで往復するというのは事実上無理なので、どこかの山小屋のお世話になることになる。だから、案内看板には「入山される前にお読みください」とアンダーライン付きで掲示されていた。

山小屋といえば、「来る者拒まず」というのが原則だが、ここ鳳凰三山の山小屋については要連絡となっている。ちなみにおかでんは既に南御室小屋の予約を済ませてある。南御室小屋(+薬師岳小屋)で感心したのは、webフォームから宿泊予約ができるということだ。ご時世ですな。

ジグザグの道

10:30
登り始めはジグザグの道。当面の目標地点である夜叉神峠は標高1,790m。400mほど標高を稼がないといけない。

歩きやすい道

10:32
よく整備されており、大変に歩きやすい登山道。

登り始めは細かく刻んでくるジグザグ道だったが、じきに振幅の大きな、なだらかな登りに切り替わった。

樹木がうっそうと茂っているわけではなく、木と木の間が比較的間隔が空いているので、なんとなく開放感がある。

てくてく歩く

11:03
歩きやすい道はまだまだ続く。こんな調子でずっと山登りができればなんと楽なことよ。でも、絶対どこかでキッツイ登りが出てくるはずだ。そうでないと、本日の最終目的地点・南御室小屋(標高2,420m)にたどり着かないからだ。

夜叉神峠

11:18
なにやら開けたところに出たぞ、と思ったら、ここが夜叉神峠。

「60分~80分」かかる、ということだったが、おかでんの脚力だったら50分強で到着することができた。さい先がよろしくておかでんご満悦。

峠、ということだが、あまり峠っぽくはない地理状況。