17:41
乗鞍高原自転車ヒルクライムを終え、お風呂に入ったのち撤退を開始する僕ら。
撤退、といっても「さて、どうする?」という状態だ。あと1日あるんだからどこかでもう一泊!と思っても、今からこの時間で宿を押さえるとなるとビジネスホテルくらいしかない。ビジホに泊まってまで何かこの界隈でやりたいことがすぐに思いつかない。
だって、さっきまで自転車を漕ぐので必死だったから。
日々仕事やら結婚式に向けた準備やらで忙しいので、今日中に東京に戻り、明日は一日自宅でゆっくり過ごすのもありだ。ゆっくり、といっても結婚式関連で検討しなくちゃいけないことがあれこれあるんだけれど。
しかし、僕らはレンタカーを借りている立場。今日、ビューンと東京に戻っても、レンタカーは明日いっぱいまでの契約だ。今から東京に戻ってもレンタカー営業所はもう閉店しているので、明朝までどこかのコインパーキングにあずけておく必要がある。
遊べないやら、お金は余計にかかるやら、何の罰ゲームだ?
特に決め手がないので、乗鞍高原から下山しながら気になる施設に立ち寄っていくことにした。
地図を見て気になっていたのが、「バウムクーヘン&カフェ」という看板を掲げたお店だ。
高原ってずるいよな、街灯などの明かりが乏しい中、森の中にふっと建物があって暖かい色の明かりが灯っていたら、それだけで「あっ、なんか良さそう!」と吸い寄せられてしまう。
大自然の中だと、虫も人間も明かりに引き寄せられるのは一緒。
お店の名前は「ヤムヤムツリー」というものだった。
17:30閉店と書かれているけれど、僕らが到着したのは17:45頃。タッチの差で駄目だったね、と思ったけど、お店の人がいて「まだ大丈夫ですよ」とのこと。ありがたく中に入らせてもらった。
「日本で一番空に近いバウムクーヘン工房」を名乗っているのが面白い。
「日本で一番高い◯◯」というのを全国から探し集めて、それを巡る旅というのは楽しそうだ。僕が今ぱっと思いつく限りだと、「本で一番高い場所にある「温泉」「露天風呂」「通年営業の温泉」「パン屋」がある。
標高が高い、というだけで売りになるのかどうか疑問だと思ったけど、バウムクーヘンは空気が薄いと生地のあまり膨らまず、焼くのが難しくなるそうだ。でも、うまく焼けるとぎゅっと詰まった美味しいお菓子に仕上がるそうだ。へえ、なるほどね。単にお店の立地でブランディングしているわけじゃないんだ。
ここでバウムクーヘンの小片を何種類か買ったと思うのだけど、何を買ったかは覚えていない。
19:14
今晩どうするのか、明日どうするのかを決めきれないまま、松本市街までやってきた。
松本市近辺のビジネスホテルで、大浴場があるところに泊まりたいな・・・と考えていたのだけれど、グズグズしているうちに松本の中心地までやってきてしまった。
とりあえず、コインパーキングに車を預け、「いかにも長野・松本らしい食べ物」を食べることにした。食べながら考えよう。
松本界隈は、もともと蕎麦屋が多い印象だった。そして最近は山賊焼きのお店が増えたように感じる。あくまでも観光客目線なので、実際にそうなのかは不明だけど、そんな感覚。
他には何かないか。探してみて、行き当たったのがこのお店。「高橋」。
渋い外観。昭和、という感じ。
店頭には「元祖 松本名物 馬さし すき焼」「特製 ソースかつ丼 とんかつ」と書いてある。
馬刺し!
長野でも馬を食べる文化があることは知っていたが、それは伊那地方限定なのかと思っていた。松本でも「名物」を名乗るほどに馬刺しが浸透しているのか。それは初耳だ。
アワレみ隊では以前、伊那地方の馬食文化を体感するキャンプを開催したことがある。
その時のことを思い出した。
東京じゃなかなか馬刺しを提供するお店はない。よし、じゃあ今回馬刺しを食べてみようじゃないか。
店内には、「本場の味 信州名物 馬さし」の札がでかでかと掲げられていた。
火災報知器のサイズと較べてみてほしい。どれだけこのお店が自信たっぷりにこの看板を出しているかがよくわかる。
「餃子の街No.1」の座を競って、宇都宮と浜松が争っているというのをワイドショーやバラエティー番組が面白おかしく紹介することがある。それはそれとして、「馬刺しNo.1」を競って熊本や松本が争っても良いと思う。
ほーぅ、かつ丼がおしながきの先頭に出てくるんだな。
しかも、「ソース味のたまごとじ煮かつ丼」と書いてあるから、頭が混乱する。
世の中、「卵とじの煮かつ丼」派と「カツをソースにくぐらせたものをご飯に乗せた丼」派が存在する。地域によってどっちの派閥に属するか、変わる。しかしこのお店の場合、どっちも混ぜたハイブリッド型だった。これは見たことがないし、食べたことがない。
今思うと、これを食べておくのが正解だったかもしれない。たまごとじにした時点で、普通ならだし醤油味になるのが相場だからだ。
あと、馬刺しのメニューを見ると、「馬刺し定食」というのがあって、「なるほどそうだよね」と思う。馬刺しをおかずにご飯を食べる。僕自身は殆どそういう経験がない。馬刺し=酒のつまみ、というイメージだ。
他にも、「さくら丼」と「生さくら丼」があったり、なかなかこのメニューは見ごたえがある。地味なので見落としがちだけど、ご当地感やお店のスタンスがメニューににじみ出てきて、良い。
ちなみに「さくら丼」はすき焼き風に煮た馬肉がご飯に乗っているもので、「生さくら丼」は馬刺しがご飯に乗っているものだそうで。どっちもいいな!
19:19
馬刺し単品。1,000円。
「大」を選ぶと、1,600円になる。サイズが選べる、というのが面白い。
赤身のきれいな肉だ。桜に例えるのも納得だ。黒っぽい鹿肉よりも美しい発色だ。
せっかくなので、馬刺し以上にレアアイテムである「馬もつ煮」を頼んでみた。850円。
伊那のほうでは「おたぐり」と呼ばれている食べ物だ。僕は伊那以外で食べたことがない。馬の内臓なんて、東京界隈だとまずお目にかからないからだ。
うまいか?と言われると、「まあ、別に牛もつでも豚もつでも構わないですけどね」という印象。もつの臭みを抜くために味噌でしっかり煮込んでいるので、馬でなくても良い気がした。あっ、そんなことを考えては駄目だ。
(つづく)
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