食わずに死ねるか!【東京下町食べ歩き】

並木藪蕎麦

19:12
駒形どぜうから、浅草雷門方面に向かって歩いていく。

歩いている最中、「並木藪」があることに気がついた。「三大藪」の一つ、と言われているお店の一角だ。

このお店でのできごとは、「蕎麦喰い人種」にて詳細な記事を書いているので、省略する。

まあ、別記事になっているくらいだから、つまりは「うっかり中に入っちゃって、飲み食いしちゃった。」ということだ。察してくれ。

(写真の店舗外観は、退店後に撮影したもの。看板の照明が落とされ、のれんが下げられているけれど、我々が入店した時点ではのれんが出ていた)

菊正宗

それにしても驚くべきはばばろあのガッツよ。

いくら「蕎麦くらいならつるッと食べられる」とはいっても、どぜうのお店を出てわずか5分で、次の店に入るか?

完全に僕がそれに引きずられている形になっている。おかしい、立場が逆だ。

もちろん、僕自身こういう「やり過ぎ感のある食べ歩き」は渡りに船だ。「やるぞ」と言われたら、「おう!」と応じる構えだ。しかし、自ら「よし、お店をハシゴするぞ」とは思わないし、ましてや仲間がいるときに、仲間に配慮しつつ「もう一軒!」とは言えない。

いつの間に自分はつまらない人間になってしまったのだろう。ばばろあの言動を見て、つくづくそう思う。こじんまりとまとまりやがって、自分。

ざるそば

という思いを胸に、蕎麦をたぐる。

こういう本格的な江戸前蕎麦屋での蕎麦、というのはずいぶん久し振りだ。昔は「蕎麦喰い人種」を名乗っていたのに。ばばろあがいてこそ、の蕎麦だ。

蕎麦で酒を飲む

そんなばばろあは、先ほどの駒形どぜうで300mlの凍結酒を一人で飲んだばかりなのに、引き続いての菊正宗樽酒1合。

太っちょの徳利に入っているので、おそらく「正一合」なのだろう。食べる量もさることながら、お酒の量も絶好調だ。

夜の雷門

19:39
19時半には、並木藪蕎麦は閉店。我々はちょうど閉店ちょっと前で、客足が少ない時間帯にやってきたのだった。いっつも大行列ができているお店なので、入店する気が失せるのだが、夜なら空いているのは意外だった。でも、観光地のお店というのはそういうものなのだろう。

僕がよく訪れる岡山県倉敷市の美観地区も、夜になると一気に閑散とする。夜でも開いている店なんて、数える程度になってしまう。

しかし、雷門周辺には相変わらずお客さんがいっぱいいた。昼夜問わず、賑わう場所だった。

大黒家

19:45
「大黒家、(いつも混んでいる)本店に行ってみて、並んでいるようならやめにしようや。空いていたら中に入るってことで」

ばばろあが、冗談ではなく本気で大黒家の天丼を狙っている。

別に彼は天丼が食べたくてしょうがないわけではない。折角の上京なんだから、「東京らしい何か」を食べたり飲んだり体験したいだけだ。たまたま僕が、「どす黒いつゆのせいで黒っぽい天丼は、なかなか他の地域じゃお目にかかれない」と話をしたので、それにばばろあが反応したというわけだ。

それにしても冗談が過ぎる。

どじょう⇒蕎麦 という流れまでは、まだわかる。まあ、どちらもお腹にさほど溜まらない食べ物だから。しかし、合わせ技一本で、さすがに大の大人でもこれでお腹いっぱいになる。そこからさらに、これから天丼を胃袋にぶち込もうというのだ。この発想はなかった。異邦人の発想だ。

大黒家

店の外には、昼間のような行列はまったくなかった。

営業が終わってしまったのだろうか?しかし、のれんは下がっている。

・・・と、僕が外観を吟味している間に、ばばろあはどんどん先に進み、何の躊躇もなく引き戸をがらりと開ける。

この男はいつもそうだ。旅行の移動の際はつねに早足でどんどん前に進んでいくし、こういう場面では一切の躊躇なく店に入っていく。僕が「さて、どうするかな」と逡巡し、店の前で一息つくのとは大違いだ。

決してせっかちな性格なわけではないので、判断が早く、白黒を瞬時に決めるのだろう。

って、おい!少しはこの上京に躊躇しろよ。これからマジで天丼食べるの!?

大黒家店内

店の人に「ごめんなさーい、もうラストオーダーの時間過ぎちゃったんで」と言われるんじゃないか、と不安4割期待6割くらいあったのだけど、まんまと着席することができた。うお、天丼確定。

大黒家メニュー

大黒家のお品書き。

浅草には何店舗か、天丼の名店と呼ばれるお店がある。その代表格がここ「大黒家」だ。

特徴は、濃い色をしたつゆに天ぷらをしっかりとくぐらせて、どんぶり飯の上にオンする、ということ。さらに丼にふたをして、天ぷらを蒸らす。このため、今どきのサクサクした衣が楽しめる天丼とは全く違う食べ物になっている。

あまりに天ぷらの衣の色が濃いので初めて見たときはギョッとする。しかし、「富山ブラックラーメン」のように喉が渇く塩っ辛さはなく、東京のそばつゆ同様に甘辛い味付けになっている。

ただし、ヘルシーっぽさ志向(実際にヘルシーかどうかは問わない)の現代において、この色合いは流行らないだろう。だからこそ、こういう昔からある名店の存在が際立つし、行列もできるというわけだ。「流行に寄り添っていない」からこその行列。

そんなわけで、こういう天丼はどこでも食べられるわけではないので、浅草に来て食べるというのは悪くない選択肢だと思う。ただし、当たり前だけど「エスニック料理を食べた時みたいな、驚き」はない。あくまでも、既存の天丼の延長線にある味だ。

天丼

天丼がやってきた。1,550円。

「天丼てんや」における天丼価格に慣れ親しんでいると、一瞬たじろぐ値段だけど、あちらはオートメーション化された厨房で調理をした場合の値段。こちらは職人が揚げた値段なので、差が出るのは当然だろう。しかもここは観光地のど真ん中だし。

ばばろあが天丼を食べるとして、僕は敢えて「さしみ」のような、他の人が殆ど頼まないであろう料理を注文するのも面白いかな・・・と思った。しかし、さすがにこれから刺身を食べる気にはなれず、やめた。

天丼オープン

天丼。

今日一食目ならともかく、晩飯だけでもこれで3食目だからな。想定していたとはいえ、実物を見て苦笑してしまった。

天丼を食う

丼からはみ出る海老を一旦ふたに移しつつ、天丼を食べるばばろあ。

「ここではお酒を飲まないのか?」
「やめとくわ。日暮里に戻ってから、銭湯で生ビールを飲むつもりじゃけえ、それのためにとっとくわ」

まだ今晩中にお酒を飲む気満々だ。

(つづく)

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