08:33
バスは「沼田」というバス停を過ぎたところから一気に山に入る。
この筑波山という山は、アホみたいにだーっと広がる関東平野に、いきなりポコンとそそり立つ山だ。まるで文鎮かなにかを置いたような唐突感がある。なので、「山エリア」と「平野エリア」の差がくっきりしている。
標高は低い山なのだけど、山の裾野が非常に浅い。そのため、ふもとから登るとなると馬鹿にできない傾斜だと思う。
これまでは田んぼアンド田んぼアンド研究施設の光景だったけど、ここからは完全に樹林帯。
08:39
つくばセンターをバスで出発して約40分、筑波山神社の大鳥居が見えてきた。筑波山ハイキングを考えている人の多くはここで下車してしまう。
筑波山神社の脇にはケーブルカー駅があり、ケーブルカーを使えばらくらく山の上まで登ることができる。前回僕がこの山に登ったのは、その方法だ。
今回も同じくケーブルカーを使うのはあまりに芸がない。なので、ここからまだ先、バスの終着駅になっている「つつじが丘」から出ているロープウェイに乗ろうと思う。・・・結局楽するんか。
否!さすがに今回はそれはない。今年一年の健やかな登山を祈念して、ちゃんと二本の足で山に登ろうと思っている。でも!万が一!気が乗らないというようなことがあったら!それはそういうこともある。
なんだか、乗る気満々だな。
08:52
筑波山神社のところであらかたお客さんをおろした後、バスはつつじヶ丘を目指す。
すると、前方が渋滞になっており、バスがすっかり停まってしまった。一体何事だ?車が脱輪でもしてしまったのだろうか?
08:53
渋滞の理由は、つつじヶ丘に向かう交差点のところで交通整理が行われているからだった。
交通整理?熊でも出たか?
身を乗り出して前方の様子を伺っていたら、しゃーっと何かが横切った。
あっ、自転車だ!
自転車のヒルクライムレースが行われている真っ最中だった。二車線のうち一つをレース用に使っているため、上りと下りは長い区間、片側交互通行になっていたのだった。そのせいで渋滞というわけだ。
08:56
きつい坂を自転車は登っていく。その横を、排気ガスをブロロロロと吐き出しながらバスがすり抜けていく。がんばれー。
こ れ が 科 学 技 術 な の か !
とあらためて産業革命以降の技術革新について驚きの念を禁じえない。やあ、楽だなあ。
一方自転車の皆様は、フウフウいいながらかろうじて登っている感じ。疲れ果てて徒歩に切り替えている人がいないのはさすがだ。だてにピッチピチのタイツを履いているわけじゃない。
このつつじヶ丘に向かう道は、ループになっている場所もあるくらい急だ。よくやるよ、こんな道を登ろうだなんて。
08:58
つつじヶ丘。
女体山の登山口として、そして女体山山頂直下に通じるロープウェイの起点として位置づけられている場所。
到着してみると、そこは大きな駐車場が広がっている場所だった。
自転車レースのゴール地点になっている関係で、レース用に広く場所が割かれていた。
09:03
うわあ・・・
ゴールしたレーサーたちがぎゅうぎゅう。
中には疲労困憊して、駐車場脇にひっくり返っている人がいるが、ほとんどは粛々とこの人ごみに飲み込まれている。その前方には、大型トレーラー。どうやら、ここから自転車で下山するとなると交通の邪魔になるので、ふもとまではイベント主催者が自転車を運んでくれるらしい。選手たちは送迎バスに乗っておりる。
調べてみたら、「ツール・ド・つくば」というレースだった。走る距離は12kmしかなく、事実上「筑波山ヒルクライムでヒイヒイ言う会」だ。風をさっそうと切って走るよりも、急坂をよじ登ってあえぐのが好きな人向けの大会というわけだ。すげえな、そんなしんどいレースなのにこれだけの人が集まるとは。
09:03
つつじヶ丘レストハウス。軽食と土産物のお店が駐車場にはあった。ソフトクリームや茨城名物が売られている。
ここでレース終了後、「反省会」と称してビールを飲んだり甘いものを食べたりしている選手が大勢いると思ったが、あまり見かけなかった。さすがに自転車なので、ビールを飲むというわけにはいかないのだろう。それよりも、とっとと下山して一息つきたいといったところか。
だとしても、朝9時にはもうレースが終わっているのだからすごいな。朝どれ野菜の収穫みたいだ。僕、これからクライムヒルなんですけど、完全に出遅れた感。
09:04
レストハウスの隣がロープウェイ乗り場になっている。
9時20分から運航開始なので、まだ第一便は動き始めていない。ちょっとのんきだ。それだけ低い山で、気軽に遊びに行ける場所だという証だ。
この時点で、僕はまだ「歩いて山頂を目指す」という決心はできていない。はっきりいって、面倒くさい。体が重たい。
「そろそろ筑波山にいかなくちゃなあ」という、なんとなくの義務感からスケジュールを立て、スケジュールを立てちゃったからには行かなくちゃなあ、と当日朝早く置き、ここまでやってきた。でも、ここから先、歩くかロープウェイで楽をするかは別だ。楽したって、登山は登山。女体山の山頂に立てば「百名山登ったぞー!」と言える。さて、どうしようかな。
「今回は登山を久々にやりました、という実績作りが大事なのでしてね。なぁに、手段は問わないですよ。楽しても結構。とにかく、山に登った!という事実が次回に繋がるんです」
なんて言葉が頭をよぎる。
ここで悩ましいのが、運賃が620円というお求め安い価格であるということ。1,000円くらいするなら、勿体無いので歩いて登るけど、620円って絶妙だなオイ。
しばらくこの場で立ち尽くす。
でも結局、諦めた。「ちぇっ、登ればいいんでしょ登れば!」と捨て台詞を残し、この場を後にした。やっぱり歩かないと。
もし、「まもなく次の便が出発します」というアナウンスがあったら、「やばい!乗らなくちゃ!」ってことでそのままお金を払ってロープウェイを使ったと思う。
これから登っていくのであろう尾根。山頂はまだここからは見えない。
何かゴチャゴチャした建物が見える。その建物の上に、茶色い物体が鎮座しているけど、ありゃなんだ?
・・・目を凝らしてみたら、カエルだった。
ああ!筑波山といえば、「がまの油売り」で有名だ。ということは、あれはガマガエルなのか。どうもガマさんちーっす。
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