いいぞォ、山小屋はいいぞォ【仙丈ヶ岳】

11:26
アナウンスがあり、北沢峠行きのバスで臨時便が出るという。まじか!12時半まで、あと1時間以上も待たなくて済むのか!

嬉しい反面、暇に任せて広河原界隈を探検する計画がなくなった。

バスは11時半に出るという。もうすぐじゃん。

予定よりも1時間早く、北沢峠に到着できる。なんだ、それだったら今日中に標高2,900メートルの仙丈小屋まで行けたな、と思う。でも今更予定を変更するのも良くないので、計画通りに本日の最終目的地を馬ノ背ヒュッテに据え置いた。

山小屋でじっくり過ごすのも良いものだ。小屋に早く到着した時点では人が少なかったのに、日が暮れるに従ってだんだん増えてきて、寝床が狭くなっていく。そのガッカリさが、むしろ楽しい。「やっぱりそうなるよねぇ」という苦笑を伴うからだ。本気でガッカリしたなら、楽しくなんて、ない。

やっぱり、山小屋ってのはマゾ的なものに楽しさを見いだせる人のための施設だ。それくらい洒落っ気がないと、狭くて臭くて息苦しい、日本でもっとも人工密度が多い空間なんて誰も居たくはない。

時間がなかったので、ビジターセンターの中を見る暇がなかった。北岳登山口および北沢峠に向かう道も、ちょっと見てすぐに引き返す。

一方こちらは、ロータリーを挟んでビジターセンターの反対側。こっちにも道が伸び、乗り合いタクシーやバスの駐車場になっている。

ここから先も南アルプス林道は続き、最終的に奈良田温泉にたどり着く。そこから先は一般の道となり、身延方面へと抜けていく。

臨時バスの出発時間が迫り、バスのりばに並ぶ人々。良かった、溢れんばかりの人の数じゃなかった。

北沢峠行き、奈良田行き、甲府駅行きのバスは同じ場所から出発する。

せっかくロータリーがあるんだから、「1番乗り場は北沢峠行き、2番乗り場は甲府行き・・・」と分ければいいのに、と思ったが、乗り場を分けるほど頻繁にバスが行き来しているわけじゃないので、こうやって一か所にまとめておいて十分だった。

あと、甲府行きについては3両編成ということもあるわけで、ずらっとバスが並ぶことになる。そうなると、「●番乗り場」なんて作ってる場合じゃない。

北沢峠行きの、南アルプス市営バス時刻表。

こういうのは、スマホで写真を撮っておくと良い。下山するとき、「そういえば帰りの便は何時だったっけ?」と確認するのに役立つからだ。予想以上に快調で、この調子だったら1本前のバスに乗れるんじゃね?なんて時に、参考になる。

「えーと、40分発だったっけ、それとも30分発だったっけ?」と記憶が曖昧なとき、この10分の差というのは大きい。どれだけペースアップしなくちゃならないのか、考える上で重要だから。

バスがやってきたぞー。

車体の側面には、雪を纏った南アルプスの山々が描かれてる。「今日はあいにくのお天気ですが、せめて車体の写真を見てお楽しみ下さい」というわけか。ちぇっ、今にも雨が降り出しそうな天気だよ。天気予報を見ているので納得ずくだけど、せめて明日は晴れて欲しいなぁ。

広河原から北沢峠までは、10.2km25分。途中、「野呂川出合」というバス停を挟む。

野呂川出合は、その名の通り野呂川が分岐している場所だ。特に何かがあるわけじゃないけれど、ここから南に向けて伸びる沢沿いに進んでいけば、南俣小屋があり、そして日本第二位の高峰、北岳にアクセスできる。

ただし、野呂川出合から南俣小屋を経由して北岳というのは、メジャーな登山ルートの真裏に位置し、相当マニアックなルートだ。忍者がこっそり城に忍び込む感があるルート、というと語弊があるけれど、一生のうちに何度も登るチャンスなんてない北岳で、このルートを選択する人はなかなかいないと思う。

所要時間だって、もちろん長い。広河原でバス乗り継ぎのためにお金と時間がかかるという最初のハードルがあって、そのあと野呂川出合から徒歩で2時間20分で南俣小屋。おそらくここで一泊ということになる。そして翌日は北岳を西側から攻め上り、6時間で北岳山頂だ。

こういうメジャーではないルートを敢えて歩いてみたい、という欲は僕にだってある。だって、メジャーな道は人々の手垢が付きすぎてるもの。山小屋は人で溢れてるし。しかし、メジャーではないルートを歩くほど僕には暇がないと思う。残念だけど、これが庶民の限界。

バスは北沢峠に向けて走り出した。

嬉しくなって車窓から写真を撮っているけれど、後から見返すと、全然大したことがないな。深く緑に覆われた谷は見事だけど、だからなんなんだ、と言われると、困る。大して記念にも記録にもならない写真だ。

じゃあ、滝はどうだ?

でも、こういう谷沿いにある細い滝というのは、写真を撮る時はみんな夢中になるけれど、いざ撮影してみると案外迫力がないものだ。

さすがバスだ、ぐいぐい標高を上げていきやがるぜ。

たかが25分の乗車時間と侮ることなかれ、なにせこれで標高が500メートル稼げるのだ。ありがたくてたまらん。このまま仙丈ヶ岳の山頂までバスで連れて行ってくれ。

ちなみに北沢峠は標高2,036メートル。今日目指す「馬ノ背ヒュッテ」までは、標高差600メートルほど。

(つづく)

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