15:11
那須湯本の民宿街の坂を下っていくと、左手に木造の建物が見える。
これが「滝乃湯」。
僕の生命線、今回の療養の目的地だ。
地元民と、民宿街に宿泊するお客さん向けの共同浴場。かなり立派な作りで、ゆったりとお湯に浸かれるので素晴らしい。鹿の湯は曜日や時間帯によっては大混雑するけれど、この滝乃湯はそんな心配は無用だ。徒歩わずか数分の、隠れ家。
そしてその正面にあるのが、前回同様今回も我が療養先となる「民宿 松葉」。
川を挟んで、本当に向い合せで「松葉」と「滝乃湯」が位置している。雨の日でも風の日でも雪の日でも、しゅっと風呂に入れる、一等地。「駅前一等地」ならぬ、「温泉一等地」だ。
そのかわり、内湯はない。そして、夜の間は従業員さんがいなくなるので、それが怖いと思う人には向かない。
民宿の前に、「那須温泉の天然水 宝来水」という湧水があった。
宝来水は水質検査で安全、という結果が出ているけれど、万が一水当たりや食中毒があったとしても責任は取れないよ!という注意書きが張り出してあった。
15:17
チェックインを済ませ、部屋に入る。
シンプルだけど、これがむしろいい。二間続きだったり、床の間があったり、窓際に椅子と机があったりする必要はない。これくらいのサイズ感だと、万年床にしておいても机を片付けなくて済む。ちょうどいい。
これからお風呂に入るにあたって、まずは「湯上りバスタオル」なるものをかばんから取り出す。まだ湯上りじゃないけれど。じゃあ今この状態をなんて呼べばいいんだ?湯下がり?そんな馬鹿な。
これは、さっき宇都宮のドン・キホーテで急遽買ったものだ。旅の途中、「しまった!タオルを持参しそびれた!」ということに気が付いたからだ。
シンプルイズベストな宿のここなので、備え付けのタオルがなくてもおかしくない。そうなったら、さすがに日々の入浴に支障が出る。ハンカチで体を拭くわけにはいかないだろう?
と思ったら、ちゃんとタオル・歯ブラシセットが部屋に用意されていた。
新しくタオルを買ったのは杞憂だった。でも、もし何もなかった場合、この周辺にはコンビニなんてないのでタオルを調達できない。万が一に備えて買っておいたのは、結果的に空振りだったけど悪くはない予防策だったと思う。
部屋の窓から見た、「滝乃湯」。
本当に真正面だ。
滝乃湯の裏側にも、民宿が並んでいるのが見える。こういう宿の設備や値段って、どれくらいなのだろう?
僕がいまいるこの宿、「松葉」を選んだのは立地の良さもあるけれど、ネット予約サイトに掲載されていたからだ。掲載されていない宿は、東京に住んでいる僕にとっては「無」に等しく、接点が全くない。ひょっとして隠れた名宿もあると思うけれど、検索できないんだからしかたがない。
滝乃湯の鍵を借り受けた。
ICチップが内臓されたキーホルダーになっている。扉はこのICチップをセンサーにかざして、開錠する。
15:19
さあ、さっそくお風呂だ。
2泊3日といえば長い滞在のような気がするけれど、案外そんなことはない。その限られた時間の中でどれだけお風呂に浸かれるか。「時間との闘い」という言い方は療養なのでしたくないけれど、どうしても時間を意識する。
長風呂してぐったりして、爆睡するのが理想系。だとすると、しっかりと睡眠時間も確保したい。
風呂、睡眠、食事。シンプルな生活となる3日間だけど、すべてが大事だ。
(つづく)
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