いいぞォ、山小屋はいいぞォ【仙丈ヶ岳】

12:21
お昼ご飯を食べてから、山歩きを開始しよう。まずは待合室の軒先でお湯を沸かす。

その間、足を前に突き出して、くつろぐ。今日はまだほとんど歩いていないが、これまでずっと電車とバスで窮屈な扱いを受けてきた足。

リールアジャスト機能付きのトレッキングシューズなので、リールボタンをパチンと引っ張るだけで、靴が緩んでかんたんに脱げる。本当に便利で、僕みたいに「隙あらば足の裏は風通しを良くしていたい」という人にとってはうってつけだ。一度使うと、やめられない。

あ、なお僕は水虫持ちではない。予め言っておく。

本来の登山靴は、厳重な靴紐によって足の甲からつま先、そしてスネの近くまでぎゅうぎゅうに締め上げる。なので、靴を脱いだり履いたりするときは、「えいやっ」と気合を入れないといけない。お腹がゆるい人は、その「えいやっ」の瞬間で脱糞してしまうのではないか?というくらいだ。

リールアジャストの靴は、すぐに脱げる・すぐに履いて締め上げることができるので其の点便利だ。移動中のバスや電車でも、即座に気軽に靴を緩められる。そして登山中の山の斜面に応じて、靴のキツさを調整することもかんたんだ。

じゃあなんでこんな素晴らしい靴があまり流行っていないの?というと、

  • 紐のかわりに細いワイヤーで靴を締めるので、人によっては足の甲の圧迫感が気になる。
  • めったに無いけれどワイヤーが切れたり、リール部分に小石が噛んで壊れた場合は応急処置が難しい。ローテクな紐ほどの信頼性はない。

ということなんだと思う。あと、聞いたこともないメーカーのリールアジャストシステムを採用した靴をネット通販なんかで買うのは止めたほうがいい。信頼性が担保できないから。登山靴というのは登山の基本中の基本となるギアなので、この信頼性が怪しいのなら手を出してはいけない。

で、今回履いている靴は、中~低山登山を前提としたトレッキングシューズだ。今回3,000メートルオーバーの山に登るのだから、家にもう一つある、重くてごつい登山靴を履いてくればよかった。今頃になって気がついた。3,000m超えの山なんて、日本ではそうそうないんだから。

登山靴というのは、目指す山によって使い分けるのが理想だ。高い山を目指す場合、森林限界(だいたい標高2,600メートルくらい)を突破するので、岩がゴロゴロした道を歩くことが増える。足場が悪いので、捻挫をしないようにくるぶしをガッチリガードするハイカットの靴でありたいし、凸凹している場所なので靴底が固くて融通がきかないものが求められる。いちいち歩くたびに靴の裏がしなやかに反っていたら、ズルっと滑って怪我をしてしまう。

しかし、下界を歩く時は、靴が重たいし、足の裏で地面を蹴った勢いで前に進む、ということがとてもやりりにくなる。なので、低い山を登る時には、もっと靴底が柔らかく、軽い靴が好ましい。捻挫をする可能性も下がるので、くるぶしが出ているタイプの靴という選択肢も出てくる。その方が快適だ。

ときどき、結構な山をスニーカーで登っている人をみかけるが、よくやるなあと呆れる。初心者なのだと思うけど、初心者だからこそむしろ靴にはお金をかけて、安全と楽ちんさの両方を手に入れたほうが良いと思う。

で、今回の僕だけど、スニーカーとまではいかないまでもお気楽なトレッキングシューズで来てしまったのでちょっと残念だった。なにせ、ごつい登山靴は邪魔くさいので、滅多に履く機会がないから。履けるときに履いておきたかった。

ちなみに、筑波山に登った際にその「ごつい登山靴」を履いて登ったけど、やたらと疲れた。筑波山レベルで履くのは、明らかにオーバースペックだった。

本日のお昼ご飯。

つい2週間前、アワレみ隊で赤沢自然休養林に行った時に買った。「スガキヤの味噌煮込みうどん」を作ろうと思う。

そこに、カット野菜そしてソーセージを豆乳するつもりだ。

カット野菜にしろソーセージにしろ、自宅からここまで完全ノーガードの常温で持ってきている。ソーセージはともかくカット野菜は傷みが出ていると思うけれど、季節はもう10月。まあ、お腹をこわすほどのものじゃない。OKとする。

もしこのカット野菜がなければ、「北沢峠こもれび山荘」で優雅にお昼ご飯ということもできた。しかし、今日こいつを食べておかないと、腐るんじゃないかという恐怖があったので、当初予定通りに自炊となった。

ガスストーブにクッカーを乗せ、お湯を沸かしてカット野菜を茹でる。

既にこの段階でクッカーがいっぱいになってしまい、少しヒヤッとする。何しろ、残り汁も余さず飲み切るのが登山中のルールだ。飲み残しを地面に捨てるというのはやってはいけない。

お湯が沸き、恐れていたカット野菜のかさは減ってくれた。

ほっと一安心しながら、乾麺を入れる。

さらにソーセージを入れ、煮込みつつスープを投入して完成。

眉間にしわを寄せ、真剣な眼差しで調理中の僕。

何しろ、背丈が高いガスストーブの上に、これまた背丈が高いクッカーを乗せている状態だ。さらにそこで汁物を煮ているのだから、まったく油断がならない。クッカーが倒れるということは、今日のお昼がゼロになるということだ。細心の注意を払いつつ、難しい顔で調理を進める。

12:23
ようやくお昼ご飯。

つるつると滑るプラスチックの箸で麺をたぐる。毎回、この滑りやすい箸をいまいましく思い、次回はどうにか対策を・・・と思う。でも利用頻度が低いので、次回までにそのことを忘れてしまい、毎度この滑る箸を使い続けている。

山用語で「ブキ」というものがある。レストラン風に言うと「カトラリー」のことで、ナイフやフォーク、スプーンや箸のことを指す。「武器」に由来する言葉で、こういうものをコンパクトに1セットにしたものを「ブキセット」と呼ぶ。

僕が持っているブキセットはコンパクトさを重視した結果、スプーンなどの柄があるものはねじ式で柄の長さが伸び縮みする。箸は、元々が短い。

短い箸で、鍋底が深いクッカーから麺をすくいだすのは結構難儀だ。うっかり鍋肌に手が当たると、熱い。そして、食事後半戦になると、食材に箸が届かなくなる。

さらに、衛生面を配慮してか、ツルツルとしたプラスチックの箸になっている。これが麺をつまむには致命的に難しく、麺をキャッチしては逃げられ、逃げられてはキャッチしなおして、の繰り返しになる。

次回は割り箸を検討しなくちゃ。

ソーセージを手に、ご満悦の表情。

ソーセージもこれまた滑る食材なので、カメラに向かって笑顔でポーズをキメているものの内心はヒヤヒヤだ。セルフタイマーをセットしてから10秒以内で姿勢を固定し、クッカーをつかみ、箸で滑るソーセージをキャッチし、笑顔を作るというのはなかなかなタイムトライアルだった。

ソーセージからいいダシが出るのはもちろんとして、シンプルな山料理にもかかわらず料理に豪華さが出てくる。ラーメン(うどん)ソーセージは本当に素晴らしい。今まで食べてきた山での食事の中で一番贅沢な気分だ。まだ山に登り始めてはいないけれど。

12:28
あまりにソーセージが美味しかったので、本当は2本でやめておくつもりだったソーセージを追加投入。もう食べ終わった味噌煮込みスープ中に追加で2本入れ。

バックの中にある荷物は軽いに越したことがないだから今のうちに食べてしまおうというそういう口実のもと結局ソーセージだけでも4本食べてしまったはっきり食べ過ぎだと思う

まだ登山のひとつも始めていないのに悠長にお昼ご飯を食べてるのは、今日この後、標準コースタイムで2時間40分の距離にある山小屋「馬ノ背ヒュッテ」に宿泊予定だからだ。行程は短い。

広河原から北沢峠への臨時バスが出たおかげで、のんびりとお昼ご飯を満喫することができた。

12:44
食事の荷物を片付け、いよいよ登山開始。

バスの待合所のすぐ脇から、西に向けて細い道が通っている。 これが仙丈ケ岳山頂に向けて逆時計回りに登っていくルートになる。

とはいえ、いきなり急登からスタートするようなスパルタンな道ではなく、まずは仙流荘行きのバスが通る林道に並走したりショートカットしたりしながら、標高を落としていく。

12:46
ほら、また南アルプス林道と合流だ。

車は急勾配を登れないので、車道は大きく蛇行して作られている。この登山道は、そういう大回りを無視して、最短距離で前へ進む。

(つづく)

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