いいぞォ、山小屋はいいぞォ【仙丈ヶ岳】

2017年の夏から秋にかけては忙しかった。

7月、久しぶりの山小屋泊登山として長野県の焼岳を登頂して、「ああ、やはり登山はよいものだな、ライフワークとして登りたい」と改めてじんわり感じたものだ。

しかしその後、8月頭の「ヨコスカフレンドシップデー」からはじまり、

そのあとは毎週のように「激辛グルメ駅伝」とオフ会が続き、

途中剣山に登ったり

ニセコに行ったり

久々のアワレみ隊で、長野県の「赤沢自然休養林」でフィトンチッドを満喫したり

していた。記事にする予定は今のところないけれど、8月末には2泊で秋田県の「大曲の花火」を見に行ったりもした。

躁状態になって動き回っている。まるで生き急いでいるかのようだ。

このサイトを長年見続けている人は僕は結構波の大きな行動パターンとることがわかっていると思う。おとなしいときと、活発なときがあり、今がまさに活発なときにあたる。なお、この気分の浮き沈みに応じて体重が増減するのも、僕の特徴だ。写真を見ると、風船のように顔が膨らんだり縮んだりを繰り返している。

かといって、顔写真で僕のテンションが判定できるかというと、さすがにそこまで単純な仕組みにはなっていないようだ。いずれ、AIの写真判定で「今あなたはテンションが上ってきてます、軽率な行動に注意ですよ」とか「テンション下がり気味なので、これ以上未来の予定を入れると面倒臭くなりますよ、やめておきましょう」とアドバイスしてくれるようになればよいのだけれど。

それはともかく、1974年生まれ(早生まれ)の僕は、このとき既に齢43歳。これからの登山、しかも「日本百名山踏破」を考えるなら、そろそろ気力体力のカウントダウンタイマーを意識しはじめる。今年はもう高山シーズンは終わりを迎えつつあるけれど、あともう1座、できるだけ難儀な山に登っておきたい。

そこで選ばれたのが、仙丈ヶ岳だった。南アルプス北部にある、雄大な山容が美しい山。標高3,033メートル。

南アルプスの山々はどこもクッソ山深く、健脚でもないと日帰りは難しい。

過去、悪沢岳・赤石岳縦走をやったときは、登山口にたどり着くまでが十分すぎる旅行だった。

仙丈ヶ岳と同じ、南アルプスの北部にある北岳・間ノ岳・農鳥岳を縦走したときも、登山口である広河原まで甲府駅からバスに乗って2時間。

そして今回もそう。北岳のときと同じく、まずは甲府からバスに乗って広河原を目指す。広河原は交通規制が厳しく、公共バスしか立ち入ることができない。そしてそのあと、さらにバスに乗り継ぎ、山梨県と長野県の伊那地方との県境にあたる北沢峠まで移動。そこからようやく登山開始となる。

バスの便が少ないうえに乗り継ぎの設定が悪いので、東京から北沢峠までで半日かかってしまう。さすが南アルプス。

でもその分、北アルプスほど人が多くなく、(北アルプスと比べると)静かな山歩きができる・・・かもしれない。

北沢峠から仙丈ヶ岳界隈は、「予約必須」の山小屋ばかりだ。ぶらりと訪れて、「今日泊まりたいのですが」というのは緊急避難時でないかぎりはNG。事前に電話で予約を入れておく必要がある。

昔は山小屋というのは予約なしで宿泊するのが当たり前だったけど、今や「予約が当たり前」の時代になった。

仙丈ヶ岳を登る際に使う山小屋は3パターンある。

  • のんびりと東京から出発して、夕方北沢峠(標高2,030メートル)に到着、北沢峠周辺の山小屋(複数ある)に宿泊。翌日一気に登頂して下山。
  • 朝早く東京から出発して、標高2,640メートルの馬ノ背ヒュッテに宿泊。翌朝登頂して昼ころ下山。
  • 朝早く東京を出発するのは一緒だけれど、頑張って登って、山頂直下標高2,900メートルの仙丈小屋に宿泊。翌朝登頂して朝のうちに下山。

多くの人は、馬ノ背ヒュッテ宿泊を選ぶはずだ。登山口からの距離感がちょうどいい塩梅だからだ。つまり、混む。

できれば一踏ん張りして、仙丈小屋まで目指したい。でも、小屋到着時間が遅くなったり、無理をして怪我をするのはまずい。非常にオーソドックスだけど、馬ノ背ヒュッテで一泊することにし、予約の電話を入れた。

2017年10月07日(土) 1日目

当日朝。甲府行きの指定席特急券・乗車券を手に電車に乗り込む。「えきねっとトクだ値35」が入手できたので、定価の35%引き、2,670円。

つくづく登山というのは金持ちの道楽だと思う。装備品はお金をかければかけるだけ軽量コンパクト高性能で快適になるし、登山口にたどり着くまでで財布の中がカラになる。お金持ちではない僕にとっては、なかなかにキツい出費だ。

「よっしゃ!定価の35%引きでチケット買った!」

と喜んでいたけれど、それでも往復で5,340円だし甲府から先のバス代だってかなり高い。交通費だけで1万円を超える。

普通の旅行の場合、「移動も旅のうち」とばかりに電車バス飛行機で過ごす時間もウキウキの一つだ。しかし登山の場合、登山口に着くまでは前フリに過ぎず、テンションがさほど上がるものではない。なので、交通費の出費というのは、普通の旅行よりも手厳しく感じるものだ。

06:36
早朝の秋葉原駅。週末ということもあって、人が少ない。空は曇り。地面が湿っていて、昨晩のうちに雨が降ったことがわかる。さて今日の山の天気はどうなることか。

何の変哲もない、珍しくもない日常使いの秋葉原駅。そんなものを写真に収めているのだから、たぶん自分では気づかないけれど「よし、やるぞ」という静かな闘志が盛り上がっているのだろう。

06:58
新宿駅から中央本線特急あずさ・かいじに乗る時は、必ず立ち寄るところがある。「駅弁屋 頂(いただき)」だ。

特に駅弁を買う予定がなくても、つい覗き見してしまう。そして、色とりどりな駅弁のパッケージを見て感心し、そのまま買わないでそっと通り過ぎることが多い。

その性質上、「地のものをいっぱい詰め込みました!」という鼻息荒いお弁当が多い。そのため、1,000円札を握りしめていてもまだ足りないことが多い。1,000円でお釣りが欲しかったら、丼もの系が中心だ。そしてご飯とおかずがセパレートになっているタイプは、1,000円オーバーがザラだ。

コンビニ弁当とまともに競い合っても勝てっこないので、高級路線にして棲み分けをしているのは正しい生存のしかただと思う。それにしても朝7時前に既にお弁当が並んでいるって、一体どういう流通経路になっているのだろう?

7時ちょうど発の「特急スーパーあずさ1号」が、東京方面から山梨・長野界隈の山を目指す人たちにとって「ヨーイドン」の号砲となる。この列車には、巨大なザックを背負った人が大勢乗るので、ホームがカラフルになる。

僕は、「えきねっとトクだ値」目当てで、その3分おくれで新宿駅を出発する「かいじ」に乗る。

スーパーあずさと、かいじが並ぶ新宿駅ホーム。

「スーパー」と名前がつく特急は年々減ってきているけれど、「スーパーあずさ」ももうじきその名前がなくなる。じゃあそのあとはどうなるの、というと、全部「あずさ」になるのだそうだ。平等博愛の精神だ。

停車駅の多い・少ないで列車名に「スーパー」という名前がつくのかと思っていたけれど、列車そのものがスーパーだから「スーパーあずさ」という名前だったそうだ。で、今後特急あずさの全車両が統一されて新型車両に置き換わるので、もうすべてが等しく、「スーパー」でもなんでもなくなるというわけだ。

かいじ。

E257系の特急は、通勤電車のような顔つきで「びゅんびゅん走るよ!」という雰囲気がない。やっぱり、この面構えを見た後にスーパーあずさを見ると、「おっ、スーパーだな!」と思う。なんのこっちゃよくわからないけれど。

07:11
先ほどの駅弁屋で買っておいた、ノンアルコールビールが車窓に置いてある。

さて、いつ飲もうか。

新宿駅をすぐ出て、歌舞伎町とか西武新宿線が見えている間に「プシッ」とやるのはどうも冴えない。かといって、八王子とか高尾まで待っていると、さすがにそれは引っ張りすぎだ。毎回、あずさに乗ると「どのあたりが頃合いか」というのが難しい。

まあ、ぬるくならないうちにどうぞ、ということでとっとと開栓。なにせ甲府で下車だ。のんびりしているとあっという間に到着だ。所要時間は約90分。

08:32
列車は甲府盆地に差し掛かった。

新宿を出た直後は降っていた雨が、やんでいる。ただし山には雲がマフラーのように覆いかぶさり、天気はまだまだ安定する気配がない。やれ、いきなりレインウェア着用での登山になるのだろうか。

08:45
甲府駅到着。ひさしぶりだ。

駅改札内にあった、立ち食い蕎麦屋「きらく」。

おっ、朝10時まで「朝食セット」というのがあるんだな。380円または420円。

420円の方は、「たぬきそば、ご飯、納豆、生たまご」という組み合わせだった。もはや蕎麦はお味噌汁がわりの汁物扱いになっていた。

でも、ここでさっと炭水化物を摂取して、気合を入れるというのはありだろう。なんにせよ、素早く食事が済ませられるのは、これから登山を控えている人にとってありがたい。

経営母体はおそらくJR東日本系列の会社なのだろう。そのせいか、メニューが若干バリエーション豊富だ。山形名物の「板そば」がメニューにあったかと思えば、「新潟ミニタレカツ丼」なんてのがあったりする。ご当地感は皆無で、旅情もへったくれもない自動食券機だけど、まあこれはこれで便利だ。

(つづく)

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