石田やきそば店のテーブル。
焼きそばが出てくるまでの間、しげしげと卓上を眺め、このお店のお作法を探る。
僕は、基本的に「知ったかぶり」をしたい生き物だ。だから、馴染みのない土地の、初見のお店であっても「馴染みのお店」っぽく振る舞いたい。オドオドして、戸惑いたくない。
オーダーは簡単だった。「全部のせ」に相当する、「石田屋特製ミックス」を頼むだけだ。量は、欲張らずに中。何も悩むことはない。すっと、さりげなくルーティンをこなす。
「そうだなあ、今日の腹具合はどうかなあ。まあ、いつものミックスでいいか。」とでもいわんばかりの態度で。若干物憂げに、かったるそうにオーダーするのがコツだ。
たぶん、傍から見ると「でもお前、素人感丸出しじゃん」という演技かもしれない。でもそれでいいんだ。
それはともかく、食べる時の段取りをこのテーブルセッティングで即座に悟る。
お寿司で使うような、ガリが置いてあるのが面白い。あと、ソースがあるんだな。このソースは、途中まで麺を食べたあと、味を変化させる用として使うのが良さそうだ。最初からドバドバと入れるのは素人感丸出しなのでやめよう。
ええと、あとは唐辛子と白コショウか。これはお好みに応じて、という感じだろうな。
食べている途中、ソースをどのタイミングで追加するかが「地元民っぽさ」を醸し出すポイントだと思う。頭の中で、早くもシミュレーションを繰り返す。
厨房には、ボウルいっぱいの焼きそばがいくつも並んでいた。
元から茶色い麺なのか、それとも既に下ごしらえ済みでこういう状況なのかは不明。
11:24
石田屋特製ミックス。
へえ、これは面白い。
何一つ、目新しいものはない。でも、やたらと大きめに切られたキャベツ、豚肉とは別に後乗せされた細切りのハム、そして焼きそばのてっぺんに載せられた目玉焼き。全部が組み合わせると、珍しいビジュアルの焼きそばが完成だ。
味は、あとから思い出せるほど特徴的なものではなかった。なので特にコメントなし。安直な言葉を使うならば、「懐かしい味」ということになる。
でも、あとからソースを追加で投入する、というのは良かった。加熱されていないソースは、良い意味で引き締まった味と香りを提供し、食べている最中の中だるみ感を一切与えなかったからだ。
これは宇都宮の焼きそばに限らず、真似したい食べ方だ。
11:35
東武宇都宮駅方面へと向かって歩いていく。
途中、ガッチガチに護岸工事された小川を渡る。
小川の傍らのブロック塀に、こんな看板が出ていた。
ドブ川・暴れ川・洪水の釜川
きれいな釜川二層式河川から26年安心・安全をありがとうキャンペーン
キャンペーンの結果なにがあるのかわからないけれど、とりあえず安心・安全が四半世紀続いているのはおめでとうございます。それにしても、なんで26年でこの看板を作ったんだろう?
この塀の向こう側に住んでいる人にとっては、すげえ嬉しいことで、毎年この看板を作り直して感謝の気持ちを蘇らせているのだろうか?
11:40
商店街の中を歩く。
宇都宮には、立派ななアーケード商店街がある。まっすぐ長い。
おっ、「にらそば」を出すお店があるぞ。今、僕が注目している蕎麦だ。
宇都宮のすぐ近く、鹿沼界隈で提供されているご当地蕎麦で、その名の通り蕎麦の上にニラが乗っている。香りを楽しむはずの蕎麦に、香味野菜のニラが乗っているというのはどういうことか?と大変に気になっている。近々、食べに行こうと思っている。
後日談として、このあと4ヶ月後に、鹿沼にニラそば食べ歩きツアーとして訪れている。
今日はあくまでも「宇都宮焼きそば」がお目当てなので、スルー。
11:41
「出世街道」という名の居酒屋。縁起がいい名前だ。
まぐろ丼690円。出世魚のブリを看板料理に据えていないのはもったいないと思う。
11:42
宇都宮のアンテナショップがあった。「栃木県のアンテナショップ」ではなく、あくまでも「宇都宮市のアンテナショップ」だ。
で、なにが推しなのかと思ったら、どうやら「レモン入り牛乳」らしい。
11:49
そんな商店街の中に、「山内家」というやきそば屋を発見。
餃子も扱っているようで、ここは焼きそば専業というわけではない。どうしようかなあ、焼きそばしかやってない!という極端なお店の方が面白いのだけれど。まあいい、ここで出会ったのも何かの縁なので、暖簾をくぐってみる。
(つづく)
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