15:57
温泉神社でひとっ風呂浴びてくつろいだので、日光湯元を後にする。時刻はだいたい16時。これから東京に戻らなくちゃ。
マイカーを持っているなら、駐車場に車をビューンと停車させて一旦今日はおしまいにすることができる。しかしレンタカーを使っている僕の場合、キャンプ用品一式を家に運び込み、レンタカーを返し、レンタカー営業所からまた家に戻ってくる手間がかかる。日曜日の夜遅くにやるにしては、大変に面倒なことだ。
昔、アワレみ隊でオートキャンプをやっていた。あれができたのは僕自身が車を持っていたからだ、ということを改めて実感する。レンタカーでオートキャンプは大変だ。炭火コンロだのテーブルだのダッチオーブンだの、いちいち車を借りてきて積んで、返す前に下ろして、という手間がある。
その点今やっているキャンプは、山用装備で固められている。ほとんどザックに荷物一式が格納できるので、楽ちんだ。オートキャンプは今でも好きだけど、マイカーがない限りは「荷物は自分で背負える範囲内で」という制約が残るのだと思う。
温泉神社から駐車場に向けて歩いている最中、湯元温泉バスターミナルの前を通り抜ける。「ターミナル」といっても、1路線しか走っていないシンプルなバスの終着点だ。バスが転回するための広い空間が広がっている、ただそれだけのターミナル。
それでもしっかりとした建物が用意されているのは、冬で雪が降っている時でもお客さんが待機できるようにという配慮だろう。以前、1月に戦場ヶ原まで来たことがあるけれど、ひどい地吹雪で車の中から外に出ることが出来なかったくらいだ。
16:08
光徳牧場にやってきた。
観光牧場・・・というほどではないが、ここでアイスクリームを食べることができる。特にヤギさんがいたり、牛を観察できたりするわけではない。
「この近くで、アイスクリームが食べられる牧場があるんだよ」
という話をいしにしたら、
「食べたい!」
と言うので立ち寄ることにした。いやでもさっき湯葉アイスを竜頭の滝で食べたよね?と聞いたら、「牧場のアイスはまた別だと思うので」という。
「甘いものは別腹」という言葉は昔からあるけれど、「甘いもの同士」でも別腹は成立するらしい。
たどり着いたら、山奥の牧場にもかかわらず結構な人がいた。
ここにいるほぼ全員のお目当てが、アイスクリームだ。
アイスクリーム300円を購入。逆に言うとそれ以外は売っていない。
光徳牧場のアイスクリーム。
あ、そうか、今更気がついた。「ソフトクリーム」じゃなくて「アイスクリーム」なんだな。牧場だから、てっきりウネウネととぐろを巻いたソフトクリームがでてくるものだと勘違いしていた。
16:13
「牧場に来た、といっても牛をまったく見ていないぞ」
そう、単にここではアイスクリームを食べただけだ。牧場らしさがまったくない。
せっかくだから放牧地まで行って、そこで牛を実際に見てもいいと思った。しかし、これまでのトレイルで足が疲れて歩く気にならない。遠くを見やると、木々の隙間からちらっと牛の姿が見えた。
「うん、牛を見た。これでよしとしよう」
僕らは牧場を満喫した。そういうことにする。
16:39
車で日光・宇都宮を目指す。帰りは東北自動車道経由のルートにするつもりだ。
途中、華厳の滝に立ち寄る。
もうこうなったら、湯滝から竜頭の滝を見た以上、華厳の滝を見届けないと気持ちが悪い。
華厳の滝は、言わずとしれた日本三大名瀑の一つ。落差97メートルの立派な滝だ。日光いろは坂で中禅寺湖から日光に向かう入り口部分に観瀑台があるので、ひょこっと立ち寄るには最適。
それにしてもこれだけ豪快な滝を繰り返す川というのも珍しいんじゃないか。湧き出た水としても水冥利に尽きるだろう。
駐車場脇からせり出した展望台があるので、そこから滝を眺めることができる。この展望台はご丁寧に2階建てになっていて、違った高さで滝を見ることができる。1階分の高さしか違わないんだったらほとんど景色は一緒だろう・・・?と思って見比べてみると、案外違うことに気づく。
面白いもので、上のフロアよりも下のフロアの方が迫力がある。視界は上のフロアの方が開けているのに。
16:50
この無料の展望台とは別に、有料の観瀑台というのも存在する。エレベーターに乗って100メートル下の谷底まで降りるため、往復550円/人のお金がかかる。
どこの酔狂な人がこんなお金を払ってわざわざ滝を見るんだ?と思っていて、僕は一度もこのエレベーターに乗ったことはない。だって、無料の展望台から滝そのものは見えているわけだから。これ以上何を望む?これ以上の迫力、いるか?
「せっかくだから見てみたいです」
いしが言う。
えええ、お金払うの?わざわざ?
「一度見てみないとわからないじゃないですか。大したことなかったら一生に一度で済みますし」
はあ・・・なるほど・・・。
驚きつつも、二人で一緒にエレベーターに乗ることにした。
たかがエレベーターで550円だなんて、と言ってはいけない。川岸の崖に竪穴を空けてエレベーターを設置したんだ。鉄骨で宙空にビルを建ててエレベーターを備え付けるのよりはるかに大変なことだ。
100メートル、地下に潜る。
エレベーターというのは「上に上がる」ものだという先入観があるけれど、ここは「下に下がる」ためのもの。誇らしげに表示されているメートル表示も、スタート地点を0メートルとして起算したマイナスの数字だ。
せっかくだから帰りは体力増強のために階段で上がりたい、と思ったが、これから向かう観瀑台に向かうことができるのはこのエレベーターだけだ。階段はない。ビルじゃなくて地下に潜るんだから、なるほどそりゃそうだ。
(つづく)
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