あらら。もう17時を越えてしまった。今日はこの辺で札打ちを終了とさせていただきますよと。
残すところあと2日、27札所。これから先は比較的札所の間隔が狭いので、なんとかなるかな・・・といった感じだ。
今日も雨に降られたことだし、ぜひともお風呂には入りたいところだ。カーナビで周囲を調べてみると、「湯之谷温泉」という場所があることが分かった。早速行ってみる。
入浴料金が330円と、商売っ気のない価格体系が素敵。小人に至っては60円だし。そして、湯治用の素泊まり料金が1,580円。すばらしい。
泉質は弱アルカリ性単純泉、源泉温度18度だけど加温して掛け流しだ。薪を焚いて加温しているので、建物には高い煙突が突っ立っていた。
風呂に入って心が和んだからか、雨がようやく本格的に止む気配を見せたからか、ばばろあ料理長が「一品何か鍋でも作るわぁ」と意欲を見せた。
食材の買い出しはばばろあにお任せ。
買い出しの後は、恒例の寝場所探し。困った時は公園か行き止まりの道か。しばらくあてもなくうろうろしていたら、高速道路の松山自動車道脇に公園があることがわかった。高台に位置し、夜になると人気がない。ここを本日の天幕場所と定めた。
しばらく公園内をうろうろし、ベストポジションを探したが、結局駐車場の片隅にテントを設営した。近くに東屋があり雨よけになるのと、ベンチがあったり水道があったり、何かと便利だったからだ。
本日の酒肴。
冷凍枝豆とじゃこ天とイカフライ。どういう組合せだ。
冷凍枝豆は当然一袋丸ごと使ったので、大量になってしまった。いくら4人でもこれは多すぎる。あと、皮という生ゴミが発生してしまうのはちといただけなかった。作戦失敗。
こちらが料理長渾身の一作、彼曰く「すき焼き風鍋」だ。
すき焼きほど割り下が濃厚ではなく、甘辛い醤油ベースのスープになっている。なるほど、すき「焼き」ではなく「鍋」だ。
「今日は一日お疲れさまでした」
万感の思いで乾杯。
最後雨が止んでくれて良かった。午前中はどうなることかというくらい雨が降りまくったからな。あと、温泉に入って雨のべたべたをリセットできたのも良かった。良い夕食を迎えることができたといえるだろう。
水飲み場で鍋の後片付けをするばばろあ料理長。
アワレみ隊のキャンプは、大抵「宴会を夜やって、そのまま鍋皿は放置されたまま眠りにつく。後片付けは日が昇ってから」と相場が決まっている。しかし、われわれは「朝7時には次の札所に到着していないと」という状態。特に、明日はタイムリミット1日前ということもあって正念場。朝7時ジャストにはお寺、がわれわれの間で合い言葉だった。そんなわけで、夜の暗闇の中で後片付けをしている次第だ。明日朝は各自軽食で済ませる予定なので、洗い物は出ない。今晩中に鍋釜類はアワレみカーのトランクに詰めてしまおう。
東屋でなにやらゴソゴソやってるなと思ったら、ばばろあが懲りずに昨晩同様物干しロープを張っていた。今度は屋根の下なので濡れることはない。あと、天気もどうやら回復基調のようだから、大丈夫だろう。
ばばろあに限らず、いい加減衣類を洗って干さないと臭い。ただ、ばばろあほど用意周到ではないのと、マメではないので他の3人は無策だった。
まあ、そんなわけで5日目は終了。6日目は朝6時に起床しなければならない。早めに寝ましょう。暗いからやることないし。
ばばろあは今日も自ら志願してアワレみカーの助手席で寝るという。体が痛くならないのか、と聞いたら「痛くなるけど、他人を気にせんでええけえこれはこれでええで?」とけろっとしていた。
2001年05月03日(木曜日) 6日目
夜中、ヤンキー車とおぼしき爆音が駐車場で響いた。いやな場面だ、こちらに絡んでこなければ良いが・・・と騒音で目が覚めたおかでんは思う。
しばらくすると、なにやら口論が聞こえてきた。ひょっとして、アワレみカーで一人寝ているばばろあが被害にあっているのではないのか?大丈夫か?
だんだんヒートアップしてきて、「ふざけんなコラァ」という声とともにドカッと鈍い音がした。車の横っ腹をけりつけたような音だ。うわ、やべぇ。至近距離で声が聞こえているし、ばばろあがやられている可能性有り。
しかし、チキンなおかでんは「他人のふり」を決め込むことにし、寝たふりを貫き通した。というか、本当に寝てしまった。都合が悪いとその場から逃げ出す性格故に。
翌朝、おそるおそるアワレみカーを覗いて見たが、特に問題はなかった。ばばろあも無事だった。どうやら仲間内の喧嘩だったらしい。
「びびったで、こっちに喧嘩が飛び火してくるんじゃないかと思った」
とばばろあが言う。暗闇で良かった。街灯があって明るかったら、われわれの存在に気付かれて絡まれていた可能性がある。テントなんて焼き討ちにあうかもしれない。
各自がめいめい買っておいた弁当を食べる。
せわしない朝だからこそ、シンプルに。
上を見上げると青空が見える。今日は晴れてくれそうだ、良かった。
とはいっても被害は甚大で、この日はばばろあを除いて3名がサンダルを履いていた。靴があまりにぐちゃぐちゃしていて気持ち悪かったのと、臭いが相当きつくなっていたからだ。昨晩夕食を買った際に、サンダルも併せて買った。くっさい靴はそのままゴミ箱行きとなってしまった。「惜しい」と思わないくらいに臭かったので、後悔はない。
各自が分担して撤収作業を行っている間、おかでんは本日使用する分の納札に記名をしていた。1つの札所で2枚必要になる。今日は13カ所以上まわらないといけないので、最低26枚は準備しておかないと。車の中だと揺れて書けないし、現地に着いてから書いていると時間がもったいない。
[62番札所 宝寿寺(ほうじゅじ) 愛媛県小松町]
61番香園寺から64番前神寺までは、ほぼ一直線に並んでいる。今日は62番からスタート。
宝寿寺には午前6時55分に駐車場到着、午前7時に参拝というなんともジャストタイミングな滑り込みスタート。今日一日を考える上で良きスタートを切ったと言える。
境内は朝ならではのぴりっとした空気が包む。昨日まで雨だったせいもあり、空気は奇麗だ。
「いやあ寺は朝だな」
「朝に限るねえ」
「ありがたいなあ」
と毎度の台詞を口にしつつ、お経を唱える。
今日は全員白衣で統一。雨が上がったもんね。せっかくだから着ないと。あとこれを着ていられるのも残り1日だ。・・・間に合わなかった場合は、うどん食べ歩きを中止して遍路続行なので、2日になるが。
[63番札所 吉祥寺(きっしょうじ) 愛媛県西条市]
1.5kmという至近距離で63番吉祥寺。きちじょうじ、ではなくきっしょうじと読むらしい。
門には密教山、という看板が掲げられていた。密教山とはこれまた大げさな名前だな。正式名称は密教山胎蔵院吉祥寺という。胎蔵、というのは胎蔵界曼荼羅からきている名前だろうから、どちらともなんとも大がかりなネーミング。
それだからか、本尊が毘沙門天という変則技。お経に真言が載っていないぞ。「おん べい しらまんだや そわか」だそうな。八十八カ所で毘沙門天はここだけだ。
「おう、ここにもあるぞ」
境内には神社と同じく、御手洗所がある。われわれもそこで手を清めてからお堂に向かうのを常としているのだが、その御手洗に大抵といっていいほど、銅製のひしゃくが置かれているのだ。裏には「奉納」と書かれ、奉納した方のお名前が書かれている。もちろん、どの札所にあるひしゃくも同一人物の奉納によるものだ。
いつしか、われわれは必ずその銅製のひしゃくで手を清めるようになった。他にひしゃくがあっても、このひしゃくを意識的に使う。なんだか御利益がありそうな感じがするからだ。
「それにしても奇特な方もいるもんだねえ、各札所にひしゃくを奉納だなんて。地味に素敵」
境内がそれほど広くなく、駐車スペースが確保できなかったからだろう。お堂正面がまさに駐車場となっていた。
車を避けつつ参拝。
[64番札所 前神寺(まえがみじ) 愛媛県西条市]
3km進んで前神寺。最寄り駅が予讃線石鎚駅。石鎚修験道の根本道場ということで、石鎚山信仰の総本山だ。毎年7月1日の「お山開き」には数万人にも及ぶ白装束の信者がこの寺に集まり、「なんまいだ」と唱えながら30kmの道のりを進むんだとか。
それだけに、真言宗石鎚派という一風変わった宗派名を名乗っている。修験道と真言密教が混ざったものだろう。そもそも、真言宗なのに「なんまいだ」なのが風変わりだ。
[65番札所 三角寺(さんかくじ) 愛媛県川之江市]
前神寺から45kmという長丁場を移動。愛媛県の東端までやってきた。ここが「菩薩の道場:愛媛26寺」の最後となる65番三角寺。
450mの山の上にあり、階段を登っていくことになる。
きっと、この山は遠くからみると三角形に見えるんだろうな。
門をくぐり境内に・・・と思ったら、門の中に鐘があった。
「鐘楼門」というらしく、鐘突き堂と山門が一緒に混ざったようなものだ。珍しい。
ちぇるのぶが、いてもたってもいられなくて「ごーん」と一突きならしていた。以降、ちぇるのぶは鐘の音に味を占め、鐘突き堂を見つけては「鳴らさずにはおれぬ」と必ず鳴らしていた。
さあ、愛媛県を終了して、残すは四国四県最後の県である讃岐地方・香川県に突入。
・・・と思ったでしょ。実は違う。
66番札所雲辺寺まで20kmの道のりだが、到着したのはロープウェイ乗り場だった。そう、ここからロープウェイに乗り、県またぎをして徳島県に入ることになる。山の徳島県側に雲辺寺はある。しかしアプローチは香川県から。
ロープウェイ乗り場にある公衆電話ボックスの上に、ちょこんとロープウェイの張りぼてが乗っているのがかわいい。
ロープウェイの出発時刻までしばらく時間があったので、乗り場脇にある売店で焼き団子を買って食べた。旨し。
ロープウェイに乗って、いざ雲辺寺へ。
県越えって、なんだかワクワクするよね。
しかも、お遍路を開始した徳島県・・・1日目と2日目の昼過ぎまで滞在していた県・・・に戻る、というのはなんだか不思議な気持ち。
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