7分ほど空中散歩したのち山頂駅に到着したら、めっぽう寒いんでやんの。標高916mという表示がある。道理で寒いわけだ。一般的に、標高が100mあがると気温は0.6度下がる。ということは、標高0メートルの海沿いと比べると約5.5度低いことになる。
気温計が据え付けてあったので確認したら、ただいまの気温8度。冷える。
[66番札所 雲辺寺(うんぺんじ)徳島県三好郡池田町]
巡礼地が88箇所であることを考えると、ここで全体の3/4ということになる。あと1日半で1/4を回ろうっていうんだからちょっと乱暴ではある。でもそんなに慌ててはいなかった。香川県はそれほど広い面積がない。なんとかなるだろう。
916mのロープウェイ乗り場から、まだ階段を登る。最終的にはお寺の標高が927m。弘法大師が16歳の時にここに堂宇を建てたのが始まり、というから歴史がある。とはいっても、よくもまあこんな山中に・・・と思う。食料はどうしていたんだろう。山菜ばかり食べていたわけではないと思うのだが。現代のコンビニやスーパーに慣れ親しんだ身からすると、こういうところで生活・修行していた人がどうやって糧を得てきたのか、想像が難しい。
四国霊場最高峰、だそうな。
ああ、確かに言われてみればそうだな。標高927mなんて今まで無かった。ロープウェイで登った21番太龍寺でも標高600mだったっけ。
遍路転がし最大の難所、だな。これを歩いて登るのはしんどい。しかも、この札所には宿坊がない。その日のうちに登って下りないと、野宿する事になる。ここまでくると十分な登山だ。
看板には札所標高ランキングが載っていた。いわく、
一、66番雲辺寺 900m
二、12番焼山寺 800m
三、60番横峰寺 700m
四、21番太龍寺 610m
五、20番鶴林寺 550m
という。ああ、焼山寺って800mもあったのか。どうりで「絶景だねぇ」なんて言葉が口をついて出てきたわけだ。900mの雲辺寺が道路を作るのを諦めてロープウェイにしたというのに、800mの焼山寺は強引に道を造っちゃった。道理で狭くて怖くて長い山道だったわけだ。
商売うまいな、と思ったのは、「四国霊場最高峰」と書かれた下に「当山のお守りで貴方の願いも天まで届きますようお祈り申し上げます」なんて書いてある。標高高いと偉い。
ちょうど県境の上を参道が通っている。
右足が徳島県、左足が香川県。
こうやって「体の半分ずつ県が違う」のを体験すると、なんだかすごくうれしい。なぜ、と聞かれても答えられないが。その証拠に、「県境」という事以外何ら意味のないこんな場所で記念撮影をしている。
ロープウェイで下界に下りてきたら、眼下の眺めが広がっていた。山上はガスっていたが、標高が低いところは「太陽が照りそうで照らない程度の曇り」になっていた。ようやく活動がしやすくなってきたな。今日は調子よく札打ちができそうだ。
[67番札所 大興寺(だいこうじ) 香川県山本町]
山を下り9.5km進んで67番大興寺。ここが本当の香川県最初の札所ということになる。
標高900m超の雲辺寺から下りてきた歩き遍路にとってはほっと一息、といったところだろう。しかし、ここにも宿坊はない。調べてみたら、75番善通寺まで宿坊はない事が判明。歩きの場合、どこかに宿を確保するか、野宿する覚悟が必要なエリアだ。まあ、ここまで歩いてきたわけだから、どんな苦難も乗り越えられるだけの覚悟ができていると思うが。
仁王門の金剛力士像は3.14mもあり圧巻。八十八箇所中一番大きい金剛力士像だ。
写真だとちょっとわかりにくいが、写真中央に2匹のフクロウのひながいる。まだ白色(灰色?)で、まるまるとして可愛い。よちよちと枝の上を歩いている。
しばし、他の巡礼者たちとふくろうの愛らしい仕草を眺めていた。
そうしたら、二匹のうちの一匹がバタバタと羽ばたいて、バランスを崩して下の茂みに落下してしまった。大丈夫だろうか。これを「アクシデント」と考えるべきなのか、「巣立ち」と考えるべきなのか悩ましい。
「どうする?助ける?」
「んー、そっとしておいたほうがいいんじゃないかな、自然の世界だし」
あのフクロウは今元気でしょうか。心配です、このサイトを見ていたら連絡ください。
鐘突き堂があったので、早速鐘を突きに行くちぇるのぶ。
ごーん。
なぜか、香川県の札所では鐘突き堂が一般開放されているところが多かった。鐘突き放題。
9km進んだら、「一つの境内に二つの札所がある」というラッキーポイント、神恵院&観音寺だ。仁王門は二つのお寺共通。納経所も共通。しかし、本堂と大師堂はそれぞれある。不思議で珍しい造りだ。88箇所、とキリの良い数字にするためにどこかで数合わせしなくちゃ・・・という結果1境内2札所になったわけではあるまい。謎だ。
[68番札所 神恵院(じんねいん) 香川県観音寺市]
68番神恵院は、丘の上にある。69番観音寺の横の石段を登って68番に向かう。なんだか変な気持ちだ。
[69番札所 観音寺(かんおんじ) 香川県観音寺市]
お待たせしました、神恵院の巡拝が終わったので、石段を下りて69番観音寺。これほどまで近い札所はほかにはない。
もうお経唱えっぱなし。もともと、車遍路の場合一日に唱えるお経の数はもともと多いのだが、特にここだと休み無くひっきりなしだ。68番、69番と立て続けに般若心経を4回唱えた。
のどが乾いちゃった。
[70番札所 本山寺(もとやまじ) 香川県豊中町]
4.5km進んで本山寺。歴史上戦火を逃れた数少ない寺院の一つで、仁王門は重要文化財、本堂は国宝となっている。
弘法大師が平城天皇に依頼されて一晩で作ったお寺だというが、それにしては立派だ。豊臣秀吉が一夜でお城を造ったのと同じくらいスゲー。
遠くからでも五重塔が目立つ。ランドマークになっている。そういえば、今までの札所で塔が建っているのはあまりなかったな。
お昼時だったので、ロードサイドにあった讃岐うどんの店に入ることになった。
「いや、明後日は讃岐うどん店巡りのツアーがあるから、何も今ここで食わなくても・・・」と思ったが、ちょうど時間と場所の塩梅が良かったのだから仕方がない。「あさひうどん」というお店だ。
うどん、食べました。
おいしゅうございました。
やっぱ讃岐うどんはええね、コシがあって、もちもちして。いりこだしのつゆもまた良し。
[71番札所 弥谷寺(いやだにじ) 香川県三野町]
12.5km進んで、山中にある弥谷寺。「仏の山」として昔から民間信仰が盛んな場所だという。
仁王門から262段登るとそこが大師堂と納経所。まずは本堂にお参りしないといけないので、さらにそこから170段登ることになる。
随分登ったなあ、というところでようやく本堂。
車遍路だからといって侮ってはいけない。歩くべきところは歩かないと、巡礼はできぬのだ。
この地は弘法大師が7歳の頃に訪れ修行した場所だという。まだ子供の頃から修行に励んでいたんだな。すごいな。日々の食料はどうしていたんだろうか。
[72番札所 曼荼羅寺(まんだらじ) 香川県善通寺市]
4km進んで曼荼羅寺。
その名の通り、本堂の天井には曼荼羅が描かれているということだったが、確認しそびれた。
境内の一角に、押しボタンとともに「さわやかな声でご案内します」と書かれたボードがあった。
早速ボタンを押してみたら、お寺の解説アナウンスが流れ始めた。
「・・・さわやかか?」
「うーん、解釈の問題だな」
「まあとりあえずさわやかなんだろう、きっと」
境内から山を臨むと、山の中腹・テラス状のところになにやらお堂が見える。
あそこが次に訪れる73番出釈迦寺。
「うわあ、結構近いけど登るねぇ」
出釈迦寺までは500mの至近距離。道理で曼荼羅寺から目視できたわけだ。
駐車場から境内までの階段途中、猫がのんびりくつろいでいた。首輪をしていることから飼い猫だ。ただ、参拝客慣れしているというか、いい加減相手するのにうんざりしているらしく、「猫殺し」の異名をもつしぶちょおですら、手をさしのべてもごろにゃ~んとはならなかった。
写真を見ても分かるとおり、さしのべた手に対して腰が引けている。
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