綺麗事じゃ済まされないジビエ【鋸南町狩猟エコツアー】(その1~3)

ジビエ料理は大好きだ。イノシシ、鹿は大変好みにあうし、鳩も面白い味だ。以前、「クリスマスジビエナイト」というイベントに参加したことがあるくらいだ。

このイベントの続編として、「カラスを食べる」という、一生のうちに一度あるかどうかという体験もできた。食材にこれだけワクワクできた経験というのは、なかなかない。

とはいっても、ジビエ食材はすべてにおいて値段が高い。牛肉でさえ高いと思って、スーパーで肉を買うときに意を翻して豚肉、または鶏肉を買う僕だ。ジビエは好きだけど手がなかなか出ない。そもそも、そんじょそこらでは売っていない。

一方で、野生動物による農作物被害は年々増しており、農家を苦しめているという話を聞いている。

駆除したい農家、お金を払ってでも食べたい消費者(おかでん)。うまいこと需要と供給があるのに、どうしてこうも値段が高く、手に入りにくいのだろう?安く、気軽に買えるなら、どんどんジビエ肉を買いたい。特に、イノシシ肉なんて最高だ。

そんなジビエ意識の中、千葉県の鋸南町で「狩猟エコツアー」というイベントが何種類も開催されるということを知った。鋸南町といえば、房総半島にあり、僕は保田漁港の海産物レストラン「ばんや」を利用するためによく訪れている場所だ。

鋸南町といえば、保田漁港=魚!というイメージだったけど、調べてみるとハンティングも盛んな場所だった。狩猟免許を持っている人の数でいったら、日本一の自治体なのだそうだ。それは全く知らなかった。だって、鋸南町の玄関口ともいえる場所にある「道の駅保田小学校」でさえ、ジビエのジの字も出ていないはずだ。見た記憶がない。なぜこんな「観光資源になるお宝」を眠らせているのだろう?

すごく興味があるので、 「狩猟エコツアー」 に申し込んでみることにした。

「狩猟エコツアー」は6つのイベントから成り立っている。順に挙げていくと、

けもの道トレッキング
けもの道アドベンチャー
解体ワークショップ
ジビエ料理ワークショップ
被害対策ワークショップ
わなワークショップ

となっている。全て抽選制になっていて、定員は10名~30名程度。
複数日の設定があって日程が選択できるイベントもあるけれど、1日限りのイベントもある。応募多数で抽選漏れとなる可能性が高く、これを見て僕はこの狩猟エコツアー最優先で2018年秋~2019年春を過ごすことに決めた。そして、申し込めるものは全部申し込んだ。

結局、幸いにも4つのイベントにも参加することができた。今回、そのときの体験を写真と文章で残しておく。鋸南町には大変にお世話になったので、ここで得た知識を少しでも共有したいと思ったからだ。

野生動物と人間の共存はとても難しい問題だ、ということを今更ながら学んだ。毎回「うーん」と唸らされっぱなしであり、単に「楽しかった!肉はおいしかった!」とニコニコして済ませられる話ではなかった。

2018年12月01日 わなワークショップ

最初に当選通知をもらったのは、「わなワークショップ」だった。狩猟というのは、散弾銃を手に、猟犬を相棒にしてハンターが山に分け入っていくものだと思っていたけど、「わな」という手段もあるのか!と今更知った。ほら、「わな」ってなんか地味じゃん。そんなものが存在するということさえ忘れていた。

農村に潜む「けもの」を捕獲するために欠かせない「わな」。
年間1,000頭以上の捕獲実績がある鋸南町で現役ハンターからわなの作製方法や効果的な設置方法を学ぶ。

という解説が募集告知に書いてあった。1,000頭!そんなに捕獲されているのに、なぜ鋸南町のジビエは名物になっていないのだろう?1,000頭レベルじゃ、とてもじゃないけどメガロポリス東京の胃袋を満たすほど流通できないのだろうか。

08:52
わなワークショップは朝9時からスタートするという。結構早い。東京湾アクアラインや首都高速が渋滞する可能性を考えると、夜明けとともに家を出ないと間に合わない。

ワークショップはお昼ごはんを挟んで夕方まで続くことになっている。夏休みの子供向け工作教室と違っって、しっかりと学んで帰ってもらおうという意気込みが伝わってくるタイムスケジュールだ。

集合場所は、「佐久間小学校」という場所だった。

これまで鋸南町を訪れたことは10回以上あるけれど、そういえば海沿いしか通ったことがなかった。改めて地図を見ると、鋸南町において海は一部に過ぎず、その背後に広大な里山が拡がっている場所だった。

いつも「ばんや」に行くために使っている「鋸南保田IC」は素通りし、次の「鋸南富山IC」で館山道を下り、下道を走る。そこに「佐久間小学校」がある。

鋸南保田ICを出てすぐのところに、「道の駅保田小学校」という廃校を利用した道の駅がある。ここは教室があった場所を宿泊できる部屋にしたり、意欲的な道の駅で面白い。今回訪れる佐久間小学校もすでに廃校となっているようだ。

大きな校庭とその隅っこに建物。

木が山積みになっている。これ、どうしたんだろう?

切り株を不思議に思っていたら、この旧・佐久間小学校、バーベキューハウスとしてリニューアルオープンしていた。なるほど、バーベキュー用の薪にするための木か。

宿泊はできないので、日帰り限定となる。予約するためには町役場から書式をダウンロードして、必要事項を記載のうえFAXしなくちゃいけないのがちょっと手間。今どきFAXはしんどい。

ちなみに今回の狩猟エコツアーはGoogleフォームで申込受付がされていて便利だった。

会場となる建物の軒先には、何やら見慣れない工作機械?のようなものが並んでいた。

なんだろうこれは、と思って一応写真を撮っておいたけど、あとになってこれが「わな」そのものだということを知った。えっ、わなってこういうものなの?てっきり、強いバネ仕掛けがついたクリップみたいなものでバチン!と捕まえるのだと思っていた。または、ザルにつっかえ棒を立て掛けて、餌目当てでやってきた鳥を捕まえるとか。

僕自信、いかに「わな」に対して知識がなく、想像力もないかということを知る。

わなワークショップ、午前中は座学とわなの制作がある。

卓上には、マニュアル2つと商品カタログが置いてあった。

「千葉県イノシシ対策マニュアル」「千葉県イノシシ・ニホンジカわな捕獲マニュアル」は千葉県が作ったものだ。県を挙げて鳥獣被害の対策に力を入れていることがわかる。「伝説のマタギ」みたいな人がいて、その人から一子相伝・口伝のみ、みたいな感じでノウハウが伝承されるというわけではないのだな。

「千葉県イノシシ対策マニュアル」 は「千葉県農林水産部農地・農村振興課地域振興班」の監修で、「千葉県イノシシ・ニホンジカわな捕獲マニュアル」は「千葉県環境生活部自然保護課」の監修になっている。「対策」するのと「捕獲」するのでは管轄が違う、というのも新鮮な驚きだ。

「千葉県イノシシ・ニホンジカわな捕獲マニュアル」 は千葉県のサイトからPDF形式でダウンロードすることができる。

イノシシ・ニホンジカわな捕獲マニュアル

ものすごく実用的で、わなの種類や決まりごとが細かく書いてあって、実際にハンターになるわけではない僕でも、素晴らしく知的好奇心をくすぐるものだった。

なお、わなというのは誰でも設置してよいのではなく、狩猟免許の取得が必要となるということも今回学んだ。知らなかった!「狩猟免許」というのは、銃を扱うために取得するものだと思っていたけれど、「わな」も免許がいるとは。

「わな」というのは具体的にどういうものなのかイメージがつかみにくいのだけど、「くくりわな」「箱わな」「囲いわな」の3種類がある。

くくりわなは、先程建物の軒先で見たものがまさにそれ。いろいろな形状があるけれど、いずれにせよ獣道に仕掛けたわなにケモノが脚を突っ込んだら、その瞬間バネの力でわなの輪っかがギューンと締め上がり、ケモノの脚を掴んで離さなくなるというものだ。

こんな原始的ともいえるわなが、現在もまだ活躍していたとは・・・。

「箱わな」というのは、鉄格子の檻を設置して、その中に餌を置いてケモノをおびき寄せ、中に入ったらガシャーンと檻の扉が閉まって閉じ込めるというものだ。これはイメージしやすい。というか、わなというのはそういうものだと思った。

今日はこの「くくりわな」を実際に制作し、午後はそれを実際に山に埋める体験をやるのだという。それは楽しみだ。まだ、このくくりわなの仕組みがよくわかっていない。どうやったらケモノがこのわなにひっかかるのか?という理屈が腑に落ちていないからだ。

写真の右ページには、わなの設置に向いている土地について細かく説明が書いてある。獣道であっても急斜面はケモノの足並みが乱れるので、わなの設置には不向きだよ・・・なんて事が書いてある。えっ、ひょっとして「ちょうど獣道を呑気に歩いているケモノ」がわなに脚を突っ込んでしまうのを待つということなの?それはすごい。餌で釣るわけでもなく、そんなに都合よくケモノってわなを踏み抜いてくれるの?

これは奥が深そうだ!

(つづく)

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