4年ぶり!時代は流れて島流しは無くなった【のっとれ!松代城2023】

弊息子タケ、人生で初めて雪に覆われた大地を歩く。

会場の中は雪しかない。

やはり、例年と比べて雪の量は少ない。年によっては、除雪された車道から除雪されずに圧雪された会場の広場に入るのにツルツル滑る傾斜を登っていかないといけないことがある。しかし今年はそのようなことはなく、車道から会場へは楽に入ることができた。

現在の時刻は朝10時前。すでにこの時間で地面の雪は溶け始めていて、歩くと柔らかい。硬く締まった雪が地面を覆っていれば、レースをする人にとってはとても走りやすいのだけど、柔らかい雪はとても疲れる。一歩踏み出した時、体幹を垂直に維持するのに全身の細かい筋肉を総動員しなければならないからだ。

僕は、タケがこの一面の雪を見て「すごい!」とはしゃいで走り回ることを期待していた。でも彼は、この状況を理解しようと必死で、とても真面目な顔をしながら足元を眺めている。「犬は喜び、庭駆け回る」という童謡の歌詞のようにはならなかった。

レースのコースを確認するため、会場の端まで歩いていく。

ここはメインステージ前にある、レースのスタート位置。いつもと変わらない。

ここから老人ホームの横を抜け、ルートは標高を30メートルほど下げていく。そして田んぼの間をしばらく走ったのち、またこの会場に戻ってくる。

ステージの脇に、一旦下げた標高30m分を取り戻す崖がある。

この崖を選手たちは雪の中まっすぐ登ってくることになる。

雪が踏み固められているなら歩きやすいが、例年柔らかい雪で一歩歩くたびに足が雪にめり込む。なので、登るという行為だけでなく、雪と対峙しなければならない疲労感が選手を襲う。

いつもなら、この崖下に障害物「馬落とし」があるのだが、今年はレース中の障害物の数が減ったこともあり、「馬落とし」は会場内に設置されている。

なので、レース上位を目指す選手たちは、ここまで全力疾走でやってきて、その勢いのままこの急坂をよじ登ってくることになる。たぶん、見ごたえあるレース鑑賞地点になるだろう。

その崖を登りきったところに、本来なら太縄で張り巡らされた網が待ち構えていた。

写真右側に見える電柱に網が張ってあって、選手たちはその網をよじ登り、乗り越えていかないといけない。

これまでは、500名近くの選手がここに設けられた網を乗り越えるために、順番待ちの渋滞が出来ていた。ここにたどり着くまでの順位が低ければ低いほど、渋滞が長くなる。このため、ようやくこの障害物に向けた長い順番待ちを終え、自分が障害物を乗り越えた頃には先頭の選手がすでに2キロ以上先のゴール地点に到達している、ということもあった。

選手が急坂をよじ登ったら会場脇の障害物2か所を乗り越えていくことになる。

まず手前にあるのが、「馬落とし」。

例年なら、崖の下にある障害物が今年は大勢のお客さんの目に留まるところに移設されている。

高さが1メートル程度の大きな雪のブロックが3つ、並んでいる。選手はここを乗り越えていかないといけない。

身長が高い人ほど楽な障害物だが、僕のように「身長がそれなりに高いけど、体重が重たい」人だと、重力に負けてなかなかよじ登れないことがある。

この障害物は、後からチャレンジする人の方が有利に働くこともあるし、不利に働くこともある。これは運次第だ。

というのは、自分より前にこの障害物を乗り越えていった人たちによって作られた、乗り越えやすい段差が出来ている場合があるからだ。そういう段差ができていれば、自分は労せずこのブロックをよじ登ることができる。

一方で、大勢の人が通ったことにより雪の表面がツルツルになってしまい、滑ってなかなか登れなくなる場合もある。

「馬落とし」の先には、ピラミッド状に雪を積み上げた障害物、「砦超え」が待ち受けている。

ここも先ほどの「馬落とし」と同じように、年によって難易度が変わる。ツルツル滑る年もあるし、登りやすい年もある。

馬落としと違って、段差に飛びつくために助走する距離がほとんど確保できない。だから、選手はその場でどれだけ垂直に飛び上がり、滑る段差にしがみつくことができるか、という能力が問われることになる。

ステージ上では、太鼓のパフォーマンス「出陣太鼓」が始まった。

ステージ周辺には、レースに参加しないと思われる人が大勢集まって太鼓のパフォーマンスを楽しそうに眺めていた。

ああそうか、このイベントってこんな感じだったのだな、と僕は感心する。僕はこのあと数時間、レースに出ないでこの会場でダラッと2歳の息子と時間を過ごす予定だ。なんと気楽なことか。

レーススタート地点に立つタケ。

雪上に赤いラインが引いてある。例年、上位入賞を目指す選手が、この赤い線のギリギリのところに陣取ってレース開始を待つ、という姿が見られる。僕らのように、「とりあえず完走すればいいので、ゆっくり歩いて行こう」と思っているやる気のない人たちとのギャップがすごい。

今年はどのような様子が見られるのだろうか。僕は観客として一歩引いた状態で選手の人間模様を観察するつもりだ。

会場入口で、鎧兜を身にまとった村山統括軍師殿に出会った。

久しぶりすぎて、本当に嬉しかった。おお、村山さん!元気だったか!

この方は十日町市の市議をやっている方だが、「のっとれ!松代城」を代表するキャラクターとしてレースの前後にステージに上り、選手を鼓舞する役を担っている。その役割と、もともとのお人柄とで多くの人に愛されている。僕が毎年「のっとれ!松代城」に参加するようになったのは、この村山さんの面白さに惹かれたからといって過言ではない。

そんな方と再開できてとても嬉しい。

村山さんからすると、僕は「大勢の参加者の中の一人」に過ぎない。でも、毎年レースに顔を出し、毎年記念撮影をしてもらっていたので覚えてくれていた。「えっ、今年はレースに出ないの?子どもを連れて出ればいいのに」なんて笑顔で僕に言う。

いやー、12キロある子どもを背負ってレースに出るのは厳しい。障害物を乗り越えていくことができないと思う。

村山さんは市議という役柄もあってこのイベントに出ているはずだ。失礼ながら、議員というのは落選すれば「ただの人」に戻ってしまう。COVID-19によるイベント休止期間中に村山さんが失職していたら、もう会う機会がなかったかもしれない。

こうやって無事お会いできて、お互いの無事が確認できて、本当に嬉しいことだ。

「毎年恒例の場所に、愚直なまでに毎年顔を出す」というのは大事なんだな、と思う。これをマンネリと思ってはダメだ。今回、レース参加費が6,000円と高額だったために参加をためらったが、参加してよかった。

特に僕の場合、数年間のブランクの間に結婚をし、子どもが出来、今年は僕に変わってパートナーがレースに参加するという大きな変化があった。こういう変化をここ、松代の地で実感するというのはとても気持ちが良い。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

コメント

コメント一覧 (11件)

  • エントリーしようかどうしようか思案した結果、今年ものっとれ!に馳せ参じることに決めました。
    2023年はいしが出走しましたが、2024年はおかでんが出走します。(いしは弊息子タケと会場で過ごします)
    今後、1年おきに夫婦が交代で走ることにしてはどうか、と考えています。

    小さい子どもがいる家族が手軽に泊まれる宿が十日町にはないのが悩ましいところです。
    結局、今年もお隣の六日町市に宿をとることになりました。

1 2

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください