「石窯ピッツァリア&カフェ La Terra」という店で、新潟県産の「雪国舞茸のトリュフマヨネーズピッツァ」を注文し、美味しくいただいた。
店で一番人気という「モツァレラのマルゲリータ」は、シンプルすぎて旅情を感じられないという理由で敢えて選ばなかった。
旅先での食事は、旅行の実感を伴う料理を食べたいという欲望がある。僕がもし悟りの境地に達していたら、おにぎりを持っていってしまうかもしれないが、今回は「雪国まいたけ」を使用したピザを選んだ。
「雪国まいたけ」は、この近くの六日町市に生産工場があるからだ。
まいたけは工場で人工的に作られているが、地元食材には違いない。そもそも、舞茸は美味しいという理由で、選択した。
舞茸のピザは他のピザよりお値段が高い。なので、つい日和ってLサイズではなくMサイズにした。そのかわりに唐揚げとパニーニを追加注文しているのだから、結果的に高くついている。
まるで馬鹿みたいだけど、食事をあれこれ用意するというのは大事なことだ。というのは、移り気な子どもが何を食べたがるか、親でもよくわからないからだ。「えっ、この料理は好きなはずでしょ?なんで食べないの?」「ヤダ」というやりとりは十分にありえることだ。なので、ピザに僕ら家族のお昼ごはんをフルベットするのは危険すぎる。
投資の格言で「一つの籠に玉子を盛るな」という言葉がある。分散投資を心がけよ、という意味だが、子どもの食事もまさにそう。
そうやって親がお昼ごはんを分散投資した結果、弊息子タケはまんまと3種類のご飯にありつくことができたのだった。全部好きだったのか!
12:12
食後に車に乗ると、彼はうつらうつらし始めた。
彼が通う保育園では、だいたい12時前後から15時手前がお昼寝の時間だ。その生活リズムが身に付いているので、休日でもお昼になると眠たくなってしまう。
ここで親がしっかりと彼にお昼寝の時間を与えることができれば良いのだが、旅先だとなかなかそうはいかない。14時や15時になって、改めて「さあ、もう寝ていいよ。今日はこの後予定がないよ」と寝かせようとすると、その時点で彼はすっかり目が冴えてしまい、お昼寝をしなくなってしまう。その結果、彼は週末のたびに寝不足になってしまい、扱いが難しい。
なので、最近は極力「週末、外出するときは朝早く出発。帰宅は遅くとも14時まで」ということにしている。
12:21
清津峡にやってきた。
越後湯沢・石打方面から津南に抜けるルートの途中にある渓谷で、「日本三大渓谷の一つ」との呼び名が高い。僕は何度か訪れたことがあるが、いしは初めてということなので行ってみることにした。
もともと今日は、上越市の農家民宿「うしだ屋」に行く予定だったが、うしだ屋さんは一家全員新型コロナにやられてしまったらしくお会いできない。そのため、僕らは今日このあと、六日町市にある宿に向かうしか用事がない。だから、ゆっくり清津峡を見ることができる。
雪国、しかも子連れとなるとできることが限られる。まだ抱っこをせがむ年頃の子どもなので、親の都合で欲張ってあれもこれも、と企画することはできない。
そもそも、車のチャイルドシートに座らせるだけで毎回大変なことになる。泣き叫ぶ息子、「法律だから!ちゃんとシートベルトしないとあなたの命にかかわるから!」となだめながらも押さえつけるいしとの格闘が繰り広げられている。安易に「ちょっとあそこが気になるから立ち寄ろう」なんて僕が言ってはいけない。
清津峡は観光客で賑わっていた。
渓谷入口からほど近い第一駐車場に運良く車を入れることができたが、そこが満車になればずいぶん遠い場所にある第二駐車場に車を停めることになるらしい。距離が相当違うので、どちらに駐車できるかは運次第だ。それにしても、まだ雪が残っているこの時期で、駐車場が満車になるほど賑わっているのは予想外だった。
渓谷はこの写真の奥のほうにずっと伸びている。
清津峡観光の特徴は、その行程のすべてをトンネル歩きで費やす、ということだ。トンネルから一歩も外に出ることなく、トンネルの中から渓谷を眺める。なので、自然を満喫することはほとんどできず、コンクリートに囲まれた中をひたすら歩く。確か片道800メートルくらいあったはずなので、往復でざっと20分。
それでもこれだけ観光客が来ているのは、トンネル内に現代アートが展示されているからだろう。要するに、「映える」スポットであり、みんな写真を撮りたくてやってくる。スマホ時代、SNS時代ならではの観光地といえる。
バギー、さっそく大活躍。
車からトンネル入口まで、寝起きのタケをバギーに乗せて連れてきた。彼はチャイルドシートを天敵のように嫌うのに、バギーに乗ってシートベルトを締められることは抵抗しない。バギーだと、なんだか楽しいらしい。
トンネルに入って、タケに「どうだ?歩いてみるか?」と言ってバギーから下ろすと、彼は喜んだ。「あああああ!」と叫びながら、トテトテと走り出した。まっすぐに伸びるトンネルが珍しいし、面白いと感じたようだ。
こうなると、バギーは折りたたんで親が持つことになる。ベビーカーと違って、畳んで持ち歩けるのが便利だ。軽いし。なるほど、これはいい。
トンネルの途中で、渓谷を見るスポットがあったので立ち寄る。
正面には、「柱状節理」と呼ばれる斜めに筋が入った岩の壁がそそり立っている。しかし目の前にありすぎて、いまいち渓谷のダイナミックさを満喫できない。
はっきりいって、渓谷美を堪能するならこの清津峡はおすすめしない。
柱状節理を観察するより、眼下の川を崖から落ちてきた巨大な雪の塊がゴロンゴロンと転がっていくのを見るほうが面白かった。それはこの季節ならではのダイナミックな光景だ。超巨大な氷山みたいな塊が、面白いように下流に流されていき、途中で岩にぶつかる度に粉砕されていく。
トンネルにはいろいろなアートが施されている。
トンネルの最終地点、パノラマステーションに到着。
ここはちょうど谷が正面に見える場所にトンネルの穴が開いている。逆に言うと、長いトンネルの中で、ここしかV字になった深い渓谷を見ることができない。
今はここはフォトジェニックな場所として大人気だ。地面にごく薄く水を張ってあって、まるで鏡のように水面が景色を映している。
若い人たちがグループで記念撮影をとっている。片足を持ち上げたり、バンザイしたり、アイディアは様々だ。
さすがスマホ写真のネイティブ世代だけあって、ポージングがうまい。僕には思いつかないポーズを次々と繰り広げ、写真を撮り、傍から見ていて感心させられた。
一方の僕はというと、同じように真似するのは恥ずかしく、せいぜい我が家の妻子を撮影することしかできなかった。
帰り道も、タケには歩いてもらうつもりだった。できるだけ昼間は運動しまくって、夜にぐっすり寝て欲しい。
「さあ、歩け歩け」と促したけど、さすがに疲れてきたようだ。「抱っこ!」と言って僕の足にしがみついてきた。「抱っこはアカン。800メートルも抱っこしていると腕が筋肉痛になる。せめてバギーに乗ってくれ」とバギーをおすすめしたが、断固受け入れない。だいたいいつもそうだけど、代替案を出して懐柔しようとしても、たいていは失敗に終わる。
しょうがないので、彼を肩車にして出口を目指す。
無理をして彼をバギーに乗せようとすると、相当泣き叫ぶことになるだろう。音が響くトンネルでそれは困るので、肩車だ。この肩車は、彼にとっては納得がいく提案だったようだ。大人しく応じてくれた。そのかわり、僕は相当重い。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (11件)
エントリーしようかどうしようか思案した結果、今年ものっとれ!に馳せ参じることに決めました。
2023年はいしが出走しましたが、2024年はおかでんが出走します。(いしは弊息子タケと会場で過ごします)
今後、1年おきに夫婦が交代で走ることにしてはどうか、と考えています。
小さい子どもがいる家族が手軽に泊まれる宿が十日町にはないのが悩ましいところです。
結局、今年もお隣の六日町市に宿をとることになりました。