2014年から毎年参加していた、新潟県十日町市松代の冬のお祭り「越後まつだい冬の陣」。
「冬将軍に乗っ取られた松代城を取り返し、越後まつだいに春を招く」という趣旨で行われる雪中鉄人レース「のっとれ!松代城」がメインイベントとなる。指折り数えてみると、僕はこれに6連続参戦してきた。
レースそのものが3km程度の距離で短いこと、障害物を乗り越えながら雪の中を突き進む楽しさがあること、そして「当たって嬉しい刑罰の数々」と称してレース後に行われる抽選会がすごく盛り上がること、いろいろな要素で毎年3月が楽しみだった。
現地に行って、顔なじみの人にご挨拶したりするのも、いい。「ご無沙汰です」と新潟の地で知人に挨拶するのはほんとうに楽しいことだ。
しかし、コロナの影響はこのイベントにも影を落とした。第一回目の緊急事態宣言が政府から発令される1ヶ月前、2020年3月のイベントはギリギリまで調整されたものの中止となった。毎年このレースを共にしている「チームアワレみ」の面々とは、残念会を開催して「また来年!」とお開きになった。
2020年3月は、まだ「レース中止になったね、残念だったね」と会って酒を酌み交わしながらお互い肩をすくめることはできえた。しかし事態は急変し、2020年4月以降は会食禁止、不要不出の外出禁止という世界に変わってしまった。
この制約がだんだん緩和されていったのは2022年から2023年にかけてのことで、その間3年近くはイベントごとを開催するのは難しいご時世だった。
のっとれ!もまたしかり。2020年、2021年、2022年と連続して中止。
「たぶん、もうやらないかもなぁ。こういうのは、一度中止してしまうとなかなか再起動するためには馬力が必要だし」
と思って我々はすっかり諦めていた。
2023年も、周知が全然なかったので「ああ、今年もか。」と思っていた。例年なら12月頃には募集告知が出るからだ。しかし、1月に入ってから、急に「今年はやる」という情報がFacebookに掲載されてびっくりだ。えっ、えっ、やるの?
完全に油断しきっていて、やらない前提で頭がセットされていたので困惑した。
やるの?
同じ言葉を何度も反芻する。
いや、やるのはもちろん大賛成だ。復活おめでとうございます、と拍手だ。でも、肝心の僕の心と体と財力の体制を整理しなくちゃ。
ええと、僕んちはコロナ以降、子どもが生まれた。いわゆる「弊息子タケ」で、齢は2歳。この子がいる、という状態でどうやって参加すればいいんだ。これまでのように独身貴族ゥゥゥ!と思いつくままに参加表明するわけにはいかないぞ。
あと、続報として入ってきた情報で、「参加費6,000円」というのに「えっ?」と二度見してしまった。高い。値上がりしている。昔の値段がいくらだったか記憶にないのだが、この数字には見覚えがない。参加を躊躇する値段だ。気軽に「行きまーす」とはいえない。
募集定員は以前と同じ500人、となっていた。しかし1月に入ってから告知、そして1/23から参加受付で締め切りが2/17(のちに延長され、2/23が締め切りとなった)とタイトなスケジュールで、500人集まるとは思えなかった。僕同様、「完全に油断していた」人がいっぱいいるはずだからだ。
参加者が定員割れになることを見越して、参加費用を算出しているのかもしれない。そう考えざるをえない値段設定だ。そもそも、このイベントの最大のお楽しみだった抽選会で当たる「遠島の刑」は今年はない、と事前周知があった。景品が緊縮財政になっていて、それでも参加費が上がっている。
どうしたもんかなぁ。
毎年「のっとれ!」に参加していた「チームアワレみ」のメンバーに聞いてみたところ、誰も参加表明をしなかった。半月板損傷の古傷を労りたいので、という理由や、現在北海道に赴任中なので、など三者三様だ。時の流れとともに人はそれぞれ状況が変わっていく。
それは僕もそう。2歳の子どもがいて、どうすりゃいいんだ。
参加するにしても、パートナーのいしをレースに送り出し、僕は会場でタケと留守番&雪あそびということになるだろう。夫婦揃って出撃、というわけにはいかない。13キロ近くある2歳児をおんぶしてレースに出るのは無理があるからだ。途中障害物越えをしなくちゃいけないし。
僕は、参加費が高いこと、新幹線や宿代がかかることからかなり及び腰だった。というか、「もうのっとれ!は卒業でいいかな」と思った。やっぱり、子どもが生まれてなにかと出費がかさむ日々を送っていると、この手のエイヤッとお金がかかることにためらいが生じる。小銭を払うことは厭わないけど、デカいお金が動くとなると俄然腰が重たくなる。
しかし、いしが「私はレースに出てみたいです」と言うので、さんざん悩んだ挙げ句、2023年も「のっとれ!」に参加することを決めた。
こういうのは、「久々に再開!」という一発目こそ、馳せ参じることの意味がある。「再開を待ってましたよ!」と景気づけをすることで、主催者や地元の人たちがどれだけ勇気づけられることか。だから、「今年はひとまず様子を見て、来年くらいに参加できればいいかな?」なんて呑気なことを言ってないで、今年こそ参加しなくちゃ。
いしがレースに出走する。なので、僕はタケと会場に留まることになった。「のっとれ!」に参加するようになって初めての体験だ。
いっそのこと日帰り強行軍でも良いのでは?と旅行予算を試算しながら考えた。みんなでワイワイ旅行するわけじゃないので、レースに専念すれば費用はずいぶん安くなる。
しかし一方で、往復の新幹線代や移動に要する時間を考えると、どうにももったいない。せっかく新潟に行くのだから、一泊して現地を満喫したほうが良さそうだ。
さんざん悩んだ末、1泊2日のおかでん家旅行が企画された。
2023年03月11日(土) 1日目
レース前日朝。東京から新潟を目指す。
今回の旅行に際して、装備についていろいろ考える必要があった。特にタケ。
雪に対応した服装というのを全く持っていない。現地で雪あそびをする際、普通の格好だったらズボンが濡れて風邪をひいてしまうだろう。子ども用のスキーウェアを買うのは大げさなので、せめてレインウェアは買わなくちゃ。
そして長靴。普通の靴だとすぐに濡れてしもやけになるかもしれない。
あと、彼のオムツやおしりふき、おやつ、飲み物を入れた子ども用のリュックが欲しい。「自分の荷物は自分で背負う」ことができれば、親の負担が減る。
「親の負担が減る」というのは冗談で、実際は「子ども用品を大人の旅行用品と分離したほうが、旅行中の運用がラク」ということを期待している。
ただでさえ「雪国のレースに出走する」ということで通常の旅行より荷物がかさばっている。そこに子どものあれこれが加わると、大人用かばんはゴチャゴチャしてしまう。オムツ交換しなくちゃ、というときにサッと出せたほうがいいので、子ども用のザックを買った。
今後タケが成長しても当分使えるように、ということで欲張って12リットルのザックを買ったのだけど、いざ荷物を入れて背負わせてみたら大きすぎた。彼は身長86センチくらいなのだけど、たぶん12リットルのザックが違和感なく背負えるのはあと1~2年後だろう。
お店で試着させたときは、「ちょっと大きいけどすぐに馴染むサイズ」と親は思った。しかしそれは売り場に吊るされている、ザックがペシャンコの状態のものを試着したときの印象だった。いざ荷物を詰めてみるとさすが15リットル、どんどん入る。どんどん入ってどんどん膨れ上がった。
デカくなりすぎたので、結局子ども用荷物の一部はやっぱり親が持つことになった。15リットル、侮れないサイズだ。
ちなみにこの12リットルザック、大人が背負っても違和感ないレベルのものだった。モンベル製のザックなので作りはしっかりしていて、ショルダーベルトを調節さえすれば大人でも難なく背負えた。そりゃ子どもにはデカいわけだ。
写真で、彼が手に持っているビニール袋の中には砂場遊び用品が入っている。雪と遊ぼう!といっても2歳児じゃ大したことはできない。雪だるまさえ作れないし、雪合戦をするだけの身体能力も備わっていない。なので、今回は雪を砂に見立てて遊んでもらおう、と思っている。
旅行のことなんて全く知らされていないタケは、なぜこんな朝早くに砂場セットを持っているのかさっぱり理解できていないだろう。近所の公園に行くにしては荷物が多いし、時間帯が変だし。
07:23
朝早く家を出たのは、上越新幹線の自由席に乗車するつもりだからだ。
このシーズンの上越新幹線は、観光客+スキー&スノボ客で恐ろしく混む。以前、「東京の通勤電車よりも酷い・・・」という混雑の中新幹線に乗ったことがあるが、あれはもうこりごりだ。特に2歳児を連れている今なら、なおさらだ。
「のっとれ!」に参加することを決めたのが2月中旬で、そこから新幹線を手配しようとしたら指定席の手配に苦労した。
一応、10時台に東京駅を出る新幹線の指定席は確保したのだけど、あれこれ旅程を考えているうちに「もっと早く新潟入りしておきたい」と考えるようになった。なので、混むのを覚悟で新幹線の自由席にチャレンジすることにした。
JR東日本はたくさんの新幹線を走らせていて、列車ごとに指定席・自由席の割り当てが違う。「この列車は全車指定席」というものもあれば、「この列車はむしろ指定席が少なく、自由席中心」というものもある。「とき」とか「たにがわ」といった新幹線の愛称を見ただけでは全然わからないので、とても困る。
JR東日本はこの他にも独特な割り引き制度を持っていたり、とにかく利用者を混乱させる複雑な仕組みが多い。その点JR東海の新幹線はスッキリしていてわかりやすい。見習って欲しい・・・とは思うが、それはたぶん無理だ。東京-名古屋-大阪という日本の大動脈を担っていて常時混んでいる東海道新幹線が特殊なんだ。それ以外の路線は繁閑のギャップが大きいので、もっと流動的にしなくちゃいけないのだろう。
ンなわけで、ターゲットとしている新幹線の40分前には東京駅に到着した。2便ほどホーム上で見送ってりゃ、自由席はなんとか座れるんじゃないかという読みだ。
東京駅はかなりの混雑でびっくりした。みんな旅行に行くんだなぁ。コロナ前に戻ったように見えるけど、どうなんだろう?
新幹線ホームはもっとすごい状況で、自由席の号車の停車位置には人がつづら折れで並び、人の往来が難しくなるレベルだった。30分前にはホームに並ぶという作戦は正解だった。これでも余裕で座れるわけではなく、若干ヒヤヒヤしながら自分たちの席を確保できたレベルの混雑状況だった。
09:40
越後湯沢駅、到着。
山奥の駅とは到底思えないほど巨大なお土産売り場、「CoCoLo湯沢」がバーンとお店を構えている。朝から人が大勢いて賑わっているが、この人たちはみんなこの後スキー場に行くのだろうか?荷物だけを見てもよくわからない。
ゴロゴロとキャリーバッグを引きずっている人は多い。越後湯沢まで来てキャリーバッグ、となるとおそらくスキー・スノボ目的なんだろう。それでも、スキー板やボードを持ち歩いている人は少ない印象だった。自前で買ってまで遊ぶ人は少なくなって、現地でレンタルすることが増えたのかもしれない。
明日の夕方、東京に戻りがてらお土産物を買うというのは厳しい。これまでの経験則でそう考えている。僕ら同様、日曜日の夕方に東京に戻ろうとする人が越後湯沢駅に殺到しており、お店のレジには長蛇の列ができるからだ。
そんなわけで、空いている今のうちに買い出しをする。
おみやげ物も買うし、今回の旅行中に僕らが食べるお菓子なども買っておく。
CoCoLo湯沢の奥にあるのが「ぽんしゅ館」。越後湯沢駅の名物だ。ひょっとすると越後湯沢界隈では最大の観光地かもしれない。
ぽんしゅ館の前に仁王立ちするサラリーマン像。一升瓶を掲げて威勢が良いが、マスクを着用していた。ご時世だなぁ。コロナが流行って以降、居酒屋などで酒を飲んでいる奴はどうせ酔っ払って大声で喋っているんだろう、コロナの感染源だ、と白目で見られたものだ。2023年春、ようやくそういう世間の目から開放されつつある。
弊息子タケは、これも今回の旅行でのニューカマー、バギーに乗せられている。
ベビーカーを持参するのは重たすぎるし、かといってタケに歩かせたり親が抱っこしたり、というのも限界がある。
タケはだいたい12時~15時近辺で2時間ほどお昼寝をするライフスタイルになっており、レース当日は会場で寝てもらわなくちゃいけなかった。そのためにはバギーを買うしかあるまい、というのが夫婦が出した結論だった。
デコボコの雪の上をバギーが動くのか?という点では疑問だが、とにかく使わないときは折り畳めるのがいい。安定性重視でゴツくて重いベビーカーは困る。
出費だなあ。じつはレースに全く関係ない2歳児の装備にかなりお金がかかった。
ぽんしゅ館を名物たらしめている、新潟県の地酒全銘柄を有料試飲できるコーナー「利酒番所」。
数年ぶりなので、どんな銘柄や品種が入っているのか中を覗いてみたかった。
しかし、入り口には、入場者用と退場者用に仕切りがつけられていて、入場者側には体温測定機が待ち構えていた。そしてその奥には銭湯の番台のように、試飲用のメダルを売る受付があった。
昔のように酒を飲まない僕でも中を見学できる雰囲気じゃない。残念だけど、諦めて素通りした。
ぽんしゅ館のレジはひどく混む。
ただでさえみんな大量にお土産を買い、さらに割れ物である瓶ものを買う。瓶はご丁寧にレジのスタッフが梱包してくれるので、そのおかげでレジ前に長い列ができる。あまりに前に進まなくて絶望したことがあるくらいだ。
そんなこともあってか、今はレジが4つもある。この時間帯は4か所全てのレジが空いているわけではなかったけれど、拡張性が用意されているのはありがたい。以前よりもスムーズにお会計を済ませることができそうだ。
4年近くのお久しぶりなんだけど、ぜんぜん久しぶり感を感じない。「俺はこの地に戻ってきたぞ!」という高揚感もない。
たぶん、僕の脳のCPUは常に50%くらい、タケのことに費やされているからだろう。チョロチョロする2歳児に気を取られていて、高揚や感慨といった感覚を見失っている。
いしがそそくさとお菓子を買い集めている。
彼女は職場や知人にわたすお土産とは別に、自己消費用としてバラのお菓子を次々と買い物かごに入れていった。そのスピード感はほれぼれするレベルだ。一切躊躇なく、ぱっと見て「あっ、これ良さそうだ」と思ったら買い物かご行きだ。
もちろん彼女には金銭感覚がちゃんとあるので、無駄に高いものは買わない。しかし、「食べたい」と思った気持ちには至って素直で、逆らわない。つまり、買い物かごへGO。
「だって、食べてみないとわからないじゃないですか」
という。まあ、そりゃそうだ。でも食べなくても、わからなくてもいいことっていっぱいあるんじゃないですか?と僕なんかは思うわけだが、いし曰く「それもこれも、食べなくちゃわからない」んだそうだ。
以前、彼女と知り合った頃、彼女は「東京駅の定番みやげはだいたい食べたことがある」と豪語していた。実家に帰省するときや遠出する際の手土産はいつも2つ買い、1つは自分で食べて残りの1つを相手に渡す、という。
「だって、人にプレゼントするのにその味を知らないわけにはいかないじゃないですか」
爆弾おにぎり家は現在も健在。
昔、470円からラインナップがあったおにぎりは、今では580円からスタートになっている。物価高の影響はここにも。
4合のご飯を握った「大爆おにぎり」は僕が2017年のときに食べた際は2,060円だったが、今では2,500円。
いずれもかなりの値上がりだ。
「酒バウムクーヘン 雪まどか」。
酒どころ新潟なので、「酒」と「雪」をキーワードにした商品がほんとうにおおい。あと、「米」。
米といえばおかき、あられ、柿の種・・・と和風スナックの方向に向かうかと思いきや、小麦粉のかわり「米粉」を使った洋菓子だとか、米から作った「日本酒」を使った洋菓子とか、とにかく多彩。
CoCoLo湯沢の入り口部分に店を構えている笹だんご屋さん。
7種類が売られていて、バラで買うことも可能。
それぞれの笹団子には特徴があり、それを2軸のマトリクスで表現しているのが面白い。
X軸が「甘さ控えめ」「甘め」、Y軸が「もちもち」「やわらかい」。
どこにプロットされた商品を買うのが自分の好みに合うのだろう?
いしと話し合ってみたが、こういう切り口で語れるほど僕らは笹だんごに詳しくない。「よくわからん!」というのが結論だった。
そんなわけで、「食べてみなけりゃわからないから」といういし論法にもとづき、2つ買ってみた。さすがに賞味期限が短い笹団子を7種類全部買うのは無理があるので。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (11件)
エントリーしようかどうしようか思案した結果、今年ものっとれ!に馳せ参じることに決めました。
2023年はいしが出走しましたが、2024年はおかでんが出走します。(いしは弊息子タケと会場で過ごします)
今後、1年おきに夫婦が交代で走ることにしてはどうか、と考えています。
小さい子どもがいる家族が手軽に泊まれる宿が十日町にはないのが悩ましいところです。
結局、今年もお隣の六日町市に宿をとることになりました。