夕食までの時間、僕らはお風呂に入ることにする。
僕は弊息子タケと一緒だ。
旅先の大浴場で彼と一緒にお風呂に入るのはこれまでも何度かあったが、彼は風呂場で悪ふざけをしたり走り回ったりせず、とてもマナー良く入浴ができている。親としてはとても嬉しい。とはいえ、彼がこれから3歳、4歳と成長していけばもっとパワフルに育つので、このまま成長するのかどうかはわからない。
この宿は温泉だ。六日町温泉で、泉質は「ナトリウム-塩化物泉」と書かれていた。泉温は52.9度。
17:51
2歳児にとって、見慣れない空間、見慣れない大浴場というのはどういう理解なのだろう。
彼と一緒に過ごしていると、親の都合でいろいろ慣れない環境を訪れた際の彼の脳内処理がとても気になる。
そもそも、子どもにとって見るものの大半が自分にとって見慣れないものなので、いちいち驚かないし緊張しないのかもしれない。でも、
「これはどうやらお風呂らしい」
「それにしては、家のお風呂と比べて大きいぞ」
「あれっ?そもそも今日は家のお風呂に入らないの?なんで?ここはどこ?」
という発想を彼は持っていない。親と一緒にいる場所が自分の居場所、という理解なのだろう。
彼は、風呂場にある洗面器や手桶すべてにお湯を張り、満足したのちに湯船にしっかりと身を沈めていた。
彼は風呂好きの僕とほぼ毎日一緒にお風呂に入っているので、僕が肩までお湯に浸かって「はぁぁぁぁぁぁ~」と安堵のため息をつくのをいつも聞いている。なので、彼にとって「熱めの湯に、肩まで浸かることの気持ちよさ」をなんとなく理解している。単に父親のマネをしているだけかもしれないが、少なくとも彼が僕と一緒にお風呂に入るときは、肩まで浸かって長風呂をする傾向にある。
18:05
大きいお風呂で手足をしっかり伸ばし、父子で十分くつろいだ後はハンモックに横になった。見上げると建物の天井がとても高く、快適。
ハンモックが設置されているフロアの1階上、この建物の最上階に食堂がある。
夕食は18時30分からと言われていた。日本における一般的な宿は夕食を18時スタートとすることが多いが、ここはやや遅い。
食堂の入り口から中に入ってすぐのところに、子ども向けのおもちゃが置いてあるスペースがあった。
タケがさっそくそちらに興味を示してしまい、「ご飯だよ、遊ばないで」と両親が声をかけても頑としてその場から動こうとしなかった。せっかく見つけた遊び場を手放したくないらしい。
18:37
夕食が僕らのテーブルに配膳され、僕らはかなりびっくりした。
これまでの僕の人生の中でも、上位にランクインするレベルでシンプルな食事だったからだ。
メインディッシュはポトフ。これに赤米、サラダ、そしてデザートのオレンジ。これだけ。
「まだこの後に料理が出てくるのかな」と思いながら、食べるスピードをセーブしてしまったくらいだ。それくらい、少ない。品数だけでなく、量も少なめだ。
でもむしろ、こういう料理スタイルは時代にあっていると思う。食べきれない量と種類の料理がずらずら並ぶこれまでのスタイルはだんだん廃れていくと思う。人手が足りないという観光業の課題があるし、宿泊客自体、酒をぐいぐい飲みながら料理を食べる人が少しずつ減ってきているだろうし。
食堂には僕らと、あともう一組のお客さんしかいなかったのだが、そのお客さんも同じ料理が振る舞われていた。それを見て、「ああ、やっぱり今晩はこれだけしか食事がないのか」と悟った。
いしは、「しまった、宿に着く前にお菓子を買い込んでおけばよかった」と言う。えっ、でもあなた、すでに越後湯沢駅であれこれお菓子を買ってたけど、あれはカウントの対象にならないの?
18:38
これだけシンプルかつ少量のご飯となると、子連れ宿泊客にとっては厳しい。親の食事を子どもに分け与える前提だからだ。肝心の親の料理が少ないので、その少ない中で子どもにご飯を食べさせることになる。特にタケのような2歳児は、生野菜サラダを食べる習慣がまだない。なので、ポトフとご飯を食べてもらうしかない。
19時近くになって、チェックインのときに居合わせた女性グループが食堂にやってきた。僕らよりも遅い時間から夕食を食べるらしい。
宿のスタッフさんから、「ランタンフェスティバル、どうでした?」と聞かれ、女性グループが「よかったですよー」と答えているのがちらっと聞こえた。あ、塩沢のランタンを見に行ったのか。
僕らはさっき、泊まっている部屋の窓から塩沢方面の空を眺め、「チラッとでいいから空を飛んでいるランタンを見ることができないかな?」と期待していた。しかし結果はまったく見ることができず、「やっぱり無理だったか」と諦めていたところだ。
しかし、状況は変わった。
これだけあっけなく夕ご飯を食べ終わってしまうなら、僕らは今からサクッと塩沢に行けるぞ!ということに気がついたのだった。
宿の夕食は、タケの相手をしながらゆっくり食べていると1時間くらい必要かな?と思っていた。だから、その後にランタンを見に行くのは無理だと思っていた。
ありがとう、宿の少量のご飯。おかげで僕らはランタンフェスティバルを見に行く決心がついた。
宿から車で移動すること、15分から20分程度。塩沢の集落にやってきた。
遠くから塩沢に近づいている最中、まったく空を舞うランタンの姿を見ることはできなかった。イベント開始は17時からだと聞いていたので、19時半ともなるともはやランタンが飛んでいって消えてしまった後なのだろう。
諦めつつ、イベント会場に近づいてみる。すると、おや?歩行者天国として封鎖された道路のs階に、ランタンが見える!
すごい!ランタンがまだあったぞ!
あわてて車を駐車しに行き、歩いてランタンに近づいてみる。よかった、すでに人通りがまばらになっている会場だけど、まだランタンを打ち上げている人がいたんだ。
・・・と思ったが、あれ?さっきからこのランタン、空に飛んでいかないぞ?
ユラユラと横に揺れているけれど、上には向かっていない。
そんなバカな。ランタンって、気球のように空に飛んでいくものなのに。
近づいてみて、その理由がわかった。
たくさんのランタンは黒いひもでくくりつけられ、上から吊り下げられていたからだ。なるほど、だからこれらは同じ場所にずっと留まっているのか。
それにしてもきれいだ。こうやって動かないランタンでさえ幻想的なのだから、実際に打ち上げられ、どんどん空に上っていくランタンをリアルタイムに見たらさぞや印象に残るだろう。
19:47
主催者に感謝する。こうやって打ち上げが終わった時間でも、記念撮影ができるようにランタンを残してくれているのだから。
リアルタイムで天高く舞っていく実物のランタンではないので、ランタンを背景に記念撮影をするのが容易だ。おかげで、度の記念になる写真を何枚も撮ることができた。
「夕食後にわざわざやってきて、よかったね」と夫婦で話をする。
(つづく)
コメント
コメント一覧 (11件)
エントリーしようかどうしようか思案した結果、今年ものっとれ!に馳せ参じることに決めました。
2023年はいしが出走しましたが、2024年はおかでんが出走します。(いしは弊息子タケと会場で過ごします)
今後、1年おきに夫婦が交代で走ることにしてはどうか、と考えています。
小さい子どもがいる家族が手軽に泊まれる宿が十日町にはないのが悩ましいところです。
結局、今年もお隣の六日町市に宿をとることになりました。