激辛グルメ駅伝2022

40店舗目 MARZAC7

MARZAC7。

悪魔のフライドポテト(中辛)、旨辛!赤からトンテキ(旨辛)、唐辛子まみれの牛ステーキ(熱辛)

の3品が用意されている。料理と辛さは一対一で紐づいていて、辛さを独自に指定することはできない。

この激辛グルメ祭り会場では、「悪魔」とか「鬼」とか「地獄」という表現がよく出てくる。鬼はともかく、悪魔や地獄というのは宗教的な要素を含む言葉だ。辛さを形容するときに信仰が絡んでくる、という事象は興味深い。

とはいえ、ここで使われる辛さの形容表現は、男子校における他愛もない下ネタに近いものがある。どぎつい形容はされていない。「めった刺し」とか「複雑骨折」といった表現はおろか、「三途の川」という言葉も使われない。あまり生々しくしてしまうと客が引くからだ。

逆に言うと、「悪魔」とか「地獄」というのはすでに今の日本人にとっては恐怖・畏怖の対象ではない、ということでもある。「お前は悪魔だ!地獄に堕ちるぞ!」と言われても、大半の人はビビらない、ということなんだろう。

唐辛子まみれの牛ステーキ(熱辛)。

「激辛」かと思いきや、「熱辛」という概念がここでは導入されていた。昔、テレビのスポーツニュースの影響で「熱盛」という言葉が流行った時期があったけど、「熱辛」が流行る日は来るだろうか?

実際のところ、「熱辛」という概念は辛さを語る上で存在すると思う。頭皮の汗腺が開いて頭頂部から汗がドッと出るような感じ。逆に、すーっと顔から血の気が引くような辛さ、というのも存在する。

辛い、と一言で言っても、本当に多様性がある。その違いを楽しめるのが、激辛グルメ祭りの楽しさだ。また、料理ごとに辛さが違うからこそ、立て続けにあれもこれもと辛い料理を食べ続けられる。

この料理?うん、辛いっちゃあ辛いんだけど、ステーキ肉を噛み締めていると平気だった。

41店舗目 ラホール外神田

秋葉原にあるカレーの有名店。

以前僕が「激辛カレー十番勝負」をやった際に食べたことを思い出した。あれはかれこれ9年前だ。

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具体的にどんなカレーだったか、覚えてはいない。しかし、「痛い辛さで、ヒリヒリした」ということだけはしっかりと覚えている。痛み、という感覚は脳裏に焼き付くものらしい。

ブラックほうれん草カレー(激辛)。

ああ思い出した、そういえば真っ黒いコールタールのようなカレーが出てくるんだっけ、このお店。

「ほうれん草カレー」というと、インド料理の店では「サグカレー」などと呼ばれ、あまり辛くないカレーの代表格だ。しかしこのお店は違う。「そうか、そりゃそうだよね」とお皿を受け取ってみて納得の「ほうれん草カレー」だった。

ご飯の上に具としてほうれん草がトッピングされている。カレーそのものをほうれん草ペーストでマイルドにしているわけではない。

半熟卵があるのが救いだ。シェアする際に卵の分量でケンカになってはいけないので、

「それでは僭越ながら私が代表してかき混ぜます」

と宣告後、厳かに全て具をスプーンでかき混ぜた。味にムラが出ないように。

さて、いざ食べてみると、ガツーンとのけぞる辛さ。思わず頸椎がむち打ちになるような、そんな辛さ。そしてその後、痛みが無間地獄となる。「ああああ」と三人が同時にうめき、そして痛みに耐える。声を出さないと、この痛みに耐えられないからだ。

でも声を出したって痛みは逃げない。

「ちょっと飲み物買ってきます」

いそぺちさんが早々に立ち上がる。彼はこれで4本目の飲み物となる。会場の自販機が儲かってしょうがない。この日一番の太客じゃあるまいか。

毎回、500mlのペットボトルではなく、小さなサイズのペットボトル飲料を買ってくる。この量でイケる、この後の料理を戦える、と思っているのかもしれないが、毎回それを上回る激痛に悩まされ、追加で飲み物を買ってくるという展開になっていた。

いしも、「私も買ってきます」と逃げるように自販機に走っていった。抱きかかえられていた弊息子タケは、僕に預けられて「一体何が起こったの?」と僕の顔を伺う。でもその僕も、「ああああ」と唸っているのだから、とんでもない修羅場に立ち会っていることになる。

いしが悔しそうに言う。「後もう少しで終わりだったので、追加のドリンクはいらないかな・・・と思ったんですよ。でも我慢できませんでした」

そして飲み物をぐいっとあおる。

もちろん、飲んでも痛みはひかない。

軽い痛みのばあい、飲み物で緩和ができる。しかしドスッとくる激辛・激痛のばあい、いくら飲んでも何も変わらない。単に冷たい液体が口の中に入ることで、気を紛らわせるだけだ。痛みは全然洗い流せない。

「最終手段を出しましょう!」

いそぺちさんが自分のカバンの中から、何かを取り出した。あれっ、アンパンマン?

よく見ると、それは黄金色に輝く「スティックはちみつ」だった。一回分使い切りサイズのアンプルになっている。

いそぺちさんはそれを素早く口に加え、直にチュウチュウと吸い出した。おお!その手があるのか!

過去何十回もこの地を訪れている僕だけど、「はちみつで辛さを緩和させる」というアイディアは全く思いつかなかった。この発想は素晴らしい!イノベーションがここにはある!!

僕らもはちみつを頂戴し、さっそく封を切って加えてみる。

まったり。

口に絡みつくはちみつ。それを舌先で口腔内にまんべんなくのばすと、あら不思議。あっという間に辛さが鎮まっていった。その効果に相当びっくりした。激辛料理にははちみつが効くとはびっくりだ。

それにしても、これまでの自分の浅はかさを悔いた。「カルピスの甘さで辛さを中和するんだ」とかなんとか言っておきながら、カルピスでも中和できなかったらひたすら耐えるだけ。それはそれで根性論として素晴らしいけど、もっと甘いものをなぜ用意しなかったのか。用意しようという発想に至らなかったのか。

視野が狭かった、とつくづく思った。それくらい、スッと辛さが引いていったのだから、はちみつはすごい。

42店舗目 ハバネロ研究所

はちみつという武器を手に入れた以上、もう怖いものはない。

42店舗中42番目、最後のお店は「ハバネロ研究所」。

「なんだ唐揚げか」。思わず声が出る。僕らの経験上、餃子と唐揚げは激辛になりきれない料理、という認識だ。

ハバネロ辛揚げ(マニア(激辛))。

「唐揚げ」ではなく、「辛揚げ」という漢字になっているのが面白い。

「なんだ唐揚げか」と思いはするけれど、ハバネロを標榜する以上最大限の警戒は必要だ。ハバネロは重たく痛い辛さを僕らに与えてくれる、神様からの罰だ。

僕は最近、激辛料理にハバネロが使われていたら「ハバネロはずるい!ハバネロ反対!」と一人で勝手に料理に対して抗議している。ハバネロ辛いじゃん。痛いじゃん。という理屈だ。なんだその弱腰。

辛揚げは赤黒いハバネロソースで味付けられ、さらに仕上げにハバネロの粉末がかかっていた。しかし、先程のカレーでの大打撃と、その後のはちみつによる復活のお陰で味覚はぐだぐだ。おかげで、このハバネロ辛揚げはそこまで驚異に感じることなく、食べることができた。

ちなみに、2006年・・・つまり今から16年前、僕がハバネロを手に入れておお喜びしている記事がある。

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この頃は本当に無邪気に激辛を好んでいたんだな、というのが文章からうかがえる。そしてハバネロの辛さにとても興奮している様子が、文章からありありと伝わってくる。

しかしこのあと2006年末、僕は長時間残業がたたって体調を崩し、その後ガラガラと生活リズムが狂ってしまった。

つまり、ハバネロを愛していたのは、ストレスが溜まりすぎていた証拠だったらしい。

今は激辛をほとんど欲していない生活を送っている。ストレスが少なく、快適な人生になったのだと思う。家族や周辺の仲間たちには感謝だ。

番外編 HIROTA

そんな感謝の気持ちを感じながら、このイベントはエンドロールに向かっている。

全店舗食べたあとは、ご褒美として甘いものを。

年によってはかき氷だったり、フライドポテトが売られていたりしていたけれど、今年はHIROTAのシューアイスクリームだった。

ちょうど3種類売られていたので、一人一個ずつ食べる。これはさすがにシェアしない。だって、ご褒美だもの。

「お疲れ様でしたー」

と言いながら、三人でシューアイスを食べる。

最後。会場を後にする前に、弊息子タケ、いし、そしていそぺちさんと記念撮影。

8月31日に食べ始めた2022年シーズンは、9月29日をもって42店舗43料理を食べることで完了となった。

途中伴走してくれたかめぜろさん、ゆうどんさん、いそぺちさん、そして我が家族のタケといしには感謝だ。

・・・といっても、感動のフィナーレじゃないよなぁ。「これまで苦労をかけた家族に、これからは恩返ししたいです」とかありがちなセリフなんて出て来ないし。「明日から平凡な日常生活に戻るのか・・・」とぽっかりと穴が空いたかのような虚しさを感じることもないし。

案外あっさりしているものだ。

でも、それで良いと思う。激辛グルメ祭りの42店舗をぜんぶ食べたよ!なんて自慢しているようじゃ、何のために生きているのかわからなくなってくる。「あー楽しかった。じゃあ、またね!」と笑顔で後腐れなく、終わりにしよう。

それにしても今年は激闘だった。

開催期間中孤立無援で一人で食べ続けることが多かったし、よりによってそんなときに限って手足口病にかかって身体がボロボロになった。

手足口病の余韻はこの日もまだ残っていて、発疹が収まったあとの手と足は皮膚がむけ始め、とても汚い状態になっていた。今ではこのせいでスマホの指紋認証ができなくなったくらいだ。

来年はどうなっているかわからないけれど、少なくとも1回はオフ会として開催しようと思う。この記事を読んで、「来年は自分も参加したい!」と思った方がいたら、来年ご一緒しましょう。それではまた来年。

(この項おわり)

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