13:27
また地図上には載っていない小屋が現れた。
崖にへばりつくように作られていて、何かバランスが崩れたらこのままズサーッと崖を滑り落ちていきそうな感じがする。
茶店の廃墟、というわけではなさそうだ。どちらかというと倉庫のように見える。これも、石鎚神社の神事や修験道の修行中の人向けの施設なのだろうか。ここを拠点に山篭り1ヶ月!とか。いや、さすがにそれは水場が周囲にないから難しそうだ。
いや、「水場まで毎日片道●時間かけて行く」というのも修行である、とすればどんなところで山篭りをしたっておかしくない。
13:28
さすがに疲れてきた。短時間でぐいぐい標高を稼いでくれるので気楽ではあるけど、ビルの非常階段を登り続けているようなものだ。ぐったりする疲労感というより、息が上がる。
いったんここで小休止。そういえば、朝実家を出る際に母親から「これを食べなさい」と袋を渡されていたんだっけ。ガサガサと袋をあさってみたら、中から出てきたのは沖縄銘菓「ちんすこう」だった。
まさか石鎚山に登りながらちんすこうを食べるとは。でも、糖分補給にはぴったりだ。
13:35
階段を上り続けていると、また小屋が見えてきた。今度は規模が大きい。どうやらこれが石鎚山荘らしい。山頂すぐ脇にこの小屋があるはずなので、ゴールはもうすぐそこだ。
石鎚山荘の周囲はお花畑になっていて、高山植物が今まさに咲き乱れていた。
「見ろ、まるで我が登頂を祝福してくれているようだ」
心にも無いことを思わず口にする。
13:36
石鎚山荘の前を通り抜けると、そこは広場状のスペースになっていた。遠足の団体がお弁当を広げても余裕があるサイズ。あれだけの険しい山だったのに、山頂がこんななだらかというのはちょっと意外。
正面に見えるちょっとした丘が石鎚山(弥山)山頂。
左手に、石鎚神社の頂上社が見える。
到着ですよ石鎚山山頂。
悟りが開けたか?仙人になれたか?と聞かれたら、「最初から仙人だったので、何を今さら」と答えたい。それは冗談としても、さすが古来から修行の場として大切にされてきた山だ。かなりタフな山容だった。剱岳のような凶悪さに満ち溢れてはいないものの、「平凡そうに見える山に潜む、キラリと光る鋭さ」がこの山の魅力だ。
石鎚山の看板。
記念撮影をぜひ団体でお楽しみ下さい!といわんばかりだ。ええ、ぜひそうさせてもらいます。
山頂には、小さなお賽銭箱と、石碑?石像?があった。
13:37
今いるこの地は、石鎚山系最高峰というわけではない。ここから先ちょっと行った場所に、「天狗岳」と呼ばれる岩山があり、そこが1,982mということになる。こっちは標高1,972mなので、10メートルほど低いことになる。
「山頂に登った、と自称するからには、最高峰に登らないといかんのではないか?」
とは思うが、一応1,972mの弥山を登ったことで石鎚山登頂とみなしてよかろう。天狗岳は両側が切れたった尾根をソロリソロリと歩き、数百メートルにも及ぶ絶壁に恐れおののきながら上り返さないといけない場所にある。バリエーションルート的な扱いだ。
とはいっても、ここで標高10mをケチって将来的に後悔するのはイヤだ。行けるなら行きたかったんだが・・・このガス。写真を撮影している方向に天狗岳が見えるはずなのに、全くその姿が見えない。ちょっと危険だと判断して、ここから先に進むのはやめた。実際、山頂に滞在している時間中、天狗岳への往来は誰一人としてなかった。みな、ここを山頂として下山していた。
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