09:36
道幅が狭くなってきた。車同士がすれ違うことができない幅の道を、バスは進む。
道が狭いのは当たり前だ。このままずっと進んでいっても、両神山のどん詰まりだ。
「対向車が来たらどうしよう?」と思うが、大丈夫、滅多にこないから安心。
時折こんな山奥でも家がある。本当に日本は隅々まで人が住んでいるものだな、と感心する。林業を営んでいる方だろうか?それとも渓流の魚を捕って生計を立てているのだろうか?
09:47
道路脇に駐車場が見える。こんな場所なのに、車がみっちり。
どうやら、目指す登山口である日向大谷口はもう間近らしい。日向大谷口には、いくつか駐車場があると聞いている。そのうちの一つだろう。
大駐車場!と呼べるようなものではない。早い者勝ちで、満車になるとはいそれまで、だ。
いっぱいだから路駐しちゃえ、というわけにはいかない。だって、道路がすごく狭いんだから。路駐したら、他の車が通れなくなってしまう。
09:48
おっと、ここにも駐車場が。先ほどの駐車場からほんの僅か離れた場所だ。ここも、停められる車の数は限られている。そして空きスペースが全くない状態だ。
まだ登山口はこの先のはずだが、こうやって手前の駐車場が詰まっているということは・・・当然、登山口の駐車場もいっぱいなのだろう。
09:49
バスの終着点であり、両神山登山のメインルート登山口でもある日向大谷口に到着。ここでバスを降りるお客さんは、当然全員が両神山登山目的だ。例外なく。それ以外にここに来る用事はない。
日向大谷の地図。県道279号のどん詰まりに位置している。
その南側に走っている県道36号のどん詰まりが白井差口だが、こちらは既に廃道。他に両神山に登るには、何パターンか道がある。
帰りの時間を見ておかなくては。
こういうのは、webで調べて分かった気になっていてはダメで、ちゃんと現地で時刻を確認しないといけない。特にバスはそうで、曜日によってダイヤが違ったりするしweb情報は古かったりもする。
三峰口行きのバスは15時10分、その次が17時20分。
標準コースタイムが往復7時間なので、10時から登山開始して17時下山予定だ。17時20分の便に乗ると、ちょうどいい。
しかし、標準コースタイムというのは結構いい加減なものだ。やたらと短縮できる時があったり、逆の場合もある。ひょっとしたら、グイグイ登ることができて15時10分の便に乗れるかも・・・なんて淡い期待もしてしまう。それだったら、帰り道に薬師の湯に立ち寄って、ひとっ風呂浴びることもできる。
「両神山に登るんだったら、往復は8時間かかりますからねー。三峰口行きのバス、17時20分なので気をつけてくださいねー」
と運転手さんが下車する客に声をかけてくれた。運転手さんが考える標準コースタイムは「8時間」ということらしい。
まあ、17時20分のバスに乗り遅れてしまったら、その後救済措置的な意味合いもあるのだろう、18時37分発の薬師の湯行きバスがある。これだったら、間に合うだろう。ただし、薬師の湯に到着しても、そこから先公共交通機関を乗り継いで東京の家に帰り着けるのかどうか、時間的に随分怪しいけど。
やはり、何が何でも17時20分、ということになる。あわよくば15時10分・・・いや、さすがにそれは無理だ、7時間かかるところを5時間10分って、天狗か仙人でもなければ不可能だろう。
バス停の脇にも駐車場がある。ここももちろん車でいっぱい。
看板を見ると、このエリアは有料駐車場らしい。日向大谷口には二軒の宿があり、そこに500円を払えば車を停めることができるようだ。
09:50
いよいよ登山口に取り付く。
まずは、バス停目の前の崖に作られた石垣を階段で登っていくようだ。地味で若干わかりにくく、一瞬バス停に降り立った時に「あれ?これからどっちに向かえばいいの?」と戸惑ったくらいだ。
「両神山日向大谷登山口」の看板が見える。
両神山の案内図。
両神山の西側からアプローチする八丁峠のコースは、鎖場が30カ所あるよ、と警告が表示されている。地図で見ると、登山口から山頂までの直線距離がもっとも近く、楽そうに見えるけど危険だ。
実際僕自身、以前八丁峠から登ろうと画策したことがある。日向大谷口から登るのは「たるい」と感じたからだ。しかし、決行することなく今日に至り、こうして日向大谷から登るのです。
09:52
急なコンクリートの道を登っていくと、「両神山登山口 ふたかみ荘」と書かれた建物があった。今は営業していないようだ。
この奥に、両神神社里宮があったらしいが、気づかずに素通りしてしまった。
09:53
振り向いたところ。
谷底にあるバス停留所から、ちょっと登っただけでこの景色。
ええと、両神山はどれかな。ここからは見えないか?
09:55
ふたかみ荘を横目に見つつもう一段登ると、そこには「民宿 両神山荘」があった。こちらは現役で営業中の宿だ。
こんな山奥で、宿泊する人というのは登山くらいしか思いつかない。他にはせいぜい、渓流釣り好きの人くらいか。護岸工事だとかの公共事業で泊まる人も、中にはいるかもしれない。
いずれにせよ、冬場は商売が成り立つのか?と心配になってしまう立地のお宿。
ここからは往復7時間の登山となるので、脚力に自信がない人はここで前泊するというのも手だ。そして、早朝出発すれば、遅くとも夕方には下山できるだろう。
調べてみると、「収容人数50名、12部屋」だそうだ。一部屋4人ちょっとの計算なので、山小屋でありがちな「狭い場所にどれだけ人を押し込めることができるか?」というギネス挑戦はここではやっていないらしい。普通の、宿だ。
紛らわしいのは、先ほど通った「薬師の湯」近くに、「国民宿舎 両神荘」という宿があることだ。「山」がついているかいないか、の違いだけど、別物なので注意。
両神山荘まで舗装された車道が通っている。
僕は階段を登ってショートカットしたけど、車はここまでぐるっと大回りして辿り着くことができる。なので、両神山荘が本当のどん詰まり中のどん詰まりになる。
そのどん詰まり手前に、公衆トイレが用意されていた。登山客への便宜だ。これから長丁場になることだし、用を済ませておこう。
09:56
おおう、有料トイレだったか。
トイレの中に入って、募金箱を見てしまうと「しまったァ!」という気持ちになる。
一人100円。
メンテナンスの手間暇を考えたら、100円でも高くはないと思う。しかし、「大して便意はないけど、折角トイレがあるんだから今のうちに行っておこう」程度のつもりで中に入ったので、「しまったァ!」だ。いったんオシッコ出す気になった膀胱の気持ちはもうとめられない。わかったわかった、100円用意するからちょっと待っててくれ。
山に登る時は小銭を用意しましょう。有料トイレで、お札を払うハメになる。
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