吊尾根の下の、一つ屋根の下で【上高地デュオキャンプ2019】

2019年07月15日(月) 3日目

05:43
3日目朝。2泊3日の今回のキャンプは、既に最終日を迎えていた。

これまでのように、「3泊4日。やることは特になし。読書と、散歩と、食べ歩き」のソロキャンプと違い、今回は二人だ。いつもと同じ場所でも、見慣れた光景でも、新鮮な時間の流れだ。

今日は朝6時半から、ビジターセンターでバードウォッチングのイベントに参加する予定だ。なんて朝が早いんだ、と呆れる時間だ。さすが「モーニングバード」という言葉があるくらいだ、鳥は朝が本当に早い。その分、日没とともに寝るわけだから睡眠不足ということはないのだろうけど。

そんな早起き鳥を先回りするために、僕は5時半過ぎにテントから抜け出した。トイレに行きたかったのと、出発する前にコーヒーを一服したかったからだ。

その前に、まずは夜明けの穂高連峰と岳沢を拝もう、と梓川の土手に向かった。

テントサイトから梓川に向かう道には、

「警告!危険! 土手が崩落して、大変危険な状態となっております。絶対に近づかないで下さい。」

という表示が出ていた。ああ、一昨日見た、川が土手をえぐった場所のことか。

えぐられた土手の手前から、岳沢を見上げる。

今日は完全にガス。雨が降っていないだけ儲けもん、というくらい、重たく雲で覆われていた。

こういう風景もたまには良いものだ。

「一生に一度の上高地」なら、絶対に晴れた景色が見たい。でも、僕みたいに何度も訪れていると、晴れている上高地はもう知っている。だったら少々雨が降っても、景色が悪くても、むしろそれを変化として楽しむことができる。

同じ場所に通い詰めるメリットだ。天気に一喜一憂しない。

05:56
ガスストーブでお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。

ソロキャンプのときはインスタントコーヒーのくせに、彼女と一緒のときは自家焙煎珈琲豆を家から持参かよ、と思う。でも、たんにカッコつけのためにコーヒーをドリップしているのではなく、7月という気候の良さがこういう余裕を生んでいるというのが正解だ。

GWの頃の朝6時頃なんて、0度前後の気温だ。寒くて、面倒な手間をかけたくない。

06:10
コーヒーと一緒に、朝ごはんも食べる。

無印良品のレトルトカレーと、缶詰パン。なんのことはない、レトルトパックを温めるのに使ったお湯をそのままコーヒーのドリップに使っている。こういうのを気持ち悪く思う人は一定数いると思うが、僕もいしも平気なので気が合う。

もちろん、レトルトパックはちゃんと事前に水洗いしているぞ。

06:30
ビジターセンター前がにぎやかだ。カラフルなレインウェアを着込んだ人たちが集まっている。みんなバードウォッチングをするために集まった人たちだ。

受付を済ませ、保険料として参加費を払う。それと引き換えに、双眼鏡と図録をくれた。

「小梨平で出会いたい野鳥23種」と書いてある。

「出会える」と書いていないのが誠実な感じで、いい。野鳥なんて、そう都合よく会えない。動物園じゃないんだから。かといって、「出会えるかもしれない」なんて書いてあったらこっちのテンションが下がる。「出会いたい!」という表現は、「うん、僕もそう思う!」と返したくなる、前向きな表現だ。

で、そんなウズウズさせるメンバーはというと、

マガモ、オシドリ、キセキレイ、セグロセキレイ、カワガラス、コサメビタキ、キビタキ、ミソサザイ、ウグイス、オオルリ、コマドリ・・・

と並んでいた。ガラは違うけど、なんだか似た顔つきに見える。そして、サイズが11センチとか14センチとか、ちっこいのが多い。マガモが59センチなんて、巨漢に見える。

写真の世界では、ある特定ジャンルの写真ばかりを撮るマニアというのがいろいろ存在するが、「野鳥」というのもれっきとしたその1つだ。ときどき、自然の中で巨大な三脚と望遠レンズを取り付けたカメラを抱きかかえるように、身動きしないでじっとファインダーを覗き込んでいるカメラマンに遭遇することがある。あの執念たるやすごいと感心していたが、そりゃそうだ、ちょこまか枝の間を飛び回る、10メートル以上先の10センチくらいの生き物を激写するのだから。

ちなみに僕が上高地でこれまで出会ったことがあるのは、マガモ、オシドリ、セグロセキレイ、オオルリの4種類。今回のバードウォッチングでさらなる上積みができるかどうか。

小梨平で確認されたことがある鳥の一覧が載っていた。これによると、1995年以降94種類の鳥が確認されている。「上高地エリア全般」ではなく、地に足ついた、今まさにここにいる「小梨平」で確認された鳥というのがリアルでいい。

見ると、ハヤブサのような猛禽類も出現しているらしい。もっとも、キャンプ場界隈に舞い降りてくるようなことはないと思うけれど。キャンプ場界隈だと、明け方はカラスの鳴き声が一番大きい。都会でもおなじみの、あの普通のカラスだ。それが現実。やつらはたくましい。

06:49
ビジターセンターの職員さんに連れられて、ビジターセンター脇を流れる清水川に行く。

河童橋は目と鼻の先。

この清流の川に、ミソサザイが棲み着いているのだという。

確かに、時々「チョッチョッ!チョッチョッ!」と甲高い鳴き声が聞こえる。

でも、それがどの距離なのか、全然検討がつかない。かなり大きい音なのだけど、遠くから聞こえているような、近くからなのか、わかりにくい。

ミソサザイは11センチほどしかない小鳥なのに、朝から元気だ。

職員さんいわく、縄張りを主張しているのだそうだ。単にご機嫌なのではなく、「お前ら、入ってくるなよ?」という脅しなのだった。それはそれは朝から大変だ。

しばらく参加者全員でミソサザイ探しをしたけれど、目視をしても双眼鏡でも見つけられなかった。

そもそも、双眼鏡で鳥を探すのはすごく難しいことを今更悟った。まずは目視で場所のあたりをつけて、それから双眼鏡で詳細に調べるという段取りにしないと。

(つづく)

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

コメント

コメントする

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください