吊尾根の下の、一つ屋根の下で【上高地デュオキャンプ2019】

20:27
ソーセージアソートとかいう名前の、5種類のソーセージが1パッケージになった商品をボイルして食べる。

キャンプでソーセージって、ものすごい大ごちそうだ。いや、自宅で食べても家族全員ニコニコするハッピーな食べ物だけれど、キャンプならば茹で上がるまでが待ち遠しい、そんなレベルのごちそうになる。

オートキャンプやらグランピングをやっている人にはこの気持ち、わかるまい。狭いテントの傍らで、コソコソと湯を沸かし、ボイルするという過程があってこその贅沢感だ。

ソーセージが5種類あるといっても、どれが何味だかぜんぜんわからない。バリバリっと食べておしまい。でもそれでいい。

街のスーパーじゃ、「あらびき」を銘打つソーセージばっかりが並んでいる・・・と嘆いている人がいるが、僕自身ソーセージがパキッと割れ、ザラザラした食感のものを好んで食べる。そして味はそこまで気にしていない。思った以上に自分の舌が馬鹿舌で、それでもこれだけ幸福になれるのか!と驚かされる。幸せって大事だよね。卑下する必要はまったくない。

この他何を食べたか、写真が残っていないので記憶にない。たぶん、アルファ米を炊いて食べたんだと思う。なにしろ狭いテントに二人が座っていること自体大変なことだ。写真を撮っている余裕がなかったのだろう。

一人だったら、テントの中心に座ることができる。天井が高くて、座高が高い僕であっても一応はシャンと座ることができる。しかしこれが二人になると、お互いテントの対角線に座ることになり、迫りくる天井に頭がぶつかり、前かがみの姿勢になってしまう。

登山用のテントなので、快適空間を追求なんてしていない。軽量コンパクトで、しっかり眠れさえすればいい。夜、テント内で宴会ができるということはスペックとして想定していないことだ。

2019年07月14日(日) 2日目

05:06
2日目朝。毛布だけで眠ることができたので、それほど寒くはない一晩だった。さすがGWのときとはわけが違う。

しかし、二人がテントの中で寝ると、湿気がすごい。そして結露もすごい。テントの壁面に体が触れると、そこがじっとりと濡れていてひやっとする。夜中、何度も「あっ、冷たい!」と目を覚ました。

さすがに二人が寝るには狭かったか・・・と思って寝ているいしを見てみると、状況に納得した。道理で僕が狭いわけだ、彼女の体は斜めに傾いていて、頭の位置はテントの真ん中あたりまで進出していた。当然僕の専有面積が狭くなるわけで、その結果壁際に追い込まれていたのだった。

06:50
彼女をテント右側の正位置に引きずって、さらに寝袋を正しく装着させてみた。7月の上高地は、さすがに明け方は相当涼しい。

この寝袋がいわゆる「マミー型」と言われる形になる。「封筒型」と呼ばれる寝袋がオートキャンプでよく使われるのに対して、「マミー型」は山用として使われることが多い。

マミー型はツタンカーメンみたいな形になって寝る。頭にはパーカーのフードのようなものがついていて、すっぽりかぶって、紐でぎゅっと縛る。これにより顔の部分だけが外に露出しているようになる。さらに、寝袋の足元は体型に沿って先細りしており、その分封筒型と比べてコンパクトに収納できるメリットがある。

ただし、寝心地はあまりよくない。足がすぼまっているため、ガニ股のような格好で寝たいと思っても、できない。そして、パーカー部分を絞っても、寝返りを打ったりするときにずれる。まさに写真のいしがそうで、首を横に向けたら、首筋に隙間ができている。これが案外寒い。

それでも本人は全く起きず、無防備に寝続けている。姿勢と寝袋を直したときも、起きなかった。たいしたものだ。夜勤をやっている人はいつどこでも眠れるとは聞いていたが、まさかここまで眠れるとは。

一方の僕はと言うと、上高地ということで気が高ぶってしまい、結局早起きですよ。

6:56
テントの外に出る。

ここはIエリア。トイレ棟と梓川に挟まれた場所になる。

ちょうど歩道脇に空き地があったので、そこにテントを張っていた。キャンプの場合、夜中にトイレに行くのがおっくうだ。僕としてはできるだけいしに「キャンプって、不便で楽しくない」と思われないように必死ですよもう。トイレから遠すぎず近すぎず、便利な場所に。

今日は雨の予報が出ているせいで、既に空気はかなり湿っぽい。地面もじっとりと水気を含んでいる状態だった。7月中旬はまだ梅雨明けしていないので、こういう天気なのは仕方がない。

テントの外に置いてあった荷物一式。

テント用のグラウンドシートにザック類をくるんでいる。防水加工されているので、ひとまずこれで雨はしのげる。ただし、畳み方が雑だと、隙間から雨水が入ってしまう。本気で雨が降っている時だとこのやり方はアウトだ。

やっぱり二人でテント泊なら、「2型」ではなく「3型」ないし「4型」まで視野に入れないと駄目かもな。ガチ登山で極限まで軽量化を図るならまだしも、ライトな感覚でキャンプをするなら、2型テントで大人二人は結構たいへんだ。

なにしろ、写真を見てもわかるとおり、夕ご飯に使ったマグカップでさえ野ざらしにしているくらいだ。マグカップをテント内に置いていたら寝場所が減る・・・それくらいの感覚なのが2型テントの実情だ。

いしが熟睡しているので、一人でキャンプ場をぐるっと見て回る。どういう状況になっているのか、昨晩は到着が遅くてバタバタしていたので把握できていないからだ。

まずびっくりしたのが、王蟲みたいな形をした巨大なテントがあったことだ。なんだこれ?何かの社会運動でもやっているのだろうか。

遠巻きでしか見なかったけど、どうやら絵を描いている人の住まい兼ギャラリーらしい。屋外にイーゼルがいくつも並んでいる。こんな巨大建造物をどうやって運んできて建設したんだ?と思うが、それができてしまうのが小梨平だ。とはいえ、バスで運ぶには相当大きいので、タクシーを使ったり何度か往復したりしているのだろうか。とにかくデカくて仰天した。

GWのときとはキャンプ場の様子が全然違う。緑で覆われている。地面も、空も。テントは派手な色彩を放っているけれど、緑に埋没している。

07:36
いしがまだ起きないので、机と椅子を組み立てながら寝起きの珈琲用のお湯を沸かす。

テント正面に組み立てた机と椅子。

これまで、机は持っていなかったけど今回新調した。荷物がこれでまた一つ増えた・・・。一旦止めたオートキャンプへの道がまた開かれそうな予感がしなくもない。

はるか昔アワレみ隊でオートキャンプをやっていた頃の装備品は、ほとんど廃棄されてしまった。バルコニーに置いていて雨や紫外線にやられ、傷んでしまったものが多かったからだ。

机をわざわざ買ったのは、テント内で二人がゴソゴソしながら調理したりご飯を食べるのは狭くて無理があると思ったからだ。狭いところで作業をすると、お湯をひっくり返してやけどを負うなどの危険性がある。二人でキャンプをやるにはテントの外で過ごすことを考慮しないとな・・・と思って買った。

畳むと棒状にまとめられるので、そういう形状のものならばザックに縛り付けて持ち歩けるので便利だ。

ガスストーブが「ゴー」とジェットエンジンのような音を立てて火を噴いている。アウトドア用のガスストーブを初めて使う人は、きっとこの音にびっくりすると思う。カセットコンロとは次元が違う、科学的な音がする。そしてかなり音が大きい。

たいてい、テントの中で寝ている人はこの轟音で目を覚ます。しかしいしは、慣れない環境にもかかわらず全く意に介さず寝続けている。さすがだ、と感心するしかない。

これだけの図太さがあるからこそ、短期間で僕の家にほぼ住み込む現状になだれ込んだんだ。ありがたいことだ。繊細な精神の人だったら、「人んちで寝るのは精神的に疲れる」といって敬遠していて、ここまで関係が深まらなかったと思う。

そんないしのためにラブリーモーニングコーヒーをお見舞いする。

ドリッパーはモンベル製の折りたたみ式で、まるでバネのような形をしている。縮めればぺったんこになる。

珈琲豆は自分で焙煎したもので、それを自宅で挽いてジップロックに詰めて持ってきた。さすがにダンディな顔をしながら、手動式ミルを使ってその場で挽くということまではやらない。面倒過ぎる。

沸かしたお湯を使ってドリップしていく。

注ぎ口が細いケトルなんて持参していないので、鍋的なものからお湯を注ぐ。そのせいで湯加減のコントロールができず、どばーっとお湯が流し込まれることになった。ゆっくりと粉を蒸らしながら、なんてとんでもない。

07:53
二人分の珈琲をドリップ完了。

いしを起こして、珈琲を振る舞う。いしはテントの中で珈琲の匂いをかぎつつ、マグカップを傍らにまたうたた寝を始めた。

今日は8時からビジターセンターのバードウォッチに参加しようかと思っていたけど、まあいいや。明日にしよう。だらっと過ごす朝、というのも良いもんだ。なにせGW時期のここでのキャンプは、寒さから逃れるように早朝起床になるのだから。のんびりできるのは気候が良い今だからこそ、だ。

(つづく)

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