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鳥のさえずりは聞こえるのだけれど、今回は「バードリスニング」ではなく「バードウォッチング」が目的だ。
双眼鏡を握りしめてキョロキョロしても、何も成果なし。ましてや、カメラで絶妙な1枚をシューティング、というのとは程遠い。
しょうがないので、茂みに生えていたクルマユリを激写。これなら逃げないし目立つので、撮影しやすい。
いしはもともと動物が大して好きじゃない。猫も犬も好きじゃないし、鳥に至っては「目が怖い」とまで言う。えー、せめてニャンコくらいは「悪くない」くらいの評価でいいじゃないか、というと、「いや、想定外の動きをいきなりするのでびっくりさせられる」と真顔で主張なさる。
「友達で猫を飼っている人がいるけれど、その人の家には行けないね。かわいいよ?にゃー、って鳴きながら部屋の中をウロウロしてるんだ」
「もし近づいてきたら、私、固まります。通り過ぎるのを待ちます」
そんなわけで、今回のバードウォッチングについても大して乗り気ではない。誘った僕としては、
「出てこい・・・鳥、出てこい・・・」
と念じる。徒労に終わった、というのでは示しがつかない。
「いました!」
というガイドさんの声で、みんな一斉に振り向く、ビジターセンターの屋根の上に1匹。
「うおおお」
とカメラを構え、どうにか撮影できないかと挑戦してみたけど無理だった。当たり前だ、望遠レンズを持参していないので、ズームにしても80mm程度の画角がやっとだ。なので、「なにか屋根の上に黒い物体がある」という写真が撮れた。いいぞ、これがリアルだ。
おかげで、それが何の鳥だったか忘れた。ホシガラスだったような気がするけど。
小雨が降る中でのバードウォッチング。
雨の水滴が蜘蛛の糸に付着して光り、遠くからでもよく見える。
まるで、ワイヤーが絡まっているかのようだ。
新しい発見は、蜘蛛の糸というのは枝と枝の間に張られるだけでなく、枝そのものにも付着していること。おかげで、枝が白く光って見える。
空を飛ぶ鳥の群れ。大量だ。
ツバメのような羽をしているが、なんだっけこの鳥。
・・・一生懸命撮影して、その結果「なんだっけ」だもんな、撮影する意味ってないよな。
小梨平キャンプ場の脇を流れる小川。
ここでもミソサザイの鳴き声が聞こえる。どうやら、川の近くの枝に止まっているらしい。
ガイドさんが望遠鏡で丹念に探したところ、枝の上に止まっているミソサザイを発見。三脚を立て、ピントをあわせた状態でみんなに見せてくれたのでようやくミソサザイの姿を見ることができた。
小さい!こんな小鳥が、どうしてあんな大きな声を出せるのだろうか。
「美声」とか「かわいい」といった感想以前に、「このパワーを研究すれば、新しいエネルギー開発ができないだろうか?」ということを考えてしまう。ほら、脱炭素とかいろいろ言われてるじゃないですか。「小鳥の小さな体で大きな声」というのは、なにか永久機関や不老不死に通じる夢がありそうな気がするんだよな。たぶんないけど。
梓川の河原にいる鳥を見に行こう、ということでキャンプ地を横切っていく。
途中、ちょうど僕らがテントを張っていた場所の上をみんなが通過していった。既にテントはバラして、炊事棟の軒先で干している最中だ。テン場そのものは跡形もなく撤収されている。
残っているのは、テントが貼ってあった地面の色の違い。きれいに四角く、濡れていない地面がある。
梓川の堤。
激流によって崩された護岸を、下流側から見る。
あーあーあー、これはかなりゴッソリと削れてしまったんだな。
根こそぎ川に飲まれた木が2本、それに絡まるように太い幹の流木1本。
もともとこのえぐれた場所にこの木は生えていなかった。なので、上流からドンブラコしてきたものだろう。よくもまあ、これだけのものを・・・。
中洲の茂みに鳥が居ないかどうか、全員で双眼鏡を覗き込む。しかし、結局みつからなった。鳥は、人間の都合の良いようにはできていないものだ。
ガイドさん、といってもビジターセンターの職員さんなので環境省の人なんだけど、その方のショルダーバッグにはコマドリのぬいぐるみがぶら下がっていた。
かわいい?いやいや、実物のほうがもっとかわいい。僕自身コマドリは写真でしか見たことがないけれど、びっくりするくらいかわいい鳥だ。ややデフォルメ気味にぬいぐるみにしているのに、実物のかわいらしさを越えられないんだから、いかに実物がすごいかということだ。
うーん、鳥、発見できず。
青空が出てきた。
これにてビジターセンター主催のバードウォッチは終了。
「あっちにも鳥!こっちにも!」という、シューティングゲームばりの登場頻度ではなかったけど、むしろそのほうが面白かった。次々鳥を見たければ、動物園にでも行けばいいんだから。
いしも、ミソサザイを見ることが出来たし双眼鏡であちこち探索したのが楽しかったらしく、「良かったです、参加できて」と言ってくれた。まずは良い朝となった。
(つづく)
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