吊尾根の下の、一つ屋根の下で【上高地デュオキャンプ2019】

15:41
「グリンデルワルト」のメニューをうやうやしく拝見する。

背筋がシャンとする。なにせ、空間が凛とした雰囲気があるし、スタッフの方々の所作もスキがない。

帝国ホテルのロビーラウンジということで客を選ぶ場所だけど、それだけじゃない。店がシャンとしていると、客も自然とシャンとする。

コーヒーは950円。高い!と思うかもしれないが、おかわりができるのがホテルラウンジの特徴。また、税込み・サービス料込みで値段が記載されており、それを踏まえると良心的とさえ言える。

上高地という場所柄、単なる「観光地物価」で片付けられない、物理的な困難さがある。資材の運搬、人材の確保。それに帝国ホテルという燦然たるブランド料が上乗せされて1,000円ならむしろ安い。

僕は東京の帝国ホテルに足を踏み入れたことがないけれど、東京でコーヒーを飲むと一体いくらになるのだろう。いや、いずれ自らの足で行ってみるので敢えて調べないけど。

ケーキセットで1,700円。これもまた良心的だと思う。

もちろん、朝昼晩とは別の「おやつ」に1,700円も払うわけで、結構な出費だ。安くはないのだけど、納得だ。

スタッフの方が、わざわざ「写真をお撮りいたしましょうか?」と声をかけてくださったので、ありがたく撮ってもらう。

さすがに二人揃ってケーキセット、というのはお値段が高くつくので、ケーキセットは1つにして、1つはコーヒー単体にしよう。

おや、16時まで・1日限定20食という条件つきで、「特製ケーキ5種盛り合わせとお飲み物」があるぞ。せっかくだからこれにしよう。5種盛り合わせって、楽しさ5倍じゃないか。どうせ僕ら、今日一日でさんざん甘いものを食べたんだ。「量」が食べたいんじゃない。「種類」が食べたいんだ。

お値段は2,500円。おおう、金銭感覚が狂うな。いやでもドリンクとセットだし。

味?いやもう、言うまでもなくうまいっすよ。

コーヒーのおかわりを優雅に楽しむ余裕はなく、バスターミナルに向かう。帝国ホテルから徒歩で10分弱。バスの搭乗は定刻の10分前から始まるので、20分前くらいに帝国ホテルを出る計算になる。

岳沢を最後に見上げ、上高地の総仕上げとした。またこの光景、みたいものだな。いつ見ても、何時に見ても素晴らしい。

新島々行きのバスがやってきた。

我々は、バスターミナルにデポしておいた荷物を盗まれることなく、無事にバスに積み込んで一安心。

・・・と思ったら、いしがかばんの中から嬉しそうに黄色い箱を取り出した。

上高地チーズタルト。五千尺ホテルの売店で買ったやつだ。

「えっ、今食べるの?」
「だって、要冷蔵だから」
「いやそうだけど、さっき帝国ホテルでケーキを食べたばかりでしょう」
「比較しないと」

何を比較するんだ。

このチーズケーキを買っていたことは知っていたけど、まさかバスが出発する前から食べようとするとは思わなかった。君ちょっと待ち給え、もう少し余韻というか、風情というか、そういうものはないのかね。せめて松本から新宿に向かう「特急あずさ」の車中とか。

とか言っているうちに、開封しちゃった。あー。

躊躇しないなぁ、もう。

「バスが動き出したら揺れますからね」

と言いつつ、チーズケーキを食べ始めるいし。「おいしい~」と、まるでこれから遠足に向かう子供のようにワクワクした声を上げる。

でも窓の外を見てほしい、まだ今ここがバスターミナルだということを。本当に着席するやいなや食べ始めたのだった。すごいな、この前のめりな食欲。きっと僕も昔はこういう情熱があったのだけろうけど、いつしか失われていった。いしと付き合うことで、ガッつくということを思い出したいものだ。

(つづく)

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